現代の高校生達は、大正で鬼狩りをする ~召喚鬼滅譚~   作:籠城型・最果丸

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ありふれキャラとオリキャラの年齢設定


ありふれ+オリキャラ組の年齢は原作一巻の最終選別時の年齢とする。

同期隊士 竈門炭治郎、我妻善逸、嘴平伊之助、栗花落カナヲ、不死川玄弥

南雲ハジメ 十七歳
白崎香織  十七歳
八重樫雫  十七歳
坂上龍太郎 十七歳
谷口鈴   十七歳
■■■■  十七歳


同期隊士 胡蝶カナエ、胡蝶しのぶ

中村恵里  十九歳
永山重吾  十八歳
遠藤浩介  十八歳
野村健太郎 十八歳
辻綾子   十八歳
吉野真央  十八歳


同期隊士 甘露寺蜜璃

天之河光輝 二十歳
檜山大介  二十歳
近藤礼一  二十歳
中野信治  二十歳
斎藤良樹  二十歳
清水幸利  十九歳
園部優花  十九歳
菅原妙子  十九歳
宮崎奈々  十九歳
相川昇   十九歳
仁村明人  十九歳
玉井淳史  十九歳


同期隊士 冨岡義勇、鱗滝錆兎、鱗滝真菰、村田

辻風来  二十一歳
滝沢膵花 二十一歳


第弐節 鍛錬

第肆話 衝突 ~我妻善逸編~

 

俺の兄弟子、天之河光輝は俺のことを何時までも苗字でしか呼んでくれなかった。ちょっと前まで俺をカス呼ばわりしてた獪岳でさえ善逸、ってちゃんと下の名前で呼んでくれた。獪岳は苗字ないから普通に名前呼びだったけど。苗字でしか呼ばないのは今鳴柱をやってる兄貴(辻風)とじいちゃん(桑島先生)も同じだった。

 

光輝からは何時も()()()()()()()()音がする。獪岳から聞こえる不満の音と似た音だ。だけど何を求めてるのかは分からない。富か。名声か。それとも女の子か。そんな光輝とも俺は仲良くなりたいと思って獪岳にやったように沢山親切にした。でも何かを求める音はそれでも消えなかった。

 

 

兄貴が俺と獪岳を継子にすると言った次の日。光輝は最終選別に行った。俺と獪岳は兄貴と一緒に光輝が最終選別に行ってる間、特別訓練を行うことになった。

 

「今日は一対一の模擬戦だ。自分が使える型でいいから、全力でかかって来い」

 

今日の鍛錬は模擬戦のようだ。順番は、獪岳が先に名乗り出て次に俺、という順番になった。

 

「おい善逸、弐から陸ノ型まで使えるのがどれだけ凄いか、ちゃんとその眼で見ておけよ」

 

獪岳はかなり自信があるようだ。何せ壱ノ型以外なら全部使えるからかなり有利だ。でもじいちゃんと兄貴は言ってくれた。一つのことを極め抜けと。

 

「準備はいいかな?」

「ああ、何時でも始められるぜ」

「うむ、では、始め!」

 

兄貴と獪岳の模擬戦が始まった。

 

「行くぜ、雷の呼吸 肆ノ型 遠雷」

 

遠い間合いを一気に詰めて来て、兄貴に斬り掛かる。

 

だけど…。

 

「雷の呼吸 壱ノ型 霹靂一閃」

 

四つあった斬撃がたった一撃で掻き消された。やっぱり兄貴は凄い。俺も壱ノ型極めたらあんな風になるのかな?

 

「くっ、やっぱ一筋縄じゃ行かねぇよな。雷の呼吸 弐ノ型 稲魂」

「雷の呼吸 壱ノ型 霹靂一閃」

 

今度は五連続の斬撃を繰り出してきた。しかしそれも一撃で掻き消された。

 

「雷の呼吸 参ノ型 聚蚊成雷」

 

それでも獪岳は諦めなかった。諦めの悪さは俺も知ってる。早く強くなりたそうだったし。

 

「雷の呼吸 壱ノ型 霹靂一……」

「そこだ!」

 

獪岳が兄貴の隙を突いて木刀を振り下ろした。型を出させる前に封じ込んだ。兄貴は咄嗟に上へ跳んだ。

 

「雷の呼吸 伍ノ型 熱界雷」

 

木刀を振り上げ、天に向かって斬撃を放った。空中では流石の兄貴も身動きはできない。獪岳は勝利を確信した。

 

「雷の呼吸 陸ノ型 電轟雷轟」

 

そして追い打ちを掛けるように無数の斬撃が飛び交う。普通の人間ならこの時点で負けが確定するだろう。だが、それを覆してしまうのが兄貴だった。

 

兄貴は空中で身体を捻り、伍ノ型の斬撃を躱した。だけど、陸ノ型の斬撃が残ってる。

 

「雷の呼吸 壱ノ型 霹靂一閃」

 

えっ? そこでも壱ノ型使う?普通。だけど、兄貴は()()()()()()()()()()使()()()()()。まるで俺と獪岳が戦ってるみたいだ。

 

兄貴は無数の斬撃が飛び交うこの場を一直線に駆け抜けて、遂に獪岳の頸に木刀を当てた。

 

「……俺の負けだ、兄貴」

 

獪岳が負けた。まあ兄貴は柱だし、まだ納得できる。

 

「さて、次は善逸だね」

 

俺の番が回って来た。壱ノ型しか使えないから、圧倒的に不利だ。

 

「始め」

 

開始の合図が飛んだ。それと同時に俺は構えを取った。

 

「雷の呼吸 肆ノ型 遠雷」

「雷の呼吸 壱ノ型 霹靂一閃」

 

雷の呼吸最速の一閃で斬撃を避け、あっという間に兄貴の間合いを詰められた。だけど、兄貴は簡単に隙を見せる程甘くなかった。

 

「雷の呼吸 弐ノ型 稲魂」

 

俺は兄貴の斬撃を五発全て受けた。

 

「雷の呼吸 参ノ型 聚蚊成雷」

 

更に俺の周りをぐるぐると廻りながら無数の斬撃で畳みかけてきた。俺は咄嗟に天へ高く舞い、無数の斬撃から逃れた。だが、俺は大きな隙を見せてしまった。

 

「雷の呼吸 伍ノ型 熱界雷」

 

天へと昇っていく雷が俺に直撃した。木刀だから威力は弱くなってるけど、それでも痛い。俺は更に上へと押し上げられた。

 

「雷の呼吸 陸ノ型 電轟雷轟」

 

伍ノ型を喰らって姿勢を崩してしまった俺を無数の斬撃が襲い掛かった。俺はそれをまともに喰らってしまった。死にはしなかったが、滅茶苦茶痛い。結果は言うまでもない。俺の負けだ。

 

だが、兄貴との対決の途中で俺は気がついてしまった。()()()()()()()()()()使()()()()()()()けど、今、()()()()()()()()()()()()()()()使()()()()()

 

そう言えば兄貴が言ってたっけ。『雷の呼吸は、壱ノ型を極めれば他のどの型をも上回る。()れども、弐から陸ノ型を極めて束にすれば壱ノ型をも上回り得る』と。一見矛盾してるように聞こえるが、きっとこういう意味だろうな。『俺と獪岳が共に戦えば、二人の雷の呼吸は完全なものとなる』

 

俺も獪岳も悔しかった。でも解ってる。兄貴は柱だ。まだ隊士でもない俺達じゃどう足掻いても太刀打ちできない。獪岳もそれが解っていた。

 

「さて、善逸、獪岳、君達は何に敗れた?」

 

答えは、もう解ってる。柱である兄貴と答えたらそいつは獪岳の言うカスだ。何も解ってない。獪岳も同じだった。阿吽の呼吸で俺達は答えた。

 

「「……自分の使えない型」」

「そう。獪岳は壱ノ型に、善逸は弐から陸ノ型に敗れた」

「それじゃあおかしくないか?確かに善逸は壱ノ型しか使えないし、俺は壱ノ型だけ使えない。今まで善逸は俺に一度も勝てなかった。だが俺は壱ノ型しか使ってない兄貴に勝てなかった……」

 

この瞬間、獪岳の中で何かが砕け散る音がした。己の才能への自信が、完膚なきまで砕かれた。

 

「壱ノ型だけ習得できなかったのはどうすることもできない。慈悟郎先生が善逸によく構って指導時間が削られていたのは知っている。だから僕が稽古を付けていたじゃないか。それでも不満だったのかな?」

 

兄貴の話を聞くまで俺は知らなかった。じいちゃんがヘタレな俺にばっかり構ってた所為で獪岳の時間を奪っていたことを。

 

「慈悟郎先生は善逸ばかり贔屓しているわけじゃない。二人共平等に慈しんでいるんだよ。僕も同じさ。弟のように思ってる。数少ない家族の一員だよ」

 

……俺には家族なんていない。物心つく前に親に捨てられた。それは獪岳も同じだった。

 

「天之河には両親と妹がいる。だけど善逸や獪岳、そして僕には親も兄弟姉妹もいない。それぞれ過酷な生活をしてきたはずだ」

 

じいちゃんが俺の借金を肩代わりしなかったら、今の俺はいなかった。

 

「獪岳は『生きてさえいればいつかは勝てる』、と思っているね。きっと、そうでもしなければ生き残ることすら叶わないほど生活が過酷だったんだろう。確かにその通りだ。けれども、世の中には一人では勝つことが叶わない相手もいるんだよ。獪岳一人では決して勝つことができない、そんな相手が」

 

兄貴は何故か遠い目をしていた。

 

「……アンタに俺の何が解るってんだよ」

 

獪岳は苛立っていた。

 

「生きてさえいれば、いつかは俺を見下す強者にも勝てるんだよ! そう信じて俺は生きてきた!」

「……」

「アンタも先生と同じように内心俺のことを見下してるんだろ? 壱ノ型だけ使えないからって。俺を正しく評価しない奴が悪で、正しく評価する奴が善なんだよ」

「人を見下すのは強者のすることじゃない。弱者のやることだ。いつかは自分を見下す強者にも勝てる、自分よりも力は勝っている相手とはいえ、それを遠回しに言えば相手を見下しているのと同じだ。その観点から言えば君はずっと弱者だ。待っているのは破滅のみ」

 

容赦なく兄貴は獪岳の精神をずたずたに引き裂く。

 

「勿論君の考え全てを否定する気は毛頭ない。力をつけて、君を散々見下してきた相手を出し抜くことだってできる。だが、お前は善逸の才能を正しく評価していない」

「なっ……」

「今のお前は、お前自身が最も嫌いな人間だ。言っていることが解るな?獪岳」

「……はい」

 

それ以来獪岳は大人しくなった。不満の音は消えなかったけど。それでも小さくなった気がする。

 

 

あれから三日、光輝が久し振りに来た。光輝も凄く強い。兄貴には敵わないだろうけど。

 

「お久しぶりです、先生」

「おお、光輝! よく戻ったな!」

「先生のお陰で、無事に任務に務めることができてます。獪岳と我妻はちゃんと稽古をしていましたか?」

 

やっぱり俺を苗字でしか呼んでくれない。

 

「ああ、あの二人ならちゃんと稽古をしておったよ。それでも使えない型は使えるようにはならなかったがの」

 

光輝の音が急に冷たくなった。顔にもそれがはっきりと出ている。

 

「我妻、話がある。獪岳も連れて俺の所へ来い」

 

俺と獪岳は光輝に呼び出された。光輝が待っていたのは、前に俺が獪岳に桃を投げつけられた場所だった。

 

「獪岳、我妻、君達二人には失望したよ」

 

光輝の第一声はそれだった。

 

「分からないのか? 二人共型を全て覚えられていないし、特に我妻は朝から晩まで泣いてばかりで、恥ずかしいと思わないのか?」

「……」

 

俺は何も言い返せなかった。光輝は更に冷たい言葉を投げかけた。

 

「桑島先生はな、凄い人なんだ」

 

光輝が今言っていること、前に獪岳から言われたこととほとんど重なっている。

 

「でも、じいちゃんは……」

 

俺が言いかけると、光輝に黙らされた。

 

「じいちゃんなんて馴れ馴れしく呼ぶのは止めるんだ。先生は元柱だったんだ。鬼殺隊最強の称号を貰った人なんだよ。元柱に指南を受けられることなんて滅多に無い」

「でも、それじゃあ兄貴はどうなんだよ……」

 

獪岳も光輝に黙らされた。

 

「獪岳、君も辻風を兄貴なんて馴れ馴れしく呼ぶのは止めるんだ」

「そういう光輝だって、兄貴を苗字で呼び捨てにしてるじゃないか」

「それとこれは話が別だ。俺は辻風とは同年代の知り合いだからな」

 

そう言えば兄貴も光輝を苗字で呼び捨てにしていた。知り合いとは言っても、仲はあまりよくなさそうだった。

 

「確かにアンタが俺達に失望した理由は解ってるし、納得はしてる。だがよ……。失望した、なんてのはアンタが言うことじゃないだろ? おい善逸、行くぞ」

 

俺は獪岳に手を引かれて桃畑から去っていく。

 

「おい獪岳! まだ話は終わってないぞ! 善逸を連れて戻って来るんだ!」

「アンタの話はもう沢山だよ」

 

獪岳は光輝の声を無視してじいちゃんの家まで俺を引きずっていった……。

 

 

 

 

第伍話 狭霧山での鍛錬 ―岩を斬れ― ~竈門炭治郎編~

 

一年と半年前、俺は禰豆子以外の家族を喪った。俺が三郎爺さんの家に泊まってた間に母ちゃん、花子、竹雄、茂、六太は死んで、禰豆子は鬼になってしまった。鬼になった妹を人間に戻すべく、冨岡義勇と名乗った鬼狩りの紹介で狭霧山の麓に住む、鱗滝左近次という育手の許を訪ねた。

 

それからは厳しい訓練だった。狭霧山は俺の住んでた山よりも空気が薄い。最初の頃は何もしていなくても息苦しかったけど、今は大分慣れてきた。鱗滝さんの家へ向かう道中で出会った、谷口鈴と名乗った少女も共に鍛錬に励んだ。鱗滝さんと出会ったお堂で、彼女は鬼に襲われていた。咄嗟に俺が持っていた斧で斬りかかったお陰で、彼女は助かった。

 

狭霧山で基礎体力を鍛えた後、剣術と全集中の呼吸を教わった。俺と鈴は毎日弱音を吐く事無く頑張った。

 

だけど、半年前に突然「もう教えることはない」と言われた。岩を斬れたら、最終選別に行くことができる。

 

俺と鈴は鱗滝さんに習ったことを毎日繰り返した。息止めや柔軟など基礎的なことも。日記に書いておいて良かったと思った。

 

ただ、半年経っても岩は斬れなかった。俺は焦る。鈴は地面に這い蹲っている。

 

「エリリンは何処なの~」

 

エリリン? 誰のことを言ってるんだろう。でも今は岩を斬ることに集中しないと。

 

「でも、岩を斬れなきゃ何時まで経ってもエリリンに逢えないよね……」

 

鈴は自力で立ち上がった。偉いぞ、鈴。俺も鈴を見習って頑張らないと。

 

「岩はまだ斬れないのか。炭治郎、鈴」

 

木の裏から宍色の髪をした青年、錆兎が姿を現した。錆兎に続き、真菰も前に出る。

 

「常中、止まってるよ?」

「「あっ……」」

 

言い忘れていたが、俺と鈴は錆兎達から全集中・常中の訓練を受けている。全集中・常中というのは、全集中の呼吸を四六時中続けるといったものだ。休息の時も、寝る時もそれを続けなくてはならない。これができるのとできないのでは実力に大きな差が出る。全集中の呼吸は、少し使うだけでもかなりきついのだが、やらなければずっときついままだ。

 

すぐさま呼吸を整え、全集中の呼吸を継続して行う。その間も、基礎鍛錬と剣術の鍛錬は欠かさない。

 

この日も俺と鈴は錆兎と真菰と打ち込み合った。

 

 

『〝全集中の呼吸〟はね、体中の血の巡りと心臓の鼓動を速くするの。そしたらすごく体温が上がって、人間のまま鬼のように強くなれるの。とにかく肺を大きくすること、血の中に、たくさんたくさん空気を取り込んで、血が吃驚したとき骨と筋肉が慌てて、熱くなって強くなる』

『どうやったらできるかな』

『死ぬほど鍛える。結局、それ以外にできることないと思うよ』

 

俺も鈴も、腕が、足が、千切れそうな程、肺が、心臓が、破れそうな程刀を振った。それでも、錆兎と真菰には勝てなかった……。

 

 

……半年経つまでは。

 

 

ある日俺と鈴が岩に向かうと、面を被った錆兎と真菰が真剣を持って岩の前に立っていた。

 

「半年でやっと、男の顔になったな。炭治郎」

「立派になったね、鈴」

「今日こそ勝つ」

「右に同じく」

 

真正面からの勝負は単純だ。より強く、より速い方が勝つ。

 

一瞬で勝負は決まった。この日、この瞬間初めて、俺の刃が先に錆兎に届いた。錆兎の面は綺麗に真っ二つになり、素顔が露わとなる。

 

「……よくやったな、炭治郎」

 

俺が勝った時、錆兎は笑った。ただただ、純粋な笑顔だった。

 

鈴の方も、真菰の面を斬っていた。鈴も勝てたようで、良かった。

 

俺が勝った理由、〝隙の糸〟の匂いがわかるようになったからだ。誰かと戦っている時、俺がその匂いに気づくと、糸は見える。糸は俺の刃から、相手の隙に繋がっていて、見えた瞬間、ピンと張る。俺の刃は強く、糸に引かれて、隙を斬り込む。

 

「鈴、岩を斬ってみよう」

 

俺は鈴に、岩を斬ることを提案した。今なら斬れるかもしれない。

 

俺と鈴は岩の前に立ち、刀を構えて深呼吸をした。

 

完全に落ち着いたところで、俺と鈴は同時に刀を振り下ろした。半年前には斬れなかった岩は…

 

 

…綺麗に四つ切りになっていた。

 

 

岩を斬った俺と鈴の許に、鱗滝さんが歩み寄って来た。

 

「「鱗滝さん……」」

 

鱗滝さんは、四つ切りになった岩を見て、言った。

 

「お前達を、最終選別に行かせるつもりはなかった。もう、子供が死ぬのを見たくなかった。お前達に、この岩は斬れないと思っていたのだが……」

 

俺と鈴の頭に、鱗滝さんの手が乗せられた。

 

「よく、頑張った。炭治郎、鈴、お前達は、凄い子だ……」

 

俺と鈴は目から涙を流して、鱗滝さんに抱きついた。

 

「〝最終選別〟、必ず生きて戻れ。儂も妹も此処で待っている」

 

 

 

 

第陸話 風吹く雫 ~胡蝶しのぶ編~

 

私の姉、胡蝶カナエは上弦の弐との戦いで重傷を負った。水柱の滝沢さんがいなかったら間違いなく死んでいただろう。

 

肺が壊死していたのもあって、当初は姉さんが柱を引退するのは確定していたのだけど、それを憂えた滝沢さんが()()()()()()()()()()()()()()を施した結果、三日程で全快してしまったのだそう。

 

これには流石の御館様も柱の皆さんも開いた口が塞がらなかった。カナヲだけじゃなく、香織や雫も同様だった。

 

姉さんが全快してしまったので、柱に留まることになり、香織と雫にも全集中の呼吸を教えることになった。私は基礎的な呼吸を、姉さんは花の呼吸の型を教えた。私は小柄だから鬼の頸を斬れないけど、基礎的な呼吸なら教えられる。

 

雫は剣術を習っていたようなので、割と早く型を覚えられた。香織もそこそこ早く覚えていた。

 

 

或る日、香織と雫が姉さんに稽古を付けられているのを縁側で見ていた。

 

「香織の方は花の呼吸の適正はバッチリね! 次々に昇華していってる」

「はい、ありがとうございます」

「雫の方は……。源流の呼吸に適正がありそうだけど……」

「他にも何かが?」

 

姉さんの言ってる源流、というのは、花の呼吸の派生元、水の呼吸である。雫は花よりも水の呼吸に高い適正を持っているようだった。

 

「他にも適正がありそうなのよね……」

「そうなんですか……?」

 

どうやら雫には適正のある呼吸が複数存在するようだった。

 

「まあ覚えていて無駄なことなんてないし、雫も頑張って花の呼吸を覚えましょうね~」

「ちょっと姉さん!」

「まあまあ、雫がどの呼吸に適正があるか、日輪刀を握ればわかることだし、もう少しの辛抱よ~」

 

はぁ、姉さんは本当に能天気だ。でも姉さんの言ってることに間違いなんてない。ここは我慢することにしたのだった。

 

 

また或る日の月夜に、研究の合間に外の空気を吸いに出ると、香織が縁側に座っているのを見かけた。

 

「こんなところでどうされましたか?香織」

「しのぶさん……」

 

香織はとても淋しそうな表情をしていた。

 

「初めてここに来た時のことを思い出していたんです」

「初めてここに……。何か悩みでもあるんですか?」

「ここに来る前、気になっている相手がいたんです」

「気になってる相手……。それは誰なんですか?」

「……」

「大丈夫ですよ。他の人には言いませんし、詰め寄ってきたらこうですよ」

 

香織の信頼を固める為に、空気を殴る仕草を見せる。

 

「ははは……」

「それで、名前は何て言うんですか?」

「……南雲くん、南雲ハジメっていうんです」

「南雲君……。そういえば煉獄さんがここに来た時に同じ苗字の子の名前を言っていたような……」

 

 

それは二週間程前のことだった。煉獄さんが任務で負傷して蝶屋敷で治療を受けていた時に、煉獄さんが二人の少年の名を言っていた。

 

『よもや! 早く傷を治さねば! 南雲少年と坂上少年に稽古を付けられん!』、と。

 

その時の私はまた継子でも拾って来たのか、と気にも留めていなかった。けれど、香織の口から南雲、という苗字が出た時にそれを思い出したのだ。

 

 

「えっ!? それは本当ですか!?」

 

香織が飛びついて来た。この興奮ぶり、明らかに南雲君のことを好いている。

 

「ええ、炎柱の煉獄さんのところに行けば会えると思うんですが……」

「やったぁ~」

 

香織はかなり嬉しそうだった。

 

「このことを雫は?」

「私が南雲くんのことを気にかけているのは知っていますけど、場所は雫ちゃんも知らないと思います」

「そうですか……。空いた時間に彼の許へ行ってみるのもいいかもしれません」

 

もし香織が無事に南雲君に会えたら、益々修行に打ち込みそうですね、と私は心の中で呟いた。

 

 

ところが、香織と雫が煉獄さんの屋敷へ赴こうとしたのはいいのだけれど、姉さんから聞いた話によると、蝶屋敷を出て五間もしないうちに何度も鬼に襲われ、五回目に赴こうとした時に断念したのだそう。

 

 

「うぅ……。どうして……」

「香織、今ここで悔いてても仕方ないでしょ」

 

あれから香織は鍛錬に身が入らなくなっていった。やるにはやるが、最低限の鍛錬しかしなくなっていた。

 

「煉獄さん、って人が鬼殺隊の柱なら、その人の家にいる南雲君は鍛錬をしているってことでしょ? なら、最終選別でばったり出会えるかもしれないじゃない」

 

雫の言う通り、煉獄さんのところにいる南雲君は厳しい鍛錬を受けているはず。だとしたら、最終選別で南雲君と香織が出会う可能性も捨てきれない。でも、煉獄さんの鍛錬は物凄く厳しく、途中で辞退する者が後を絶たないのだとか。

 

一度そのことを香織に話してみたら…

 

『南雲くんは絶対に逃げたりしません!』

 

ってかなり怒った様子で叫んだ。

 

「……うん、そうだよね。ここで止まってたら、何時まで経っても南雲くんと会えないもんね」

 

よかった。どうやら香織は立ち直ったようだ。

 

「よし、最終選別へ向けて、頑張るぞ~!」

 

気合を入れ直した香織と心配そうに付き添う雫を、私と姉さんは縁側で見ているのであった……。




どうも、別の小説でアンケートを出したことを正直後悔しつつも削除できないでいる最果丸です。

はい、今回も雷の呼吸の使い手の話が長くなってしまいました。

四話目で漸く鬼滅の刃主人公、竈門炭治郎を出せました。

私の書いてる他二つ小説と比べたらそれほど人気は無いようですが、それでも読んでくれている人がいるので頑張って続けようと思います。



大正こそこそ噂話

『炭治郎と鈴に錆兎と真菰が指南を付けていたことを、左近次は知らない』

この作品が完結した後、ありふれ組はトータス行きですが、人数は絞りますか?

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