電脳世界で鏡を合わせる   作:蛇ヤミー

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「っ……お前……」

 想像だにしてなかった言葉に思わず返事に詰まる。

 

「だとするなら…………ああ……そっか、そういうことか……私はAI……ゲームのAI何だね?」

 

 

 それはある意味シャンフロシステムが仇になったのかもしれない。

 

 こいつは今、自力で考えて、このゲームの存在と、自分の正体に気が付いた。

 

 いや、シャンフロで多くのユニークモンスターと対峙してきた俺のトレースだからこそたどり着いたというのもあるのだろう。

 

 

「うん、そう考えれば大体納得できる。私と同じような考え方をするのも、ビックリするくらい私と似た行動をとるのも、どこから来てるのか全く分からないのも。…………それと、私と同じくらいゲームが好きなはずの楽郎が、どうして自分のゲームをしないで、何度も何度も私の前に現れるのかの理由も」

 

「…………………………」

「てことは、さんむって、陽務ってこと? あ、もしかして最初はサンラクって名乗ろうとしたとか? で、慌てて変えたんだ」

 

 こうなると、多分隠すことはできない。

 自分でもわかる。こいつは或程度確信を持って聞いて来てる。

 

「…………そうだよ、俺は陽務楽郎。よろしく」

 こうして俺は、改めて自己紹介をした。

 

「あはは、よろしく。というか、そもそも最初に会った時のあれから変だもんね。楽郎のことを知れば知るほど、あのセリフはどう考えてもおかしい……そっか、私は楽郎のトレースAIってとこ? ……うん? ちゃんと過去の記憶があるから、本人から過去を遡ってトレースして成長させたって事かな……うわ、えぐ……何そのゲーム、こわ」

 

 どんどん自己分析と解析をしていく。

 いや、俺だってそれだけの情報があればそこにたどり着く。

 

 ……とはいえ。

 

「楽羽、それ以上は……」

「ん? ……あー……うん、確かにこれにAI自体が気付くのは問題だね。明日には……もしかしたらすぐにでも修正はいるかも」

 

 あっけらかんというが、その顔は少し寂しげで。

 

「楽羽……」

 

「……もしかして気を使ってる? 大丈夫大丈夫……まあ確かに結構ショック大きいけど、わかってみるとほんと納得できる部分も多いからさ……でも、確かに気付かない方が幸せだったかもね……そうかぁ……」

 

 正直、唐突過ぎる展開にどうするか悩みはしたものの、混乱と納得が混ざったような複雑な顔を見せる楽羽を見て、やることは決まった。

 

「……じゃあ、修正される前に、今日の時点でクリアしちまうか」

 

 修正されてからまたやり直しなんてさせない。

 この状況に気づいた今の楽羽とエンディングを迎えてやる。

 

「クリア? どうする気?」

「告白する」

 

「……あー……そういうゲームか。うん、わかった。どうする? 私からする?」

「ん……とりあえず俺から行こうか」

 

「というか……はは、これから告白イベントだってのに、今のこの会話、色気も減ったくれもないじゃん」

 

「当たり前だろ? 俺とお前だぞ」

 

「だね」

 

 

 

「……ふー…………楽羽、俺はお前の事が好きだ。俺と、付き合ってほしい」

 

 

「……えー? 私を好きってことは要するに自分が好きってことになるじゃないですかぁー。楽郎君は自分大好きですかぁー? んー?」

 

 

「おうコラ」

「あはは、ごめんて。んーと……うん、よろしくお願いします」

 

 

 たがいに少し静かに待つ。

 しかし、何ら変化は起きない。

 

「何も変化ないね」

「だな。よし今度は逆を試してみるか」

 

「よしきた……コホン……えー……楽郎、私はあなたが好きです、私と付き合ってください!」

 

「こちらこそお願いします……………………ダメっぽいな」

 

 

「んー……やっぱりクリア目的の、形だけの告白だとダメかな」

 

「馬鹿言え、クリアのためとはいえそれなりに気持ち込めたつもりだぞ」

 

「……自分自身に告白するのに?」

 

 楽羽は探るように聞いてきた。

「あのなぁ、今更お前が俺と同じだなんて思ってねぇよ……つか、それはお前も同じだろ?」

 

「…………そうだね」

 

「……だが正直、恋愛って感情でもない気もするがな……」

 

「ね。出来れば楽郎と気の済むまでゲームしてたい」

 

「わかる。まあこれ自体もゲームなんだけどな」

 

「そうだった……! それにしても……うーん……恋愛かぁ……」

 

「お、あれか? 今回を通して、彼氏というコンテンツになんら魅力を感じないって言葉を撤回するときが来たか?」

 ないとは思ったがからかうようにそう言うと、案の定鼻で笑いながら答えが返って来る。

 

「まさか。今回は楽郎相手だから楽しくやってたってのがあるに決まってんじゃん」

 そして、でも――と付け加え楽羽が話続けた。

 

「……まあ多少は、もしも楽郎がこっち側に実在してたらとか考えはしたけどさ? …………あ、でも、楽郎はこの後、元の生活に戻ったら、そういう色恋も経験してく感じだろうけどね」

 

 話を変えるように今度は俺に振ってきた。

 

 とはいえ、俺の色恋ねぇ……。

 

 

「今のところそんな感じはないから、まあ追々だろうな……」

 

 

「私の周りで考えてみると、どうだろ……意外とたくさんいたりしてね。秋津茜だったり永遠だったり、京ティメットも意外とあり?」

 

「また随分と……」

 シャンフロ内で近い連中ばっかじゃねぇか。

 

 

「私のおすすめは玲ちゃんだけどね」

 

 

「あくまでお前の周りの話だろうが。実際俺は秋津茜や京ティメットとは実際に顔も併せてないしな。鉛筆はアレだし、玲さんは俺の方では高嶺の花的な存在だわ」

 

 俺は呆れつつ、現実での事実を伝える。

 しかし楽羽はそんなことを気にした様子もなく続ける。

 

 

「可能性の話だよ可能性。私がいいかもって思ったってことは、楽郎にもあり得るって事だろうし」

 

「色々世界観違うから微妙だけどな……」

 

 

 

「でも、私がおすすめしたってことは、楽郎の中で玲ちゃんは意外といい位置にいたりするんじゃないの?」

 

 

「………………」

 

 

 想定してなかった言葉に思わず黙る。

 性別や生き方が違ったとはいえ、俺のトレースからのその言葉はことのほか耳に残った。

 

 とはいえ言った本人はさして気にした様子も見せないが。

 

 

「ま、告白イベントの直後に他の女の子の話をするもんでもないか」

 

「おい…………お前から始めたんだろうが」

 

「そうなんだけどね? 何も起こらないからそういう原因かなって思って」

 

 

「いくらシャンフロシステム使ってるからってそこでクリア判定はしないだろ。こういう場合なんらか行動がキーになるんじゃないか?」

 

「確かに。後なんだろ、こういうゲームの定番って」

 

「後は……」

 

 

 この後俺も楽羽も押し黙る。

 

 おそらく同じ見当がついたから黙った。

 

 

「「…………………………」」

 

 

 そして考えてみれば、それ以外ありえない選択肢だった。

 

 ほぼ同時に互いに向き合い、互いに顔を……それも口元を見あった後、同時に息を吐く。

 

 

「まあ、そうなるか」

 

「そう、だねぇ……あー……うん。そーかー……」

 

「……しゃーねぇだろ。つか、お前だってラブクロックとか乙女クソゲーもやったことあんだろうが。そん時と同じように流せ流せ」

 

 VRでギャルゲー乙女ゲーをやる場合必ずそういうシーンは訪れる。

 

 ラブクロックは精神を消費していたので、もはや作業みたいな感じで済ませていったが、乙女ゲームの場合は割とキツかった。

 

 

「……まあそうなんだけどさ、というか、嫌な訳じゃないんだけど……流石に……ちょっと照れる」

 

 

「やめろ。お前に照れられるとこっちも照れる」

 

 

 

「……じゃ、さっさと終わらせちゃおっか」

 

 

「……おう」

 

 

 

 

 少しの逡巡の後、俺たちは――そっと唇を合わせる。

 

 




VRのギャルゲー乙女ゲーってどこまで再現されて、どこまでOKなんですかね。
まあそれはさておき、次で半狂乱が終わります。
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