放課後、いつものようにロックロールへ。
「ちわす」
「いらっしゃい、楽郎君」
「どもっす、なんかよさげなの入ってます?」
「君はシャンフロやってても定期的にクソゲーをあさりに来るのね」
あきれ顔でそんなことを言われてしまったが、ライフワークなので仕方がない。
「まあ性分なんで。で、何かあります?」
「んー……まあ、あるっちゃあるんだけどね……」
いつもは売れないクソゲーなんてさっさと放逐したいと言わんばかりにすぐに推してくれる岩巻さんなのだが、今回は妙に言い淀んでいた。
「何か問題が?」
「それがねぇ、ちょっと豪華すぎるのよ」
「豪華……お高いってことですか?」
「まあそれもないわけじゃないけど……『
随分とクソゲーとはかけ離れた、予想だにしなかった言葉に思わず聞き返す。
「シャンフロシステム!? え……それ使ってクソゲーってことはないんじゃ……」
「いや、だから一部よ一部……しかもそれに製作費つぎ込んだせいで他の部分があまあまなの」
「それにしたって……どんなゲームなんですか?」
「これね……一応、部類はギャルゲーになるんだけど、なんでも、本人の記憶から経験なんかを読み取って、性別を入れ替えて成長させたトレースAIとの恋愛ゲームらしいのよ……つまり、もう一人の自分を攻略するゲーム」
ああ、反転した鏡を愛するゲームってことか? こわっ。
「そりゃまた業の深そうな内容で……しかもギャルゲーと言いながら相手は一人……まあ確かにシャンフロシステムならそれくらいできそうっすけど……大丈夫なんです? それ」
「微妙なところね。発売はされてるからある程度申請は通ったとは思うけど、みんなちょっと怖がってる状況ってところかしら。内容も内容だし」
「あー……実際どうなんです? 正直ナルシストくらいしか買わないのでは」
「まあみんなそんな理由で敬遠してるけど、実際の所は過去から性別を入れ替えて成長させてるから、同じ記憶からトレースしても、辿る道とか交友関係とかは変わってくるみたいね。まあ、基本人格が本人であることには違いないけど」
「……まあ確かに性別が違えば作る友達も違ってくるし、話してた内容も違うからある程度の差異が出るってことですか……というかオンライン要素どこですか」
「クリア後にはオンラインで他の誰かのトレースの攻略も出来る」
「うげっ、それはまた……え、っていうかそれって自分の分身を送り出さなきゃいけないってことですか?」
「そこは自分で選べるみたい。自分のトレースを配信するか大事に囲っとくか好きな方選べってことみたいね」
「うへぇ、確かにクソゲー臭すごいっすね……個人情報とかやばくないです? さっき人生もトレースする的なこと言ってましたけど……」
「オンライン配信の場合は流石に考慮はされてるみたいよ。必要以上の過去までは掘り下げない仕様だし、出てくる知人の名前は書き替えられるって話よ? まあ、でもその懸念も出て間もないこのゲームがクソゲー扱いされてる要因の一つでもあるわね」
話を聞く限りかなりのクソゲー臭……うーん……。
「……ちなみにおいくらで?」
「一万九千八百円」
「……シャンフロシステム使ってそれならある意味安価なのか……まあいいや、とりあえずもらいます」
「はい、毎度」
……寛大な心で、そっと閉じて下さい……。