(更新停止)果てしなく続く坂道の途中で(ペルソナ4)   作:アズマケイ

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第61話

「今回の稲羽市議会議員補欠選挙に立候補した崇道辰蔵は、県議会議員も経験したことがある無所属の新人です。昭和33年生まれの53歳、県内の教育大学大学院学校教育研究科修了し、教職員をしたのち、平成7年から県議会議員を三期つとめ、県議会副議長や議会議長を歴任したのち今回立候補しています。既婚で息子がひとり」

 

手帳を広げながら直斗がいう。

 

「生田目元市議秘書の不祥事の責任をとり辞職した前任の後継者として指名されているとおり、今回の補欠選挙の最有力候補とされています。所属こそ無所属ですが野党が支持を表明しているので、思想的にはそちらなのでしょう」

 

そして、手帳を閉じた。

 

「一見するとなんら関係ないと思われる今回の補欠選挙なんですが、あなたの叔父さんはどうやらそうは思っていないようです」

 

「堂島さんのこと、知ってるのか」

 

「はい、今回僕は稲羽署の上層部から山野アナの殺人事件から端を発する連続誘拐事件について調査を依頼されていますので。少し調べさせていただきました」

 

「なんでまた?堂島さんも月森も関係ないじゃないか」

 

「関係ないなら、捜査本部から外されたりはしませんよ」

 

「......は?」

 

「今なんて?堂島さんが外された?なんで」

 

「今回の殺人事件の容疑者かつ堂島刑事の奥さんのひき逃げ事件の容疑者のひとりとして、彼の息子が上がっているからです。堂島刑事はひき逃げ事件の関係者だ、ゆえに上層部は捜査本部から堂島刑事を外しました。公平な捜査に支障をきたしかねないからです」

 

「!!」

 

「容疑者の名前は崇道竜也、昭和56年生まれの30歳。学生時代の成績は悪く、黒い噂が絶えない人物として界隈では有名です。表立った報道がないのは政治家である父の崇道氏の働きによるものが大きいといわれています」

 

「部外者の私たちにそこまで話してもいいの、探偵さん」

 

「堂島刑事が担当を外されても調べるのをやめようとしていませんから。このままだとまずいことになりますので、身内であるあなたにも止めてもらいたいんです、月森さん」

 

「どうして......」

 

「どうして、ですか......そうだな。あの人は犯人に目星がついたからと捜査本部から外されたのは僕も同じなので、やり返してやりたいのかも」

 

「......」

 

「......探偵も大変なんだね」

 

「ドラマと違って探偵の立場はそんなものですよ、幻滅しましたか」

 

「いや」

 

「そんなことはないよ」

 

直斗は帽子を被り直す。嬉しいのか、ちょっと緩みかけた頬をむりやり真顔に戻しながら話を続けた。

 

「崇道家は曾祖父の代から政治家の道を歩み、代々政治家を務めています。崇道竜也は一人息子と長男として生まれました。噂からすると、かなり甘やかされて育てられたようです。高校進学後は上京し、大学院まで行く予定でしたが、学力が足りず、在学時代も飲酒運転やトラブルを起こしたために学力や評価がたりず、直前に進学先を変更しています。大学進学後も勉強についていけず休学し、アメリカに留学していたようです。これも女性関係のトラブルがあったようで、ほとぼりがさめたあたりでアメリカから帰国後は卒業。父である崇道辰蔵氏の事務所や今回後継者として指名した前任の市議の事務所で活動しています」

 

「ってことは、生田目元議員秘書と関わりはあったんだね」

 

「はい、議員秘書をしていたんですから、当然接点はありました。実の息子ゆえに面と向かって注意する人間がいなかったのか、免停中に事故を起こした件も揉み消されています」

 

直斗もよほど悔しかったのか、白鐘家のコネクションをフル活用して情報収集をしたようだ。羅列された握りつぶされた事件、あるいは事故の多さにさすがに私たちは閉口せざるをえない。

 

いくら握りつぶしても黒い噂となって絶えることはなく、崇道竜也はある日、飲酒したまま運転しコンビニに突っ込むという事故を起こしており、それが原因で事務所を一度クビになっている。現行犯だったにもかかわらず、なぜか現行犯逮捕ではなく任意同行を求めた後に通常逮捕、という形をとった事で、世間を騒がせたこともあった。薬物所持だったとの噂もあったがいつのまにかたち消えている。

 

「これが去年の11月、堂島千里さんのひき逃げ事件の直前に起こしています。ちなみにこれも嫌疑不十分で釈放されてからそれきりですね。今は体調不良を訴えて病院に急遽運び込まれました。その時は一時心肺停止状態に陥っていましが、手当てによって何とか一命を取り留めて、自宅療養中、ということになっています」

 

「たしかに薬物関係や女性関係の黒い噂が絶えない人物みたいだけど、去年事務所を首になってるならなんで容疑者になるんだ?」

 

「崇道家は市内にあるんです。自宅療養中である以上、あたりまえですが市内の人間です。なおかつ一人暮らしだからアリバイがありません」

 

直斗は私を見た。

 

「神薙さん、あなたは天城屋旅館で山野アナと思われる女性と黒いスーツを着た男性が口論しているのを目撃しましたよね。それはこんな男ではありませんでしたか」

 

さしだされたのは知らない男の写真だった。

 

「もしかして、これが崇道竜也?」

 

「そのまさかです。事件発生の数時間前、山野アナを崇道竜也が訪ねてきたと複数の目撃証言があがっています。事務所でも生田目元議員秘書と山野アナの不倫は公然の事実も同然でした。崇道竜也を雇う事務所でしたから、山野アナもその関係につけ込まれてしつこく言い寄られていた。その日もまた激しい口論をしていたという証言があります」

 

「まさか、崇道竜也が帰ったあとに山野アナ、行方不明になったとかいう?」

 

「いえ、それはわかりません。疲れた様子でしばらく1人にして欲しいといわれたため、数時間部屋の近くには誰も近寄らなかったそうですから。誰が犯行に及んでもおかしくはない状況だったのはたしかです」

 

「......私が目撃したのはいつ?」

 

「誘拐されたと思われる、その時間内なのはたしかですね」

 

私は息を呑むしかない。やはりあれは、あの光景は、テレビにいれる直前の行動だったのだと知ってしまった私の顔色は悪いに違いない。足立だとばかり思っていたけど、こんなにあやしい人間が事件の直前に山野アナとあっていたと聞かされてしまうと途端にわからなくなってしまった。

 

「神薙......」

 

心配そうに話しかけてくる月森に私はぎこちなくうなずいた。

 

「警察にもいったけど、私がみたのは、すりガラス越しなんだ。あの時は雪の家にきたことで頭がいっぱいで、トラブルに巻き込まれたくなかったからじっくりとは見てない。だから黒いスーツの男が女性と口論していたことしか、私にはわからないんだよ」

 

「ほんとうに?」

 

「ほんとだよ、嘘はいってない」

 

「なら、質問を変えましょうか。あの後すぐに山野アナの失踪と似たような状況で行方不明になる人がいて、その人たちがすべてあなた達と仲良くなっているのは、本当に偶然なんですか?」

 

「なにがいいたいんだ?」

 

「なにか知っているのなら、堂島刑事にいわないのはなぜですか?僕はあの人ほど刑事らしい刑事と会うのは本当に久しぶりでした。あの人を叔父にもちながら、知りえる情報を提供しないのはなぜなんですか?あの人がどれだけ今回の事件を解決しようとしているのか、知っているでしょうに。もし、遊びで事件を追いかけているのだとしたら、今すぐ堂島刑事の邪魔になるようなことはやめるべきですよ。今すぐに」

 

どうやら直斗はよほど堂島さんによくしてもらったらしい。らしくなく熱くなっているのがわかる。月森は思うところがあるのか言い返せないようだ。

 

「それはキミも同じじゃないのか、白鐘直斗」

 

「それはどういう意味ですか」

 

「堂島さんの邪魔をするような真似はしないほうがいいのはキミも同じじゃないのかってこと。なにも知らないキミにどうこう言われる筋合いはないし、私たちもいう立場にはないけど。私の失踪の理由について邪推するというのなら、堂島さんたちから聞いてるはずの事情を知りながら聞いたのだとしたら、私はキミを絶対に許さないから。そのつもりで」

 

私は笑ったのだった。

雪子

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