GANTZ:F   作:うたたね。

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今回は早く投稿出来ました!
なんか色も付いて、ランキングにも載ってお気に入りも増えて……ほんとに皆さんありがとうございます!


0003 ネギ星人

 飛ばされたのは夜の住宅街だった。匂いを嗅いでみたが、特に異常は見当たらない。どうやら、敵地──地球外というわけではなさそうだ。要するに、地球に侵略している星人を狩れ──そういうことなのだろう。

 

「つっても、敵の居場所、数が分からねえんじゃな……」

 

 ぼりぼりと頭を掻き、どうしたもんかとぼやいて、とりあえず途中で中断したスーツと武器の機能の確認を行うことにする。とはいえ、道路のど真ん中だ。流石に人目に映るのは面倒だと思い、近くの細道へと身を隠し、スーツに触れていく。

 

 スーツは上体と下体で分かれており、それぞれを着た後に重なることで装着出来る。

 レンズ型のポイントが所々に付いているが、これが何を意味するかは分からない。大腿部にはフォルスターのようなものが付いている。おそらく、これは銃の収納部分だろう。

 銃は小柄のものと大柄のものがある。小柄は拳銃程度だが、大柄なものは形状としてはショットガンに似ている。威力の違いは実際に撃ってみないと分からない。あとで試しておこう。

 

「そして、これか」

 

 スーツの腰の部分に付いていた、手のひらサイズの機器。部屋では電源が点かず、用途が分からなかった。が、今改めて確認すると画面にマップと残り時間が表示されている。

 タイマーは残り40分を指しており、これが切れればゲームオーバーと言ったところか。

 そしてマップには赤い点が二つ。おそらくこれが標的だ。ひとつは何かから逃げるように動き回っており、もう片方はゆっくりと徘徊している。味方の場所は表示されていないようだ。

 

「なるほどね。これを元に狩っていけばいいわけか。そんで多分──」

 

 ──マップ外にいけば、それなりのペナルティがあるハズ。

 

 まだ分からないが、このマップを囲う赤い線。あからさまだ。

 とはいえ、それを自分自身で確認するつもりは毛頭ない。あの中坊から聞き出すか、あるいは()()()()()()()だろう。

 

「あとはスーツの機能……ま、予想は出来るがな」

 

 経験者であろうあの中坊は、肉体を鍛えたりはしていなかった。そして、そんな彼がスーツを着ている──この時点で、何らかの恩恵があるのは理解出来ていた。

 

 ぐっ、と力を入れる。するとそれに呼応するかのようにスーツが盛り上がり、筋繊維のようなものが浮き出す。

 

「とりあえず……」

 

 ぽん、と軽く地を蹴る。次の瞬間、甚爾は5メートルほど高く跳んでいた。

 

()()()()()()()──か」

 

 スタッ、と地面に降り立つ。

 スーツの機能は身体能力の補助──いや、この場合だと補正か。中々面白い。

 甚爾には必要のないものだが、着ていて損はないだろう。

 

 再びマップを広げ、星人の位置を確認する。

 

「へぇ、1匹減ったか」

 

 残りの星人は1体。

 あとは、味方が何人残っているか。

 

「ま、いい。俺も向かうとするか」

 

 星人の脅威はおそらくそこまで高くない。一般人でも殺せる程度、中坊が殺したのならスーツを着ていれば問題ない程度だ。残る一匹の星人の強さが分からないため、油断するつもりはないが。

 

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

 

 

「ハッ、ハッ、ハッ……!」

 

 閑静な夜の住宅街を、玄野計は滝のような汗を流しながら走り抜けていた。その表情は何かに怯えているように恐怖に引きつっていて、眦には涙が浮かんでいる。

 

 玄野は、現在進行形で何かに──ネギ星人に追われていた。

 

 一緒にいた岸本と共に、ネギ星人の子供を追いかける金髪たちを止めに行った加藤を探している最中、二人はその現場を目撃してしまった。

 遠目から見ても分かる、あの惨たらしい惨状。

 肉片が散らばり、血が飛び散り、誰かの上半身が投げ捨てられていた。そこに加藤の姿が見えなかったことから、加藤も殺されてしまったということが分かった。

 地獄の中心には、大男が立っていた。人型ではあったが、明らかに人ではないそいつ。

 玄野と岸本は気づかれないように逃げようとしたが見つかってしまい、今現在、絶賛大きな方のネギ星人と鬼ごっこを繰り広げている。

 傍に岸本はいない。途中で逸れた──というより、走っていたらいつの間にか岸本の姿が見えなくなっていたというのが正しい。生きていてくれと願うが、正直望みは薄いだろう。

 

(クソ、クソ! ふざけンなッ! 畜生、死にたくねえッ!)

 

【おおおオォォォォォォ!!!!】

「ッ!?」

 

 ネギ星人は玄野の真後ろにいる。向こうも玄野についていくのがやっとなのか、攻撃も大振りで幸い一度も当たっていない。だが、当たらないにしても精神は疲弊していくわけで、まるで綱渡りしてるような気分だ。

 

「マジでッ、地獄かよ……ッ!」

 

 最悪な一日だ。

 ただのほほんと学校に通って、さっさと帰ってグラビア本を読んで寝るっていうくだらない日常を続けるつもりだった。

 けど、今日、この日。

 加藤勝と出会って。知らねえおっさんを助けて。死んだと思ったら変な場所に連れてかれて。訳もわからないうちにこんな化け物に追われてる。

 

(俺は、死んだのか。そんでまたあの鬼みてーなのに殺されんの? やな地獄だな〜、だとしたら)

 

 ふざけんな。

 

 思わず、涙が流れる。

 

 死んでいる。これから殺される。

 もう二度と、家にも帰れない。

 

(でも、俺が死んでも、悲しむ奴なんてこの世に──)

 

 ──計ちゃんッ!

 

(ああ、いや、加藤……アイツなら、何となく泣いてくれそうな、そんな気もする)

 

 あの善人なら。

 小学生の頃の俺に、今でも追いつこうとしてる馬鹿なアイツなら。

 きっと──。

 

「あっ」

 

 目の前は──行き止まりだった。

 

 振り返る。

 そこにはあの化け物の姿はなく──。

 

【ベガシ、ボキャゼッ!】

 

 ──そんな、都合の良いことはなく。ネギ星人の親は、怒りの形相でこちらを睨みつけていた。

 

 死んだ。

 終わった。

 もうダメだ。

 

 玄野の脳裏にそんな思考が過ぎる。

 諦めろ。オマエはこれから死ぬのだと、他でもない玄野自身が、それを悟った。

 

 しかし、同時に──

 

 

「そうだ、あの頃の俺は」

 

 加藤の言うように。

 

「俺は……怖いものなんてなかった」

 

 あの頃の俺は。

 玄野計は。

 

 屈強であればあるほどに。

 

「うおおおぉおおおおお!!!!」

 

 ──そこを乗り切った時のヒーロー的な自分の姿を想像し、興奮していた。

 ──そして、その通りになっていた。

 

 向かってくるネギ星人の横をスライディングで抜いていく。

 イメージ通りに身体が動く。追いて来る。

 

 ──力量差くらい、見れば分かるだろ。

 

 あの部屋で、唇に傷のついた男が言っていた。

 玄野には、ネギ星人に勝てるヴィジョンは見えない。

 

 だけど、それなら。

 

「逃げ切ってやる! たとえこいつが、地獄の鬼でも!」

 

 それから玄野は全力で街を走り抜けた。

 無我夢中。

 何も考えず、がむしゃらに走ることだけ考えていた。

 だから気づかなかった。玄野が、常人では考えられない速度で走っていることに。そんな無駄なことを考える暇さえ、今の玄野にはなかった。

 

 ネギ星人はすぐ真後ろにいる。この極限的な状況には似合わないネギの匂いが鼻につく。

 すると、突然ネギ星人が速度を緩めた。

 

「……?」

 

 諦めたのか、と背後を確認し、ギョッとする。

 あれは緩めたのではなく──力を溜めている。

 マズい──そう思った矢先、ネギ星人の速度が爆発的に上がり、玄野との距離を埋めた。

 

(ま、ッず……!)

 

 あの爪で引っ掻かれたら終わりだ。さっき見た、肉片にされてしまう。

 スーツの真価を認識していない玄野は、スーツを着ていればその攻撃も容易く耐えられることを理解していない。

 だからこそ、命の危険をより感じていた。

 

 クソッ、と悪態を吐き、気づく。

 目前には階段。

 そして脳裏に過ぎる──あの頃の記憶。

 考えるよりも先に、身体が動いていた。

 

「オオオッ!」

 

 ()()()

 

 正しくそうとしか思えない。

 想像していたよりも長い階段。だが、それ以上に玄野は5mも高く宙に跳躍していた。

 

 あ、死ぬ

 

 そう思ったが、何故か無事に着地出来た。ゴロゴロと地面に転がり、座り込む。傷はない。擦り傷ひとつ。

 頭がこんがらがる──が、それを打ち消すようにネギ星人が階段から転がり落ちてきた。ネギ星人は立ち上がり、やはり憎悪のこもった表情でこちらを睨みつけた。

 

(これは──ヤバイ!)

 

 その直感は間違っておらず。

 ネギ星人はその鋭利な爪が伸びている手をゆっくりと玄野の首に伸ばして──。

 

 

「──計ちゃんッ、逃げろッ」

 

 加藤勝が、ネギ星人を羽交い締めにしていた。

 

「加──」

「逃げろッ!」

 

 が、次の瞬間加藤は引き剥がされ、ネギ星人の爪によって腕を引き裂かれ、吹き飛ばされる。

 

「ぐ、ぅ……!」

「加藤ッ!」

 

 血が、流れすぎている。

 素人目で見ても分かる。その量は、死ぬ。早く治療しなければ、間違いなく。

 

「ハァッ、ハァッ、ハァッ……!」

 

 ──勝てない。

 ──逃げたい。

 ──無理だ。

 

 ──けれど。

 

「──ッ!!!!」

 

 玄野は、ネギ星人へと駆け出し、その顔面を殴り飛ばした。

 ぐしゃり、と。拳に響く、肉を打つ感触。不思議と痛みはなく、そのまま勢いに任せ振り切った。

 ネギ星人がのけぞり、口から苦悶の音が溢れる。

 

(効いてるッ! このスーツの力かッ!? これならッ!)

 

 はは、と乾いた笑い声をあげる。

 勝てる。

 これなら──未来が、見える。

 

 が、そのほんの一瞬の油断を狙い、ネギ星人が拳を振り上げた。

 しまった。だが、身体は動く。逃げる必要はない。対応できる!

 

 返す拳で玄野がカウンターを合わせる。

 不思議と恐怖はない。

 負ける気はしなかった。

 あの頃と同じで──興奮していた。

 

 

 ──ギョーン

 

 

 何処からか、そんな不可思議な音が響く。

 玄野の思考が止まる。それにつられて動きも止まり、ネギ星人の拳が容赦なく突き刺さった。ごろごろと地面に転がるが、すぐに立ち上がる。痛みは殆どない。スーツの効果だろうか。

 

「計、ちゃ……ん」

「だ、大丈夫……にしても、今の音は──」

 

「──ああ、そいつは俺だ」

 

 何処からか、声が聞こえた。

 辺りを慌てて見渡すが誰もいない。ただ、この声には聞き覚えがあった。あの部屋にいた時、ヤクザ二人を一瞬で打ちのめした、あの──。

 

 ばちばちばちばちばち、と。

 

 玄野の隣で雷光が瞬く。すると、何もない空間から突然人間が姿を現したのだ。

 玄野と同じく黒いスーツを着ており、下だけだが、部屋で履いていた白いボンタンのようなズボンを履いている。

 あの時、ヤクザ二人を秒殺した男。

 

「あ、アンタ、何処から」

「ずっとそこにいた。ああ、あと悪りぃな。オマエの獲物、戴いちまったよ」

「は?」

 

 男がくつくつと笑った瞬間、玄野の目の前でネギ星人の頭部が弾け飛んだ。

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

 

「時間差での着弾──まぁ、使い方によっては(トラップ)としても使えるかもな」

 

 べちゃべちゃと緑色の液体──ネギ星人の血液が降り注ぐ。「汚ねえよ」と甚爾は顔を顰め、頭部を失ったネギ星人を蹴り飛ばし、念のためと持っていた小さい方の銃の引き金を落す。ギョーン、という独特の銃声が数回鳴った後、ネギ星人の肉体が弾け飛んだ。

 

「まさか、俺とあのクソガキ以外にもスーツを着てる奴がいたとはな。勘が鋭いのか、ただのバカなのか……」

 

 隣で呆然と立ち尽くす計ちゃんと呼ばれた少年を、甚爾はそれなりに評価していた。

 あの状況下で、殆どノーヒントにも関わらず、スーツを着るという選択をした少年。この先生き残れるかは知らないが、甚爾や中学生を除いた中では最も生存率は高いだろう。

 

「突っ立ってるのも良いが、そこのオールバック、止血しとかねえと死ぬぜ? まぁどのみちそう長くはないだろうがな」

「あっ、あ! 加藤! おい、しっかりしろ!」

 

 加藤──オールバックの高校生の下へと向かった"計ちゃん"から視線を外し、甚爾は階段の方へと視線を向ける。そこには人の気配はなく、加藤の血とネギ星人の血が付着しているだけだ。

 が、甚爾はそこに誰かがいるということを確信していた。

 

「オマエ、あの中学生だろ。さっさと出てこいよ」

 

 甚爾が飛び出した時のように火花が散り、誰かが出て来る。そこにいたのは、部屋にいた中学生。パーカーの下にしっかりとスーツを着ており、心底驚いたといった様子でこちらを見ていた。

 

「何で分かんの? 超能力者かよ」

「かくれんぼは得意でな」

 

 

 そう言って誤魔化したが、あまり意味はない。いずれ分かることだ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、甚爾の天賦の肉体を知ることになる。であれば答えは自ずと見えて来る。

 呪縛により研ぎ澄まされた五感。本来認識出来ない筈のものさえも捉えてきたそれらは、ステルス機能程度を見破ることは容易い。

 

「部屋で見た時から只者じゃないとは思ってたけどさ。頭もキレるなんてな。俺もいろんな奴を見てきたけど、初見でここまで見抜いて適応したのはアンタが初めてだよ」

「男に褒められても嬉しくも何ともねぇよ。オマエみたいなクソガキからなら尚更な」

「ひっでえ。素直に褒めてんのにさぁ」

 

 肩を竦める中学生。

 

「アンタなら、()()()()()生き残れるだろうぜ。他は知らねえけど」

「やっぱり、今夜限りじゃねぇんだな。俺たちはこれからどうなる? 連戦か?」

「──はは、そこまで見抜けてるのは流石だ。答えはすぐに分かるさ。これから部屋に戻って"採点"が始まる」

 

 採点──予想するに、おそらくこの戦いの評価みたいなものだろう。

 

「ほら、始まった」

 

 

 ──ジ、ジジ

 

 

 金縛りにあったかのように身体が動かなくなる。部屋に飛ばされる時とは仕様が違うらしい。

 

(肉体状態の保存……それによる副作用みたいなもんか。つまり、転送に間に合えさえすれば生きて帰れる、ってことか)

 

 巧く出来ている。部屋に戻った後、中学生に尋ねておこう。もしも受けたダメージを全て解消して戻れるのであれば、かなり無茶をした戦いが出来るだろう。

 限定的な反転術式代わり──もしも甚爾と同等、あるいはそれ以上の敵が現れた際には、かなり有用だ。

 

 視界が夜の住宅街から、見覚えのある部屋へと移り変わる。

 どうやら一番乗りは甚爾らしい。ミッション前は大勢いたせいで窮屈に感じられた部屋が、広く感じる。

 

 続いて中学生、計ちゃんと呼ばれていた高校生、犬、巨乳女、そして──加藤という高校生。どうやらあの二人のヤクザは死んでしまったようだ。何処かでネギ星人に遭遇したのだろう。

 加藤の出血量はいつ死んでもおかしくなかったが、予想通りギリギリで回収されたらしい。運がいい──いや、この場合悪いのか? 彼のような人間からすれば、これからの戦いは地獄以外の何物でもないだろう。

 

 

「すげーな。今回、マジでこンだけ残ったのか? 俺以外で生き残ったのも久々だッてのに……」

 

 中学生が心底驚いた様子で呟く。

 どうやらこれまでもこの少年を残して新人は全滅していたようだ。それも当たり前か。この黒い球体は、お世辞にも丁寧に説明しているとは言い難い。ミッションの説明もアイテムの説明もない。何をすべきか、何をしたらいけないのか──それすらも与えられない。加えて、経験者も自身の愉しみと安全のために助けようともしない。

 生き残れるのは甚爾などの例外を除けばほんの一握りの存在だろう。

 

「今回は粒揃いだ。ガンツの野郎、今回は本気で集めたのか? にしては、ミッションはサービスレベルだッたけど」

「ガンツ? その球のことか」

「そ。俺が部屋に呼ばれた時からそう呼ばれてる。意味はよくわかんないけど」

 

 黒い球体──通称ガンツ。

 そちらに目を向けると、突如「チーン」とレンジが鳴るような音が響き渡り、その黒い画面に文字が表示される。

 命懸けの夜を生き残った五人と一匹の視線が集まる。

 

 

 

それぢわ ちいてんを はじぬる

 

 

 

 

 

 

 

 




回はパパ黒はあまり動きませんでしたね。
でも彼、慎重な男なのでそう簡単には動き回らないと思うんで……田中星人以降はバリバリ戦うと思いますので!

次回の更新は、田中星人編を描き終えてから投稿しようと思ってるので、少し遅くなるかもです。

GANTZ:F 完結後に書いてほしいもの

  • GANTZ:Gにパパ黒√
  • かっぺ星人後からパパ黒介入√
  • チャットルーム回
  • その他(個人でメッセージでどうぞ)
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