私、野井弘隆はチキンである
今までの出会った女子の中で気軽に付き合えるのは、親友の前田一也の妹である前田果音ちゃんのみである
小3の頃までサッカーをしていた新見さんは?等と聞かれる事も無くはないが、敢えて言わせて貰うならば彼女が私の初恋の相手である
緊張しないはずもないし、一也がいなければ会話すら覚束なかったのが私だ
それなりに仲良くなったとても、やはり一也が居ないときの新見さんとの会話は緊張の為かぎこちなかったと思う
あの時の新見さんの悲しそうな顔は今でも忘れられない
そしてあの事件である
事件というには大袈裟というやも知れんが、当時の私達にとっては間違いなく事件だった
サッカー中に新見さんの胸に一也の肘があたった
言葉にすればそれだけである
だが、成長期を迎えていた私達にとって、いや一也にとってのあの出来事は新見さんを異性として意識したものだったのだろう
元々少し体が弱かった新見さんであったが、別段サッカーをする上で支障になることはなかった
しかし、一也はそれ以来新見さんとのサッカーはおろか、サッカー自体を辞めてしまった
それに当時の私も続いた訳である。正直に言えば、新見さんとサッカーを続けたくはあったが、一也抜きで新見さんと付き合えるとは思えなかった
言い訳かも知れないな。結局私は新見さんと向き合う事が出来なかった。勇気が無かったのだ
それからというものの、私は一也や果音ちゃんといった人間以外との関係は必要以上にしなくなった
そして、新見さんはサッカーを辞めて以来益々魅力的になっていった
嬉しくもあり、悲しくもあったが
初恋の女の子がどんどん魅力的になるのは嬉しかった。だが、彼女の視線の先には常に一也がいた
一也は新見さんに引け目を感じたらしく、新見さんの必死のアピールからも目を背けた
それだけならば、私や果音ちゃんがどうにか出来たかも知れないが、新見さんの周りの女子や新見さん狙いの男子が新見さんと一也を引き離しにかかった
そして、私はそんな一也を見ているだけだった
一也の理解者のふりをしながら、内心ではこのまま新見さんと疎遠になって欲しいという浅ましい私がいた
そして、新見さんに小学校卒業前に告白した
大袈裟ではなく、一世一代の告白だったと今でも思っている
だが、答えは困った様な泣きそうな新見さんの顔だった
私を傷つけたくない。でも嘘は言えない
そんな表情だった
正直な話、私とて成功するとは殆んど思っていなかった
だが、断りの返事すら与えられず、それでも新見さんの内心が解ってしまう自分が嫌になった
卒業前とはいえ、連休前で良かったと思っている
でなくば、一也に当たり散らしていたのは間違いなかっただろうから
その後は中学に上がり、新見さんはテニスを始め益々人気を集め、俺と一也は間咲ののかと一緒にダーツ、ビリヤード、 ボーリング等をしていた
虚しくないと言えば嘘であった
そして、ある日の事である
とある日にある男子は一也に言い放った
「お前、新見さんの何なんだよ!
何の取り柄もないお前と新見さんじゃ釣り合わないんだよ!」
と
一也は言い返す事なくその場を去った
「何だよ、アイツ」
勝ち誇ったかの様に言うソイツと一也を笑う周りの女子達
限界だった
気がつけば俺はふざけた事を言っていた奴と周りの女子をボコボコにしていた
その後、俺は停学処分を受ける事になった
ボコった奴と一部の女子は俺の停学処分が解ける時には学校を去っていたらしいが、どうでも良かった
そんな勝手な男なのだ、野井弘隆という人間は
というにも関わらず
「という訳なの、野井君どうしたらいいと思う?」
知りません(白目)
絶賛俺はピンチであった
何がピンチって?貧乳党としてのだよ!
「弘やん、ちゃんとりなちーの話聞いてたの?」
ええい!間咲ののか、聞いていたわ!多分、きっと、メイビー
だから、寄るな、触るな、近づくなぁぁぁぁっ!
貴様も柚ノ木さんも貧乳であるまいがぁっ!
現在は昼休み
場所は家庭科室
状況は柚ノ木梨奈と間咲ののかとお話し中
誰かボスケテ
ええい!一也!一也型防壁は何処行きおった!
たまには助けろよ、親友!
なおその親友は妹と昼御飯の模様であった事を後に知ったが
「つまりは新入部員が欲しい訳だな、柚ノ木さん?」
辛うじて再起動した弘隆は柚ノ木さんに確認する
「えっと、そうかな
私としては野井君がいるだけでも良いと思うけど」
ヨクアリマセン、ハヤクサガシテ(白目)
「でもりなちー、やっぱり女子も居ないと大変だよ?」
うし、良くぞ言った間咲ののか
流石はおっぱいのついたイケメン二号だな!
何処かのヘタレとは比べ物にならんくらい頼りになる!
「でも、野井君って何だかんだ言ってるけど優しいし
ののちゃんが言っていた通りだったわ」
ん?間咲、ナニヲイッタァ?
「あははは、別に変なこと言ってないから、そんな怖い顔しなくていいと思うよ?」
本当だな?
「弘やんが優しいって事位しか言ってないよ」
「ののちゃんが言うように野井君ってキチンとお話ししないと良さが解らない人よね」
「だよねー、弘やん怖がる人多いけどさ、そこまで理不尽な事してないのにね」
はいはい、話を元に戻すぞ
時間は有限だからな
「「はーい」」
俺としては、やはり何らかの目に見える形を示すべきだと考えるが?
「目に見える形?」
そうだな。現状ではこの料理同好会の活動内容も見えてこない。一応ホームページがあるとはいっても、学内の人間が態々ホームページを確認するとは考えにくいだろう?
「うーん、そうかも知れないけどさ。弘やんは大会とかに出た方が良いって思ってるの?」
それは柚ノ木さん次第だろうな
料理同好会に何を求めるのか?
皆で楽しく料理をつくりたいのか?大会とかに出ようとするのか?
それいかんで部員募集の方法も変わるだろう
「私は皆で楽しくお料理が出来ればっておもってるのだけど」
であるならば、柚ノ木さんが楽しそうに料理している様を伝えるべきか
「でもさ、弘やん。それだけだと足りなくない?」
ん?どういう事だ、間咲
「確かにりなちーは楽しそうに料理するけど、りなちー一人だよ?
どうしてもりなちーの手際のよさから入部するのを躊躇わないかな」
確かにな。柚ノ木さんの手際の良さは半端ない
それにいきなりついていくのはかなりハードルが高いか
「うん、私は食べる専門だけど、りなちーの料理をつくるスピードが凄いこと位はわかるからね」
ではどうするべきか
何も問題なければ、フォト部の紅林先輩にでも頼もうと思っていたのだが
「え?フォト部」
「弘やんの人脈は相変わらず広いねえ」
まぁ、色々とあってな
フォト部の紅林かつみ先輩との出会いは、生徒会長である室戸先輩が水泳部であった事に起因する
去年、我が姉と親交のある塚原響先輩の応援に出かけた時の事である
一応光河学園の生徒である俺だが、姉を通じて塚原先輩と知り合い、色々と話を聞いて貰っていた事もあり、輝日東高校生徒である塚原先輩を応援すべく、姉についていった
そこで室戸先輩と紅林先輩、九堂先輩にあった訳だ
紆余曲折ありはしたが、三人の先輩と知り合えた
故にこの程度ならば頼んだとて受け入れられる公算はあると踏んでいた
紅林先輩は面倒見が良く、貧乳党の俺であっても付き合いが出来る人だ
言うまでもないが、室戸先輩は貧乳党の俺にとっては聖人に等しく、仮に今年も水泳を続けておられたならば、塚原先輩と室戸先輩どちらを応援するか真剣に悩んだであろう事は間違いないだろう
勿論、その魅惑のボディを水泳において存分に堪能したい気持ちもあるが、俺は従兄弟の橘の兄貴の様にはっちゃける事は出来ない
というか、はっちゃけたが最後、我が姉に(精神的に)殺られる未来しか見えない
橘の兄貴が今のところ生き残っているのは兄貴の妹の美也ちゃんの存在によるところが大きい
姉貴は果音ちゃんや美也ちゃんといった素直な年下の人間には弱いからなぁ
ま、何だかんだ言っても兄貴の事を認めてはいると思うが。兄貴の彼女については関わりたくないらしい
どうやら、裏表の差が激しい御仁の様だしな、兄貴の彼女さんは
全部を語るわけにはいかないので要点のみを説明すると
「そうなんだ」
「でも、弘やんが水泳に興味あったなんて知らなかったな」
興味あるわけではないが、塚原先輩を応援する事位はするさ
その結果宜しくない風評が立とうとも気にする積もりもないし
兄貴の様に『変態紳士』とか呼ばれたら流石にキツいだろうが
?うちの写真部と兄貴を会わせたらどうなるだろうか?
止めとこう。明らかに会わせたが最後、面倒ごとにしかならない気しかしない
とりあえず柚ノ木さんの意思を確認した後に行動を決める。という結論に至った
塚原響は少し困っていた
友人の野井恭子、彼女の一つ下の弟である野井弘隆君
去年恭子の家に行った際に少し相談にのったのだが、その事に恩を感じたのか、水泳の大会へ応援に来てくれた。その事自体は響としても嬉しかったが、彼の通う光河学園の人間を放ってまで応援されたのには正直驚くしかなかった
とはいっても、それ以降は恭子が止めたのか応援にも来なくなったし、それでも彼とは恭子の家でたまに話をしている
それ自体に問題はない
だが、親友の森島はるかがこの話をどこから聞いたのか、響にしきりに話を振ってくるのだ
恭子と一緒に疚しい事はないと言っているのだが、元々恋愛に興味のあるはるかが退くわけもなかった
恭子は弟の弘隆君に否定させればいいと言ってはいるが、態々こんな用事の為に最近忙しくしている彼を振り回したくはない
では二年の従兄弟でもある橘君に彼の事を話して貰うのが手っ取り早くはあるが、はるかとしても少なからず気にしていた橘君と会わせるのも気が咎めた
どうしたものかと、塚原響は悩む
柚ノ木梨奈は自宅にて昼休みの事を思い返していた
野井弘隆君
彼は梨奈の無理なお願いを聞いてくれた
別に今まで付き合いがあった訳でもない、唯の同級生の頼みを、だ
確かに梨奈と彼の共通の友人である間咲ののかに仲立ちして貰いはしたが、彼にとっては無理難題であった事は間違いなかった筈
他の部員が入るまでと条件をつけたのも彼なりの誠意だと梨奈は考えていた
ののちゃんが言うには彼はへそ曲がりであり、何をするにも小難しい理由を必要とするらしかった
でもそんな彼の話をするののちゃんは嬉しそうだった
今回だってまだ突然入部してから二日目にも関わらず、彼は部員を集めるための提案をしてくれた
しかも、部長である梨奈の気持ちを優先してくれたのだ
咄嗟に彼がいるから今のままでいいと言ったのは梨奈の偽らざる気持ちだった
彼が料理同好会に入ってからは昼休みと放課後が楽しみになってきた梨奈であった
次の日、前田一也と新見遙佳の間に何かあったと噂になってしまう
これより、弘隆と一也の周りは一気に変化する事になるが、それはまた次回に
資料が紛失した形ではありますが、完結させますので宜しければお付き合いいただけたなら嬉しく思います