料理同好会に仮入部を決めた日の夜、野井弘隆は頭を抱えていた
「あのさぁ、一也が朴念仁なのは今に始まった事ではない。無いけど、さぁ。限度があるだろ!
何?一年に手を出して、新見さんと仲良くして、間咲とも仲良くする?
無理ゲー乙」
先程まで、親友?の前田一也と電話で話をしていた
一年の実原と早倉と話をした。で、写真も撮った
新見さんと間咲とも話をして写真を撮った
で放課後は新見さんと下校したらしい
知らないとはいえ、酷な事をすると野井は思う
一年の二人は知らないが、新見さんは一也との関係をサッカーしていた頃の様に戻したいそうだ。つか、見てれば解る
サッカーを止めてからも新見さんは時々一也を見ていた。寂しそうに
正直なところ見ている此方も辛くなりそうな程沈痛な面持ちだった
中学に入る頃には新見さんは元々の面倒見の良さも手伝ってか、女子の中心的人物となっていった
一也は部活もせずに、ビリヤード、ダーツ、ボーリング等の趣味に没頭していた
まるで自分に合うものを探しているかの様に
才色兼備の新見さんと傍目凡庸に見える一也。何も知らない連中は事有る毎に「釣り合いがとれない」等と言っていた
しかも新見さんからは見えない様に一也にだけ
まぁ、望んでもない人気者となってしまった新見さんの為をそいつ等なりに心配していたのだろうが
中学の頃に一度だけ新見さんと一也の関係が修復出来そうな時があったにも関わらず、周りの雑音に邪魔される結果となった
自信を持てない一也も悪いのかも知れないが、それでも幼馴染みとして新見さんと一也を応援したい
まぁ、俺自身も新見さんは初恋であったが、今はもう諦めている。残念な事だが、一也には勝てないのは小学校の時から見ている俺にはいやでも解る
実のところは踏ん切りをつけるために小学校卒業の時に告白したが、新見さんの辛そうな表情を見て諦めただけだが
間咲は中学の時に俺と一也と一緒に行動する事が多かった
良くも悪くも表裏の無い性格で、周りの意見よりも自分の意思を貫く男前な奴だった
一也は近くに居れば良さの解る人間だから、間咲が惚れるのも無理ない話ではある
正直な話、間咲を女友達として見てはいても異性としては一也は見ていないと思う
かといって間咲が女としての魅力が無いわけでは決してない。人付き合いや人の良さは間違いなく好かれるだろうし、運動神経、スタイルも良し。欠点があるとしても些か勉学は苦手としている程度である
唯、一也の初恋が新見さんでアイツは新見さんを意識しないようにしているが、 やはり無理な話のようだ
その新見さんと間咲を同じ日に一也は話をしたりした?
間咲は新見さんと仲良くしているが、常に女らしい新見さんへの引け目を感じているのだが、一也自身がいっぱいいっぱいなので分からないのだろう
仮に間咲が一也に意識されるには過剰なスキンシップが有効だろうとは思う
というか、一也だけにくっついとけ、と言いたい
下手に俺に絡まれて間咲の真意が誤解や邪推されても困る
間咲には悪いが、俺はそういう感情を間咲に抱かない
前述の通り間咲は間違いなく優良物件ではある。だが生憎と俺は貧乳至上主義者。一也の様に巨乳主義ではないのだ
この点については如何に親友とも言える一也相手にも退くつもりはなく、お互いに不干渉との取り決めをしている
ま、そういう意味では一年の早倉さんや生徒会長などが俺の好みではあるのだが、自他共に認めるチキンな俺にはアクションを起こす度胸はない
正直なところ料理同好会の部長、柚ノ木さんもスタイルや(顔面)偏差値から言っても苦手ではある。が、間咲の頼みである事と将来の独り暮らしに必要な料理スキルの会得の為の決断ではあった
「何、ぶつぶつ言ってんのよ。あと、うるさい」
弘隆の部屋に入っていきなり弘隆を非難したのは彼の姉であった
「つか、アンタも果音ちゃんの頼みだからって不得意な裁縫の話なんか受けない様にしなさいよ
態々私がやらなきゃならないんだし」
「いや、悪いとは思ってるよ。けどよ、お菓子づくりにしょっちゅう協力してんだからたまには手伝ってくれてもいいじゃねぇかよ」
一也の学校内での動向を調べる為に一也の妹である前田果音に協力を頼んだ
彼女は早倉さんと同じクラスで『一年のマイカノ』と呼ばれる位に仲が良い
更には新見さんの所属する女子テニス部に所属しており、新見さんとの仲も良好である
どちらにも手が届く果音ちゃんの協力を弘隆が考えるのは自然であった
そのかわりに衣装の作成を頼まれたのは仕方ない事と言えた
そもそも果音自身も弘隆が裁縫を得意としていない事は理解していた上で依頼したのだが。彼の姉ならば衣装作成も得意な上に他校の手芸部に在籍していた
弘隆を通じて彼の姉に依頼した訳だ
「それ言われると返す言葉もないけどね
というか、聞きなさいよ」
「愚痴?」
「あのバカの彼女、随分と猫を被っているみたいで腹が立つのよ」
「ん?ああ、橘の兄貴の?」
「そうよ。ついでにあのバカの周りは騒がしいから、私達にも話が流れてくるのよ」
「なんか不名誉な渾名があるとか言ってなかったけ?」
「『変態紳士』ね。私もはるかの奴がずれてるから耐性はついていると思ってたんだけど、ね」
「あれか?そっちの学校では奇行が流行ってんの?」
「やめなさい。そんな恐ろしい事があるわけない、じゃない?」
「何故に疑問系?」
「確かにはるかは変わっているし、はるかが好きな男子どもは割と変態チック。え?うちの学年、ヤバイの?
いやいや、響がいるから大丈夫、よね?」
なお、他学年は見なかった児とにするらしい
「姉貴、悪かった」
「深く考えるのは止めておくわ。何か色々と自爆しそうだし」
「で、兄貴の彼女だっけ?
確かに隠してる本性みたいなのはあったけど、いいんじゃねぇ?
大方橘の兄貴がいつもの様に裏目を引いただけの様に見えたけどな。あの人、好い人なんだけど間が悪いとしかいえない部分があったからなぁ」
「そういえば、誰かが言っていたわね。あのバカ、水泳部の活動を覗き見していたとか何とか」
「え、ガチでヤバくないか、それ」
荒ぶる姉を落ち着かせたら、従兄弟のトンでも行為が発覚してしまったので弘隆もドン引きしてしまう
「らしいわよ。尤も響が見逃したみたいだけど
ああ、妹の美也ちゃんは可愛いんだけどね。何であんなに変態なのかしらね
というか、同い年なのに今も兄貴呼びしてるの?」
「美也ちゃんについては、同意する。兄貴が変態?なのは認めたくないけども
まぁ、数ヶ月は先に兄貴が生まれてるし」
「はぁ。現実は残酷なのよ
ところで、果音ちゃんの頼みとかアンタ何してるのよ?」
「一也と新見さんの件で少々」
「一也?ああ、果音ちゃんの兄貴よね。ん、新見さん?」
「サッカー昔一緒にしてたっしょ」
「?ああ!あの娘ね
全く会わなくなったけど、綺麗になったでしょうね
あの頃は男の子と変わらなかったけど」
その後暫く話をしていた
「しっかし、アンタもいい加減彼女つくればいいのに」
「その言葉、ブーメランになるだろ?」
「いや、周りが(顔面)偏差値高いせいでキッツイわ」
「(顔面)偏差値かぁ。富の偏在も甚だしい
つか、姉貴に好い人はいないのかよ?」
「それ以上言うなら覚悟しなさいよ?」
彼女は笑っているように見えるが、目は笑っていなかった
「アッハイ」
「うちの学校は同学年の連中は頭のネジの外れた変態候補が多いのよ
この前、告白されたんだけどね、その時に言われたのが「毎日罵って下さい」よ?幾ら外面がよくても、ね」
「う、わぁ」
彼女は学校でも割とサバサバとした性格であり、頼りになるところから、同学年の女子からは『姐さん』。下級生からは『姉御』、『お姉様』等とよばれている
なお、彼女は知る由もないが、一部の男子からは『おっぱいのついたイケメン』やら『ミスドS』等とよばれており、M男から熱狂的な支持を集めていたりする
故に彼女に告白する男子は控え目に言って『個性的』な男子になっていたりもする
「ま、姉貴ならば仕方ない」
「何?何か言いたいのならきちんと言いなさいよ」
「いや、何でも
ま、姉貴と兄貴の彼女は合わないよな」
「第一、何でアンタや私に話をするのよ?
私達はあのバカの従兄弟であってもそれ以上ではないのに」
「姉貴は同じ学校だからでは?
俺は偶々会っただけだし」
「・・・ま、いいわ。アンタもしっかりやりなさいよ
せめて部活に入るなり」
「あ、料理同好会に入りましたが、何か?」
「は?料理同好会?
部活じゃなくて?
というか、アンタ剣道やらないの?折角一式揃えたのに」
「・・・色々とあったのさ」
「そう。何か困ったことが出来たら相談しなさいよ
んじゃ、おやすみ」
「おやすみ、姉貴」
今回は主人公の周囲の環境確認回になりました
なお、年齢順に姉(高三)、橘さん(高二)、弘隆(高二)、美也(高一)となります
橘さんはパッケージヒロインルートとなっておりますのでご了承ください
では御一読ありがとうございました