(更新停止)果てしなく続く坂道の途中で(ペルソナ4)   作:アズマケイ

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第66話

「嘘だろッ!?」

 

月森はやってしまった、という罪悪感でいっぱいだった。アキラの期待を裏切ってしまったという絶望感が全てを押し潰してしまった。月森は視界が真っ黒に塗りつぶされ、もう2度と目覚めたくないとすら思った。

 

しかし、気づいたら3日前の朝に戻っていた。意味がわからなかった。夢かと思ったが、いつまでも醒めない。ふわふわした気持ちはやがてソワソワにかわり、朝の支度をいつもより早く終わらせて、いつもより早く登校した。

 

そして商店街の外れにあるバス停目指して歩いた。アキラが乗っているであろうバス停前で待っていた。

 

仲間の中でまだシャドウをペルソナにしていないのはアキラだけだ。時間を巻き戻すなんてとんでもないことができるのは、ペルソナ以外考えられなかった。

 

バスから降りてきたアキラもまた、ソワソワした顔をしていた。 ああ、一人で時間遡行したわけじゃないんだと安心したことを月森は覚えている。

 

「おはよう、アキラ。なにかしたか?3日前に戻ってるんだけど」

 

アキラは真剣な顔をしてうなずいた。月森だけが気づいていることを気にもしていないようだった。あたりまえ、みたいな顔をして対応された。これが月森だけに与えられた、愚者の力なのだろうか。

 

「私のペルソナ、やっと発動したみたいだ。《魔人クロノス》っていうんだけど、私が絶望した時だけ発動できて、3日前まで人格だけもどせる。本来の人格はシャドウにしておいだして、あとからペルソナにして同一性を保ってるらしい。なんでか月森はもうできてるみたいだけど。すごいな」

 

「じゃあ、シャドウを探さないといけないのか?」

 

「いや、悪魔絵師さんが手伝ってくれてカードにしてくれた。色々あったけど、ようやく覚悟が決まった。シャドウがやっとペルソナになった」

 

「じゃあ、クマといるアキラのシャドウは......」

 

「これになった。黒塗りをこれから探しに行かなきゃならないわけだ」

 

「なるほど」

 

「月森が気づいてくれてよかった、心強いよ。お互い頑張ろう。まあ、ほとんど悪魔絵師さんの受け売りなんだけどね」

 

「それでもいいよ、頑張ろう」

 

「月森、とりあえず、飯田先輩のことは私に任せてくれるか?あと話さないといけないことがあるから、神社に行こうか。あそこなら人目を気にしなくていいから」

 

「そうだな、おれもキツネに報告したいことがあるんだ」

 

「......キツネ?」

 

「そう、キツネ。あそこに棲みついてるみたいだ」

 

「......ほんとに誰とでも仲良くなれるんだな、月森は」

 

不意打ちだったのか、思わず素で笑ってしまったアキラに、月森は得意げにドヤ顔した。いやなんでそんな自信満々なんだよとつっこまれた。

 

神社までの道すがら、月森はアキラと互いに情報共有して、かかえおちをもうしないことを誓いあった。互いに何かしらの取りこぼしがあったから間に合わなかったことがよくわかったからだ。

 

敵は明らかにカンナギアキラを犯人にしたてあげたがっていて、廃人の犠牲者を増やしたいのはたしかだ。

 

「イゴールに頼んで、ペルソナ使いの大人達に選挙の候補者達守ってもらえないか、頼んでみるか」

 

目から鱗、という顔をするアキラだったが、すぐ笑顔になった。

 

「そうだな、前は私達でなんとかしようとして失敗したんだから、次は手伝ってもらおうか!」

 

神社についた月森とアキラはいろんな話をした。

 

思えば月森をリーダーとして、副隊長はムードメーカーの花村とするなら、書記というか情報を整理する役目はいつもアキラだった。

 

一番最初に月森が助けた仲間だし、一番最初にマヨナカテレビに入ったであろう被害者だし、犯人がどういうわけか、カンナギアキラを首謀者にしたてあげたがっている。ずっとアキラは何かしらの中心にいた。

 

最近は性同一性障害で半陰陽で17という中途半端な年齢ゆえに、色々と悩み事が多いのか、諸岡先生によく相談していた。プライベートすぎて職員室の応接室にいるのをよく見かけたから、みんな気を遣って集まりをあまりしないようにしていたのだ。アキラがいないと締まらないところがあったし、見張りだけで実際動きがなにもなさすぎて報告すらあげることもなかったから間違った判断とは月森は思ってない。

 

「よかった、すれ違いだったんだな」

 

「え?」

 

「ほら、月森が転校前の電車の中で、予知夢を見たっていってただろ?実は私もみたんだよ、諸岡先生があいつに殺される夢、逆さ吊りだった。マヨナカテレビじゃなくて、こちらの世界で殺される夢。嫌にリアルで」

 

「それほんとか!?いってくれたらよかったのに」

 

「月森しか信じてくれないと思ったからやめたんだ。実際、あの予知夢、私のことがあってもみんな半信半疑だっただろ?」

 

「次からはおれだけでもいいから、教えてくれ」

 

「うん、次からそうするよ。お互いの気遣いが空回りしたパターンだとわかってよかった。次はうまくやろう、月森」

 

「そうだな」

 

「後悔は誰かを救いながらしろって悪魔絵師さんに言われちゃったからね、私は頑張るよ。月森、付き合ってくれるか、うまくいくまで」

 

「もちろん」

 

こうして、月森とアキラの3日前は幕を開けたのである。

 

私達の話し合いが終わるまで待っていてくれたキツネは本当に賢い子だ。私達の足元をクルクル回り、奥に促すように頭をつけてくる。

 

「?」

 

「どうした?絵馬はさっきもらったしな......」

 

よくわからないまま案内された先には、神社の奥の祭り事の全てをしまってあると思われる倉庫だった。

 

「なんだこれ!?」

 

「ひどいな......」

 

無理やり錠前を切断し、木製の扉を破壊し、中に入ってあらゆるものをひっくり返し、ぐちゃぐちゃに散乱したものが散らばっていた。そのまま放置されていたようで、昨日の雨でぐちゃぐちゃだ。

 

「おまえさん達は?」

 

ビクッとして顔を上げると、ひとりの老人がiphoneで写真をとりながら、誰かと電話をしていたところだった。

 

「もしかして、飯田先輩のおじいさん......?」

 

「おお、うちの孫のこれかい?」

 

「いえ、その......ごめんなさい」

 

はっはっは、と小指をたてながらニヤニヤし始めた。何というか古い。感性が昭和だ。

 

「すまんなあ、この有様だ。今年の祭りに間に合うかわからん。下手したら最悪中止だ」

 

ためいきが重い。

 

「50年ぶりじゃな、こんなにひどいのは」

 

月森は信心深いつもりはないけれど、祭りに必要なものを中心に盗まれた挙句。近くの池にめちゃくちゃにされた状態でぶちこまれ。石を乗っけてまで水没させられていたと聞かされたら。嫌な気分になるくらいは日本人だと自覚するに至る。

 

「また霧がごちゃごちゃ外から来た連中がいうだろうが、大丈夫。わしらがちゃんと守ってやるからな、祟りなんかじゃない。安心して学校に行きなさい。心配なんかせんでいいよ。わしらが17のときは、大人をみんな戦争にとられていたから、自分たちでなんとかするしかなかったからな。今は違う」

 

おじいさんは学校に行くよう促してくる。月森たちは学校にいくことにした。

 

「なあ、月森」

 

「うん?」

 

「今思ったんだけど、50年ごとにマヨナカラジオがあるなら、1961年にあったんだよな?」

 

「あー、うん、たしかに。そうなるな」

 

「じゃあ、みんな10代だとしたら、みんな戦中、あるいは戦後直後生まれになるのか?」

 

「......廃人になった飯田先輩のおじいさんてもささかして......」

 

「頑張ろう、月森」

 

「ああ」

 

 

 

 

 

 

 

全てはどこかしらで繋がっているのかもしれない。

 

3日前に時間遡行した私達は、諸岡先生の殺人未遂事件の現場に運良く居合わせることができ、すぐさま犯人を取り押さえた。

 

そして、すぐさま警察と救急車を呼ぶよう通りかかった足立刑事に訴えた。諸岡先生の教え子だと訴えたら、効果はテキメンで、近所の人も協力してくれた。足立刑事から堂島さんに連絡がいき、私達はすぐに解放された。

 

その日のうちに私達はジュネスにいって、突然カンナギアキラのシャドウが消失して寂しんボーイであろうクマに会いにいったのだ。そしたら、キツネと飯田先輩のおじいさんと飯田先輩が押しかけてきたからどうにかしてくれ、おいおいと全力で泣かれた。

 

花村がクマを引き取ることになり、陽一さんのところに直談判にいっている間に、話を聞くけとになった。主にマヨナカテレビに入るのは初めてなはずの飯田先輩達がなぜクマがいるスタジオに行けたのか。いつものごとく、スタッフ以外立ち入り禁止の一室を借りてである。

 

犯人の手口は同じだった。白昼堂々と宅配便のフリをして飯田先輩が拉致され、テレビに突き落とされた。それをみて、キツネがあわてておじいさんを呼びに行き、ひとりと1匹は飯田先輩を追いかけて、キツネが誘導する形で自宅のマヨナカテレビに侵入したらしい。

 

どこかでみたことがある光景だと苦々しげに語り、50年前の安全地帯は霧が薄い場所だという記憶を頼りに、おじいさんはスタジオまでこれたそうだ。迷わないようにキツネを先頭にして、飯田先輩の手を引いて走ったそうだ。

 

「ここ、なんだよ、じいちゃん」

 

「わからん。わしらも最後までわからんままだった。わかるのは、50年ごとにこの街は霧に飲まれそうになり、それを止めるやつらがいたということだけじゃ。リーダーは今市長をやっとる」

 

「えっ、そうなのか!?」

 

「わしらだけの秘密じゃ、誰にもいうんじゃないぞ。おまえが狙われたのは、わしらを誘き出すためだろうからな」

 

「わ、わかった......」

 

「君らは誰クマー!?アキちゃんはいなくなっちゃうし、シャドウは暴れてるし、クマ困ってるのに、また問題発生とか勘弁して欲しいクマー!!」

 

「ジュネスのマスコットがなんでここにいるんだよ!?」

 

「今回の案内役はおまえか、名前は?」

 

「え、あ、クマはクマくま!」

 

「クマ公か。じゃあ、しばらく世話になるぞ、クマ公」

 

「勝手に居座られちゃ困るクマー!!」

 

「嫌なら今、マヨナカラジオ......いや、マヨナカテレビを追っかけてる奴らをよんでこい、今すぐな」

 

「わかったクマ!」

 

こうして、飯田先輩達は無事に現実世界に帰ってくることができたらしかった。

 

「お前さんたちは......やっぱりそうじゃったか......」

 

月森と私をみて、おじいさんは笑っている。

 

「イゴールから言われて、別件でわしらは動いとるからな、力にはなれん。だが頑張れ。この街は50年周期でなにか大きな決断をせまられてきた歴史がある。なにかはわからんが」

 

とりあえず、選挙は無事に終わり、なにごともなくポスターは片付けられることになる。市長は続投で、生田目秘書の不祥事に巻き込まれた市議の代わりに、別の市議が当選したのは別の話だ。

 

「50年周期で定期的に......」

 

月森は難しい顔をしている。

 

「歴史について知りたかったら、図書館に行くといい。わしらの独自研究じゃが、寄稿した自費出版の本があるはずじゃ。飯田のじいさんがといえば司書の人はわかってくれるじゃろう。あとは、そのiphoneで熊野古道について調べてみるといい。その歴史もな。おかしくなり始めたのは、神仏分離で神社から御神体があの山の上に移設してからだというのはわかっとる。信仰が引き裂かれてしまったんじゃな」

 

私達は早速調べてみることにした。

 

「何にもないところだと思ってたけど、結構すごい神話あるんだね、ここ」

 

「なんで世界遺産から外されたんだろ?」

 

「さあ?」

 

「それはわしらが反対したからじゃ、仏様はそんなことせんが、神様は祟るからのう」

 

雪子

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