現代の高校生達は、大正で鬼狩りをする ~召喚鬼滅譚~   作:籠城型・最果丸

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光柱から見た柱たち

全体的な打ち解け度数 87%

杏寿郎 龍太郎を鍛えてくれた恩人。感謝している。
天元  妻は一人に絞ってほしい。倫理的にまずい。争いでも起きたらどうするんだ。
蜜璃  守るべき人。伊黒とは離れた方がいい。
行冥  頼りになる。純粋に強い。
無一郎 柱になるには若すぎる。訓練が足りているか心配。
小芭内 嫌い。ネチネチした喋り方が気に食わない。蜜璃には相応しくない。
義勇  嫌い。ほとんど喋らないから何を考えているのかわからない。
錆兎  冨岡を何とかしてほしい。
真菰  無意識のうちに守りたくなる。
膵花  大事な人。香織や雫と同じ位綺麗。
しのぶ 鬼の頸が斬れないならなおさら自分が守らなければならない。
実弥  気が合う。最近自分を何か思い詰めているような目で見ている気がする。ちょっと悲し
    い。
来   大嫌い。憎い。膵花を奪った。鬼殺を舐めている。早く消えてくれ。
カナエ 守るべき人。鬼に殺させたりはしない。



第玖節 それぞれの思い

第弐拾伍話 寝返りの焔鬼 ~朱羽編~

 

今妾は、来様の影に潜りながら竈門炭治郎の師、鱗滝左近次の家へと向かっていた。影の中というのは本当に寂しいものじゃった。日に当たることはないのじゃが、それだけで他には何も無かった。

 

(そう言えば朱羽、君は柱を二人倒したって言ってたよね?)

「はい」

(ならどうして十二鬼月に入っていなかったんだ?)

 

確かに、妾は柱を二人倒している。十二鬼月も下弦の壱までならば封じ込められるじゃろう。だが、妾には十二鬼月に加わることが出来なかった理由があった。

 

「妾は…かつてある鬼の下に仕えておりました」

(ある鬼?)

「はい、その鬼は死んだ鬼を蘇らせる血鬼術を持っております」

(鬼を…蘇らせる……)

 

その鬼の体から作った門から、鬼狩りに頸を刎ねられた鬼が出てくるのだ。しかも鬼の数に上限も無い。

 

(以前無一郎が言っていたな。鬼を蘇らせる鬼がいるかもしれないって)

「無一郎?」

(今の霞柱だ)

 

その霞の柱は、まだ十四だというのに二月で柱にまで上り詰めたのだそう。恐るべき剣技の才じゃ。

 

(その鬼の名は?)

「…門獄」

 

それがあの鬼の名前。地獄への門を無理矢理開き、死んだ鬼をこの世に引っ張り出す鬼。

 

(それで、君はその鬼の下で何をしていたんだ?)

 

妾は門獄の下に仕えていた頃の話を来様にする。

 

 

 

 

妾が門獄に仕え始めたのは四年程前にまで遡る。それまでは女に憑りついては男の鬼狩りと交わる日々を過ごしていた。吉原遊郭に身を潜めていたこともあったが、上弦の陸・堕姫様に追い出された。

 

「堕姫殿に遊郭を追い出されたのか~ぁい?」

「も…申し訳ございません」

「それはそれは災難だった~ぁね。まぁ近頃の鬼狩りがどうなっているのかを知ることができただけ良しとしようじゃな~ぁいか」

 

門獄は懐の深い者であった。少しの失敗程度ならば見逃してくれた。だが、それも鬼によって態度があからさまに違う。

 

「き~み~は、ど~ぉうしていつも柱なんかに見つかったりするのか~ぁな?」

「も…申し訳ございません門獄様! 今回は私の運が悪かったのでございます。だから…」

「言い訳は聞きたくな~ぁいよ」

 

私は門獄に相当気に入られていたようだった。自由行動も申し出れば許可を出してくれる程だった。

 

「な~ぁきめ。鬼狩りを一人ここに連れて来てくれな~ぃか? 柱じゃなかったらだ~ぁれでもいいか~ぁらね」

 

門獄は何時も無限城の一角に身を潜めていた。曰く、無限城の中の方が実験がやりやすいらしい。

 

無限城を操作する鬼、鳴女が琵琶を弾き、普通の鬼殺隊士を一人無限城に引き込んだ。隊士が連れている鴉の口封じも忘れずに。

 

「こ…ここは一体…!?」

 

鬼狩りは突然無限城に引きずり込まれたことに驚きを隠せていなかった。

 

「さ~ぁて、君には其処の役立たずと殺し合いをしてもらうよ? 決まりはか~ぁんたん。どちらかが生き残ればいい」

「ふ…ふざけるな! どうして俺が鬼のいう事を聞かなきゃ…」

 

門獄が鬼狩りの耳を裂いた。隊士は痛みに悶絶する。

 

「言う事を聞かないと……惨い殺し方で死ぬことにな~ぁるよ?」

 

門獄はその気になれば普通の隊士など一瞬で殺すことができる。だが、ただ面白味も無く殺すことに門獄は退屈していた。

 

結局その隊士は役立たずの烙印を押された鬼と戦い、その鬼に何とか打ち勝った。

 

「お、鬼は殺したぞ。だから…ここから解放してくれ!」

「何時俺が君を解放すると言ったんだ~ぁい? 君はもうここから帰れな~ぁいよ」

 

門獄は鬼舞辻と同じ位無慈悲な鬼だった。隊士の苦痛に歪む表情を見て楽しんでいる。

 

「え~ぇんら、この鬼狩りはそれなりに顔立ちが整ってるみたいだ~ぁし、ここらで交わってみないか~ぁい? 俺の腹袋の中でね」

 

その時の妾は門獄の言われるがままにその隊士と交わった。一晩程契りを交わした後、妾は鬼狩りを生きたまま喰らった。

 

 

「今までいろんな鬼を見て来たけ~ぇれど、君みたいな鬼は初めて見た~ぁよ。焔螺。で、どうだったんだ~ぁい? 交わってから食べた方が強くなれるのか~ぁな?」

「どちらも…然程違いはありませんでした。ですが、交わってから食べる方が妾は満足でした」

「…そうかい。交わるか否かは置いといて、感情で人の味が変わるかという研究は、まだまだ続きそうだ~ぁね」

 

門獄が今までしてきたこと。それは、感情で人の味が変わるのか。また、変わるのであればどの感情が一番美味になるのか。今の所恐怖が最有力の候補に挙がっている。

 

「あっ、あ~ぁかざ殿。焔螺が貴方と戦いたいそうで~ぇすが、どうなさいま~ぁすか?」

「俺は女とは戦わない」

「やはりそ~ぉうでございますか。焔螺には悪いけど、十二鬼月入りがまた遠のいたねぇ」

 

口ではそう言っていたが、門獄は妾に十二鬼月入りをさせるつもりはなかった。妾をずっと支配下に置くために。

 

 

 

 

「…と、門獄は普通の人間の他に、単独行動をしている鬼殺隊士を調査と称して度々連れ攫い、鬼と戦わせたりして用済みとなった後は残酷に殺していたのです」

(…そうか)

 

来様の声は不愉快だと言わんばかりのものだった。

 

(柱合会議でも話に挙がっていたよ。単独行動中に行方不明になる隊士が七名いる、とね。鎹鴉も残酷に殺されて見つかっている。最近はかなり減ってきたようだけど)

「そう…でありますか」

 

隊士の調査はまた一旦打ち切りになったようだ。門獄は十年ごとに調査を一度止め、結果の整理をした後、五年程休むという。

 

「しかし妾も、その一件に手を貸してしまいました。改めて妾の過ちを償いたいと思います」

(そうかい。ならその術は一つだけ。人を喰らう鬼を狩ることさ)

 

来様はそう穏やかに妾に語りかけてくださった。

 

「妾は、貴方のような方に拾っていただけて有難く存じます」

(…ありがとう)

 

それから数日間、昼間は来様の影に潜りながら、話をした。

 

 

「朱羽、夜だよ」

 

ある日の晩、妾と来様は林の中に入っていた。

 

「今夜はここで野宿でもしようか」

 

そう言って、来様は木の枝を搔き集め、一箇所に置いた。

 

「火起こしなら妾が」

 

血鬼術で焚火を焚く。妾と来様は焚火に当たりながら夜を過ごした。

 

「妾が見張っておきます故、来様はお眠りください」

「そうか、ありがとう。じゃあ、お言葉に甘えて」

 

来様はそう仰り、横になった。

 

(妾がお守りしなければ)

 

妾はそう意気込んだ。一生懸命見張りをするが、鬼の気配は感じない。

 

(いつ奇襲するかもわからぬ。警戒を怠らぬようにしよう)

 

見張りをしているうちに夜も更け、草木も眠る頃になった。

 

焚火の火を絶やさぬように木の枝を集めていたところ、近くで鬼の気配がした。数は一体。

 

妾が鬼の気配がする方向へ向かうと、一体の鬼が人を貪り喰っていた。

 

「あ? 何だお前」

 

鬼は妾を睨む。

 

「人間ならやらねぇぞ」

「妾はもう人は喰らわん」

「喰わない? 可笑しなこと言う鬼だなァ」

 

鬼は妾を嗤う。

 

「しかしまぁ、白崎と同じ位綺麗な女だなァ。鬼じゃなかったら喰ってたところだぜ」

「これ以上人喰い鬼を野放しにする訳にはいかんのでな、貴様にはここで塵となって貰おう」

 

鬼は人の亡骸を捨て、立ち上がる。

 

「そんな事言ってお前、本当は人を喰いたいんだろ? なら俺に勝ってから喰えよ」

 

此奴は妾の強さも見抜けんのか? 妾は異能の鬼で、此奴は精々人を三、四人喰った程度だろう。

 

「たかが人を三、四人喰らった程度の鬼に、異能たる妾が後れを取るはずがなかろう」

「調子乗ってんじゃねえぞアマがァ!!」

 

この鬼は頭に血が上りやすいようじゃ。ならば妾が天に昇らせてやろう。いや、此奴は人を喰ってるから地獄行きじゃな。

 

「血鬼術 鬼焦熱葬(きしょうねつそう)

 

鬼の体を炎が一瞬で包み込んだ。

 

「ギャァァァァァァ!!! あぢぃぃぃ!! 何しやがるテメェ!!」

 

鬼が妾に掴みかかろうとする。

 

「近寄るな。林が焼ける」

 

妾は鬼を地面に叩きつける。更に、顔を掴んで血鬼術を発動させる。

 

「でめぇ……!!」

「昇り炎天」

 

火のついた車輪で、鬼を下から斬り上げる。鬼は縦に真っ二つとなった。

 

「ギャァァァァァァ!!」

 

傷口が焼けているので痛みは増している。

 

「まだ終わらんぞ?」

 

妾は人一人が入る程の穴を掘り、燃え盛る車輪を敷き詰めた後、そこに鬼を放り込む。

 

「ここで火炙りになるがいい。血鬼術 大黒縄輪(だいこくじょうりん)

 

炎の車輪で鬼を滅多打ちにする。残っている鬼の体は頭一つだけとなる。

 

「ぢぐじょう…」

「次で終わりじゃ。血鬼術 鬼焦熱葬」

 

鬼の頭は妾の掌で火達磨となり、やがて燃え尽きた。

 

鬼が完全に息絶えたことを確認した妾は、来様の許へと戻っていった。

 

 

 

「来様には、想い人はおられるのですか」

 

あの夜から一日経ったある日の晩、妾はそんな質問を投げかけた。

 

「いるよ。清流のように綺麗な人なんだ」

 

妾だって、美貌にはそれなりに自信があった。それに、寝取るつもりはない。

 

「その方は、今何処に?」

「多分別の任務に行ってるんじゃないかな?」

 

来様の想い人も、来様と同じく鬼殺隊士のようだ。

 

「彼女は炭治郎と同じ、水の呼吸の使い手なんだ」

「水の剣士、ですか」

「丁度彼女の師匠の家が見えてきた。外はもう夜だから、出て来てもいいよ」

 

妾は影から出た。空には月が静かに浮かんでおり、妾たちを照らしていた。

 

「彼女の、師匠とは?」

「炭治郎と同じだよ」

 

姉弟子であったか。

 

来様は鱗滝左近次の家の前に立ち、声を掛ける。

 

「鱗滝さん、辻風来です」

 

戸はすぐに引かれた。引き戸の向こうにいたのは、天狗の面を被った老人だった。

 

「ふむ、来か。このような時間に、何の用があって来た?」

「竈門禰豆子なる鬼について、お聞きしたいことが」

「…そうか。取り敢えず中に入れ。外は冷えるだろう」

 

左近次殿は妾も見据えると、来様と妾を家に入れた。

 

家の中は質素であった。

 

「禰豆子の事を話す前に、儂からも尋ねたいことがある。何故炭治郎と同じように鬼を連れているのか」

 

全力で隠したつもりだったが、見抜かれていたようだ。

 

「…話せば少し長くなりますが…」

「構わん。話せ」

 

来様は妾と出会った経緯を左近次殿に話した。嘘偽りなく全て話した。少し長い説明を聞いた後、左近次殿は妾をじっと見る。

 

「人を喰らわずともよい鬼……禰豆子と同じか。しかし禰豆子とは違い、既に人を殺めていると」

 

妾が死ねばきっと地獄に堕とされるであろう。

 

「しかし、朱羽は自分の意志で償いをしたいと言いました」

 

左近次殿は妾を見据えたまま、こう尋ねる。

 

「朱羽。お前が人を喰ってしまった時、お前はどうする」

「…妾は決して人を喰わん。もし喰ってしまったのならば、その時は陽の光に当たって塵となろう」

 

左近次殿の質問には素早く答えろと、来様に言われた。もし妾がまた人を喰ってしまえば、来様は腹を切らなければならぬ。それだけは絶対に避けなければならぬ。

 

しかし、来様の血を舐めとった妾の体は人の血肉を欲さなくなった。人の食事を食せるようになったのかは知らぬ。仮に食せたとしても、血より効率が悪い程度が御の字じゃ。

 

妾は揺るぎない意志を宿した両の眼で、左近次殿を見た。

 

「…そうか、お前がそこまで言うのなら儂からは何も言わん。人を喰った罪は、人喰い鬼を滅して償え」

 

左近次殿は妾を認めてくれたようじゃ。

 

「…で、禰豆子について聞きたいことがあるのだな?」

「はい。禰豆子は本当に人を食べていないのですか?」

「そうだ。この二年間、禰豆子は人を一切喰っていない」

 

禰豆子は本当に人を一人も喰っておらぬことが証明された。

 

「……聞きたい事はそれだけか?」

「はい。禰豆子から人を喰った鬼の音がしなかったのですが、本当に喰っていないと確実に言い切りたかったので」

「……それだけの為に、わざわざここまで訪ねて来るとは、あの兄妹に何か拘りでもあるのか」

「…知り合いに、少し似ていたもので」

「…そうか」

 

 

来様と妾は左近次殿の家で一晩泊まり、翌朝家を発った。妾の体は人の食事を食べられるようになっていた。効率も血よりも少し劣る程度と、妾が人を喰らう可能性は限りなく低くなった。

 

「さて、僕の屋敷に戻ろうか」

「はい、来様」

 

妾は再び来様の影に潜り、来様の屋敷へと向かう。

 

影の中は大層退屈であったが、来様の屋敷がどんなものなのか、妾は楽しみにしていた。

 

そして更に数日が経ち、屋敷に着いた。

 

「着いたよ。ここが僕の屋敷だ」

 

来様の屋敷は、左近次殿の家よりは大きかった。鬼殺隊の柱には一人ひとり屋敷が与えられるのだそう。

 

「立派な屋敷に住んでいらっしゃるのですね」

「そうかい、ありがとう」

 

来様は屋敷の玄関口を開く。

 

「膵花、ただいま」

「お帰り、来君」

 

来様の想い人である膵花様が、来様に抱きついた。来様も膵花様を抱き返す。

 

(もし来様が独り身であったならば、妾とあのように夫婦になっていたのだろうか……)

 

腹の下辺りが疼く。

 

「隣にいる鬼の女性が、手紙に書いてあった朱羽ちゃんだよね?」

「あ、ああ」

 

膵花様は妾に向き直った。

 

「初めましてだね。私は膵花、辻風膵花。鳴柱・辻風来の妻です。宜しくね」

「こ、こちらこそ…宜しくお願い致します、膵花様」

「固いよ。ここではもっとゆったりしてもいいんだから」

 

来様の奥方は、寛容な方であった。彼女は鬼である妾を受け入れてくれただけでなく、妾のことも考えてくださった。

 

妾は少し緊張を解いて屋敷に上がり込んだ。

 

 

「さっ、た~んと召し上がれ」

 

屋敷に着いて直ぐに、食事が用意された。鯖の味噌煮であった。

 

食事は三人分、妾の分も用意されていた。この食事は膵花様が作ったのだが、来様も膵花様も共に料理が出来るのだ。

 

「「「いただきます」」」

 

妾は箸を持ち、鯖を口に運び込む。味噌の味が十分鯖に染み込んでいる。鯖本来の旨味も合わさって妾に至福を齎す。かつて稀血の鬼殺隊を喰らった時と同じような快楽だった。

 

「本当に人の食事を食べてる……凄いね朱羽ちゃん」

 

膵花様の目が、妾には輝いて見える。それほど凄いことなのだろうか。

 

その後も食事は半刻程続く。玄米ご飯と味噌汁も美味だった。

 

「「「ごちそうさまでした」」」

 

食事を済ませ、来様が食器をお勝手に持って行き、食器を洗う。この屋敷では食事の後に食器をすぐ洗うことになっているらしい。

 

妾が茶を啜っていると、膵花様が妾にこんな質問を投げかけた。

 

「ねぇ、朱羽ちゃん。どうだった? 私の手料理」

「…凄く、美味でした。口に入れる度に、心の中が明るく温かくなっていくようでした」

 

妾は胸に手を当てながら、膵花様に答えた。

 

「そっか…嬉しいな。明日は来君の料理も食べてみるといいよ。来君の料理も美味しいから」

 

妾は胸をきゅっと締め付けられる感覚に襲われた。

 

「妾を…ずっとこの屋敷に住まわせて頂けるのですか?」

「うん。ご飯は人が多い程、美味しくなるって言うしね」

(何と温かい心……)

 

この方の心も温かかった。言葉の一つ一つが、心を温かく包み込んでくれるかのようだ。

 

「もし…無惨を討ち倒したら、私と来君で、食事処を開こうと思うんだ。そしたら、お客さんとして来てくれるかな…?」

 

膵花様は、鬼舞辻を滅ぼした後も妾が生きることを許してくださるのだろうか。鬼舞辻が滅んだ後、妾も静かに生涯を終えようと思っていたが、膵花様の言葉で決意が揺らぐ。

 

「…ええ。必ず」

「そっか…ありがとう。美味しいご馳走、沢山用意しておくからね」

 

膵花様は笑顔でそう言った。

 

 

お二人が床にお就きになる頃、妾は夜空に浮かぶ月を眺めていた。

 

「今夜は月が綺麗だね」

「膵花様…」

 

妾の隣に膵花様が腰掛ける。

 

「弄月は妾の趣味であります」

「鬼になっても、人の心はまだ完全には消えていなかったんだね」

「そう…なのでしょう」

 

妾の腹の下辺りが疼く。食事で来様の幸せそうな笑顔を見てから、ずっと疼いていた。

 

「膵花様は、来様をどれ程慕っていらっしゃるのですか?」

「私は来君を……と~っても愛してるよ。この先何百年もずっと、彼への想いは決して変わらない」

 

膵花様も来様を一途に恋い慕っていた。

 

「膵花様が来様をとても慕っていらっしゃるのはよくわかりました。妾も来様を慕っております。ですが、決して妾は、お二方を引き裂こうとは思っておりませぬ」

「えっ…? 朱羽ちゃん? 何を言ってるの……?」

 

妾は膵花様の瞳を見つめる。

 

「我儘な振る舞いであることは重々承知しております。どうか、せめて一夜だけの夢を、妾に見させてください……」

 

膵花様は妾がこれから為そうとしている事を悟ったのか、最初はすぐ驚いていた。だが、すぐに表情を笑顔に変え、妾を受け入れるように両手を広げた。

 

「おやすみなさい。良い夢を」

 

妾は膵花様の胸に飛び込み、膵花様の体に乗り移った。かつて吉原遊郭で花魁の一人に乗り移った時と同じように。

 

目を開くと、自分の姿が膵花様になっていた。中に戻り、手鏡で顔を見る。膵花様の顔だ。しかし、藍色であるはずの瞳は、鮮やかな紫色へと変わっていた。妾の瞳の色である。

 

妾はお二人の寝室へと入る。

 

「お帰り膵花。月は綺麗だった…か……!?」

 

来様は膵花様に妾が乗り移っていることをすぐに見抜いた。

 

「朱羽…どうして膵花に乗り移って……」

「貴方様と……どうしても交わりたかったのです……お許しください」

 

来様は顔を朱に染め上げる。妾の表情もだらしのないものになっているのであろう。

 

「ど…どうするべきだ…? 中身は朱羽だけど、体は膵花な訳だし……膵花との契りだって慣れているはずなんだけどな……」

 

来様は小声でほそぼそと呟く。そんな来様に妾は耳元で囁く。

 

「最愛の妻からのお誘いを断るの? 来君…」

 

膵花様の口調で煽り、そしてそのまま来様の頬に手を添えて接吻すると、来様の心の中で何かがプツリと切れた音がした気がした。

 

妾は来様を押し倒し、一夜の契りを交わす。この瞬間が、妾にとって一番の至福であった……

 

 

 

 

第弐拾陸話 影に生きる者 ~清水幸利編~

 

俺は清水幸利。階級は己。炎柱・煉獄杏寿郎の元継子で、炎の呼吸から派生した影の呼吸の使い手だ。

 

同期には柱になった天之河と甘露寺、園部、菅原、宮崎、相川、仁村、玉井、そして選別前にはいなかったはずの檜山、近藤、斎藤、中野がいる。檜山達はいきなり藤襲山に現れて、全員天之河に守られながら生き延びたらしい。運が悪かったな。

 

南雲と同じオタクだった俺はずっと勇者になって皆からチヤホヤされたいと思っていた。そして教室からこの世界に飛ばされた時、俺は夢が叶うかもしれない、と思った。たまたま近くに煉獄邸があったから、俺はそこで知り合った甘露寺と一緒に煉獄さんに炎の呼吸を指南してもらっていた。

 

だが、俺は炎の呼吸を完全に習得することができなかった。煉獄さんには甘露寺とは違う意味で癖があると言われた。とにかく何か地味だという。この時ははガチで傷ついた。裏でちょっと泣いたし。でも千寿郎はもっと可哀想だった。そもそも呼吸を使えなかった。

 

そして最終選別から無事に戻り、日輪刀が届いた時、俺の刀の色は黒っぽい色に変わった。もしかして出世できないと言われる漆黒の刀かと思ったが、よく見たら煤みたいな濃い灰色だった。俺はこの時、「漆黒にならなくてよかった……」と思った。

 

俺は鬼殺隊士になってからずっと鍛錬を重ねていた。自分に合った呼吸法を編み出すために。炎の呼吸の型を参考にしたりもした。俺の技は地味だと言う煉獄さんの言葉を思い出し、緩急自在な歩法を取り入れたりしてどんどん完成に近づいていった。

 

そして、隊士になってから一年が過ぎ、俺は遂に自分に合った技を完成させた。

 

名付けて、「影の呼吸」。陰キャオタクの俺にピッタリな技だ。この技は気配を殺さないと十分に効果を発揮できない。更に、絶妙な剣裁きも必要とする。他の奴には真似をすることすら難しいだろう。炎の呼吸の面影は基本的な動き以外ほとんどない。

 

今俺は、煉獄邸の前にいる。たまたま近くを通りかかったから、久し振りに顔を見せようと思ったのだ。

 

「お邪魔しま~す。煉獄さん、いらっしゃいますか?」

 

玄関の戸が開かれる。そこにいたのは炎柱を務めている煉獄さん……ではなく。

 

「はーい、どちら様でしょうか……え?」

 

南雲だった。

 

「えっ……南雲、だよな…? お前」

「あ、うん……そっちこそ、清水君……だよね」

 

ここでクラスメイトの一人と再会するとは、よもやよもやだ。…煉獄さんの口癖が移っちゃった。

 

「もしかしてお前も…煉獄さんの所で修行してんのか?」

「そうだけど……清水君もここで修行してたのかな?」

「あ、ああ。炎の呼吸そのものは会得できなかったけどな」

 

俺は苦笑いで言ってみせた。

 

「はは……それはツイてなかったね」

 

南雲に慰められた。何か複雑だわ……

 

「それで、清水君はどうしてここに?」

「たまたま近くを通りかかったから、ちょっと顔出しに行こうと思ってな。その、煉獄さんは何処に?」

「ああ、煉獄さんなら任務に出たよ」

 

ツイてねぇ。煉獄さん留守なのかよ。

 

「そうか、ならまた出直すわ」

 

俺は踵を返して煉獄邸を後にした。その直後、俺に任務が入った。

 

任務の内容は、ある道場跡で不審な人物を見かけたから、調査に向かえとのことだった。

 

俺は鎹鴉の示す方向に向かって走り出した。

 

 

場所は変わってとある道場跡。近所の聞き込みでは、かなり昔に素流道場をやっていたのだが、道場主が毒殺され、その娘と門下生の一人が行方を晦まして以降、寂れていったという。

 

その夜、俺は道場跡に踏み込む。まるでボロボロだ。確かにこれはかなりの間放置されている。十年や二十年どころじゃないぞ。

 

「こんなところに人なんて住んでないだろ……」

 

夜に家に忍び込んで中を物色するって、完全に空き巣じゃねーか。まぁ金目の物なんてあるわけないだろうし、あったとしても盗らないけど。

 

庭の方を見ると、墓石らしき物が二つ立っているのが見えた。苔一つ生えてない。定期的に手入れがされている証拠だ。やはりこの廃屋には誰かいる。

 

俺は墓石に近づいていく。すると、人の名前らしきものが彫られていた。一つには「慶蔵」、もう一つには……

 

バキッ。

 

突然枝が折れる音がした。音のした方向を向くと、江戸時代の町娘にいそうな恰好の女の子がいた。雪の結晶のような髪飾りを着けていて、瞳には雪の結晶みたいな模様が付いてる。

 

だが、瞳孔は縦に割れている。つまり、この娘は鬼だ。

 

鬼だとわかった瞬間、俺は刀に手を掛ける。すると、鬼の娘は逃げ出す。

 

「あっ……待て!」

 

俺も急いで追いかける。しかし鬼の娘の足が速くて中々追いつけない。

 

「くそっ、このままじゃ見失っちまうぞ……!!」

 

既に林の中に足を踏み入れてしまっている。このままでは鬼の娘だけじゃなく帰り道まで見失っちまう。

 

(こうなったら一か八かで賭けに出るっきゃねぇ……!)

 

鬼の娘は俺の方を一度も向いてないのにまるで俺の視界から消えるように逃げていた。恐らく、俺がどこにいるかを把握している。

 

「影の呼吸 肆ノ型 常闇花道(とこやみはなみち)

 

木々を抉りながら先程よりも速いスピードで鬼の娘に迫る。鬼の娘も俺が急にスピードを上げて来たことに吃驚したのか、一瞬だけ動きが止まる。

 

その隙を俺は逃がさず、一瞬で間合いを詰めた。そして遂に煤色の刀が鬼の娘に届いた……と、この時の俺はそう思っていた。しかし…

 

「血鬼術 万華鏡錦先割(まんげきょうにしきさきわれ)

 

鬼の娘は雪の結晶みたいなバリアを張り、俺の攻撃を弾いた。そして高く飛び上がり、そのまま林の奥へと姿を晦ましていった……

 

――ドンッ!

 

「ちきしょう!!」

 

鬼を取り逃がした悔しさに、俺は地面を思いっ切り叩いた。鬼を取り逃がしたのは今回が初めてだ。それ故、悔しさも大きかった。

 

しかし、何か妙に違和感を感じていた。あの鬼は俺が刀に手を掛けた瞬間、戦わずに一目散に逃げた。俺が柱だったならまだわかるが、階級は己だ。普通なら襲い掛かるはず。そして、俺を見る目はかなり怯えていた。つまり、他の隊士とも遭遇したことがある、ということだ。そして、追い詰められたこともあるという事だ。

 

それに、反撃らしい反撃もしてこなかった。俺の攻撃を防御はしたが、それだけ。

 

あと、道場跡には血痕がほとんど残っていなかった。ある一室の畳には血痕が付いているが、恐らくそれは誰かが吐血したものだろう。人を喰っていたには血の量が明らかに少ない。

 

ラノベを読みまくったお陰で、こんな風に冷静に考察ができるようになっていた。

 

「ああ、夜も明けて来たな。戻るとするか」

 

俺は鬼が逃げた方角に背を向け、来た道を引き返していった……

 

 

 

 

第弐拾漆話 忍見習いは鬼狩りへと転じる ~野村健太郎編~

 

教室からこの世界に飛ばされた俺が最初に来た場所は、忍の里の近くだった。しかもどういうわけか、一日経つごとに一歳若返っていき、十七日目に里へ入った時には赤ん坊になった。若返りは俺が赤ん坊になった時に止まり、そこから普通に歳を取っていった。ちなみに自我は赤ん坊の時からはっきりしている。どうなってやがんだ。

 

赤ん坊の俺を拾ったのは、宇髄一族という忍の家系だった。忍は本来江戸の頃には絶えているはずだったが、残ってるところもあったんだなって思った。

 

俺が四歳になった時に、忍の訓練が課された。めちゃくちゃきつい訓練だった。五歳になる前に三人死人が出た。

 

そして棟梁に「自分を殺そうとしてくる敵は殺せ」と命じられ、殺し合いを行った。最初は躊躇していたが、相手を殺さなければ自分が殺されるので止む無く殺した。多分クラスメイトの中で人を殺したの俺だけだろうな。俺だけであってほしい。そうじゃなきゃ愛ちゃん先生が悲しむ。愛ちゃん先生に会えたら真っ先に謝ろう。

 

最終的に生き残ったのは俺を含めて三人だけだった。そして宇髄家の長子、天元様からある事実が告げられた。

 

それは、「強い跡取りを育てるために兄弟で殺し合いを強いられている」という事実だ。忍というものが、思っていたのとは違うことを強く認識させられた瞬間だった。いや俺赤の他人だよね? なのに俺も殺し合いに参加してるし。養子ってことになってんのかな?

 

しかし、弟の方は棟梁と同じ考え、同じ価値観だった。俺には理解できなかった。それは天元様も同じだったようで、弟に刃を向けられた天元様は、雛鶴様、まきを様、須磨様を連れて里を抜けた。俺も天元様達の後に続いた。

 

こうして天元様、雛鶴様、まきを様、須磨様、そして俺は抜け忍となった。あの後、宇髄家がどうなったのかは知らない。一人残った弟が一族を継いだのか、それとも滅びてしまったのか。

 

 

『俺はきっと、地獄に落ちるだろうな』

 

或る日、天元様がこう言った。里を抜けてからよく言っていることだ。知らなかったとはいえ、兄弟殺しをしたんだから。まぁ俺も三人殺してるし、俺も地獄行きなんだろうなと思った。

 

『いやぁあああ!! ダメですぅ!!! 死んじゃ嫌ですよぉ!!!!』

『こらっ、噛むんじゃねぇ』

『貴方が死んでしまえば、(わたくし)たちはこれからどうやって生きて行けばいいんですかっ……』

『二度とそんな事を言わないでください! 天元様!!』

 

そんな天元様に、雛鶴様は泣き、まきを様は怒り、須磨様は噛んだ。その光景を目の当たりにしてから、天元様はあんな事は言わなくなったし、俺も「自分は地獄行きだ」と考えるのは止めた。

 

その後、俺達は鬼殺隊へと身を寄せていくことになる。忍としての在り方を否定するように。

 

だが、俺達は育手を介した正式な修行を受けていなかった。そこで天元様は五代流派の一つ、雷の呼吸を彼のスタイルに合わせてアレンジした技を編み出した。

 

『こんな派手で変わった技を使う奴は、恐らく俺と健太郎だけだ。派手に体に叩き込め』

 

俺の日輪刀は天元様とお揃いのでっかい出刃包丁みたいな形をしている。体格の差もあって、サイズは俺の方が小さいけど。それでもちょっと重い。仕組みは知らないが、中に天元様が自作した爆薬丸という爆薬を仕込んでいる。ちょっと掠っただけで爆発するし、めちゃくちゃ五月蝿い。だから、「音の呼吸」なんて名前にしたんだろうな。

 

最初は爆発でこっちが吹き飛んでたりして、天元様に叩かれてたけど、訓練を重ねるうちにだんだんと爆発の衝撃に耐えられるようになった。でもやっぱ五月蝿い。

 

そうして俺は最終選別に行かされた。そこでクラスメイトの永山、遠藤、辻、吉野、中村と再会した。

 

「よっ、お前ら。無事でよかったな」

「「「「「野村(君)!? 」」」」」

 

皆俺の恰好を見て驚いている。そりゃあ忍なんてもうこの時代にはいないわな。

 

「ど、どうしたんだよその恰好……」

「ああ、これか? 忍の里で忍術の修行をしてたんだよ」

 

俺は自分がしてきたことを皆に言う。驚いてはいたけど大してリアクションが大きくないのがちょっと悔しい。

 

「わっ、遠藤。地味に気づかなかったぜ」

「相変わらずひどいな……それよりどうしたんだよその口調……」

 

しまった。天元様の口調が移っちまってた。

 

「ま、まぁ気にすんな。それより、もう直ぐ始まるぞ。最終選別」

 

俺の一声で全員が選別に集中する。白髪の綺麗な女の人が選別の説明をする。「では、行ってらっしゃいませ」の一言で全員がほぼ同時に山の中腹を越えた。

 

(忍は基本、コソコソと地味に任務を熟していくんだぜ)

 

俺は木に飛び乗り、他の木へと飛び移りながら鬼を探す。すると、早速見つかった。初めて鬼を見たけど、見た目はほぼ人間そっくりだ。

 

(まだ気づいてはいないみたいだな。やるなら今っきゃねぇ!)

 

俺は鎖で繋がれた二本の日輪刀を頭上に構える。

 

(音の呼吸 壱ノ型)

 

俺の存在にまだ気づいていない鬼に、俺は頭上から飛び掛かり、刀を振り下ろす。

 

(轟!!)

 

二本の刀が鬼の頸をスパッと斬り落とし、地面に叩きつけられて爆発する。

 

背後から鬼がもう一体姿を現す。俺は鬼に向き直り、刀を構える。

 

(音の呼吸 弐ノ型)

 

複数回斬りつけ、斬撃と爆発が折り重なって一つの芸術作品のような派手さと美しさを作り出す。

 

衝撃反響(しょうげきはんきょう)!!)

 

やはり天元様の考えた音の呼吸は凄い威力だ。大抵の雑魚鬼なら一撃で仕留められる。そして断面がありえないくらいめっちゃ綺麗。

 

俺は二刀を背中に固定し、次の鬼を探す。

 

 

「はぁはぁはぁ……何なんだよあのバカデカい鬼は!?」

 

現在俺は永山と一緒にとある鬼から逃げている。その鬼はただの雑魚鬼じゃない。明らかに長生きしている。まず体がめちゃめちゃでけぇ。そして腕が気持ち悪いくらい生えている。

 

「最終選別の鬼は人を二、三人喰っただけの弱い鬼のはずなのに、彼奴は明らかに三十人以上喰ってるぞ……」

「今の俺達じゃ太刀打ちできない……」

 

幸い俺達には気づいていないのか、追ってくる気配はなかった。

 

「ここまで来れば……もう大丈夫だろう」

「それにしても何だったんだあの鬼。派手に手なんか生やしやがって」

「分からねぇ。少なくとも俺達じゃ敵わないだろうな」

 

だが、あんな鬼を野放しにはどうしてもしておけなかった。かと言って自分達が死んでしまえば意味がない。俺達はあの鬼がいつか討伐されるように祈った。

 

「キヒヒヒヒ、丁度いい所にガキがいたなァ。久方ぶりの人肉だぁ!!」

 

すると、一体の鬼が突然俺達に襲い掛かって来た。俺は日輪刀に手を掛けたが、永山に静止される。

 

「俺がやる」

「ほぅ、先に死にたいかぁ。いいだろう、死にやがれ!!」

 

鬼が永山に向かって爪を振るう。永山はそれを跳んで避けた。

 

「岩の呼吸 陸ノ型」

 

永山は上から刀をまるで落石のように振り下ろす。

 

岩戸雪崩(いわとなだれ)

 

振り下ろされた刃が鬼の頸を断ち、そのまま地面に窪みを作った。何て威力だ。

 

「す、すげぇ……」

 

永山は刀を鞘に仕舞う。

 

「柔道部だったよな、お前……」

 

すると、永山は苦笑いで答えた。

 

「実は刀の扱いにはまだ慣れてねえんだ。鎖鉄球の付いた手斧なら懐に隠してある。そっちの方が得意だから」

 

いやいやそっちも物騒だな。しかも鉄球は棘付きだという。当たったら痛そうだなぁ。

 

「そ…そうかよ……」

「そういやお前はどんな呼吸を使うんだ?」

「音の呼吸って言うんだ。めちゃくちゃ爆発して五月蝿い呼吸だよ。天元様から教わったんだ」

「天元様? お前の恰好からしてどっかの忍者か?」

「ああ。元忍で音柱をやってる、宇髄天元様だ」

 

自分の師をちょっと自慢してみた。

 

「柱の直弟子か……俺と一緒だな」

 

何ですとぉぉぉ!?

 

「岩柱の悲鳴嶼行冥さん。その人が俺の師匠だ。鬼殺隊最強クラスの凄い人なんだぞ」

 

最強クラスって……ヤバ過ぎでしょ。

 

その後も互いに自分の師匠の話に驚いたり笑ったりしながら、鬼を倒していき、気づけば七日経っていた。

 

最終的に生き残ったのは中村、永山、遠藤、辻、吉野だ。あとは蝶の髪飾りを着けた姉妹や、切り傷だらけの白髪の奴。

 

この後、隊服を作るために採寸をしてもらい、刀の材料である玉鋼を選んだ。もう自分専用の奴あるんだけどな。

 

そして重い隊服を持って音屋敷へと向かう。

 

「た…ただいま戻りましたぁ……」

「お帰り~!!」

 

俺を真っ先に出迎えてくれたのは須磨様だった。雛鶴様、まきを様も後に続く。

 

「アンタなら無事に生きて帰ってくると思ってたよ」

「あ、あの…天元様は今どちらに……?」

「天元様なら任務でお留守だけど…」

 

マジかよ……久し振りに頭でも撫でてもらいたかったんだけどな。

 

天元様は五日後に帰って来た。

 

「戻ったぜお前ら! おっ、派手に生き残ってんじゃねえか。流石俺の継子だな」

 

そう言って天元様は俺の頭を撫でる。

 

「うわっ、ニヤけてやがる。気持ち悪ぃ」

「ちょっと酷くないですか天元様!?」

 

天元様は「冗談だ」と笑って俺の頭をぽんぽんと叩く。

 

刀は十日後に届いた。日輪刀の形は最終選別で使った奴と同じ形、同じ大きさのものだった。日輪刀を持つと、刀身が橙色に染まった。黄色系統だから雷の呼吸に適正持ってるのか。

 

ちなみに選別で使った奴は、この後新たに弟子を持った時に持たせようと天元様が部屋に飾った。

 

早速鴉から指令が入る。俺は直ぐに隊服に着替えた。

 

「おっ、良いねぇ。随分と派手になったじゃねーか」

 

今の俺の服装は半袖の隊服の下に網シャツ、頭には額当てをしている。まんま忍者じゃん。

 

「天元様には敵いませんよ……」

「地味に謙遜すんなって」

 

天元様が背中を優しく叩いた。

 

「初の任務、派手に頑張れよ」

 

そう言って天元様は俺を送り出してくれた。

 

「では、野村健太郎。行って参ります」

 

俺は音屋敷を背に、初めての任務へと一歩を踏み出すのだった……




どうも、最近目覚まし時計が効果を発揮しなくなった最果丸です。

新キャラの門獄ですが、口調はリゼロのロズワールが元ネタです。

清水が遭遇した鬼の正体、勘の良い人なら(確信とまでは行かないだろうけど)わかるかもしれません。


そして死んでもなお回想に登場する手鬼。


小説内オリジナル技紹介 (技出すぎぃ)

全集中の呼吸
影の呼吸 肆ノ型 常闇花道
直進し、乱れるように抉り斬る。炎の呼吸 玖ノ型 煉獄を原型としているが、高い攻撃力を速さに振っているため、攻撃力は若干劣る。

音の呼吸 弐ノ型 衝撃反響
複数回敵を斬りつける。爆発を重ねるごとに威力が増していく。

岩の呼吸 陸ノ型 岩戸雪崩
手斧と鉄球を同じ方向から振り回して敵を砕く。刀の場合は上から真下に振り下ろし、足元の敵を攻撃する。

血鬼術
鬼焦熱葬
敵を炎で焼き尽くす。禰豆子の爆血とは違い、燃やす対象を選べない。

大黒縄輪
燃え盛る車輪で滅多打ちにする。

万華鏡錦先割
空気中の水分を巨大な雪の結晶の形に凍結させ、敵の攻撃を弾く。

大正こそこそ噂話

「無限城に籠ってばかりの門獄。彼の趣味は双六と実験」

無限列車編は犠牲者無しにしてほしいですか?(魘夢除く)

  • 犠牲者ゼロで!(煉獄さんも)
  • 原作通り(煉獄さんとお別れ)
  • 煉獄さん以外ならおk
  • 猗窩座を倒せ!
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