それでは!
甚爾と肉体を岩へと作り変えるオニ星人──岩鬼との戦いは、呆気なく決着がついた。
岩鬼は肉弾戦を強く好んでいるようで、甚爾もその戦闘スタイルに敢えて合わせ──ることはなく、即座にZガンで押し潰す。
【ぐおおぉぉッ!?】
「! Zガンを耐えるのかよ」
性質上効かない、効きにくい星人がいるとは聞いていたが、実際に目の前にすると少し驚く。
だが、それでもかなりのダメージが入ったのか、岩鬼の体はあちこちがひび割れ、突っ伏したまま動けないようだった。
「破壊だけなら
ギョーン ギョーン ギョーン ギョーン
頭部一点集中のXガンの連打。避けることすら叶わずに岩鬼はその命を落とす。
(やっぱり相性だな。基本的にはこれまで通り、部屋にある武器は全種類持って行くべきだろうな)
──Zガンを手に入れるまでがチュートリアル
なんて格言があのチャットルームではよく囁かれていた。
Zガンは強力な武器だが、それに頼り過ぎればいざ有効打にならない星人を相手取った場合、パニックに陥る人間は少なくはないらしい。
強弱関係なく、様々な武器を敵に応じて対応出来てようやく部屋の人間としては一人前ということだ。
「伏黒さん!」
さて、次はどう動くかと考えていたところにやって来たのは、加藤とレイカたちだった。
甚爾を見た加藤は安心したようで、そっと胸を撫で下ろす。
「へぇ、どうやら引率は上手くいってるみてぇだな?」
加藤──いや、どちらかといえば、レイカの背後に立つ3人のサラリーマンと女子高生の姿を見て、甚爾は少なからず感心を覚えた。
スーツを着ているとはいえ、今回の星人はスーツの防御性能を無視する攻撃を放ったり、こちらの装備の弱点を知っている星人がほとんどだ。初心者殺しなミッションだと思っていたが、新人は全員生存しており、見た限りだとスーツを損傷しているようには見えない。
おそらく、星人と距離を取り、戦闘しなければならない時は率先して加藤とレイカが前に出ていたのだろう。
獲得出来る点数は減り、戦力外や新人を守りながら戦うという、加藤たちに何らメリットのないやり方。底抜けのお人よしでなければやらない方法だ。
(どうせ今回生き残れたところで次かその次で死ぬだろうに)
加藤の正義感もここまで来ると狂気だな、と思う。
「何とか、ですけどね……伏黒さんは、計ちゃん──他の人たちは見てないですか?」
「!」
玄野の名前にレイカが反応を示す。甚爾はそれに気づきながらも触れずに会話を続ける。
「今のところ、チーマー共以外は欠けてねぇだろうな。負傷具合は知らねぇけど」
「え? あ、あの人たち……死んだ、んですか?」
「バカみてぇに親玉のところに突っ込んでな」
「そう、ですか」
直接見たわけじゃないが、と付け加える。
あくまで敵が持っていたこちらのレーダーの反応で確認しただけの話だ。
だが、こうなることは分かっていた。
実をいうと、前回のミッションが終わった後、甚爾はチーマー達に接触していた。
そこで適当に「才能がある」「おまえなら次で100点を取れる」「次のミッションは、法則的に100点の可能性が高い」だのホラを吹いて付け上がらせた。
結果、彼らは無事に全滅した。
遠目から眺めるつもりだったが、すぐに
甚爾の言葉に食いついたのは、女子高生だった。
彼女の死因はチーマーたちにレイプされ、その最中に彼らが巻き起こした交通事故に巻き込まれてのもの。そんな彼らと同じ空間にいることは、彼女にとっては苦痛と恐怖でしかなかっただろう。彼らが死んだことに彼女は安堵しているようだった。
それはレイカ、そしてあの加藤でさえも同じ様子だった。
チーマーたちは間違いなく救いようのない悪人だ。女子高生だけでなく、レイカや桜丘にも危害が及ぶ可能性もあり、何よりスーツを着ている以上、彼らが起こせる犯罪の幅は大きく広がる。これから先、もっと被害者が増える未来もあった。
だからだろう。加藤たちは甚爾が彼らを助けずに見捨てたことに対して、何一つ咎めたりするようなことはなかった。
甚爾はそのまま加藤たちと現状持っている星人の情報について伝え合う。お互い持っている情報について差異はない。
「黒服星人の姿があまり見えないのが少し気になるわ」
「おそらく和泉に人員を割いてるんだろ。あの金髪は和泉のことを知っている風だったしな」
氷川は甚爾と和泉を警戒しているが、最も恐れているのは甚爾であることは、かっぺ星人の際の対面で把握済みだ。自分たちの手に負える存在ではないと彼は感じている。
それに、岩鬼のセリフから甚爾に当てられるのはオニ星人のボスであるということが伺えた。
甚爾に勝てる、あるいは勝負になると氷川は判断したのだろう。
「なら、俺たちは和泉を探します」
「好きにしろよ。俺もそろそろ動く」
「はい。行こう、レイカ」
「ええ」
加藤の言葉にレイカが頷き、女子高生たちも二人に続く。
再び一人になった甚爾は、レーダーを確認して敵の勢力を確認する。
(雑魚はもうほとんど削ってる。固まってるのがいるが、おそらくこれが和泉だろうな)
これまでにない規模だった星人の反応はかなり消失している。
時間にはそれなりに余裕がある。このミッションはほとんどクリアしたも同然だろう。
(そしてその近くにいるのがボスだろうな)
渋谷駅──スクランブル交差点近くでそれらしき反応が一つ。
おそらくオニ星人のボスだが、100点では無い時点で警戒するに値しない存在だ。
(ただ、今回は随分とイレギュラーが重なっている。法則自体が変わっていたとしてもおかしくはねぇ)
ガンツに蘇生されてからは、点数稼ぎのために甚爾は自ら積極的に前線に出るというらしくない方針を取っていた。
だが、今回のミッションでは目的の2回目の"2番"──空中ユニットは確実に手に入る。上手くいけば、空中ユニット程の魅力は感じないが、3回目の"2番"である強化スーツすら手に入れる可能性だってある。
これ以上、今回のミッションで積極的に動く必要性は甚爾には存在しないのだ。
(少し様子見に徹してみる必要があるか)
それに、別の懸念点もあった。
仮に今回の星人が100点だと仮定した場合、こちらの被害は甚大なものとなる。壊滅状態となれば正直なところ立て直しが面倒ではあるし、今後のミッションで不都合な点が多くなる。
だが、今回のミッションは標的の数や質から考えて、かなりの人間が100点を獲得する。半数が生き残ったと仮定した場合、
(これだな。その辺の塩梅は星人の
甚爾にとって、玄野達は仲間でも何でもない。
"3番"の再生の真実を知っていようとも、そこに何かしらの感情を思い浮かべることはなかった。
◆◇◆
甚爾と加藤達が合流した10分前──
「アキラ……! 何でおまえがこんなところに」
「……」
玄野を襲ったのは、焦燥という感情だった。
確かにミッションはこれまでにない規模、それもこれまでと違い一般人が多くいる中で行われている。故に、もしかしたら知り合いが巻き込まれる可能性を考慮しなかったわけじゃない。
普段から加藤や東郷たちと関連していく中でそういった懸念は思い浮かべていた。
だが、実際にこうして直面することになるとは思いもしなかった。心のどこかでそんなことはあり得ないだろう。そう思っていたのかもしれない。
「今の渋谷は魔境だ! 化け物が沢山いるからさっさと逃げろッ!」
「……ッ」
玄野の呼びかけに対してもアキラは行動に移さない。苦々しい表情で玄野を見つめている。
アキラもこの場にいたのなら分かっているはずだ。ここにいれば命を落としてしまってもおかしくないことに。
もしかしたら、恐怖で行動に移せないだけなのかもしれない──そう思った玄野は「あーもうッ!」と駆け出そうとした。
「──待ッて」
しかし、それを止める声がひとつ。
桜丘が浮かない表情で玄野の肩を掴んでいた。
「な、聖、どうしたンだよ」
「計ちゃん……待ッて、おかしいよ」
「は……? 何言ッて……?」
意味が分からない。桜丘に怪訝な視線を向ける。
同時に嫌な予感がした。
これ以上、この場で彼女の言葉の続きを聞けばきっと後悔することになる。
そんな気がした。
「計ちゃん……どうして、
背筋が凍った。
不意に冷水を浴びた時のように、心臓が止まったような錯覚を覚えた。
「──────あり得ない」
「計ちゃん、見て」
「──」
やめろ。
そう口にしようとしたが、上手く言葉に出来なかった。
桜丘が玄野に見せたのは、星人の居場所を映し出すレーダー。
この辺りの星人の反応はただひとつ。
玄野と桜丘の目前──玄野アキラが立っている場所に相違なかった。
アキラは玄野達が己の正体に気づいたことを悟ったのか、目を逸らし俯いた。
その反応が何よりの証拠だった。
「アキラ、嘘だよな? おまえが星人だなンて」
「……」
「嘘だと、言ッてくれ……!」
アキラは何も言わない。
玄野とアキラは決して仲がいい兄弟というわけではなかった。
好きや嫌いなどといった関係性ではなく、互いに無関心。
ただ一緒の家にいて、血が繋がっているだけの赤の他人。
それが玄野計と玄野明だった。
だが、それでも心のどこかでは、自分自身でも気づかない何処かでは──家族だと、思っていたのだろうか。
「その服、氷川さんたちが言ッてたハンターの服だろ。まさか、兄貴がその一味だッたなンてな」
「アキラ、おまえは本当に」
「ああ、俺は吸血鬼だ。兄貴たちの標的のな」
アキラの手のひらから一振りの刀が生み出される。
それは知っている。聞いていた黒服星人の能力のひとつだ。これにより、本当にアキラが星人となってしまったことが証明される。
(クソ……マジで一周回ッて冷静になッてきたッつーの)
この状況、正直なところ覆すことは容易だ。
アキラの強さは未知数だが、玄野と桜丘の2人で掛かれば問題なく対処出来るはず。
だが、それはアキラを殺すことを意味する。
(アキラを殺すなンて選択肢は俺にはねーし、けどそうしなけりゃミッションは失敗……点数は没収か)
ペナルティについては甚爾から話は聞いている。
制限時間以内に星人を倒せなかった場合、持っている点数は全て没収される。それに加えて次回のミッションでは15点以上点数を取らなければ死亡という条件を科せられる。
今回のように次回も点数を稼げるミッションがあればいいが、そうでなければ点数の奪い合いが勃発することになる。
そうなれば、これまで機能していたチームワークなど全て無意味なものとなるだろう。
玄野にとって、加藤たちは大切な仲間だ。
彼らの命を危機に晒すような真似はしたくない。
だが、加藤達を優先すればアキラは死ぬ──どちらかを玄野は選ばなくてはならない。
「計ちゃん」
そんな玄野に桜丘は優しく語りかける。
「私はね、計ちゃんの選択を責めはしない。どちらを選ンでも、尊重する」
「聖……」
その言葉に玄野は遂に決意する。
必死に考えた、どうにかするための選択肢。
失敗すれば自分たちが危機に陥るが、成功すればアキラを救えるし、こちらに実害は被らない。
「アキラ、俺はおまえを殺す気はない」
「は? 何を言ッてンだよ」
「死にたくないンだろ」
「それは……」
玄野の言葉にアキラは言い淀む。
「だッたら、逃げるぞ──
◆◇◆
氷川と呼ばれた男を初めてみた時、胸がざわつくような感覚を覚えたのをふと思い出した。
それは今でも変わらない。
彼を目にすると、これまで感じたことのない感情が沸々と心の奥底から湧き出てくる。
「──」
一人、二人と数少ない黒服星人の命は、和泉はその優れた才覚から繰り出される攻撃によって摘まれていく。
氷川以外、一人一人は和泉には遠く及ばない雑魚ばかり。それでもそれらが確かな指揮と数があれば大きな脅威となる。しかし、後者は既にミッションの前段階で甚爾と和泉の手によって削られている。
ミッション外で殺した黒服星人の数は100は下らない。あれだけの数が一斉に襲い掛かってきたら、流石の和泉も消耗は避けられなかっただろう。
認めたくはないが、敗北の可能性さえあったと言える。
「……あとはおまえ一人だな」
「……」
だが、今回ミッションに参加した黒服星人は氷川を含めて30人程度。
スーツの耐久性を少し削られた程度の消耗で事足りる。
仲間が死に、ただ一人となった氷川は、しかしその表情は鉄面皮のように変わらない。その血の通っていないように青白い肌と同じように、彼の感情には冷たい氷のような印象を受ける。
互いに呼吸は乱れている。ただ、消耗具合は和泉よりも氷川の方が大きい。致命的な傷は避けているものの、身体の所々に切り傷が生まれている。仲間を殺されていることからも精神的な面でも何かしらの不調が生じている可能性はある。
これから始まるは、和泉と氷川の一騎討ち。
優勢なのは間違いなく和泉だろう。
純粋な戦闘能力という意味では、和泉は氷川の上を行く。氷川に万が一の勝ち目はないと言える。
和泉自身もそれを理解している。
この戦い、こちらが油断や慢心をしなければ間違いなく和泉が勝てる勝負。
スーツの耐久性にはまだ余裕があり、戦闘における集中力は時が過ぎる度に更に研ぎ澄まされていく。
だが、何故だろうか。
和泉は氷川に対して、あまりにも異常なまでの警戒を──執着を辞められずにいた。
──こいつはここで必ず殺さなければならない。
本能が、魂が。
和泉の冷徹な思考を飲み込むようにして叫んでいる。
「ハッ──何を焦ッてる?」
そんな和泉の異変に気づいていたのか。氷川が嘲るようにして吐き捨てた。
「……何?」
「追い詰められているのは間違いなく俺らだが、どーにもおまえにも余裕がないように見える」
「……」
「図星か?」
氷川の言葉に和泉は何も返さない。
ただ、思うところはあった。
(焦っている? 俺が? 何をバカなことを。俺がおまえを警戒しているのは、何か隠し球を持っている可能性を考慮しているだけだ。殺さなければならないと思ッているのは、
和泉は気づかない。否、気づいているが、それから目を逸らしている。
氷川の語ったことは的を射ている。和泉の現在の精神状況を正確に言い表せていると言ってもいい。
それでも、
「俺がおまえを殺す──その事実に何ら変わりはない」
その刹那──氷川は死神の足跡を聞いた。
それが和泉から放たれた
「──ッ」
振り上げられた刃を氷川は刀で受け止めている。氷川が対応出来たのは偶然だった。
氷川が味方を失い、己の命の危機に直面したことで生存本能が研ぎ澄まされていたからだ。
やはり、この男は強い。
かつては同じ領域に立っていたと思っていた。
しかし、今は違う。
和泉紫音は間違いなく氷川の更に上へと至っている。
(だが、付け入る隙はある。焦ッているのは間違いない。洗練さに翳りが見える)
とはいえ、勝ち目の薄い戦いであることには違いないが。
鍔迫り合いが生じていたが、拮抗はすぐに崩れ去る。
弾き返され、ガラ空きとなった懐に和泉の鋭い蹴りが突き刺さる。空気が肺から押し出される。パキリ、と。脇腹から嫌な音が聞こえた気がした。
柱に叩きつけられた氷川だが、すぐに体勢を立て直しその場から離れる。瞬間、ギョーンという奇怪な銃撃音が響き、破片が砕け散る。
「逃げてばッかりだな」
「どうだろうな」
「!」
駆け出した先を阻むようにして和泉が現れる。
瞬間、氷川の背後から眩い閃光と凄まじい音が弾け飛ぶ。
スタングレネード。氷川が生成したわけではなく、普段から用いている道具のひとつ。
裏手から取り出され、氷川の肉体が影となったことで和泉に対しては完全な死角からの一手となっている。
ガンツスーツは物理攻撃にはその耐久性を発揮する反面、こういった光や音といった直接的なダメージを与えない攻撃には弱い。
思わず和泉はよろめく。
(こンな小細工は、これまでのおまえなら通用しなかッただろうな)
戦闘能力は氷川を上回っているが、冷静さを見失っている。
だが、この隙を作るために氷川は決して少なくないダメージを負っている。
いずれ押し負ける。それは分かっている。
故にこの勝負は、如何に速く和泉を削り切るかに命運が握られていると言っていい。
(まずはスーツを破壊する)
スーツを破壊し、ダメージを通るようにする。
如何に和泉が強くとも、スーツの恩恵を失えば氷川の攻撃は全て致命傷になり得る。
スーツを破壊するためには二通りの方法がある。
・スーツの耐久性を超えたダメージを与える
・スーツのジョイント部分を破壊する
氷川が選んだのは後者。
和泉の持つガンツソードとXガンを刀によって弾き飛ばす。
五感の一部を奪われている和泉はそれに対応することが出来ず、呆気なく武器を奪われてしまう。
氷川は突きの姿勢を構え、和泉の首元のジョイントに狙いを定める。
ジョイントを破壊し、スーツの防御力を0にした状態でそのまま和泉を貫く。
万全とは言えない肉体。呼吸をする度に折れた肋骨が痛み、血を流しすぎたからか気を抜けば意識が飛びそうになる。
それでも、氷川の
培われてきた技能、経験は決して損なわれることはなく。
黒服星人を率いるリーダーとして。
随一の剣の腕を持つ者として。
目の前の格上の相手を打倒する決死の一撃が放たれる。
──しかし、
「マジか」
その渾身の一矢を、和泉紫音が掴み上げ止めていた。
(こいつ、目も耳も機能していない状態でどうやッて)
氷川の疑問が晴れるよりも先に和泉の蹴りが突き刺さる。
吹き飛ばされた氷川は停車していた地下鉄車両に放り込まれる。
割れたガラスまみれの車内の中、椅子を手摺代わりに氷川はふらふらと立ち上がる。
(……対応されてたッてことかよ)
予想でしかないが、そうとしか考えられない。おそらく、ギリギリのタイミングで視界だけでも守ったのだろう。無論、完全にとは言わないだろうが。
氷川のその考察は正しい。
氷川の言うように今の和泉からは普段の冷静さが欠けている。それ故に本来対応出来ていた氷川の小細工も喰らっていた。
それでも和泉は反応した。何かに突き動かされるように。
「……」
自然と氷川は視線を左に寄越していた。そこには、ちょうど車両に足を踏み入れた和泉の姿があった。その手には、ガンツソードが握られている。
両者の姿は正反対だ。
片や多少呼吸は荒れていても傷ひとつなく堂々と立っており。
片や呼吸は荒れ、体中の至る所から血を流し、立っているのもやっとといった様子だ。
先に動いたのは、氷川だった。
受けに回ったところで意味はない。純粋に今の身体状態では和泉の攻撃に耐えられないからだ。
対し、和泉は氷川の猛攻を容易く受け止める。いや、過剰なまでの防御の姿勢と言ってもいい。
電車の中という狭い空間の中で二人は器用に刀で乱舞を繰り広げる。
二人の戦いは長くは続かない。
氷川の連撃のうちの一つを和泉が弾き返す。姿勢を崩した氷川は、大きな隙を見せてしまう。
(どうだッ! 見たかッ! 俺はおまえを超える!)
和泉の心を包み込んでいた焦燥を猛るような興奮が包み込んで掻き消していく。
ふと、聞いた覚えのない──だがしかし、知っている声が脳裏に過ぎった。
──『鍵』を食えるかと期待していたが……とンだ雑魚だ。つまらん
──キミがどンな存在か、『鍵』にどンなに届かないか、ゴミみたいな存在なのか
──キミは、ここにいないンだ
──どう? どうだい? これがキミの運命さ
浮かんだのは、氷川の手によって和泉が殺される瞬間。
今も目的もなく付き合っている少女を庇い、和泉はその命を落としていた。
知らない。
こんなことは知らない。
──一番を
──一番を頼む
(そうか、これは──俺が失った、かつての記憶なのか)
氷川を見て焦りを感じていたのは、この星人が己の死神だったから。
記憶を失おうとも、完全には忘れられなかったもの。
だが、今この瞬間に和泉紫音は運命を超える。
定められていた筈の因果という名の鎖が破壊される。
振り下ろされた黒刀が、氷川の肉体を──運命を切り裂いた。
鎖が砕ける音を、和泉は聴いた。
──その瞬間
ズゥン、と。
駅のホームが揺れる。そして、瞬く間に天井が崩落し、和泉と氷川の間に
その正体を見て、和泉は目を見開く。
【──逝ッたか、氷川】
2メートルを裕に超える巨躯。
背中には四対のツノが生え、その顔は『鬼』と形容すべきもの。
その片手には、見知った人間が握られていた。
「──
風大左衛門。
純粋な殴り合いなら和泉さえも上回る東京部屋最強の喧嘩屋の姿がそこにはあった。
次回ですが、投稿日は未定です。
明日明後日は厳しそうなので、それ以降になると思います。一応、プロット通りで行けばオニ星人編はあと3話で終わる予定なので、出来れば3月上旬に投稿できれば、と。
もう4年なんて待たせませんよ
【おまけコーナー】
・甚爾vs岩鬼
秒殺。とはいえ、Zガンに致命傷を受けたとはいえ何とか耐えてみせた岩鬼。甚爾もびっくりです。
一応、あの風と殴り合えるだけのポテンシャルはあるんですよね。耐久力だけならオニ星人ボスよりも高そうだな、という解釈。
・玄野とアキラ
原作でもたえちゃんミッションの際は、ミッションの失敗を前提にたえちゃんを逃すことを選んだ玄野くん。どうやら今回もそのようですが、別の勝算があるみたいです。
あと少しでも接触が遅れていれば、天与の暴君が飛んできてました。
エリア外に星人が逃げ出した場合、一体どうなるのか。原作では明かされていませんが、この作品では如何に──。
・和泉vs氷川
氷川に対して強烈な焦燥感を抱いていた和泉。そのせいで冷静さを失いかけており、本来引っかからない小細工も食らってしまう。けど、それ以上に氷川を殺すという意志力と過去の出来事による畏れが和泉を突き動かしました。
和泉は確かに聞いた。定まっていた運命が崩れる音を。
・風vsボスオニ
風の敗北。これは順当だと思っています。オニ星人ボスは原作でもそうなんですけど、東京部屋のメンツじゃ逆立ちしてもタイマンじゃ絶対に勝てないっていう。GANTZ:Oみたく、部屋の主力メンバー差し引きでようやく相打ちに持っていけるレベル
さて、次はvs和泉です。どうなることやら。
・Zガンを手に入れるまでがチュートリアル
チャットルームでの格言。かなり浸透している様子で、Zガンを手に入れてそれで慢心するようじゃ長生き出来ないよ、っていう教訓的なアレ。なお、大阪部屋は適応外。
・伏黒甚爾
相変わらず狡猾な男。今回のミッションでは、これまでのように積極的にボスを倒そうとは思っていないし、100点疑惑を捨てきれないため、一旦様子見を選択。
メタ的な話になるが、こいつ現状強ぎる。ワンパンマンでいうサイタマの立ち位置になりつつあるので、何とか調整中。
そういえば、アネモネ先生からご許可をいただいたので、
GANTZ文字の特殊タグの方を公開させていただきます。
活動報告に載せておきます!
私が作ったわけではないのでこういうのも変ですが、ご自由にお使いください。
みんなでハーメルンのGANTZ界隈を盛り上げましょう
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=323656&uid=110050
はい、というわけで先ほどお話ししたとおり、オニ星人編の更新はここから少し空きます、
でも必ず早めに投稿するのでよろしくお願いします!
モンハンワイルズより頑張って優先します! Twitterの方で更新などを聞かれたら普通に答えるので、どうぞお気軽に!
それではみなさん、またいつかとか
GANTZ:F 完結後に書いてほしいもの
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GANTZ:Gにパパ黒√
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かっぺ星人後からパパ黒介入√
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チャットルーム回
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その他(個人でメッセージでどうぞ)