暇潰しにでもどうぞ
野井弘隆は黙っていた
友人である前田一也が受けた事について一也自身から聞いた、その時から
「お、おい」
前田一也は焦っていた
今日、学校へと早めに登校したのだが、クラスメートの女子たちの話を聞いて確かに落ち込みはした
要約すると新見さんと俺では『釣り合わない』
そういう事だ
解っている、別に誰に指摘される迄もなく、彼女と俺で釣り合うなんて露程にも思っていない
解っている
なのに、俺はまた落ち込んでいる
中学の時にも散々言われていた事だ
それでもショックを受ける自分に腹が立っていた
(俺はサッカーを辞めてから、何か出来たか?
勉強もしてない。アイツやののかとしていたボーリングもビリヤードもダーツも長続きしなかった
じゃあ他に何かしたかと聞かれても答えられない
こんなんじゃあ、俺は中学の時と何も変わってないだろう
なのに、何で腹が立つんだよ!)
早朝日課としていた学園内の撮影もそんな精神状態では捗る訳もなく、それがまた俺を苛立たせた
始業ギリギリに教室に戻ったが、そこで弘隆に俺の不調に気付かれてしまった
最初は話す気なんてなかったが、弘隆のそれは質問の様に見えて、尋問だった
というか、眼が笑っていなかったのだ
だから、正直に話したのだが
「・・・・・・・・・・・・」
弘隆の奴は眉間にこれでもかと言わんばかりの皺をよせて、目を閉じて思考に耽っていた
此方からの呼び掛けなど無視である
既にホームルームも始まっており、このままでは一限目に間に合わないと思うのだが
結局、弘隆は少し後に俺を連れて教室に戻った
担任である喜多川先生にはアイツは軽く謝罪していた。何時もなら、それを咎める筈の先生だったが何故か今回だけは「気をつけなさい」の一言で済んだ
弘隆は端的に言ってキレていた
(ふざけやがって、ふざけやがって、ふざけやがって、ふざけやがって、ふざけやがって、ふざけやがって、ふざけやがって、ふざけやがって、ふざけやがって、ふざけやがって、ふざけやがって、ふざけやがって、ふざけやがって、ふざけやがって、ふざけやがって、ふざけやがって、ふざけやがって、ふざけやがって、ふざけやがって、ふざけやがって、ふざけやがって、ふざけやがって、ふざけやがって、ふざけやがって、ふざけやがって、ふざけやがって、ふざけやがって、ふざけやがって、ふざけやがって、ふざけやがって、ふざけやがって、ふざけやがって、フザケンナ!)
内心腸が煮えくり返る程の怒りが弘隆にはあった
釣り合わない?
知るか。アイツはともかく新見さんはそんなことでアイツを諦められる訳がない
どれだけ新見さんがアイツに見てほしかったと思っていやがる!
女らしくなったのだって、アイツがいった「女らしくなったほうが良い」ってのを実践してるに過ぎないってのによ
許されるならば、今すぐにでもそんなふざけた事をのたまった奴等を片付けたい
だが、んな事をすれば俺だけの問題にならない
だから、今は我慢しよう
だが
その日、弘隆は料理同好会には今日だけ参加できない旨を柚ノ木さんに伝えて家路についた
その夜の事
弘隆の姉は自室で頭を悩ませていた
自分につきまとうドMの豚どもの事?
何時もの事である
では変態紳士と名高い従兄弟の事?
あれは私の管轄外である
ならば従兄弟の彼女が気に入らない事?
非常に不愉快であるが、女として彼女の二面性は理解できなくもない。実害がないので、放置一択である
では何に悩むのかと言えば、弟弘隆の事である
アレは学校から真っ直ぐ家に帰宅するなんて殊勝な事などしない
早く家に帰ったとて、誰も家には居ないのだから
寧ろ我が家のルールに則れば洗濯やご飯の仕込み等といった雑作業が待ち受けており、アレは必ずと言って良いほどに寄り道をする
私はそろそろ自活も視野に入れねばならないために、不本意ながらも家事をする事も無くはない
だが、アレが早々に帰宅すると言うのは、それだけアレが面倒事を抱えている事を意味した
とはいっても、アレに直接訊ねるのも気が引けるし、私のキャラでもないだろう
では両親かと問われれば、否と答える他ない
残念ながら私達の両親は仕事は出来ても、家庭の事に関しては期待できないし、期待してない
両親は典型的な仕事人間であり、家庭なんて寝る場所としか考えていないだろう
その癖、世間体だとか言って代々続いていた食料品店を今でも続けている
そんな暇があるなら、もう少しは家庭を見てほしいと彼女は常に思っているか
「どうしたもんかなぁ」
思わずため息が出る
だ弟であるアレがあのままでは間違いなく良くない方向へと突っ走るのは目に見えている。かといって表立って手伝うには私と弟の心の距離は離れすぎていた
いつ暇もならどうにかなろうが、弟の様子を見るにそんな余裕は無さそうであった
「はるかは、駄目ね」
となれば自分の友人しかないのだが、第一候補の森島はるかは駄目であろう
確かにアレとも仲は悪くない。寧ろ良い方だが、現状のアレは間違いなく危険物だ
間違ってもはるかに爆弾処理をさせるのは、アレとはるかのどちらにとっても良くはあるまい
「となると、ひびきかなぁ」
塚原ひびき。私のクラスメートであり、アレが尊敬する数少ない人物
なんだかんだいっても、はるかや私の様な問題人物と付き合っていられる彼女ならばアレの助けにもなるだろう
ひびき自身もアレを気に入っている節もある
「ったく、自分の弟1つどうにも出来ないなんて、姉としてどうなんだか」
私はそうぼやいた後、ひびきに連絡を取るべくら電話を手に取った
同時刻、柚ノ木家にて柚ノ木梨奈は考えていた
今日の料理同好会は梨奈一人であった
というのも、野井君が今日は急用との事で休ませてほしいとの事だったからである
一応食材だけ貰ってしまったが、ののちゃんも来ていなかった為に寂しさを感じてしまった
「せっかく野井君が入ってくれたのに、こんなのじゃ駄目よね」
元々一人きりの同好会だった
本来ならば申請など通る筈もなかったのだが、現生徒会長から許可を得る事が出来た
「でも、なんでののちゃんは顔色悪かったのかな?」
この連絡をしてくれた友人である間咲ののかの顔色は真っ青だった
いくら梨奈が聞いても大丈夫の一点張りだったのは気になったが
「明日は野井君来てくれるかな?」
物事には順序がある
そして何においても原因というものは存在する
誰かの為にしたことが必ずしもその人の為にならない
そういうものなのだ
今回よりフォント機能等を積極的に使おうと思います
見辛い、読みにくい等がございましたら、お気軽に連絡下さい
では読んで頂きありがとうございました