(更新停止)果てしなく続く坂道の途中で(ペルソナ4)   作:アズマケイ

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第65話

マヨナカテレビは毎晩毎晩、薄ぼんやりとしたシルエットで次なるターゲットを教えてくれるのだが、映るシルエットの姿形が異なっていて、私達を大いに悩ませていた。

 

次のターゲットは八十神稲羽市を騒がせていて、テレビに映り、一時的にでも時の人になればターゲットになりやすいのは周知の事実である。

 

ただいま、選挙中なのだ。地方のテレビ討論会で候補者は出る。マヨナカテレビにも出る。

 

しかも、諸岡先生への襲撃については、マヨナカテレビを見張るだけでは絶対に防げない。諸岡先生を見張らなくてはならない。

 

つまり、私達はターゲットになりそうな人達を数人で見張らなくてはいけない事態に陥っていたのである。

 

なにかあればすぐに移動できるようにはしていた。本来相方になるはずの月森には別グループにいってもらった。

 

私は諸岡先生を見張ることにしたのだ。将来についてや進路について相談に乗ってもらいたいと職員室に行くのだ。性同一性障害で半陰陽で法的な自己決定権がまだない17という複雑怪奇な境遇はこういうとき、一番いい働きをするのだ。

 

まず、月森が私を心配してついてこない。諸岡先生と一緒なら、偽者が悪さをしてもアリバイが立証されると考えてくれる。

 

この世界のカンナギアキラは、まだ繋がっていたい人がたくさんいるみたいだから、私みたいに一人で全てをやると決めて故郷を去る必要はないみたいだから。

 

諸岡先生を学校とバス停前とアパートに固定したかったのだ。

 

 

その日朝からずっと雨が降っていて、ジメジメした湿度の高さを思わせていた。ずっと憂鬱だったことを覚えている。昨日のマヨナカテレビは誰かの演説中だったから、選挙の候補者の誰かなのだろうことしかわからなくて。ここまで犯人側の動きがわからないのが不気味で仕方なかった。月森に他の仲間達の調査の進捗具合を聞こうと思っていた矢先だった。

 

「大変だ、神薙!」

 

「嘘だろ!?」

 

月森からの電話で私は遅かったのだと悟った。マヨナカテレビに諸岡先生を殺した精神異常者が、今までの連続誘拐未遂事件の犯人は自分だ、捕まえてみろと宣っているというのだ。あわててテレビをつけると、まさにそのとおりのマヨナカテレビが流れていた。

 

ちがう、ちがう、そうじゃない、おまえじゃない!

 

ちがうと、断じてちがうと私達は知っているのだ。個人の犯行じゃない。もっと大きななにかが動いていて、この連続誘拐未遂事件はある種の代理戦争の様相すら呈し始めているのだ。わかっているのに止められなかった。その日は一睡もできなかった。

 

「───────くそッ」

 

寝れなくても朝はやってくる。機械になった気分だった。流れ作業的に朝の支度をして、朝イチのバスに乗り、川沿いを歩いて高校に向かう。そして、朝の集会にでる。

 

諸岡先生がいたいとなっ......

 

「諸岡先生、飯田君、そして飯田君のお祖父さんが意識不明の───────」

 

「は?」

 

思わず言ってしまった。なんでマヨナカテレビに入ってシャドウをグリムリーパーに襲われないと現れないはずの廃人になってるんだ、3人も!?血の気がひいて、私達は真っ青になった。

意味がわからなかった。なんで飯田先輩まで?

 

この日は半日の授業だけあり、そのまま帰るよういわれ、解散となった。呆けているしかない私に声をかけてくれたのは月森だった。

 

「ごめん、ごめん、アキラ。飯田先輩から、付き合ってるかどうか、強く問い詰められちゃって、いい逃れできなくてつい......」

 

「え、飯田先輩にいっちゃったのか?犯人追いかけてること!?」

 

「飯田先輩も1月から3月まであちこちで破壊活動してるアキラのことみてたらしくてさ、真犯人を探してるっていったら、力になってくれるっていうから......。まさか昨日の今日でこんなことになるなんて!今日、みんなに話すつもりだったんだよ!」

 

「わかった、わかったから落ちつこう、月森」

 

「ありがとう......。ほんとごめん、お祖父さんがマヨナカラジオについて詳しいからしくて」

 

「え、でも飯田先輩は」

 

「お祖父さんは商店街近くの長屋に住んでるらしいんだ。神社の世話役は持ち回りだっていってた」

 

「そうなのか?!知らなかった」

 

「......実は何回か飯田先輩に付き合ってるのかって、呼び出しくらってたんだ。おれ達帰る方向同じだからどうしても一緒になるだけなんだけどな、飯田先輩にはそうは見えなかったらしくて、ほんとごめん」

 

「今の今まで気づかなかった私も悪い」

 

重苦しい空気が流れていた。そんな最中、私達は無言のまま帰路についた。商店街を抜けようとした時だ。私の前を青い蝶がよぎった。つられて横を見ると、そこには青い扉があった。月森が気づかないまま通り過ぎていく。私はたまらず扉を開いた。

 

「ようこそ、ベルベットルームへ。お待ちしておりました、さあどうぞ」

 

うやうやしく、イゴールさんたちが一礼した。

 

「絶望の淵にあっても、陽の光は等しく美しいものだ」

 

ベラドンナさんが伴奏にあわせて歌い出し、私はイゴールさんに悪魔絵師のところに案内された。

 

「君のシャドウはジョーカーの残党をこの街に誘導して、手助けしている疑いがある。部下達を引き連れているシャドウが数多く目撃されている。気をつけたまえ。誰かを人質にとられて致し方なく案内し、そのまま情報源として拉致された訳ではないはずだ。君はシャドウを追い、ペルソナにしなければならない」

 

「ジョーカー?」

 

「わたくしめをお作りくださった上位の存在の宿命の敵でございました」

 

「やばいってことはよくわかったよ」

 

悪魔絵師は話を続ける。

 

被害状況は民間人の廃人化が3名、八十神稲羽市全域の異界化の深刻化、そしてグリムリーパーや悪魔の出現によるシャドウ狩り、ペルソナ狩りの誘発。やはり私のシャドウの活動による余波は大きいらしい。

 

「君は相当気に入られたようだね、カンナギアキラくん。なに、気にすることはない。いつも自分の手に負えることばかりじゃない。僕たちだって、今回だいぶ遅れをとるミスをした。ミスは誰にでもある。そう思い詰める必要はどこにもないよ」

 

「でも嫌です」

 

「ミスした人間を慰めるために人員を割くのはそれこそ取り返しがつかなくなるが、それでもかい?」

 

「いやです」

 

「───────なるほど、ならば後悔は人を救いながら勝手にするといい」

 

「!」

 

「取引をしようじゃないか、カンナギアキラくん。僕たちはかつて、平行世界の誰かが良かれと思ってやったせいで、救いたい人がさらに過酷な運命を辿ってしまったことがある」

 

「経験済みってことですか、随分慰め方が手慣れてると思ったら」

 

「あの時はフィレモンがいたからよかったが、今は長らく不在だ。きみ達が背負うにはあまりにも過酷すぎる運命だからね、ささやかながら力を貸してあげようじゃないか」

 

「私のペルソナのことをいってますか」

 

「そうだとも。君が本当に絶望した時だけそれは発動するだろうさ。今の君なら3日が限界だが、その3日を生贄にささげることで君はやり直しができる。もう一度ができる」

 

「......私が1月から3月までの記憶がすっぽ抜けてるのは」

 

「本来ペルソナになるべき存在をきみが拒否していること、そしてジョーカーの残党と契約したシャドウがその力を使いこなし、君をこの世界に閉じ込めるべく暗躍しているからさ」

 

「直接苦しませようとしないのは、シャドウ的には今の私のやり方は気に入ってるってことですか」

 

「世界が違ってもカンナギアキラくんだからね、君が一番よくわかっているんじゃないかな?」

 

私は唇を噛んだ。その通りだからだ。

 

「君の特化能力は、任意の人格をもう一度やり直すために身体に移す力だ。だが大いなる流れに逆らうことができない。あくまでも人格だけだ。上書きしかできない。本来の人格をシャドウとして追い出し、あとからペルソナとして取り込むことで同一性を保っている。そうすれば同一人物とはいえ殺人のパラドックスからは逃れることが可能だ」

 

「ほんとに、あとはわたしが受け入れるだけなんですね。準備万端て感じ」

 

悪魔絵師はうなずいた。

 

「本当に余計なお世話すぎる......絆されつつあるのがむかつく......そんなに私の人生はやり直しさせてあげたいくらい悲惨だっていいたいのか?それこそ余計なお世話だ」

 

ため息しかでてこない。

 

「全ての始まりはそうなんだろうね。自ら裏切ったにしろ、拉致されたにしろ、こちらをどれくらい把握しているかは、実際に会って話してみないとわからないものだ」

 

「わかりました、私はシャドウをペルソナにしなきゃならないわけだ。私のせいで廃人化の被害が拡大するっていうなら、あーだこーだの言ってられないってわけだ。私は耐えられない。それすら折り込み済みなんて酷すぎる」

 

「そうだね、カンナギアキラくんのシャドウだから、君が一番嫌いなことをしてくるんだ。シャドウとはそういうものだよ」

 

「最悪だ......そのナチュラルな上から目線とか、世界を軽く見てるあたりが、若い時の私そっくり」

 

私の手にはいつのまにか一枚のカードがある。キラキラ光っていて絵柄はわからない。

 

「これからも廃人化の犠牲者が増えるなら、私はそれを止めなきゃならない。私が受け入れなきゃ、敵が状況を悪化させるってなら、私は受け入れなきゃならない。そのためにこの世界で生きていなきゃならないってなら、上等だ。その挑発に乗ってやろうじゃないか、私は私のせいで酷い目に遭う犠牲者が出ることに耐えられるほど堕ちてない!!」

 

カードが回転する。そして私の真ん前にやってくる。絵柄が今までと違う。3人の女神に閉じ込められた時計のような絵柄だ。ただ、1人だけ黒塗りになっているから、ここにいるべきシャドウを捕まえてペルソナにしなきゃならないようだ。

 

「いいかい、アキラくん。時を戻す魔法は、不利になる前に戻らないと意味がない。なにせいくらやり直せるとしても、詰んでいたら意味がないからだ。万能ではないから注意してくれたまえ。やり直しても生きるのが苦痛になっては意味がないからね。次はもう少し、まわりの力を借りてみたらどうだろうか」

 

わたしはうなずいた。

 

「哮ろ(たけろ)魔人クロノス!!」

 

雪子

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