(更新停止)果てしなく続く坂道の途中で(ペルソナ4)   作:アズマケイ

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第63話

◼️ 私たちがクマを連れてもどってきたとき、ちょうどペルソナやマヨナカテレビ、あちらの世界について説明が終わったところだった。

 

昨日、私と月森が直斗と会ったときの話をしたようで、りせちーは今朝会ったと教えてくれた。

 

りせちーは出掛ける前に店先のおばあちゃんに一声かけようとして、買い物に来ている直斗と会ったらしい。月森さんたちのところへお出かけですかと声をかけられ、探られるような仕草や言動をされたからりせちーのキャラを全開にして煙に巻いたという。

 

「あーいうのがいっぱいあったの、前の学校でも現場でも。久しぶりに思い出しちゃった」

 

りせちーは休業を決意するまでのが日々について、少しだけ話してくれた。

 

りせちーじゃなくて、ほんとの自分を見て欲しい、という一本の楔がどんなところにまで歪ひずみを及ぼして行っているか、りせちーはそれに行き当るたびに、内面的に汚れている自分をしってゆく。

 

そしてまた一本の楔、よりどころでもあるりせちーの人気が後輩に押され始めたという一部の評価がりせちーに打ち込まれた。

 

りせちーは往来で看板や広告に気をつける自分を見出すようになった。新聞の広告をなにげなく読む自分を見出すようになった。それはこれまでのりせちーが一度も意識してした事のないことだった。

 

綺麗なものをみて、うれしくなるのに、ふと心のなかに喜ばないものがあるのを感じて、それを追ってゆき、りせちーの心に突きあたるものは、やはりほんとの自分のことだった。そんなときりせちーは暗いものにいたるところ待ち伏せされているような自分を感じないではいられなくなっていった。

 

時どき彼は、病める部分を取出して眺めた。それはなにか一匹の悲しんでいる生き物の表情で、りせちーに訴える。おそらくそれがシャドウだったんだろうと今ならわかる。

 

「逃げるのも大切なんだよね、壊れちゃいそうなら。でも、やっぱり後悔もあって......だからあーいうことになっちゃったんだと思う。でも今は違うもん、友達もできたし、仲間もできたし、1人じゃないからもうだいじょーぶ!ね、センパイ!」

 

キラキラとした眼差しはりせちーそのものだ。

 

腕に抱きついてくるりせちーに月森はそうだなと笑った。

 

よかった、明るく感情豊かで他人の悲喜にも敏感に反応する高い感受性と優しい心を持っているりせちーに戻れたようだ。シャドウと対面し自身の悩みを受け入れた後は、TVで見せていた明るく天真爛漫な表情を振りまいている。

 

さすがはコミュレベルにかかわらず、早い段階から月森を慕っており、女性陣の前でも主人公に平然とべったりとしようとする小悪魔気質の持ち主なだけある。

 

それでいて同学年である完二や直斗、それにクマと接する際は甘えたがりな性格は引っ込み、周囲をグイグイ引っ張っていくお姉さん気質となるわけだからそれが私は好きだった。一安心である。

 

「で、いつテレビの中に入ったかだっけ」

 

「うん、覚えている範囲でいいから教えてもらえるか?高台を散歩中にいなくなったって話だけど」

 

「うん、そーみたいだね。あたしもさここから記憶ないんだ」

 

「なにがあったかわかる?」

 

「私たち、みんな玄関先で誰かを出迎えたところは覚えてるんだけど、犯人の顔はみてないの」

 

「俺ん時は神薙先輩のニセモノがお袋拉致しやがって、おっかけた先で引き摺り込まれたんだ」

 

「へえー、そうなんだ。誘拐っていってもいろんなパターンがあるんだね。あたしの時は......うん、新しいパターンだと思うよ」

 

私たちは顔を見合わせた。

 

「あの高台ね、神社の敷地内にあるのは知ってるでしょ?お迎え頼んで階段降りる途中にね、おっきい真っ赤な鳥居が何個かあるの。そのあたりでね、おっきな音がするからびっくりして覗いてみたんだ」

 

「なにがいたんだ?」

 

「何人かいたよ。男の人、女の子、あ、女の子は神薙先輩によく似てたから、完二がいうニセモノってやつなのかな。目の色がおかしかったから今思えばシャドウなのかも?あれ、でもシャドウってこっち来れないんだよね?」

 

「そのはずなんだけどな、敵はそうじゃないみたいなんだ」

 

「そっかあ......今思えば殺されなくてよかったかも。近くにたくさんの石が転がってて、なにかを壊してるみたいだったから」

 

「それってなにかの石碑?」

 

「うーん、気に留めたこともなかったから、前はどんなのだったかはわからないかも。でもなんかすっごい壊し方してたから怖くなっちゃって逃げようとしたんだけど、後ろからね、こう」

 

「後ろからか......ほかに敵がいたんだな」

 

「高台にまでテレビ持ち込むとかどんだけヤベー奴らだよ、ある意味」

 

「階段のすぐ下にはマネージャーがいたわけだから、やっぱり見つかってテレビの中に入れられたって流れみたいだな」

 

「うん、気づいたら向こうの世界だったんだ。なんにも覚えてなくて、ほんとごめんね」

 

「またしても犯人については手がかりなしか......」

 

「いや、そうでもないぞ、花村。だって神薙のシャドウ以外の敵がやっと割れたんだ」

 

「あ、そっか。男が2人だっけ。どんな奴らか覚えてる?」

 

「えーっと、黒いスーツの人と宅急便の人みたいな格好だったような......」

 

「黒いスーツ!」

 

「神薙がみたっていう山野アナのあれか!」

 

「宅配便の人......もしかして、うちにきたのその人なんじゃ......」

 

「宅配便!たしかに普通はなんも考えずにドア開けちゃうかも!」

 

「呼び鈴ならされたら急いででねーとって話になりますよね、これ!」

 

「ちょっと小西先輩にメールしてみるわ、俺」

 

「花村、頼んだ」

 

「宅配便か......」

 

「ねえ、先輩。あたし、役に立てた?」

 

「うん、ありがとうりせ。これは大きいよ。犯人がどれくらいいるのか、未だに俺たち知らなかったからさ」

 

「ほんと?やった!」

 

「......宅配便の人か。それって私みたいにシャドウを奪われたのか、それとも人間なのか」

 

「神薙みたいにマヨナカテレビを試したら引き摺りこまれたパターンだったら、まず助からないな」

 

「でも、マヨナカテレビには映って......いや、3月までならまだ今ほど見てる人いないならわからないか」

 

「山野アナの前からじつはあったってやつ?」

 

「少なくても神薙晃は空白の3ヶ月、身体が乗っとられてる実績があるわけだから、今も現在進行形だとしたらやばいな。シャドウと本体の入れ替わりが可能だと敵が学んでしまったんだとしたら」

 

「......まさか、今まで誘拐してきたのは、本体とシャドウを入れ替えるためとかいわないよな?」

 

「可能性はある。現にみんなシャドウがいる人しか誘拐されてないわけだし、シャドウがいない小さい子は一度も狙われてない」

 

「いや、でもそれはテレビに出ないパターンだし」

 

「そうだな、まだ結論を出すのははやいよ」

 

「えーっと......」

 

「あ、ごめん、今から話すよ」

 

話についていけていないりせちーに、あわてて私たちは捜査の過程について一から説明することにしたのだった。

 

「そっかぁ......よかったよ、最初に知り合えたのが綾音で、気にかけてくれたのが先輩たちで。ね、先輩。私がいないと困る?」

 

「そうだな、力を貸してくれると嬉しいよ」

 

「うん!私、あの世界でみんなを助けられるんでしょ?あの力で。ペルソナの力で。なら、私が仲間になった方がいいってことだよね?よーし、私、がんばるからよろしくね!」

 

私たちはうなずいたのだった。

雪子

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