「ふんッ……!」
地面を踏み締め、身体を捻り、鍛え上げられたその肉体を標的に叩き込む。
刹那、空気が爆ぜる。
八極拳──鉄山靠。
鍛え上げられた肉体。そこから繰り出される技の極みは、容赦なく敵の肉体を破壊する。
十数メートルほど吹き飛ばされ、壁を貫き、建物の中に転がった星人──オニ星人の肉体がひしゃげる。
関節はあらぬ方向を向き、左腕と右足は捥げている。
決して少なくない量の血液が地面に広がる。
「が、ぁ……!?」
しかし、そんな状態になってもなお、オニ星人は生きていた。
(……ッ! な、ンだコイツッ!? オレが衝撃を消化出来ないだと!? どんな膂力してやがンだッ!)
このような状態でもオニ星人が生きていれられるのは、彼が一介のオニ星人とは違う
肉体を質量を無視し、自由自在に作り変えることの出来る彼は、その力を応用し、その身に浴びた衝撃を無力化出来るという力を持っている。
その力を使い、彼はこれまで多くの黒スーツの戦士たちを葬ってきた。
今回もその筈だったのだ。
彼らと行動を共にしていたうちの一人の姿に化けて近づき、隙を見て殺そうとした腹づもりが、何処からか見ていた狙撃手に撃ち抜かれ、正体を看破された。
見破られたとはいえ、焦りはなかった。寧ろ、強敵と戦えることに愉しさを覚えるほど。
しかし、その結果が今の状況だ。
この髭面の黒スーツの男は、埒外の膂力を持ってこちらの耐久力を遥かに上回るダメージを与える。
他のオニ星人とは違い再生能力を持つ彼だが、限界は当然の如く存在する。
受けたダメージは無視出来るものではない。
(……癪だが、逃げてここは一旦形勢を……そこらの人間を食って、補給する)
幸い先ほどの攻撃で吹き飛ばされたため、黒スーツとは距離がある。
建物の中にいるため、狙撃の心配もない。
ごぼり、と肉体が強く脈打つ。次の瞬間、その体はみるみるうちに小さくなり、蠅の姿へとなり変わる。
このまま彼らが攻撃出来ない排水路などを使用し、逃走を図るとしよう。
──そうして、羽を羽ばたかせた瞬間の出来事だった。
視界が、真っ二つに割れる。
(な、にが……?)
困惑と疑問。
しかし、薄れゆく意識の中、その答えはすぐにやってくる。
バチバヂバヂ、と。
背後から電磁波音が現れる。その音の正体を、彼らとの戦いに慣れているオニ星人は知っている。
(ステルスッ──!?)
スーツに搭載されている姿を透明にする機能。
しかし、消せるのはあくまで姿だけで、匂いや発生する音などは消すことは出来ない。
本来ならば、そんな子供騙しに欺かれはしない。
だが、想定外の強さを持つ相手に瀕死のダメージを受けたことによる動揺から、完全に頭の中から抜けていた。
「よッし、中ボスゲットだな」
ギョーン
そんな軽薄な声と共に放たれる、独特な銃撃音。
それを最後に、オニ星人の意識は完全に途絶えた。
「……完全に死んでるな」
火花を散らし、空間が歪む。
薄らと姿を現したのは、ステルスでその身を隠していた西だった。
レーダーで星人の反応が消えたことを確認した西は、加虐的な笑みを浮かべる。
今、彼がトドメを刺した星人は、他のオニ星人とは一線を画す
点数は分からないが、少なくとも30点は超えているだろう。
西一人では絶対に挑むことのないレベル。しかし、それも他人が追い詰めた瞬間ならば、話は変わる。
風が近距離から、東郷が遠距離から削り、確実に殺せるタイミングで西はそれを横取りする。
観察する時間は十分にあった。Xガンの連撃や風の埒外の暴力による攻撃で敵のキャパシティを突破するのも手段のひとつだが、西はこの星人は斬撃に弱いのではないか、と仮説を立てた。
その仮説は、今目の前のこの光景が立証している。
(癪だが、おっさんの言うこと聞いといて正解だッたな。これからも複数の攻撃手段は持ッておくべきか)
本人には絶対に言わないが、内心で駄目ゴリラに感謝する。
肉塊と化したオニ星人に目もくれず、躊躇なく踏み潰しながら西は屋外に出る。そこには風とタケシ、そして東郷が立っていた。
彼らを見て、西はニヤリとシニカルに笑う。
「アンタ達のおかげで点数ゲットだ。その調子で頼むぜ?」
「……」
「……チッ、気味悪ィ」
仏頂面で反応の乏しい風に顔を顰める。こういう感情の揺れない人間は苦手だ。利用はしやすいが、面白味がない。つまらない反応だ。
西に星人を横取りされたのにも関わらず、何とも思っていないようだった。
東郷や風は、ミッションで点数を稼ぐことに執着はない。
東郷はただ任務をこなし、風はただ強敵と戦うことが出来ればそれでいいのだ。
彼らを揶揄しても望んだ反応は得られないと判断した西は、更なる点数を稼ぐべく、残りの星人の位置を確認する。
尤も、点数を稼ぐとはいっても、彼のやり方は変わらない。
仲間が必死になって星人を追い詰めたところを掠め取るだけのこと。
今回のミッションは星人の数の多さもさることながら、ボスクラスがおそらく複数体いることといい、高得点を獲得しやすい内容となっている。
今倒した肉体を変化させるオニ星人も、少なくとも30点はくだらないだろう。
うまくいけば、一気に100点どころか、200点の獲得も夢ではない。
(つくづく、俺に風が向いてきたな)
狡猾に、悪辣に。
一度命を落とし、再び舞い戻ってもなお、西丈一郎のやり方は変わらない。
◆◇◆
「コイツら、マジでキリがないな……!」
ギョーンギョーン、と。独自の銃声を多数鳴らしながら、坂田は桜井と共に星人を倒していた。
倒しても倒しても倒しても際限なく現れる星人。一体一体はそこまで強くない──寧ろ弱い。攻撃手段は中々に厄介だが、スピードがない。戦いにくさで言えばラプトルの方に軍配が上がる。
だがやはり、量は厄介だ。漫画などでは量よりも質とはいうが、そんなものは甚爾クラスの怪物にしか当てはまらない。体力は有限。数で押された方が正直なところ面倒だ。
和泉や風といった強者であっても、莫大な数という力には押し負けてしまうだろう。
「し、師匠!」
「俺は気にするな桜井! とりあえず撃て! 撃ッて撃ッて撃ちまくるしかねー!」
「ッ、はい!」
弟子である桜井を鼓舞する。
坂田は大人だ。この極限状況においても、まだ落ち着きを保てる精神的な余裕はある。
ただ、桜井はまだ学生。思春期であり、精神的に不安定な時期でもある。トンコツや玄野たちがカバーしてくれてはいるものの、いつ崩壊が起こってもおかしくはない。
そもそも、平和ボケしているとも言われる程に平和であるこの国の国民に、命を賭けて戦うといった覚悟が出来ている者など大人であっても中々にいないのものだ。
だから、
「死ね!」
「!」
「させるかッ!」
背後を盗られる。しかし、それを桜井がカバーする。
(──いや、違うか)
守る? そんな高尚なものでは決してない。
結局のところ、これは坂田の自己満足だ。
伸びてくる触手を掻い潜り、Xショットガンを放つ。数秒遅れてオニ星人の頭部が破壊された。生臭い香りが広場に追加される。気を抜くとむせ返りそうになる。
ようやく数が減ってきたと実感出来るようになった。今この場にいる奴を倒せば、増援が来ない限りはひとまず安心だ。
「あともう少しです、師匠ー!」
「ああ!」
最後の数体。桜井が多重ロックオンで纏めて倒した。これで、広場の星人は全て狩り終えた。
(一体何体狩ったんだか……)
15は確実に殺った。桜井もきっとそれくらいやっている。
(もしかしたら)
坂田はあることに気づく。
今回のミッションは不自然な点が多い。一般人に星人が見えていることもそうだが、2体同時の討伐任務。更にこの星人の数……明らかにこれまでのミッションとは違う。
「……桜井。もしかしたらだが」
「どうしました?」
「今回のミッション──たぶん
「えッ!?」
桜井が驚くが、心の中で分かっていたのだろうか。すんなりと受け入れているようにも見えた。
「自由に……なれるッてことッすか?」
「さあなッ。だが……その可能性は高い」
そして──
最後のミッションだからこそ法則が変わったとも考えられる。
強引な2種同時ミッションも、最後ゆえに難易度を上げようとしたんじゃないだろうか。
ただの仮説。
その答えを知るには、とりあえずこのミッションを生き残る必要がある。
「……桜井、あまり超能力を当てにすンなよ」
「は? 何言ッてんスかこンな時に」
「……伏黒が言ってただろ? コイツは毒だって。けど、正直想像以上だった」
桜井には伝えておかなければならない。
今回のミッションをクリアするにしても、クリア出来なくてもし『次』があるにしても。命に関わることだから。
坂田は既にこの超能力と呼ばれる異能の代償が何であるかを悟っている。
桜井はまだ経験も浅く、使用頻度も坂田と比較すれば微々たるものだ。故に、力を使用した際のフィードバックの蓄積も大したものではない。まだ取り返しがつくのだ。
だが、坂田は既に10年に近い月日この力を扱っている。既に手遅れの状態だ。
「俺の身体は、もう──」
坂田は、己の現状を伝えようとして──
「おお……ある程度はやるみたいだな」
──坂田の言葉を遮る、新たな声。
かつかつ、と。靴音を鳴らしながら『それ』は現れた。
身長は2メートル近くの大男。口元は好戦的に歪めており、サングラスの下にある瞳はギラリとこちらを見つめている。
坂田たちが見えている。つまり、コイツは『星人』。服装と額から伸びる角が彼の正体を物語っていた。
オニ星人
それもおそらく、これまでの雑魚とは比べ物にならない。
あのような異形に変化はしておらず、角以外は人と同じだ。けれど、纏っている威圧感が尋常ではない。
ジリ、と嫌な汗が伝う。
ガンツのプレイヤーとしては、まだ経験の浅い坂田たちでも、それを十分に理解出来た。
「かかって来い、ハンター──炭にしてやる」
「……おいおい」
オニ星人の手のひらに浮かぶのは火の玉。
坂田と桜井は顔を引き攣らせる。
超能力を日頃から使用している彼らだからこそ見抜くことが出来た。あの炎が内包しているエネルギーの総量。
手のひらサイズの火の玉だが、見た目に不釣り合いなほどに高密度のエネルギーが凝縮している。
「──死ね」
しかし、だからといって萎縮するするわけにはいかない。
ミッションには逃げ場はない。
甚爾や和泉、玄野といった強者にすべてを任せたとしても、その果てにあるのは死があるのみだ。
坂田と桜井は、ほんの一瞬だけ目を合わせ、頷く。
そして、
「いくぞ桜井ッ!」
「はいッ!」
掛け声と共に、爆炎が迸る。
炎を操るオニと二人の超能力者が激突した。
◆◇◆
──渋谷駅構外
キュイン、とスーツが隆起する。
地面を踏みしめると、道路が軋んだ。ガンツソードを握る拳がミシミシと音を立てている。
この間僅か1秒。スーツの力を最小限の力で出来得る限りまで引き上げる技能。
居合の構えでガンツソードを横薙ぎに振るい、延びた刃渡りが吸血鬼とオニ星人をまとめて一閃する。
「ッぶな……!?」
一掃とまではいかない。跳躍し、何とか避けることに成功した吸血鬼が幾人かいたようだ。
その可能性を予期していた和泉は、素早くホルスターからXガンを引き抜き、顔面を狙い撃ちにする。
吸血鬼もオニも。
元々のベースが人間に近しいからか、弱点は似通っている。致命的な部位を損傷すれば簡単に命を落としてくれる。違いがあるとするのなら、生命力の強度くらいのものだ。
染み付いた血液を振り捨てた和泉は、レーダーで次の星人の位置を確認しようとする。
彼が狙うのはより強い星人──つまり、ボス。
渇きを満たす
だが、人間は馴れる生き物だ。霞む過去の記憶の中に存在する、初めてのミッションで得た高揚を今の和泉は感じられない。
雑魚狩りをして満足出来るほど、和泉の渇きは弱くなかった。
──ドオンッ!!!!
「ッ! なんだ……!?」
離れた位置から響く爆発音。思わず和泉は音が鳴った方向に目を向ける。
間違いなく星人の攻撃だ。ガンツの用意した武器ではこれほどの破壊力は、現時点の装備では無理だ。
(ボスが動き出したか……?)
雑兵ではあり得ない。それほどの破壊力を誇る攻撃を持っているならば、和泉はもっと苦戦していた。
(いや、それは早計か……今回のミッションはおそらく
オニ星人と黒服星人。
2種類の星人の討伐。この時点であの吸血鬼以外にもボスがいることは確定しているが、今回の星人の量を鑑みればプラスして準ボスレベルの星人がいることは十分にあり得る──いや、ほぼ間違いないと見てもいいだろう。
和泉の勘が、そう告げている。
今回のミッションは、おそらく多数の100点クリア達成者が出る。和泉も既に30体以上の星人を葬っており、一体の点数が2点以上であれば既に到達している。
ならば、このままボスクラスの星人を倒しに向かった方がいい。
和泉が気づいたのなら、甚爾も既に気づいている。奴もボスを狙いにいったはずだ。
(伏黒の奴に独占されるのだけは、防がなくてはな)
甚爾ならば、よほどの星人が来ない限り負けることはない。何なら圧勝してしまうだろう。
甚爾に追いつき、超えることこそが和泉の今の目標。
そのためにはより強い星人と戦い、経験を積む必要がある。
ただがむしゃらに鍛錬を重ねたとして、奴に届くことはない。そういった領域にいると、和泉は理解していた。
(必要なものは分かッている。そのためにも──)
「──よう。久しぶり」
背後からの一声。
和泉が振り返るよりも早く、凄まじい数の銃声が夜の渋谷に轟いた。
◆◇◆
「フッ──!」
健康的なスラリとした美脚から放たれる漆黒の蹴りが、黒服星人の首を容赦なく刈り取る。
日々の鍛錬、そして潜り抜けてきた実戦の成果か。あのお寺での初めてのミッションよりも、ずっと洗練された動きを実行することが出来ている。
桜丘は、己の成長を確かに実感しながら、同じく戦っている愛しい恋人に視線を向ける。
黒服星人の振るう刀を避け、それだけでなく同時に向きを逸らすことで周りにいるオニ星人を攻撃させ、複数の星人に囲まれた状況を一瞬で打開する。
そんな彼の戦いぶりを見て、玄野が昼間は一介の高校生であるなんて信じる輩はいないであろう。
(やッぱり、計ちゃんは、
しかし、桜丘は違った。
桜丘は、玄野から違和感を感じ取ることの出来るその一部の一人であった。
それに気づけたのは、武術の心得があり、尚且つミッションという非日常的な空間に浸っていたからだろう。
桜丘は、二十数年生きた人生の中で、天才と思えたことのある人間は二人いる。
一人は、和泉紫音。
二人目は、伏黒甚爾。
前者は、まだ共にミッションをこなしたことは2回しかないが、その際の動きや鍛錬中の組み手などを行った際によく理解できる。
圧倒的な戦闘センスに優れた身体能力──あらゆるステータスが高水準。それに留まることなく際限なく成長していく。
精神面も常人とは大きくズレており、西同様にタガが外れたタイプだが、ミッションという環境においてはそれすらもメリットとして働いている。
後者は、あの圧倒的な身体能力だ。こちらがスーツを着ている状態を素で上回る怪物。しかも、それがさらにスーツによって強化されている。それに加え、頭の回転も速く、技量も卓越しているのだから、手に負えない。
もしも仮にだが、
毛色や質は違うものの、この二人を桜丘は天才であると思っている。
少なくとも、並大抵の星人はこの二人に掛れば倒されてしまうだろう。
(けど、玄野くんは──あまりにも、
桜丘が感じている違和感。
玄野には、二人のような才能はないのだ。
だが、どうしてだろうか。
桜丘は、玄野に対して甚爾や和泉に近しいものを感じている。
「──聖、どうした?」
声を掛けられて、ハッとなる。
ミッション中に考えごとなんて、命取りもいいところだ。
「ううん、何でもない。とりあえず、ここら一帯の星人は倒したみたいね」
「そうだな。このままどンどン倒していこうぜ」
ガンツソードを肩に乗せながら快活に笑う玄野に、桜丘も微笑む。
「頼もしいわね。でも、油断しちゃダメよ?」
「ッたり前だろ。ただ、今回は数の割に星人の強さは大したことないな」
「そうね。気をつけるとしたら、知性のある黒服星人の方くらいかしら」
オニ星人の吐く酸性の液体は厄介だが、それだけだ。真に気をつけるべきは、黒服星人の方だ。
オニ星人よりは数は少ないものの、知性が備わっており、何より"技術"を持っている。
横槍を気をつけながら黒服星人と戦うとなると、精神をすり減らす。
幸いなのは、オニ星人も黒服星人も、互いに仲間だとは思っていないのか、巻き添えを前提とした攻撃を振るってくることだろうか。
「なァ、聖」
そんな最中、玄野が神妙な顔つきで名前を呼んできた。
「どうしたの、計ちゃん?」
「いや……聖も気づいていると思うけど、たぶん今回は
「そうね。その可能性は、高いと思う」
桜丘も薄々気づいてはいた。
既に倒した星人の数は、50は下らない。1体1点だとしても、最低70点近くは取っているはずだ。
このままいけば、100点に近い点数である玄野や和泉、東郷はダブルクリアすらあり得る話でもある。
「もしかしたら、
「だね。だとしたら、ようやく──」
──ようやく、日常に戻れるね
そう、言おうとして。
桜丘は、その言葉を飲み込んだ。いや、飲み込まざるを得なかった。
玄野の瞳。
もしかしたら、この地獄から解放されるかもしれないという安堵の色も見せているが──同時に、ひどくつまらなさそうな、そんな眼をしていた。
(計ちゃん……?)
普段の玄野からは感じられない感覚。
嫌な予感…‥というより、不気味さを覚える。
(大丈夫……よね)
もう一度視線を移すと、既に玄野の瞳はいつもと変わらないものだ。
見間違えだったのだろう。
そう思い──思い込むことに、した。
◆◇◆
地獄絵図という四字熟語があるが、今ここにある光景を端的に表すとすれば、今ここに広がっている光景は正しくそれに相応しいものに違いないだろう。
赤、赤、赤、赤赤赤赤赤赤赤赤──。
見渡す限り、赤黒く。
それは血であり、肉であり。それに染まっていない箇所の方が少ないほど、そこは血まみれになっていた。
その空間に、黒がひとつ。
血生臭い香りを慣れたものと言わんばかりに全く意に介さず、ベンチに座り込み、携帯電話を使用している男がいた。
男の名は伏黒甚爾。
この地獄の惨状を作り上げた当事者だ。
(なるほどな……これで俺たちの居場所を把握しているわけか)
手にあるケータイは、甚爾のものではない。この血肉の主であるオニ星人と黒服星人のものだ。
彼らはどうやらガンツのメンバーの位置を逆探知出来る装置を持っているようで、それを使用し、こちらの位置を完全に把握していたようである。
(開発したのはオニ星人側か。雑魚共に知性があるようには思えねぇが、個体差があんのか?)
黒服星人は前回襲撃した際にこのようなものを所持してはいなかった。
ともすると、このオニ星人と正式に手を組んだのはあの後であり、あれ以降に彼らが甚爾たちの追跡を振り切っていたのは、この機器を利用していたからだろう。
画面を操作し確認したところ、どうやらこちらのメンツは数人を除いてほとんど死んでいないらしい。
上々だが、それはこれまで戦っていたのが雑魚だったからというだけのこと。
あのハチ公広場に固まっていたボスらしき反応のある星人たちが動き出せば、話は変わってくる。
そして、その一体は甚爾の元にもやってくる。
「──ビンゴ、だな」
視線を向けると、そこには帽子を被った長身の男が一人。
こちらを認識しているし、星人であることは確定。
そして、これまで相手にしてきた雑魚とは一線を画す強さを誇ることを直感的に理解する。
「おまえがオニのボスか?」
「違う……が、おまえが気にすることはねー」
コキリ、とオニ星人が不敵に笑みを浮かべながら首を鳴らす。
「おまえはここで、俺が殺すからだ」
次の瞬間、男の肉体が膨張し、服が破ける。
破れた衣服の下から現れたのは、肌色の皮膚ではなく、岩石のような黒茶色の皮膚。
オニ星人──岩鬼が拳と拳を打ちつければ、ガコンッ!!と人体からは決してならない音が響き渡る。
「あいつもオマエと戦いたがッていたが、巡り合わせが悪かッたってことだ。ま、どッちが相手でも、おまえが死ぬことに変わりはない」
持っていたケータイを握り潰し、甚爾がゆっくりと立つ。
口元が弧を描く。
岩鬼と同様に、不敵な笑みを浮かべながら、一言。
「バカが一匹」
GANTZ:F 完結後に書いてほしいもの
-
GANTZ:Gにパパ黒√
-
かっぺ星人後からパパ黒介入√
-
チャットルーム回
-
その他(個人でメッセージでどうぞ)