電脳世界で鏡を合わせる   作:蛇ヤミー

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「あ、ほんとに今日も来た」

「今日も……ああ、まあな」

 

 再度ログインすると日付が進んでいた。

 

 そういうシステムか……それに一応、自分で日にちを進めることも出来る仕様もあるな。

 

 カレンダーを見る限り……一か月くらいがリミットか。

 というかこれ夏休み設定か。

 

 それまでに攻略できなければギャルゲーで言うところのバッドエンドってところか?

 この辺は普通のギャルゲーと大差ないな。

 

 まあ、ラブクロックほどの面倒さはなさそうだ。

 

 

「…………会話がちょっと止まったね、やるならちゃんとエスコートしてよね。……まあでも、奢ってくれるなら許しちゃおっかな? 近くの洋食店で美味しいピザがあるんだけどなぁ」

 

「ピザ留学する気か!!」

 

 おい、似たようなセリフメチャクチャ聞き覚えがあるぞ!

 それに乗ったら間違いなくピザる。

 

「あ、ラブクロック知ってるんだ」

「それはこっちのセリフだわ……やったの?」

 

 俺のトレースAIだから俺がやったゲームはやってて不思議ではないけど、ラブクロック女子向けでは間違いなくないぞ?

 

「……うん、気になったからね」

「そんな疲れた目をするくらいならわざわざ話題に出さなきゃいいのに」

 

「まあクソゲーの話題出してちゃんとした答えが返ってくること自体珍しいし」

「それは確かに」

 

 基本的にゲーム好きにすら通じる話題じゃないからな、クソゲー界隈。

 

「……その言い方的に、楽朗、こちら側……?」

「そうなるな」

「ほほう? 珍しい人種……ますます親近感がわいた気がする」

「そら光栄で」

 

「まあ立ち話もなんだし……どっかよる?」

「ん……この辺なんかあったか?」

 

 俺の記憶ではこの辺りは住宅街よりの場所だから、大した店はなかったはず。

 とは言えゲームだしなんらかイベントポジションみたいなのがあったり。

 

「それもそっか……んー……じゃあ家来る?」

 

 ねえのかよ。

 というか、俺のトレースにしては随分簡単に自宅に招くな……。俺なら絶対やらない。

 

「……いいのか?」

「いつもだったら絶対やなんだけど、なんか知らないけど楽郎ならいいやって思えちゃって」

「ふーん……」

 

 多少補正はかかっているのか、ある程度の信頼感は持ってもらえてるらしい。

 多分転校生ルートならこの信頼感も自力で勝ち取っていかなきゃならないとは思う。

 

 ~~~~~~

 

 勝手知ったる家の中を案内されるまま部屋まで行く。

 お、ドアに名前ある。

 

 楽羽――「らくは」の「は」は羽なのか。

 中に入ると、見知った部屋……とは少し違う部屋だった。

 

 部屋の内装は俺に比べて少しは女子の部屋らしさがある。

 前に少しだけ見た瑠美の部屋の方が近いかもしれん。

 

 が、棚にあるのはやはり俺がやったクソゲータイトルと同じで、思わず声に出してしまった。

 

「なんというか、お前もクソゲーハンターだなぁ」

「え? そんなすぐわかる?」

 

「あー……いや、ギャルゲーのラブクロックをわざわざやったってことは相当のクソゲー好きだろうしな。普通のギャルゲーですら女子はなかなかやらないってのに、ラブクロックとは……」

 

「別にクソゲーばっかりやってる訳じゃないし。良ゲーも神ゲーもやるから」

「ほー、そこまで言うならお前のおススメってなんだよ」

 

 

「そうだねぇ……あ、辻斬:狂想曲・オンラインって言うのがあってぇ……」

 

「ぜってぇ天誅し返してやるからな」

 

「っち、ラブクロック知ってるくらいだし、やっぱり幕末も知ってたかぁ」

 

 ったく、何のためらいもなく幕末勧めやがって。

 俺も似たような奴が近くにいたら間違いなく同じこと言うわ。

 

 

 そんな話の後改めて、自分の部屋と似ていて、それでいて所々違う部屋の中を見回してみると、一つ気になるものが目に入った。

 

「ん……そのお面……」

「う……」

 

 俺の部屋で言うところの、毘沙門天さんからもらったジャックのお面が置いてある場所に、ジャックに似てはいるが、別の面が置いてあった。

 

「あれは……?」

「あー……まあその、ちょっとイベントで、ね?」

 

 そう言って楽羽はあからさまに目を泳がせて動揺している。

 という事はあれが、このゲームの世界線で楽羽がコスプレしたキャラってことか……。

 確かにジャックは男キャラだしな。

 

「………………そういえばGH:Cの……」

 

 ……動揺したように体が揺れる楽羽。

 え、もしかして俺も動揺したらこんな感じ?

 自分の見えなかった部分が見えた気がして、なんとなく追求するのをやめた。

 

「GH:Cのキャラだと何のキャラ使う? やったことありそうだけど」

「ふぇっ!? あー……うん、やっぱロックピッカーかな」

 

「ロックピッカー」

 

 ここにきて知らないキャラクターが出てきた。

 え、どういう事、性別違うだけでそんなとこまで変わんの?

 

「あれ、やったことあるんでしょ? アレだよ、あの栗きんとんちゃんの成長した奴」

「栗きんとんちゃんの成長した……!? あー……うん、アレか」

 

 マジでどういう事だ、栗きんとんちゃんてあの幼女の事か?

 何でここで出てくんだよ。

 

「で? 楽郎は何使う?」

「俺は……まあ、やっぱりカースドプリズンが多いか」

 

 

「おお、いいね。あれでしょ? 栗きんとんちゃん庇ってミーティアスに啖呵きるやつでしょ「ユニバースが違げぇんだよ」って」

 

 

「ぬ゜っ」

 

 

「え何その音。バグ?」

 

「な、何故それを……」

「それ? セリフの奴? あれは原作通りじゃん。ちょっとクサかったけどかっこいいと思ったね」

 

「ぐぉぉぉ……!」

 

 マジかマジかマジか、どういう意図の元、俺が言ったセリフの方を原作にしたんだこのゲームは……!

 そこ関係ないだろうが!!

 

「どっちもミーティアスのライバルには変わりないし、そこも似てるっちゃ似てるね」

「……ライバル?」

 

「確かそんな設定だったはず。カースドプリズンはヴィランとしてのミーティアスのライバル。ロックピッカーはカースドプリズンに肩入れするヒーローとしてのミーティアスのもう一人のライバル的な……カッ……友達が寄こしてきた原作では」

 

 もしかしてそれのつじつま合わせか……? いやおかしいだろ! 別にカースドプリズンでいいじゃん! 全米二位は普通にカースドプリズン使ってたじゃん!

 

「GH:Cかぁ、やる?」

 

 そんな感じにこのゲームへの文句を頭の中で連ねていると不意にそんなことを言われた。

 

 ……出来んの? VRゲーム内でVRゲーム。

 

「……いや、まあ認証面倒だし、とりあえずやめとくわ」

 

「それもそっか。一緒に遊べたら面白いとか思ったんだけど」

「……そうだな」

 

 正直俺もそれは思ったが、このゲーム内だとそれも難しそうだ。

 俺がインしていない間は、こいつは多分、通常の日常を歩む。

 だがインしている間は、一時的に閉鎖的な空間になってるといったところだろう。

 少なくともVR内でVRを遊ぶのは出来なさそうだ。

 

 色々とこのゲームのクソゲーたる所以を考えていると、楽羽は見覚えのある、今では骨董品扱いされかねないゲームを持ってきた。

 

 

「コントローラーゲームもあるよ? ジャスバとかどう?」

 

「お、いいねぇ……この空が誰のものか教えてやるよ」

 

 と言ったものの、ジャスバではあれ出来たことないんだけどな。

 

「言うねぇ……そのセリフそっくりそのまま返してあげるよ」

 

 ……まあ、こいつも同じだろ。

 

 ~~~~~~

 

「あー楽しかった!」

「互角か……」

 

 当たり前と言えば当たり前だが、やはり十戦やって五対五。

 

 

 ……しかしほんとに楽しかったわ、楽羽とゲーム……。

 

 ミラーとは少し違うし、オルケストラの時と違って上位互換って訳じゃない。

 かといって全く同じトレースじゃないから微妙に差も出る。

 

 対戦してると自分の癖みたいのも見えてくるし………………あれ、これギャルゲーとかにしないで自分と対戦できるゲームにした方が売れたんじゃね?

 

 

「と言うかどっちもマスタースカイ出来なかったね」

「ん? お、おお、おお……形がハマれば行けるだろうけどなぁ……」

 

「ね」

 と、そろそろ日が暮れだしてる。

 確かこの辺りで引き揚げなければいけなかったはずだ。

 

「じゃ、俺そろそろ帰るわ」

「ん、じゃあまたね……またねであってる?」

 

「まあ、また顔は出すだろうな」

「じゃあまた」

 

「おう」

 家を出てログアウトする。

 

 正直ギャルゲーは置いといて、一緒に遊ぶことには面白さを見出してきた。

 

 これがこのクソゲーの光るところなのか……?

 

 

 

 この日から少しずつ半狂乱にログインする頻度は増えた。

 

 

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