(更新停止)果てしなく続く坂道の途中で(ペルソナ4) 作:アズマケイ
7月9日土曜日、雨
みんなでやるテスト勉強はなかなかに捗った。さすがに飽きてきたら二、三グループにわかれてクーラーをもとめて図書館に入り浸ったり、誰か誘って図書室で勉強したりした。
先生たちが部活や委員会が免除になっているこの二週間、私たちをいかに遊びに行かせないか必死で考えて出してきた課題も大分片付いてきて、指定されたテスト範囲をみて、見落としがないか探す余裕もでてきた。
そして、もはやルーティンと化している月森とのバス停までの帰路。
空は梅雨の到来をにおわせるような、のっぺりとした灰色の雲に覆われ、雨ばかり降っている。朝も夜もなく空は灰色に暗く沈んで、一日中部屋の明かりを消すことができない。雨の音は耳鳴りのように絶え間なく、頭の奥で響いている。本当に夏が近付いているのだろうかと、不安になるくらい冷たい雨だ。
山にさえぎられて日照時間が少ないこの街では、梅雨になると太陽の存在を忘れてしまいそうになる。冬のシベリアかっていうぐらい、インインメツメツとしてくる。
私はずっと気になっていたことを話すことにした。
「なあ、どうした、月森。今日の勉強会、特別進んでなかったみたいだけど。なんか躓いたのか?」
「ああ、うん、ちょっとさ。考えごとしてて」
「考えごと?なんか悩み事か?」
「実は......昨日、七夕だっただろ?菜々子が学童保育で短冊つけたささを持って帰ってきたんだけどさ、お父さん帰ってこないってこぼしてたんだ。誘拐事件はその日のうちに解決してるわけだし、表向きは被害者も山野アナで終わってるわけだろ?なら落ち着いてきたんじゃないかとも思ったんだけど、なんでだろうなって」
「別のこと調べてるんじゃないか?交通事故とか」
「あれ、なんで神薙がそれを?」
「昨日さ、おばあちゃんから聞いたんだけど、離れて暮らしてるお母さんのところに堂島さんがきたらしいんだ」
「えっ、なんで」
「大丈夫、私のことについて、裏どりに来たわけじゃなさそうだった。私がこの体のきっかけになった交通事故について、知りたいみたいで」
「前にいってた?」
「うん、そうみたいだ」
「うーん......まさか、叔父さん、もしかしてこの街で起きてる交通事故について、一から全部調べ直してるんじゃ......。菜々子寂しがってるのに」
「いちから?なんでまた」
「実は稲羽署で叔父さんの奥さんの事故に関する書類をなくした人が証拠隠滅のために書類までシュレッダーにかけたことがバレて自殺してるみたいなんだよ」
「......そうなのか」
私はなんと続けていいかわからなくて言葉に詰まった。堂島千里さんのひき逃げ事件はドラマCDですら犯人を見つけ出すのは難しいと某探偵王子がいうくらい難しい案件で、3月にようやく堂島さんが犯人の手がかりになりそうなものを掴んだから逮捕できそうだと聞けるレベルの案件だ。
ただ、月森がいうような事件、いや事故?はなかったはずだが、今まで月森がいうように即日みんなを助けてきたはずなのに堂島さんが帰ってこないということはそういう力が働いているのか。それとも私が知らないだけでなにかが起ころうとしている予兆なのかはわからなかった。
ただ、菜々子ちゃんが寂しがってるなら、テストが終わったら月森の家にみんなで遊びに行こうという話にはなったので私もお邪魔させてもらう約束だけはとりつけたのだった。
いつものように雨が降りしきる商店街を歩く。りせちーが助けられていなかったら今日がタイムリミットだから、よかったと改めて思う。あちこちに稲羽署が設置したと思われる夏の交通安全の旗がたっていた。シャッター街では余計に目立つ色合いである。
夏休みにはいった児童や生徒等と夏の行楽シーズンが重なり交通事故が発生しやすくなる夏季において、交通ルールの遵守と正しい交通マナーの実践を促し、交通 事故の防止を図ることを目的とする運動だ。交通安全のスローガンがでかでかと書いてある。
「気をつけないとな、俺たちも」
「そうだね、飯田先輩のひき逃げ犯もまだ捕まってないみたいだし」
商店街の公民館前が一番旗がたくさん並んでいる。その近くに掲示板があるのだが、いつもほっとかれっぱなしの掲示物が新しくなっていることに私は気がついた。
真新しい交通安全のポスターの横には、稲羽市役所が発行したポスターが掲示されていた。
「あれ、選挙あるんだ」
「ほんとだ、稲羽市議会議員補欠選挙って書いてあるな」
携帯でちょっと調べてみると、どうやら今月末に任期満了になるために告示日と選挙期日が書かれていた。
「そういえば、生田目って誰の秘書してたんだろう」
「言われてみればそうだね、知らなかった。えーっと、あ、辞任だって。やめちゃったのか......」
「どっかで見たことあると思ったら......ポスターがあちこちに貼ってあるんだな」
「生田目の不祥事で同情票が集まるか、何で責任とってやめないんだってなるかで当選するかどうか決まりそうだね」
「......なあ、神薙」
「なに?」
「これから選挙なら、この人がテレビに出るんだよなたぶん」
「他にも候補者はいるだろうけどたぶんね」
「......マヨナカテレビ、もしかしてこの人たちが映るんじゃ......?」
「......いや、いや、いやいやいや、さすがにそれは人が多すぎるんじゃ......?」
「でも、相手は複数犯だろ。ないっていいきれるのか?」
「......いや、それは......」
「だろ?」
私はなにもいえないまま、候補者がたくさん並んでいるポスターをみつめた。
「......明日、いっかい集まろうか、神薙。さすがにクマたちと一回特別捜査本部開いた方がいい気がする。嫌な予感がするんだ」
うなずくしかない。生田目元市議秘書が辞めさせられたくらいで雇っていた市議がやめるなんてなにがあったんだろうか。あまりにも騒ぎが大きくなりすぎたから後援会や議会から圧力でもあったんだろうか。
携帯でぐぐってみても表向きは高齢ゆえの体調不良で自分からやめたいと発言し、後継者には元県議会議員かつ同じ会派の新人が指名されたくらいしかでてこない。
責任を感じてとか体調不良だったとか高齢ゆえにとか色々憶測は飛び交っているものの、ハッキリしたことはわからない。
なんだか最近、私の知り得ないなにかが色々と蠢いているようで、不気味でならない。月森のいう嫌な予感はおそらく当たっているだろう。あんまり考えたくはないのだがひどく嫌な予感がするのはたしかだ。心臓が喉もとまでせりあがってきた。何かが間違っている。何かまずいことが持ちあがろうとしている。
私は必死で考える。何か正解に辿り着きそうな気配を、感じていた。暗闇の中で手を前に伸ばしてゆっくりと歩き、先は見えないがそれでももう何歩かで壁に行き当たる予感がある。
「いこうか」
「そうだな」
あたりの空気が重みをもっていて、四方から圧し縮まってくるような息苦しさがそこにはあった。その原因を私はすぐ知ることになる。
「きみは......」
「巽や小西先輩たちに話を聞きにきてたっていう探偵さんだね、月森」
「こんにちは、2人仲良く学校の帰りですか?」
バス停の前には探偵王子こと白鐘直斗その人がいた。傘の濡れ具合から察するにずっと待っていたようである。今までずっと自称特別捜査隊はベルベットルームやジュネスのスタッフルームでしてきたから、今回が正真正銘初めての遭遇だ。
「こんにちは、白鐘だっけ。バス停で待ってたってことは、私になにか用かな?」
「話が早くて助かります。少しお時間いいですか、バスが来るまで時間がありますから」
私たちは顔を見合わせたのだった。
雪子
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