GANTZ:F   作:うたたね。

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プロローグ2話目投稿です。
過去に投稿したものと似た部分がありますが、構成を変えたため、こちらに移しました。
なので、既視感がある部分も多いと思います。


0025 兄弟

 

 

 憂鬱とした表情で、少年は電車に揺られていた。

 抜け出したのはまずかったか、と思ったが、それでも、と張り切って東京へと足を運んだ。

 今の東京は危険だ。いつ襲われてもおかしくはない。だから、近づくのは、少年の属する組織のボスから禁止にされている。

 少年はバカではない。寧ろ、聡明な部類に入る。今、自分がやっている行動がどれほどまでに命知らずのものであるかは理解している。こんなことをしていることがあの男にバレれば、相当な叱責を受けることは間違いない。

 

 しかし、同時に殺されることはない、とも少年は冷静に分析していた。

 

 何も無根拠というわけではない。それなりの根拠があっての判断だ。それを含めても、バカな行動であることには違いないが。

 今、少年の所属している組織の戦力はかなり落ちている。新入りである少年の耳にもそのことは入っている。組織が目の敵にしている『黒スーツ』という存在にやられたとのことだった。

 それを踏まえ、ボスは徒らに戦力を減らすことを恐れ、温存に徹することにした。故に、罰を受けても処刑など、命を取られる心配はない。如何に少年が新入りとは言えど、今の組織にとっては貴重な戦力の一人であることには違いない。

 

(ただ、俺が死ぬのも時間の問題なんだろうな)

 

 組織の敵に襲われる可能性が高い、というのもあるが、そう思い至ったのは、ここで会敵しなくとも、いずれ殺し合いになることは分かっているからだ。

 

 

──俺は神に愛されている

 

 

 ふと、いつの日か思ったことが頭を過ぎった。

 

 なんて。こんなことを大真面目に考える奴がいたら、そいつはきっと思春期特有の厨二病に違いない。口に出して誰かに聞かれでもすれば、間違いなく笑い者だ。

 けれど、偶に思ったことがあった。

 もしも神が、特定の人間を愛すというのなら──きっと、自分は愛された存在なんだろうな、と。

 

 自意識過剰。ナルシスト。

 けれど。

 そう思わざるを得ないのが、自分のスペックだ。

 14歳なのに背が180cmもあるし、勉強なんて苦労しなくとも聞いていれば頭に入ってくる。身体だって、特にトレーニングなんてしなくたってしっかりと筋肉が付いている。その筋も見せかけのものではなく、スポーツだって万能だ。

 顔もモデルみたいに整っているから女にだってモテる。今付き合っている彼女も年上で顔もスタイルもいい。

 恵まれている──というのは、間違いではない。

 

 もしも。もしも人間が神の味方か悪魔の味方か、どちらかに付くような選択を迫られたとして。

 神と悪魔。

 善と悪。

 自分がどっち側なのか。

 きっと、自分は神側だろうな、と何となく思う。

 

 だからあの頃は、俺の人生は順風満帆で、何一つ躓くことなく駆け抜けていくんだろう、と。

 

 そう、思っていた。

 あの時までは。

 

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 正直なところ、今でも信じ難い。事実であることは分かっているのに、少年の心がそれを受け入れきれていない。

 そうだ。分かっているのだ。

 自分が人ではなくなっていることなんて。

 

 車に轢かれても骨折どころか痛みすらない。

 擦り傷程度なら瞬く間に回復する。

 

 何より──人の血が、美味しく感じる。

 

 そんな受け入れ難い事実が、幾ら少年が否定しようとも、オマエは人間じゃないのだと囁くのだ。

 そして、受け入れたくない事実は──いつの間にか、少年の中で"当たり前"へと変わってきている。

 

(……いてェ)

 

 頭痛が、酷くなっている。

 そういえば、最後に血を飲んだのはいつだったか。

 吸血鬼へとなった人間は、定期的に人血を摂取しなければひどい頭痛に苛まれることになる。

 氷川と呼ばれる吸血鬼のリーダーが言っていたことだ。

 まだ少年に吸血への拒否感があるのは、未だナノマシンが身体に完全に馴染みきっていないからだ。

 いずれは。

 彼らのように見境なく──愉しそうに、人を殺して血を吸うようになるのだろうか。

 それは。

 そうなれば。

 果たしてどれほど甘美で、気持ちよく──

 

(ふざ、けン な……オレは──!)

 

 ギシリ、と。

 手に力が入る。

 持っていた吊革──輪っかの部分に、少年の手形が残った。周りから驚きの目線が向けられるが、少年にそんなことを気にする余裕なんてなかった。

 

 近々、戦争が起こるという。

 その戦争で生き残れるかわからない。

 いや、可能性は低いだろう。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。新入りの少年が、そんな奴らを相手取って勝てるとは思えない。

 だから。

 最後に家族や友人に会いに行こうと。

 そう思って、リスクを冒してでも東京へ戻ってきた。

 それは不正解だった。

 血を摂取していなかったせいで、冷静さを失っていたのだろうか。

 ここは、あまりにも血の誘惑が多過ぎる。

 

 いつのまにか、電車は停車していた。

 少年は逃げるようにして、電車から飛び出す。ここが何駅であるかなんて、関係なかった。

 とりあえず、外に出て、人気(ひとけ)が少ない場所へ行かなくては。

 衝動を落ち着かせ、人が少なくなった時間帯に千葉に戻ろう。

 

 心の底から湧いて出てくる本能を必死に抑え込む。それ以外何も考えられない──そんな時だった。

 

 

「──()()()?」

 

 

 振り返る。

 そこには、()()()()()()()()()()()()()──玄野計がいた。

 

「えッ、計ちゃんのお兄さん?」

「ちょッ、ちげーよ! 弟ッ、弟だッて!」

 

 少年──玄野アキラは、思わぬ存在の登場に少なからず驚いた。

 最後に見たのは、2年も前だ。

 計が中学を卒業し、家を出て行ったあの日以来。

 

 ただ。

 あの頃の兄と今の兄は大きく違う。

 見た目ではない。

 中学の頃は死んでいた、瞳。

 今はそこに、強い意志が宿っている。アキラの彼女にも負けないくらい美人な恋人もいるし、どうやらしばらく見ない間に何かがあったようだ。

 

「……変わったな、兄貴」

「えッ」

 

 まさか、返答が返ってくるとは思ってもなかったのだろう。間抜けな声を兄はあげる。

 仕方がない。兄弟らしい会話なんて、最後にやったのはいつだったかだろうか。少なくとも、アキラにそんな記憶はない。もしかしたら、一度だってないのかもしれない。

 

「じゃあな」

 

 最後にそう呟いて、アキラは二人に背を向けて、エスカレーターを昇ってゆく。

 今日はもう、ネット喫茶か何処かで時間を潰すとしよう。

 こんな調子じゃ、家族たちと会っても面倒をかけるだけ。問題も起きかねない。

 

 

 

 ──この日を境に、玄野アキラは姿を消した。

 

 

 

◆◇

 

 

 

「計ちゃんの弟くん──アキラくんだッけ? 中学生なのにとッても背が高かッたわね」

 

 玄野宅。

 玄野と桜丘は、一緒に作った夕飯を食べながら、今日の出来事について語り合っていた。

 今日は二人で新宿へデートしに行っていた。普段は桜丘のバイクに乗って行くのだが、たまには歩いて行こうということで、この日は電車やバスなどの交通機関を利用していた。

 生姜焼きを口に運びながら、玄野はやはりその話を切り出すか、と顔を顰めた。

 家族との関係を桜丘にはまだ話していない。

 玄野の両親は玄野には関心を持たず、才能あふれるアキラにばかり愛を注いでいた。だからと言って、アキラを恨んでいるわけではないが、何となく気まずい関係なのだ。兄弟らしい会話など殆どしたことがない。

 そのため、桜丘にアキラのことを聞かれると、何というかその──困る。複雑な家庭事情を聞いて、冷めた雰囲気になるのが目に見えている。

 だが、そうといって嘘をついて話を合わせる、というのも何だかといった感じだ。玄野としても、なるべく桜丘に嘘は吐きたくない。

 

「そう、だな。俺も久々に見たけど、180はあったと思うぜ」

「やッぱりそれくらいはあるわよね〜。あ、でも、計ちゃんの方が私は好みよ♡ 可愛いし」

「男に可愛いッて、褒め言葉じゃねーンだけど」

「あら、そう? けど、そうね。戦ッてる時の計ちゃんは、めちゃくちゃカッコいいわよ」

 

 面と向かってそう言われると、恥ずかしい。

 頬が熱くなる感覚を覚えながら、玄野は目を逸らす。

 

「ね、計ちゃん」

「な、なンだよ」

「別に、話したくなかッたら、話さなくていいから」

「──」

 

 ()()()()()()

 桜丘の言葉に玄野は驚いた。

 彼女にこれまで、家族のことは話したことはない。仄かしたことすらだ。

 いや、だからこそ気づいたのかもしれない。

 

「聖……」

「計ちゃん、家族のこと全然話題に出さないからさ。そーいうことなンだろうなッて」

「ゴメン」

「謝らなくていいの!」

 

 そう言って、桜丘は玄野を抱きしめた。

 ああ、やはり彼女は優しい。

 ガンツによって甦らされた先は地獄だった。けれど、彼女と出会えたことは、とても良いことだったと思う。

 それは、感謝してもいい。

 

「ただま、計ちゃんが話したくなッたら、話してよ。だッて、私たちが結婚するなら、挨拶しに行かなくちゃいけないじゃない?」

「ぶーッ! け、結婚!?」

「え、結婚する気はないの?」

 

 うるうると瞳を潤ませる桜丘に、うぐっ、と玄野はたじろぐ。

 

「い、いや……別に結婚はその……したいけどさ」

「ふふ」

 

 玄野の知るよしもないが、今の発言はレコードによって録音されている。

 

「あ、でも伏黒さんが、別に結婚する時に親の承認はいらないッて言ッてたぜ」

「あの駄目ゴリラ、余計なことを……」

「せ、聖……?」

「何でもないわ、計ちゃん」

 

 本能的に玄野は女の怖さを知った。

 

「けど、挨拶に行きたいッてのは本当よ」

「そンなに?」

「そンなに」

 

 どうやら、桜丘は本当に玄野の両親に会いに行きたいらしい。理由を訊ねると、微笑みを添えて彼女は答えた。

 

「計ちゃんにとッては、あンまりいい人たちじゃないかもしれない。それでも、その二人がいなかッたら、私は計ちゃんと出会えなかッた」

「……」

 

 それは、確かにそうだ。

 世間一般的に言われるような、素晴らしい両親ではないと思うが、それでも最低限のことはしてくれていた。もしも玄野に興味がなかったのなら、仕送りなんてしないだろう。まぁ、世間体を気にしての可能性もあるが。

 

「それにね、計ちゃんは立派な人だッて──伝えてあげなくちゃ」

 

 その言葉に、玄野は目を見開いて──そして、笑った。

 

(そうだ、俺にはもう……俺を見てくれる人が、いるンだ……!)

 

 もうあの頃の玄野はいない。

 ひとりぼっちで、ただただ惰性と諦観で生きていた頃とは違う。

 仲間がいて、恋人がいる。

 

 久々の弟との邂逅は、悪いことじゃなかった。

 いつか、アキラに聖のことを紹介出来る日が来ればいいな、と。

 なんとなく、そう思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆

 

 

 一方その頃、東京競馬場にて──

 

 甚爾と西が競馬場に訪れていたのは、ただ密会を行うためではない。寧ろ、それはついで──否、目的のレースが始まるまでの雑談でしかないのだ。

 伏黒甚爾と西丈一郎。

 彼ら二人は、競馬の勝ち金で勝負をするためにこの東京競馬場へと訪れていた。

 

「適度に楽しむ博打なんざあり得ねぇってことだ」

 

 ひらひらと馬券を揺らし、不敵に笑う甚爾。

 西は目敏く甚爾が賭けた馬を確認し、それを鼻で笑う。

 

「ハッ、立派だな」

「あ?」

 

 西がポケットから取り出す。

 取り出したものは、西が選んだ馬券。

 そこに記されていたのは、甚爾が選んだ馬とはまったく別の馬の名前。

 

 西の競馬の勝率は9割を超えている。

 初めての敗北は、初見の時。

 自信満々に馬を選んだ彼は、ものの見事に外れ、同じく外れたはずの甚爾に死ぬほど煽られた。西にとって屈辱的な記憶だ。

 

 だが、その記憶が西丈一郎の逆鱗に触れた!

 

 西はそれから過去数十年にわたる競馬のデータを洗い出し、勝率の高い馬や組み合わせを導き出すプログラムを作り上げた。

 それ以降、西は連勝に連勝を重ね、かつての鬱憤を晴らすべく甚爾を煽り散らしていた。

 

 基本的に西は、身体能力や最も得意とする頭脳戦においても甚爾には及ばない。

 プライドが高く、沸点が低い西だが、その辺りに対して何か思うところがあるわけではない。伏黒甚爾という人間は、最早己とは違う別の生物であると考えているからだ。

 しかし、それはそれとしてこうして他の分野では敵わない相手を下に見れるというのは、西の自尊心を埋めるのには十分だった。

 

「また負けても同じセリフが吐けるならなァ、おっさん!」

 

 競馬場の熱狂に当てられてなのか、西のテンションはおかしくなっていた。

 

 西は甚爾に再生され、以降何かとミッション以外の日常で行動する機会が増えた。そして理解する。

 この男──伏黒甚爾は、ただ戦闘や戦略面の才能があるだけで、それ以外は基本的にその辺に跋扈する駄目人間と同じ存在であるのだと。

 

 そんなクズに西丈一郎が負ける道理はない。

 今日もまた、西は馬券を握りしめ敗北に項垂れる甚爾を馬鹿にし、見下すのだ。

 その光景が、鮮明に脳裏に思い浮かぶ。

 

「負ける?」

 

 対して甚爾は、そんな西の態度を見て一笑に伏す。

 このクソガキが初戦以降、何らかの方法で馬券を的中出来るようになったのは認めよう。

 呪力ならぬ競馬力。

 西丈一郎と伏黒甚爾とでは、その間に圧倒的な格差が存在している。

 

(だが、競馬に絶対なんてものはねぇ。このクソガキにそれを今日は分からせてやる)

 

 甚爾が握り締めているのは、1週間考えに考え抜いた渾身の馬券。

 

(この日のために、ステルスを利用して馬舎に入り込み、馬の様子、騎手の調子、作戦──全てを聞いてきた)

 

 普通に人として終わっていた。

 

 だが、これにより両者それぞれが──

 

 

「勝負はこれからだろ」

 

 

 120%の情報量を獲得するに至った!!!

 

 

 ファンファーレが鳴り響き、静寂が馬場を支配する。

 今か今かとレースの始まりを待つ甚爾と西を含む会場の観客。

 各馬を保有する陣営。

 そして。

 これから先頭の景色、その栄光を掴み取るために駆け抜ける騎手と歴戦の馬達。

 

 張り詰め、緊迫した空気。

 

 それらが最高点に到達した時、歴戦の猛者達を留めていたゲートが開く。

 

 

 会場を、歓声が包み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 二人とも軸にしていた馬が落馬して負けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

 

 一夜にして地獄と化した()()

 多くの人間の死体と()()()()()()()()があちらこちらに転がっている。

 血肉の生臭さが充満するその場所で、二人の少年が立っていた。

 

 困惑。

 焦燥。

 疑念。

 

 それらの感情を孕んだ表情を浮かべた彼らは、震える声で目の前に立つ『敵』の名を口にする。

 

 

「アキラ、何でおまえがこンなところに」

 

「……兄貴」

 

 

 本来、出会うはずのない時、場所で。

 彼ら兄弟は『再会』する。

 

 

 




オニ星人編、開幕です!
続きは頑張って書くから待っててください!!!!

【おまけコーナー】
・パパ黒
ガンツのステルス機能をあまりにも終わり尽くしている目的のためにプライベートで使用している男。
契約通りにお互いに情報交換をしており、割とプライベートでも会ったりする。甚爾が部屋のメンツで一番会ってるのが西くん。そもそも最近は訓練にも顔出してない。玄野から金返せ、と言われているがフル無視。

・西くん
甚爾が集合場所を賭場に設定するせいでいつの間にか西くんも賭け事にハマりつつある。とはいえ、甚爾みたく運が悪かったりするわけでもなく、普通に引き際とかは分かっているため、勝率は高い。というか収支は初回のみマイナスで、それ以降はずっとプラス。今回もこの後のレースで普通に取り戻してる。甚爾は負けた。


感想、評価お待ちしています!
あと、GANTZの考察がいちばんの楽しみです♪

GANTZ:F 完結後に書いてほしいもの

  • GANTZ:Gにパパ黒√
  • かっぺ星人後からパパ黒介入√
  • チャットルーム回
  • その他(個人でメッセージでどうぞ)
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