GANTZ:F   作:うたたね。

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一応、戦っている場所とかは記載していますが、マップだけ見て大体この辺でいいかな、くらいの感覚なので適当です。何なら書いてないこともあります。渋谷に詳しい方からすればツッコミどころ満載でたまに矛盾があったりすると思いますが見逃してください、お願いします!!!!

あ、めっちゃランキング入りしてるし、多くの感想やお気に入り登録をいただいており、感謝しかないです!!!!
何卒、これからも拙作をよろしくお願いします!!!!

おまえもGANTZを書かないか?


0028 渋谷事変③

 

【青山学院大学】

 

 西洋の建築物を彷彿とさせる造りの多いキャンパスは、この時期になると色とりどりのイルミネーションによってライトアップされている。しかし、今はそんな面影は全く見て取れない。

 

 溢れかえる人間や星人の死体。

 緑を際限なく燃やし尽くす朱い炎。

 

 オニ星人の幹部の一人──炎鬼の手によって、一帯を地獄のような風景に変貌させられていた。

 

「……何だ、オマエは」

 

 しかし、炎鬼の表情は険しいまま。

 何故なら、肝心の標的をその炎で塵芥に変えることが出来ていないからである。

 視線の先にあるのは一際大きく燃え盛る炎の塊。

 その中心には、黒い人影が揺らいでおり──

 

「は……ただの人間だぜ、俺たちは」

 

 声を出すことすら叶わない、生命を瞬時に燃やし尽くす業火の中から返答が返ってくる。そして、悠々と現れるサングラスの男──坂田は、鼻から流れ出た血を指で拭い、炎鬼へと挑発めいた笑みを返した。

 

(超能力は使わない方がいい──だが、使わずに死ぬのはそもそも論外だ。ボスまでに温存しておきたかッたが、今が切りどころだろうな)

 

 つい先ほど、桜井に説教めいたことを言ってしまった手前、格好つかない話だ。

 

「師匠、俺も使いますッ」

「いや、おまえは使わなくていい。おまえは後ろからサポートしてくれや」

「で、でも!」

「いいから」

 

 炎の一撃を坂田から庇われた桜井は、自身も超能力を使うと訴えるが、坂田にすげなく断られる。

 

「……この力には代償がある。ボスが残ってる以上、徒に消費するわけにはいかねーンだ」

「……代償?」

「あとで話すさ」

 

 小声で炎鬼には聞こえないようにそう囁くと、桜井は渋々と言った様子で引き下がる。

 同時に、殺意の奔流が坂田たちに突き刺さる。

 

「舐めてるのか? その力、どうやらそこのチビも使えるようだが、おまえ如きで俺を倒せるとでも?」

 

 最初の桜井の言葉が耳に入っていたのだろう。

 現状、炎鬼の攻撃を唯一防ぐ手段である超能力を使わないという選択は、()()()使()()()()()()()()()()()()()()()()と言っているようなものだ。

 本来見下されるべき人間が、上位の生物である己を見下している。

 その構図に炎鬼は許し難い怒りを感じていた。

 

 それを存分に感じ取った坂田は、殺意に冷や汗を掻きながらも口角を無理矢理に吊り上げる。

 

「そのおまえ如きを未だに殺せてねーのは、何処の凡骨だよ。鏡でも用意してやろうか?」

「……殺す」

「! 言ッてろ」

 

 炎鬼の怒気に呼応したのか。先程までよりも更に濃密なエネルギーを内包した炎が練り上げられる。

 20m程の距離が空いているのにも関わらず、発せられる熱が肌をジリジリと焼き付ける。

 

(まだ本気(マジ)じゃなかッたか! 読みが甘かッたな)

 

 振り翳される炎の球体──それよりも早く、バリアを張り、手を翳す。

 視界を覆い尽くす程の大きさ。だが、その超火力も坂田の超能力の前には無意味。

 坂田の手に触れた瞬間、坂田の手のひらを起点にして四方へと散らされていく。

 

(危ね〜! 超能力がなかッたら、こんなバケモン命が幾つあッても足りないッての!)

 

 ()()()()()()()()()()()()()、怖いものは怖い。一歩間違えれば死んでしまうのだから。

 超能力無しで星人と殺し合っている玄野達は凄いもんだとつくづく思う。

 

「クソが!」

 

 悪態をつく炎鬼。これまでの戦いで坂田のような超能力を使うような相手は当然のようにいなかった。

 ボスを除けば、幹部の中では圧倒的な火力を誇る炎鬼は、この炎の力に絶対的な自信を持っていた。ハンター達が自慢げに使うスーツをその超火力を持って燃やし、焼き殺す快感を今回も当然のように味わえると思っていた。

 だが、現実はどうだろうか。

 

「師匠だけじゃないぞ!」

「チィ!」

 

 坂田の放つ超能力に気を取られた隙を縫うようにして、桜井がXガンを使用して炎鬼を撃ち放つ。

 炎鬼にとって、ハンターの武器は見慣れたもので避けることも容易だ。しかしながら、超能力をちらつかされているせいでその援護射撃も厄介に感じる。

 敵のことを知っているという優位性は、戦闘において重要なピースだ。しかし、それにタカを括っていればつけ込まれた際に大きな弱点を生むことになる。

 

 事実、伏黒甚爾の敗因のひとつが正しくそれだ。

 禪院家(ごさんけ)に生まれたという出自から無下限(そうでん)の術式の内容を知っていたばかりに、五条家で秘匿されていた未知の一撃を喰らいその命を落とした。

 

 そして、炎鬼も同じ末路を辿ることとなる。

 

「うざッたいんだよ、ガキが──!」

 

 炎鬼は坂田を放置し、桜井を狙うことに決めた。

 現状、超能力を突破する手立ては炎鬼には考えついていない。だが、坂田の表情や顔色を見る限り、何かしらの代償が存在することは見て取れる。

 桜井を殺し、坂田に対し攻撃のリソースを割くことでゴリ押す方が手っ取り早いと判断した。

(オマエらに放った炎のうち、幾つかはコントロール下に置いている。まずはそれでこのガキを焼き殺す)

 

 そうして、桜井の背後に忍ばせておいた炎弾を使用しようとしたその時だった。

 

「終わりだな」

 

 ひゅん、と。

 空気を切り裂き、何かが飛来した。

 炎鬼はそれに反応することすら出来ず、彼の首が胴体からポトリと落下する。

 血液の代わりに大量の炎を撒き散らしながら、炎鬼の身体が崩れ落ちた。

 

 レーダーで完全に討伐できたことを確認した坂田は、ため息を吐く。

 超能力を使用したことによる代償の頭痛に顔を顰めながらも、上手く行ってよかったと安堵した。

 

(ガンツソードを超能力で操って飛ばしてみたが……案外上手く行くもんだな)

 

 相手が桜井を狙っていたことは、何となく読めていた。

 仮に炎鬼が炎弾を投げたところで自分以上の才能を持つ桜井には通用しなかっただろうが、桜井にあまり力を使わせたくない坂田は手札のひとつを切った。

 本来ならばもう少し削った後で使うつもりだった。相手がこちらを削りきれないことに焦っていた故に通じた一手だったといえる。

 

(とはいえ、桜井に超能力を使わせずに倒すことが出来た……上出来だな)

 

 超能力の代償は重い。

 G()A()N()T()Z()()()()()()()()()()()()()()()、たとえこの力を使ってミッションを生き抜いたとしても、近いうちに命を落とすことになる。

 桜井にこの力を渡し、それがきっかけとなり彼をこんな地獄へと連れてきてしまった。

 ならば、大人である自分は責任を負うべきだ。

 

 桜井に100点を取らせ、なるべく負荷の掛かっていない状態で解放させる。

 

 それこそが坂田が今為すべきことだ。

 

「やりましたね、師匠……」

「ああ、ナイスアシストだッたよ」

「へへ! つーか、この星人、えらい強かッたですけど、ボスですかね?」

「どうだかな。だが、点数はおそらく高い筈だ。多分、おまえは100点を獲得出来る」

「だといいけどなぁ」

 

 不安気に呟く桜井。

 そんな彼を尻目に坂田はふとある違和感を覚えていた。

 

(しかし……本当によく倒せたもンだ)

 

 自分でも未だに信じられない。

 相手はこちらの武器を知っており、明らかに戦い慣れている様子だった。

 そんな自分たちよりも経験豊富な相手を超能力というカードを切ったとはいえ、倒すことが出来たという事実に何か引っかかるものを感じる。

 

 

 

『俺は──"1番"を選ぶ』

 

 

 

「……?」

 

 頭の中で、何か声が聞こえた気がした。 

 

「師匠?」

 

 桜井が心配そうにこちらを見つめるが、坂田は「何でもない」と伝える。

 

「まだ星人が生き残ッてる。倒しに行くぞ」

「はい!」

 

 気のせいか、と。坂田は超能力の副作用だろうと判断し、桜井と共にその場を後にした。

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

【渋谷駅東口】

 

 酷い惨状だった。

 道路に停車している乗り捨てられている車の数々のほとんどは、あちらこちらが凹み、ガラスは割れ、中には燃え盛っていたり、真っ二つに切断されたものも存在する。

 その周囲には巻き込まれた人々や和泉の手により下された黒服星人の遺体が転がっており、その風景はつい半年ほど前に起こって『新宿大虐殺』の光景を彷彿とさせる。

 

 その惨状を引き起こした張本人である和泉紫音は、黒服星人たちと激闘を繰り広げていた。

 

「てめッ、逃げンな!」

「回り込め!」

 

 パニックにより路上を動く車は存在せず、どれもが乗り捨てられている。それらを盾として利用しながら、和泉は至る所から撃ち込まれる銃弾の嵐を回避する。

 

 黒服星人の厄介な点は、彼らが一つのコミュニティであるということに尽きる。

 二度目の呼び出しで経験したミッションは今回を除いた二つ。かっぺ星人もゆびわ星人も複数体の個体が存在したが、彼らはただの寄り合いであり、互いに手を組み協力するという概念が希薄であった。

 その点、黒服星人は人間に近しい思考回路を持つ。数が多いだけの烏合の衆ではなく、一つの組織として機能している。

 それ故に、氷川などの例外は除いて、一人一人は和泉には及ばないにせよ、彼らが集いこちらに襲いかかられてしまえば、負けることはないにせよ、ある程度の苦戦は強いられる。

 無論、やろうと思えば彼らを殲滅することは可能だ。しかし、オニ星人のボスが控えている現状で無用なリスクを背負う真似はしたくはなかった。

 前回の渋谷の一件では容易く葬り去ることは可能だったとはいえ、今回は氷川という司令塔がいる以上はあの時のようには行かないだろう、というのが和泉の見解だった。

 

(こいつらの相手をしていてもキリがない。出来れば何処かで撒いておきたいが……まぁ、無理だろうな)

 

 銃声が止み、リロードの音が聞こえた瞬間、和泉は遮蔽物越しに腕を振るう。腕の動きと同時に刃渡りを拡張し、それによって生じる一撃は、和泉の卓越した技量により飛ぶ斬撃を幻視させる。

 

 しかし──

 

「……チッ」

 

 その一振りを黒服星人は跳躍することで回避する。流石に何度も同じ手を喰らうほど間抜けではないようだ。すかさず和泉はXガンで浮いた敵を撃とうとするが、頭上から降りかかる何者かの気配に気づきその場を飛び退く。

 飛び込んできたのは、金髪の吸血鬼──氷川。

 

(ようやくお出ましか)

 

 薄く笑みを浮かべた氷川は、距離を取った和泉との間合いを一蹴りで詰める。

 懐に潜り込んだ氷川が刀を振り上げ、和泉もそれに対して鍔迫り合いで応じる。

 だが、鍔迫り合いを長く続けるつもりは両者共に毛頭ない。

 和泉は周囲からの襲撃の警戒のため。氷川はスーツの性能を知っているが故に。

 二人が動いたのは同時。

 スーツに力を込めた和泉はそのままガンツソードを思い切り振り抜き、氷川は膝の力を抜き上体を大きく逸らす。

 氷川の鼻先スレスレを黒刃が空気を斬り裂きながら通り過ぎていく。同時に彼は姿勢を整え、カポエラのような姿勢を取り、和泉の腹部へと蹴り込みを入れる。

 和泉はそれを左腕で防御し、その勢いを利用して氷川から離れる。

 

「!」

 

 その瞬間、氷川と入れ替わるようにして和泉に対して銃口が向けられる。

 発光と銃声。

 夜の渋谷にそれらが無数の重なりとなって響き渡る。

 それよりも速く、和泉は駆け出していた。

 

 近くの地下鉄行きの通路へ滑り込むようにして入り込む。中はエスカレーターとなっているが、和泉の身体能力はそれを諸共もしない。バランスを崩すことなく、無事にエスカレーターの終着点まで辿り着く。

 

「いたぞ!」

「撃て撃て!」

「……バカが」

 

 そのままノコノコと付いてきた黒服星人をXガンで撃ち抜いた和泉は、すぐさまその場から離れ──

 

 

「──つれないな。もっと遊ぼうぜ」

 

 

 ──られない。

 

「ッッ!」

 

 死んだ黒服星人を盾に、氷川が地下へと飛び込んでくる。

 何とか反応し、ガンツソードで受け止めることに成功したが、咄嗟のこと、そして相手が落下の推進力を利用したことにより、弾かれるようにして押し負けてしまう。

 すぐさま体勢を立て直すが、マシンガンを構えている氷川が視界に飛び込む。

 考えるよりも先に和泉は後方へと跳躍する。

 

(やられたな……数発、銃弾を受けるだろうが……仕方がない)

 

 集団での射撃だと、点ではなく面になるため避けるのは困難だが、一人であるのならばジグザグに動き回ることである程度避けることは可能。

 スーツに対してのダメージは避けられないが、接合部に当たらなければ許容範囲内だ。

 

 廊下を駆け抜けた和泉は、駅のホームへと急ぐ。

 後方から飛来してくる銃弾の数、密度が段々と増えている。

 しかし、和泉紫音は伏黒甚爾を除けばその身体能力は群を抜いたものを持つ。最低限の被弾に済ませ、ホームへと辿り着く。

 

 ホームには、30人程度の一般人が集まっていた。逃げ込んできたのか、はたまたここから動けなかったのか。定かではないが、和泉の知る由はない。

 彼らの表情は、銃撃音が聞こえてきたからか恐怖に染まっていた。

 

(コイツらも運が悪い。残念だが、ここは今から戦場だ)

 

 黒服星人は一般人を巻き込むことに躊躇などしない。そして、それは和泉も同様だ。たとえ彼らが射線にいたとしても容赦なく引き金を引き、刃を振るう。

 その推測は正しく。

 

 

 ダダダダダタダタダダダダダタ──!!!!

 

 

 耳を劈く程の銃声、一般人(しょうがいぶつ)の悲鳴が駅のホームに轟く。

 和泉は素早く柱に姿を隠すことでそれを避ける。

 10秒程度それが続き、弾が尽きたのか止んだ後、傾れ込むようにしてドタバタと靴音がやってくる。

 

「まだ奴のスーツは生きている。油断するなよ」

「ウッス」

 

 今の銃撃により、物陰に隠れていた者以外はほとんど命を落とした。

 和泉はチラリと視線を下に向ける。そこには、しゃがんで震えているスーツ姿の男の姿があった。

 

 氷川の指示に従い、黒服星人たちが散らばろうと動き出す。

 和泉の位置は既にバレている。囲って銃を放つことで一網打尽にしようとしているのだろう。

 だが、和泉もそれを易々と許すほどに楽観家ではない。

 同時に彼も動いていた。

 

 

「え?」

 

 

 その声は、咄嗟に漏れたものであった。

 何が起こったか分からない。

 そんな様子。

 

 声の主──和泉と共に身を隠していた男性は、最期に目にした。

 

 こちらに向けられる銃口の数々。

 そして、1秒後に訪れる己の死を。

 

 悲鳴を上げるまでもなく、鉛玉の嵐になった男が倒れる。

 

 ──同時に

 

 氷川は半身を捻った。

 それは反射だった。

 微かだが、男が隠れていた柱から物音が聞こえたその瞬間、柱から何かが勢いよく飛び出してきた。

 

「ッぶね」

 

 それは──伸び切った黒刃は、氷川のネクタイを切り裂いた。

 ほんの少し反応が遅れていたら、その体は貫かれていただろう。

 

「氷川さんッ!」

「俺に構うな! 奴は──」

 

 ──既に動き出している

 

 そう口にするよりも早く、戦況は動く。

 

 氷川を心配し叫んだ男の頭上に現れた和泉の姿。

 皆が柱から飛び出してきたガンツソードに目を取られた隙に跳躍していたのだろう。

 和泉は腰に装着していたもう一振りのガンツソードを振るい、黒服星人の首を斬り飛ばす。そのまま首を失った死体の足を掴み、まだ完全にバラけていなかったところに投げ込み、体勢を崩させる。

 体勢を崩した黒服星人数人にXガンを放とうする和泉だが、そうはさせまいと氷川と残りの黒服星人がマシンガンを放つことでそれを防ぐ──が、氷川は舌を打つ。

 和泉は彼らを撃とうとしたのではなく、ロックオンをしただけ。

 マシンガンを避けながら和泉は引き金を引いていたのか、忽ち彼らは肉塊へと姿を変える。

 

「……流石、だな」

 

 和泉を称賛するような声を落とすが、その表情は固く、芳しくはない。

 逆に和泉は余裕があるように見える。否、実際にあるのであろう。

 元より、和泉は氷川を警戒していても脅威には感じていない。

 苦戦はしても倒せる相手。

 その程度の認識だ。

 それでも氷川との戦いに和泉は慎重に動いていた。

 そもそもの話、和泉にとって黒服星人と殺り合うことは避けておきたい事態だった。

 

 氷川との戦いで厄介なのは、一対多数の戦いをほぼ確実に強いられること。

 彼らはこちらの装備について知り尽くしているとは言わないが、通常の星人とは違いその詳細を認識しており、弱点についても理解している。

 そのため、どうしても時間は掛かってしまうし、オニ星人の下っ端を相手するのとは異なり、スーツの消耗も避けられない。

 

(このまま少しずつ奴らの数を減らす。限りなく100%に近い状態でボスを殺す)

 

 いつも通りに合理的な判断を和泉は下す。

 

── 【どう? どうだい? これがキミの運命さ】

 

 ふと、和泉の脳裏を何かが過ぎる。

 それが一体何であるのか。理解は出来ない。

 

 ただ、予感があった。

 

 今この瞬間こそが、和泉が超えなければならない試練なのだと。

 

 

 黒服星人を、ここで全滅させる。

 

 

 和泉の纏う雰囲気が更に引き締まる。

 殺意は鋭く研ぎ澄まされ、氷川たちに突き刺さる。

 

 和泉と氷川率いる黒服星人──奇妙な因縁に繋がれた両者の最後の対決が始まる。

 

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

 

「これからどうする?」

 

 肉体を変化させるオニ星人の討伐に成功した西たち。

 目に見える範囲には星人の反応はない。制限時間のことを考えれば次の場所へ行くべきだろう。

 風はこれからの方針を東郷に訊ねる。

 

「階層は分からないが、ここから一番近い場所……渋谷駅に星人の反応がある。一先ずはここに行く」

「はァ? そンなとこ放ッておけよ」

 

 西が苦言を漏らす。

 

「星人の反応がどんどん消えてッてる。この速度、おっさんか和泉だろ。俺らが行ッたところで旨みはねーよ」

 

 西にとって、今回のミッションはボーナスゲームだ。

 多くの点数を獲得し、ボスないしはボスに近しい星人を倒している。100点へ到達している可能性も高く、まだ点数を稼いでおきたいと思っている。

 それ故に仲間と合流などという理由で取りこぼしの可能性を高めたくはなかった。ましてや甚爾や和泉といった頭抜けた強者と合流などもっての外だ。点数を総取りされたくはない。

 また、西は一度100点目前で命を落としてしまったことがある。

 今回で確実に100点を取り、次回のミッションまでに2番の武器を取りたいという思惑もあった。100点を取れず、次回のミッションで死ぬなんてことは避けておきたい。

 

「……」

 

 そのことを指摘すれば面倒なことになるだろうな、と東郷は口にしない。

 西の考えていることは筒抜けであった。

 

 ちらりと東郷は風に──正確には彼の足にしがみついているたけしに目を向ける。

 東郷としては、たけしを危険な場所になるべく近づけたくはない。

 あえて星人の少ない場所を選び、尚且つ強者との合流を試みたのはそれが理由だ。

 

(とはいえ、このままだと西が一人行動しかねない。西の知識はこれからまだ必要だ。となると、西の意図を汲みつつ誰かと合流するのがいいか)

 

 甚爾や和泉には戦闘力では劣るものの、玄野や加藤であればたけしにも気を掛けてくれるだろうし、妥協点としては問題ない。

 

「それなら──」

「待て」

 

 方針を提案しようとした矢先、これまで寡黙を貫いていた風が口を開いた。

 

「きんにくらいだー……?」

「……俺の後ろに隠れろ」

 

 風の纏う空気が変わる。

 ピリピリと突き刺すような重圧。戦闘態勢にあった合図だ。

 風の向いている方向に目を向け、遅れて東郷と西もその存在に気づく。

 

「……あれは、かなり強いばい」

「だろうな」

「へぇ、もしかしてボスか?」

 

 4人の視線の先にいたのは、一人の男だった。

 革ジャンとジーパンにサングラスといった、目立ちこそするもののその見た目は一般人と何ら変わりはない。

 しかし、彼が纏うその雰囲気は普通のそれではない。

 

「……おまえらか、こいつらを殺したのは」

 

 こいつらとは、おそらく殺された星人のことを指すのだろう。

 それを聞いた西は、ニヤリと笑みを浮かべる。そこに宿る感情は悪意に満ちたものだ。

 

「そーだよ。雑魚で手応えなかッたけどな」

「……」

「刺激するな、西」

「冷静さを失わせンてンだよ」

(このままだとマズいな)

 

 明らかに相手が苛立っているのが分かる。

 東郷は西が言うことを聞かないことを悟り、風に目配せをする。風は頷き、東郷はたけしを抱いてステルスを発動する。

 元々決めていた作戦だ。強力な星人と相対した場合、遠距離からの射撃を行う東郷がたけしと共に射撃ポイントへ向かう。たけしを守りながら戦うのは至難の業であるためだ。

 同時に西もステルスを起動する。明らかな強敵だ。姿を晒して戦うなんて馬鹿がやることだ、と西は内心吐き捨てる。

 

 そのタイミングでオニ星人も動き始める。

 

「そうか、おまえらが──殺す」

 

 次の瞬間、ステルスで身を隠そうとしていた西の目前に()()は現れた。

 西たちとの間にいた一般人がバラバラになり、肉片の雨となって血に降り注ぐ。

 

「は?」

 

 それは正しく『鬼』と言って差し支えのない容姿をしていた。

 先ほどまでの姿は擬態。

 今の姿は身長は3メートルを超え、口からは牙を、背中と額からツノを生やした怪物の姿がそこにはあった。

 周囲にいた一般人にはオニ星人の姿が見えているのだろう。悲鳴を上げてパニックとなっていた。

 

 何が起きたか分からない。

 西はその場から動けずに硬直し、オニ星人が虫を払うような仕草で腕を振るう。

 たったそれだけの動作で西は十数メートルも飛ばされていく。

 

「!?」

 

 その接近から攻撃までの一連の動作。そのあまりの速さに風は驚愕する。

 何とか目で追うことは出来たが、それに対応することが出来なかった。

 この星人は、距離を詰めただけ。それだけで途中にいた一般人の肉体がバラバラになっている。

 かつてない強敵を前に、胸が高鳴るのを感じた。

 

【おまえはただの雑魚じゃないな】

「……おまえを倒す」

 

 激突は、一瞬だった。

 風の丸太のような剛腕から放たれるアッパーをオニ星人は軽く上体を逸らすだけで避ける。

 次の瞬間には風の背後にオニ星人は回っており、ガラ空きとなった腹部へと拳を風は叩き込まれた。

 

「がはッ!」

【とろいな、ゴキブリども】

 

 勢いよく車に叩きつけられた風は、すぐさま転がり込むようにしてその場から離れる。

 見えたわけではなく、感じ取った。

 野生の勘とも呼ぶべきそれが風の肉体を突き動かす。

 

 轟音と閃光。

 

 耳を劈くような音と闇夜を切り裂く輝きが降り落ち、一瞬にして車は大爆発を巻き起こす。

 

(雷……! こンなン使う奴がおるンか!)

 

 かっぺ星人やゆびわ星人、先ほどの変化の鬼を見てきて分かっていたつもりではあった。

 これは風の知る人間同士の喧嘩ではないのだと。

 だが、真の意味でようやく理解した。

 GANTZと呼ばれた黒い球体が用意するのは、風の望んだ喧嘩などではなく、正しく生を賭けた殺し合いであるのだと。

 

 だがしかし──

 

(それでも、楽しか……!)

 

 伏黒甚爾に続き、こんなにも強い相手と戦うのは心躍る。

 強者と戦うために風は九州から東京へと上京した。

 こんな非現実的な出来事に巻き込まれるとは思ってもみなかったが、ここに来てよかったと心の底から強く思う。

 

 オニ星人──雷鬼が風へと向き直る。

 その初動から風は雷鬼があの瞬間移動じみた移動を見せるのかと警戒する。

 先ほどは反応出来なかったが、今度は必ず捉える。

 神経を尖らせる風だが、その目論見はいい意味で外れることとなる。

 

 ギョーン ギョーン ギョーン

 

 虚空から奇怪な銃声が鳴り響く。

 その瞬間に雷鬼は素早い動きでその場から動き出す。

 おそらく、たけしと共に配置についた東郷からの援護射撃。

 風はそのまま雷鬼に接近し、得意のインファイトを仕掛ける。

 

(一度でも風が攻撃を与えられたら形勢を一気に持ッてこれる……が)

 

 ジャブ、フック、アッパー、踵落としに回し蹴り。

 それに加えて東郷の援護射撃も行われるが、しかし雷鬼はその全てに対応する。

 純粋な技術や駆け引きでは風は雷鬼の上をいっている。しかし、身体機能は雷鬼に大きく上回られている。

 風が攻撃を繰り出すよりも早く、雷鬼は次の行動に移っているのだ。

 東郷の狙撃も縦横無尽に動くオニ星人を捉えられず上手くいかない。

 

(だが、このまま均衡を保てば増援が──)

 

【そこか】

 

 スコープ越しに雷鬼との目が合う。

 ステルスは当然のように通用しない。マンホールをXガンで破壊した東郷は、たけしをその中に放り投げる。スーツを着ていれば問題なく生き残れる。

 東郷はすぐさまその場から離れようとするが、それよりも早く雷鬼が雷撃を放とうとしているのが見えた。

 

「しまッ──」

【死ね】

 

 ピキッ、と。

 雷鬼の手首の血管が強張ると共に雷撃が東郷へと振り下ろされる──その刹那、風がタックルをかますことでほんの少しばかり照準がズレる。

 それでも完全に避けることは出来ず、東郷の左腕が弾け飛んだ。

 

「逃げろ!」

「……すまない」

 

 風の言葉に東郷は謝罪し、たけしに続いてマンホールへと身を投げる。 

 

 人数差による有利は消えた。

 スクランブル交差点の中央に二人の巨漢が対峙する。

 

「ウォォォォォッ!!!!」

【来い、殺してやる】

 

 風が吠え、雷鬼が殺意を研ぎ澄ませる。

 

 こうして、九州最強の喧嘩屋と最強の鬼の真の意味でのタイマンが始まった。

 

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

 

 和泉と氷川は気づいていなかった。

 車が爆発したりとかなりの大規模な戦闘だったが故に、一人の少年が息を潜めて離脱していたことに。

 

 和泉たちが地下に向かったのを確認した少年──玄野アキラは、彼らを追いかけるような真似はせず、こっそりとその場から離れていたのだ。

 

(良いンだよな、これで!)

 

 渋谷の街を駆け抜ける。

 これは千載一遇、最後のチャンス。そして、アキラの命を賭けたギャンブルだ。

 逃げ出すことが出来る隙が生じた時点でアキラには二つの選択肢があった。

 

 氷川たちと共に和泉と戦うか。

 それとも氷川たちを見捨てて一人で逃走するか。

 

 アキラは後者を取った。

 和泉との戦いに身を投じればまず命を落とす。

 それならば、この魔境と化した渋谷から脱出した方が生き残れるのではないか。それに、アキラから見ても黒服星人と和泉の戦力はかなり拮抗していた。

 

(いや、どちらかといえばあのロン毛の方が押していた……気がする)

 

 仮にこの戦いで氷川たちが勝ったとすれば、逃走したアキラは処刑されるだろう。

 だが、ここで逃げ切ることが出来れば今すぐに死ぬことはないのだ。

 

(問題は、氷川たちとオニ──それ以上に、スーツの奴らに居場所がバレてること! 奴らが来る前にエリアから逃げるしかない!)

 

 黒スーツたちがこちらの位置を特定出来ることは周知の事実。

 出来れば戦闘は避けておきたいというのが本音だ。

 彼らが星人を討伐する際には活動エリアが限られていると聞いた。つまり、そこから逃げることが出来れば、当面の間はアキラの無事は確約されると言ってもいい。

 

 今や渋谷はパニック状態となっており、車やバイクでの移動は困難だと言えるし、何より目がつく。人混みに紛れつつ逃げるのが安牌。

 何処がその活動エリアの外なのかは分からないが、そう広くはないはずだ。

 息を潜め、黒スーツたちと相対しないことを祈るのみ。

 

(ハッ……今更、天に祈るだなンてな)

 

 天運。そんなものに恵まれているのであれば、アキラは吸血鬼になどなっていない。

 

「けど……頼むよ。俺は──死にたくない」

 

 それは、アキラが無意識に吐露した本音。

 アキラは、もしかしたらいるのかもしれない天の神にただ祈ることしか出来なかった。

 

 そして──

 

 

「──アキラ?」

 

 

 最近耳にした、誰かの声が聞こえた。

 思わず足を止め、振り返る。

 声の主をその視界に捉えた瞬間、アキラは目を見開いて──絶望した。

 

「……あ、にき」

 

 そこにいたのは、玄野アキラの兄である玄野計。

 アキラの兄であるその男は、黒服星人の敵である特徴的な黒いスーツに身を包んでいた。

 

 

 もしもの話。

 この世界に神のような存在がいて。

 それがある一部の人間に幸運を授けることがあるとして。

 

 

 ──神は、玄野アキラを愛さない。

 

 

 

 




【おまけコーナー】
・坂田と桜井 vs 炎鬼
実際のところ、このマッチアップはどうするかかなり迷ってまして。原作から変えるかどうか悩みましたが、超能力が映えるのがオニ星人編だと炎鬼くらいなので原作通りに
単純に甚爾から超能力(呪術)の話を聞いて、超能力の理解が深まった結果、坂田も桜井も使い方が上手くなってます。
なので、炎化という手段すら使わせずに無事に勝利しました。
炎を超能力で防御するシーンは、五条vs漏瑚の初戦をイメージしていただければ、と

・和泉vs黒服星人
せっかくオニ星人編に黒服星人をぶち込んだのに、約9割の戦力を全て和泉に注いでしまったのは純粋に僕の技術不足です。
本当は実写オマージュで動く地下鉄の中で勝負したかったんですけど、エリアのこと考えたらグダリそうなのでやめました。
基本的に和泉>氷川のイメージですが、みなさんその辺はどう感じてるんでしょう? 

・風、東郷、西、たけしvsオニ星人ボス
風と東郷、西のトリオが強過ぎて変化鬼が瞬殺されてしまったために、同じくチーマーたちを瞬殺したボスがシャバってきた。
煽る西くんは瞬殺(生死不明)、東郷は重傷、風はタイマン、たけしは無傷とかなりまずい状況に。
基本的にオニ星人ボスは、タイマンだと東京部屋メンツはかなりキツいイメージ。
活動報告に以前チラッと書きましたが、GANTZ:Oでオニ星人編で東京部屋がほとんど壊滅状態に陥ったのは、原作のように総力戦にならずに単体で一人or数人ずつ撃破されたからだと思います。
玄野が最後にタイマンで倒せた理由は、それまでに風や坂田、桜井あたりがめっちゃ頑張ってくれたからだと思うんだ。
活動報告が気になる方は以下のURLで覗けます。ちょいネタバレあるからご注意を

https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=300448&uid=110050


・玄野アキラ
不憫枠。運命に見放され続けてる男。
逃げるという英断を下したのに、偶々近くにいた玄野(しかも敵対してるハンター)に見つかってしまい、メンタルが壊れかけてる。
一応、アキラの未来は決まっていて、あとはもうそこに向かって駆け抜けるだけ。


また明日の21時に更新します
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いつもありがとうございます!!!!

あとがきのおまけコーナーって需要あんのかな

GANTZ:F 完結後に書いてほしいもの

  • GANTZ:Gにパパ黒√
  • かっぺ星人後からパパ黒介入√
  • チャットルーム回
  • その他(個人でメッセージでどうぞ)
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