(更新停止)果てしなく続く坂道の途中で(ペルソナ4)   作:アズマケイ

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第62話

7月9日土曜日、曇り。

 

月森の招集でジュネスのスタッフルームに現れた自称特別捜査隊は、りせちーを迎えて女性陣の偏り(私は見た目が女子高生だから側から見たらなおさら拍車がかかるだろう)がまたひどくなった。小西先輩が今回から離脱したためプラマイゼロではあるのだが、花村が進捗状況を逐一報告することになったので多いのはかわらない。

 

「花村、また遅いんだ。バイトリーダーって大変だねえ」

 

「小西先輩たち3年生が結構やめちゃったしな、ヘルプも大変だよなここまでくると」

 

「そのうち倒れやしないか心配になるな」

 

「つーかテストの成績以前にバイトここまでシフトいれるって花村のお父さんなかなかに鬼畜だよね」

 

「それをいったら月森くんもだよね。バイト、たくさんやってるよね。大丈夫?」

 

「花村ほどじゃないよ、日給のバイトしかやってないし」

 

「そうなんだ」

 

「2人ともすごいっすね......テレビん中で稼げるからいーやと思ってたんすけど」

 

「すごーい、マヨナカテレビの救出活動のためにバイトするなんて。先輩大変だね」

 

だらだら話しているとようやくドアがあいた。花村かと思ったがなかなか入ってこない。不思議に思ってしばらく見ていると見慣れた頭が見えた。どうやらひっかかって入れないらしい。じたばたしている。

 

「ばか、横から入れっていったろ!なんでそのまんま入ろうとすんだよ!」

 

「だってぇ〜、朝から晩まで風船配ってクマヘトヘトっクマー!なのにエレベーターダメだっていうし、階段だし、そこまで頭回らないクマよー!」

 

「あーもーめんどくせえな」

 

「ぎゃあー!なにするクマ!やめれー!センセー、助けてクマ!ヨースケが蹴るー!!」

 

月森があわててそちらに向かう。ひっぱるがなかなか動かないので私たちもそちらに向かう。大きなカブは抜けません状態でクマの悲鳴がひびくなか、ようやくクマはスタッフルームに入ることができた。勢いあまって向かいの壁に激突したのはいうまでもない。

 

「毎度のことながらお待たせ。いやー思ったより時間かかったわ」

 

「しどいくまぁ......」

 

「働かざるもの食うべからずだって親父もいってただろ、クマ」

 

「そーだけどぉ......ヨースケのパパさんスパルタクマ......」

 

ソファを丸ごと占領されたため、パイプ椅子を並べて私たちはあらためて座り直す。

 

「しっかしよく考えましたね、花村先輩。逆に着せたんすね、逆転の発想か」

 

「親父たちにお願いした結果、働かせることになりました、マスコット。こっちでは熊田にしたからよろしくな」

 

「クマダ?」

 

「名札にクマはさすがにあんまりだからさ」

 

「あー、そっすね」

 

「じゃあ今日からクマくん、熊田クマくんだね」

 

「普通に出てこれてんだ、びっくりしたよ」

 

「むふふー、なんたって今日という日のために、がんばってお外デビューのためにクマがんばったクマよー!!みよ、この有志!」

 

自分でだかだかだかだかだか言いながらチャックを脱いでいくクマ。空っぽなのを知っているみんなはスタッフルームの鍵を閉めたか慌て始める。そんな最中、チャックが全開になった。

 

「これがクマのおにゅーな姿クマ!」

 

そこにはどこからどうみても男の子になったメガテンのアリス、もとい外国人風の金髪碧眼の美少年がそこにいた。サザエさんのエンディングのごとくクマの頭ぶぶんをかかえたまま、なぜかゆらゆらしている。

 

身に覚えがあるみんなちょっと笑ってしまった。私も笑ってしまった、不覚。ああサザエさん教えたんだな花村と私は思った。

 

この姿でも人間ではないらしく、レントゲンはぼやけてしまって映らないわけだから、ほんとにクマはよくわからない生き物である。

 

「ムフフ......クマは学んだクマ......お姉さんたちはクマみたいな美少年が大好きクマ......だから頑張って生やしたクマよ!パートのお姉さんやおばちゃんたちからは大人気クマ!どうどう、センセイ、クマかっこいいクマか?」

 

にっこにこでクマの外側を脱いででてきたクマに問いかけられた月森はようやく再起動する。

 

「えーっと、ほんとにクマなんだよな?」

 

「そうクマよ!」

 

「130くらいじゃなかったっけ......」

 

「ちっちゃいとダメだから頑張って生やしたクマ。男の子の中では一番ちっちゃいクマけど、さすがにこれ以上おっきくなるとまた入る時大変だからやめたクマよ」

 

「な、なるほど......がんばったな、クマ」

 

頭を撫でてもらったクマはうれしそうに笑っている。

 

「みんな、どうクマか!!逆ナンしてもよい!?」

 

周囲に悩殺効果を含んだキラキラオーラを撒き散らすが、素の性格が不条理なほど吹っ飛んでいることを熟知している自称特別捜査隊の女性陣には、いまいち効果が薄いようだ。

 

「いや、いつまで引っ張ってんのよ、そのネタ」

 

「ねえ、もうやめない......?」

 

「うーん、50点。女の子だったら好みだった」

 

「なぬう!?そ、それはダメクマ!クマはたしかに人気者になりたいけどー、女の子にモテたいのー!!」

 

「いや、クマが女の子だったらさすがに俺一緒の部屋で暮らせないからやめてくれ。洒落になんないって神薙」

 

「えー......男の子でそんなにかっこかわいいんなら、女の子になったらすごい美少女じゃないか」

 

「ダメなものはダメクマー!」

 

むう、と怒るクマに私は肩をすくめた。残念だ。

 

「でもさー、せっかくのイケメンなのになにその服」

 

「なんか......違うね。ラフすぎるというか」

 

「たしかになんか違うっすね、顔と服があってない」

 

「え、変か?ジュネスブランドの新作なんだけど」

 

「えー、ダメクマか!?ギャップ萌えだってみんなからは好評だったのにぃ......」

 

「いやそれ、クマの喋り方みたら気にならなくなるけど、はたからみたらちょっと、ね?」

 

「うん......」

 

「がーん!!」

 

「せっかくだからクマの新しい服、買ってあげようか。これも花村が一式揃えたんだろ?私が奢る分、これにした方が良さそうだし」

 

「ま、マジで!?いいのかよ、神薙」

 

「いいよ、それくらい」

 

「マジでたすかるわ......あれが欲しいこれが欲しい言われて困ってたんだよ、ほんと」

 

「あはは」

 

「よーし、じゃああたしたちで買いにいこっか」

 

「りせちゃん、男の子ばっかりになるけど大丈夫?」

 

「え?あ、うん、大丈夫です!」

 

「そっか、なら先に話聞いててもらえるか、月森。私たちはクマの服を揃えてくるよ」

 

私たちはスタッフルームを後にしたのだった。

 

結論からいうと見た目は王子様のようだが、衣装を着せられてもやはり中身は相変わらずのため、似合う服を選ぶには黙っててもらう必要があった。

 

クマにお似合いの服をお願いしますと店員さんにお願いしたらとんでもない値段のものが沢山出てきたので、さすがに全部お買い上げとはいかず色々あーだこーだといいながら選んでいく。

 

「ねえ、ま、まだ着替えるクマか......?」

 

「クマがかっこかわいいのが悪いんだ、どれも似合うから選べない」

 

「次これね、はい閉めるよー!」

 

「うう、クマは着せ替え人形じゃないクマよ......」

 

「二着くらいしか選べないんだからワガママ言わない」

 

「クマ〜!!」

 

クマがぐったりするころには、ようやくお似合いの洋服一式を2セット揃えることができた。財布は軽くなったがこれで満足である。

 

「クマ、晃ちゃんが買ってくれた服、すっごく高いからね。大事に着てね」

 

「勢いで買っちゃったけど晃大丈夫?」

 

「大丈夫、大丈夫。ギリギリ足りたから。はい、クマ。これ着替えね。明日着る分。洗濯してると着る物なくなるだろ」

 

「あ、ありがとうクマ......女の子って買い物すきね......」

 

「女の子じゃないけど服選んであげるのは楽しかったよ、クマ」

 

「うん......ありがとうクマ......でも次はもちっと短くして欲しいクマね......」

 

美少年は疲れたように笑ったのだった。

雪子

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