お待たせしました。
最新話です。
お待たせして申し訳ありません!
突如として乱入してきたオニ星人──雷鬼。
未だ和泉はその能力を知らないが、しかしながらこの星人の底知れなさはひしひしと感じ取れていた。
(風の生死は分からないが……おそらく、こいつに有効打を与えることは出来ちゃいない)
見た限り、ダメージを受けている様子はその巨躯には見られない。
その反面、風はどうだろうか。
既にスーツは死んでいる。頭部に深い裂傷、左脚は欠損しており、夥しい量の血液が流れ出ている。生きていたとしても戦力にはならないし、そう長くは
(──おもしれー! 相手にとッて不足はないな)
風の実力は和泉も知るところだ。
正面戦闘であれば、
しかし、その事実を悟ったとしても和泉の心の中に絶望は生まれない。
運命を乗り越えた和泉には、既に死の恐怖など感じはしない。超越している。
万能感とも呼べる興奮が和泉の精神を支配している。
【次はオマエだ、ゴキブリ】
ひゅん、と。オニ星人は手に持っていた風を雷鬼は乱雑に和泉に向かって投げ飛ばす。それを受け止めることすらせず避けた和泉は、刹那に目を見開く。
目前に拳が迫っていた。
「──ッッッ!!」
それを避けられたのは、和泉の意思によるものではない。
気づいた時には勝手に肉体が駆動していた。
雷鬼の拳が突き刺さったドア部分は、砲弾の如くホームへと飛ばされる。
反射による反応──氷川との戦いによって研ぎ澄まされていた直感がまだ活きていた。
(なンつー
甚爾の本気を見たことがあるわけではない。
だが少なくとも、訓練で見せた甚爾の超人的な身体能力を雷鬼は軽く超えている。
汗が頬を伝う。あまりの
そして同時に──
(いい……! 俺が求めていたものは、これなンだよ!)
思い出す。過去の記憶を。
一度失われた記憶。全てが返ってきたわけではないが、しかしあの非日常に取り込まれた時の心持ちが湧き出て止まらない。
正史の和泉ならば、見上げて届かないほどの格差がある相手に対し、絶望を隠せなかっただろう。
しかし、
滾るような情熱に歯を噛み締めながら、和泉は獣のような笑みを浮かべる。
来る。次の一手が。雷鬼の身体能力は和泉の知っている中での甚爾や風を超えている。視て反応しては遅い。先ほどのように五感で感じ取る前に反応しなければならない。
(イメージしろ、イメージ……こいつに勝つ、イメージを──)
ピキッ、と。僅かな音が鳴る。
ほぼ同時に、和泉は車両から脱出する。
刹那──閃光が瞬き。
遅れて──轟音が鳴り響く。
それが雷だと和泉は気づき、内心で「何でもありだな」と吐き捨てる。
車両を包む煙から雷鬼が飛び出てくる。残像すら感じる程の速度で接近し、振りかぶられた蹴り。和泉の頬、その真横を抜けていく。ガラ空きとなった腹部にガンツソードを振り抜く。
しかし、既に雷鬼の姿は目の前にはない。
「ごァ──ッ!?」
直後、何処から舞い込んで来たのか、腹部に衝撃が突き刺さる。
レバーブロー。意識の外側からの攻撃に思考が白に染まる。
(ふざ、けンな!
純粋なフィジカルによるゴリ押し。
シンプル故に厄介。甚爾と同じく、
油断や慢心を突こうにも、雷鬼はただ殺すことしか考えておらず不可能だ。
今の一撃はスーツを貫く程の一撃ではない。
しかし、致命的な一撃ではあった。
雷鬼の動きに和泉が未だ対応出来ていないということを知られてしまった。
(ここからが本番だろッ!!)
空中で体勢を立て直した和泉は、壁に着地し即座にその場から跳躍する。間髪入れずに飛び込んで来たのは、オニ星人の飛び蹴りだ。
飛び退くと同時に円形に地面がひび割れる。
冷や汗が流れる。
喰らっていればスーツに多大なダメージが入っていたかもしれない。
【ちょこまかとッ!】
「ハッ、ゴキブリッてのはそういうもンだろ」
【ほざけ!】
オニ星人の乱撃は止まらない。正しく目にも止まらぬ速度で繰り出される暴力の嵐。少しでも隙を見せればすかさずに落ちてくる雷鳴。しかし、和泉はそれを紙一重で避け、いなし、対応していく。
視界から色が消えている。世界がゆっくりに見え、音はより精密に聴き取れている。
和泉の才覚。
あらゆるステータスが高水準に達する彼の脳機能は、この極限下の状況に適応するために限界近くまで回転し続けている。
攻撃そのものを五感で感じ取るのではなく、その予兆こそを和泉は見抜く。
縦横無尽に駆け回る2人。雷鬼が攻撃に移るたびにホームが大きく揺れる。
(コイツに勝つ、イメージ──)
今の和泉は全能感に満たされている。
思考と精神、肉体が合致している感覚。
これまで、何かが欠けていた。この世界に舞い戻ってきてもなお、歯車がハマらないような錯覚。
おそらくそれは、ひょうほん星人と氷川によって生み出されたものだ。
だが、彼らに掛けられた呪いは、既に解けた。
和泉を縛るものは何もない。
雷光を彷彿させる雷鬼の電光石火の攻撃の数々。
和泉は防戦一方になりながらも食らいつき、その中でチャンスを目敏く狙っている。
(勝つ、勝つ──殺して、勝つッ!)
呪縛を解いた和泉が作り出す、実力差を超えた拮抗状態。
雷鬼は苛立ちを覚えるが、徐々に精細さが欠けていく。
その僅かな隙を少しずつ和泉は広げていく。
しかし、その拮抗は──突如として崩れ去ることとなる。
「ハァ、ハァ」
和泉に疲労が見え始めた。たったの数分の攻防であったが、その密度は黒服星人のそれとは比較にならない。
あの風でさえなす術もなく敗北した雷鬼に対し、ここまでついてきた和泉の才覚は本物だ。
それでも、届かない。
きゅいん、きゅいん、とスーツが嫌な悲鳴を上げている。
直撃は避けていても、ダメージを完全に凌げていたわけではない。蓄積されたそれらは、確かにスーツを蝕んでいる。
【終わりだな、ムシケラ。少しは歯応えがあッたが、俺には勝てない】
「……言ッてろ」
追い詰められている。あらゆる手立てが悉く封じられてしまった。
これ程までに追い詰められたのは、いつぶりだろうか。
あの忌々しい
【まァいい、死ね】
雷鬼が構える。その予備動作は嫌になる程に目にした。
(避けられなけりゃ間違いなく死ぬな──来いよ、雷撃! 必ず対応してみせる……!)
これは雷鬼が初めて見せた油断。削られつつある和泉に対して、余裕を見せている。そこにこそ付け入る隙がある。
神経を研ぎ澄ませ、和泉は──
「……死亡確認は、…するべきだ……たな」
か細く、今にも消えそうな声が、和泉の背中に突き刺さる。
消し去ったはずの運命が蘇る──再び鎖が己を締め付ける様子を和泉は幻視した。
和泉の背筋に数発の衝撃が叩き込まれた。
「〜〜〜〜ッ」
「置き土産だ、受け取れ」
背後を確認して雷鬼から目を離すような真似を和泉はしなかった。
追撃がなかったことから、これ以上の攻撃はないと判断したからだ。
声の主──氷川が最後にどんな表情を浮かべていたかは分からない。ただ、和泉の鼻腔を紫煙の香りがくすぐった気がした。
和泉の油断──それは、現れた敵に目を奪われ死亡確認を怠ったこと。
確かに雷鬼を目の前にそれは厳しかったのかもしれない。
だが、そうであるのならば常に頭の片隅に氷川の存在は記憶に入れて然るべきだった。
ひとえに氷川を殺したと思ったのは。思ってしまったのは。
(安心したからだ、俺が運命を乗り越えたのだと)
その安堵は、甘美な猛毒だった。
長年蝕んできた恐れが解かれた時、その甘みに和泉は溺れてしまったのだ
運命は変わった。
確かに和泉紫音には、かつてひょうほん星人が視せた未来は訪れなかった。
しかしそれは、
【死ね】
興味は失せた。雷鬼の腕が乱雑に振るわれ、和泉へと迫る。
和泉のスーツは、氷川の強襲によりその機能を失っている。そして、未来を乗り越えた先の落とし穴に足を踏み入れ、呆然とする和泉には、その一撃に反応する余裕はない。
未来を見通す星人が見通せなかった、されど過程を変えて振り落ちた、和泉の人生の果て。
つまり、和泉紫音はここで死ぬ。
──その瞬間の出来事だった。
「ウォォォォォ──!!!!」
それは雄叫びだった。空気が震えるほどの凄まじい声量。
次の瞬間、雷鬼の体が大きく揺らぐ。
【何ッ──!?】
完全なる意識の外側。
予想だにしていなかった不意の攻撃に雷鬼の意識が和泉から謎の襲撃者へと移り変わる。
己の胴体に何かがしがみついている。
視線を向けた雷鬼は、思わず目を見開いた。
【貴様は──】
「か、風……」
地面へと振り落とされた和泉も雷鬼と同様に驚愕していた。
雷鬼へと突撃したのは、風大左衛門。
生死は分からなかったが、間違いなく死に体だったはず。攻撃に移れるような体力はとうに失っているだろう。
それでも──風大左衛門は立ち上がった。
スーツは既に死んでいる。
(関係なか……)
血が流れ過ぎており、止血しなければ間違いなく命を落とす。
(関係なか……!)
このまま挑んだとしても勝利する可能性は0%。
僅かな希望すらない。
だがしかし──
「関係なかッ!! まだ勝負は終わッてないばい──!!」
それは、風大左衛門が立ち上がらない理由にはならない。
風にとって、誇れるものは腕っ節しかない。
頭は良くないし、話も上手な方ではない。
昔から、常人よりも強靭な膂力こそが他の人間にはない、風だけが持つものだった。
自分自身が強者として在れるのであれば、それだけでよかった。
けれど、上京してきて風の価値観は変わりつつあった。
敗北を知らなかった己を赤子を捻るかのように倒してみせた男。
まるでフィクションの世界から飛び出してきたような化け物たち。
風を仲間だと輪に入れ、口下手な自分にも友好に接してくれる者たち。
そして──強さだけしかなかった腕っ節に、『筋肉ライダー』という役割を与えた少年。
このまま死んだふりをしていれば、風は生き残れた可能性はあった。
甚爾を始めとする仲間たちは、必ずオニ星人を討伐出来ると信じているからだ。
だが──それをすれば、和泉は死ぬ。
仲間を見逃して、おめおめと生き残るのがタケシが信じた『筋肉ライダー』なのか。
これまで鍛え上げてきたこの強さは、何のためのものなのか。
風が立ち上がる理由は、それで十分だった。
和泉と視線がかち合う。
言葉を交わす必要はない。
和泉は、この一瞬の隙を見逃すような男ではないと風は理解している。
──
満身創痍の中、決死の鬼退治が始まる──!
早くも前回の更新から1年経っているという事実
社会人になってからというもの、時間が早すぎる。
前回も早く更新すると言いながら、また長い時間を空けてしまったこと、大変申し訳なく思います
とりあえず、オニ星人編と次章の導入まで書き上げたので、投稿いたします。全6話をお楽しみください。
【おまけコーナー】
・和泉vs雷鬼
原作同様に圧倒的な実力差。しかし、甚爾と出会ったことによる微量な強化とひょうほん星人の呪縛から解放されたことによるメンタルバフで何とか食らいついた和泉
しかし、長年彼を縛っていた呪いから解放されたという事実は、和泉の油断を誘う。
皮肉にも、氷川と戦っていた時の死への恐怖からくる異常なまでの警戒心が薄れてしまい、不意打ちを食らってしまう結果に。
しかし、我らが筋肉ライダーが意地を見せ、重傷ながらも二人で立ち向かうことに。
・氷川
根性を見せた男。
おそらく、和泉が生存する世界線では、氷川は和泉よりも先に死ぬという運命
・風
根性を見せた男その②
・雷鬼
クソ強い星人
正直、大阪チームでもタイマンだと岡以外は全然厳しそうな感じがする。
何だかんだ仲間想いな一面がある。
・GANTZ:E
現在連載中のスピンオフ、GANTZ:Eでは、ネタバレを含むのでおおまかに言いますが、このオニ星人編が関わってきます
しかし、今回は特に関係ありません
理由は伏黒甚爾がいたから。
次は、明日の21時5分に投稿します!
たくさんの感想をお待ちしております!
GANTZ:F 完結後に書いてほしいもの
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GANTZ:Gにパパ黒√
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かっぺ星人後からパパ黒介入√
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チャットルーム回
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その他(個人でメッセージでどうぞ)