それと、誤字報告ほんとに皆さんありがとうございます!意外と読み直しても、気づかないもので。大変助かります。
部屋の中には、ガンツに収納されていた銃やスーツ以外の道具が置かれていた。
床に乱雑に転がっている鍔から先の刃がない漆黒の刀に、同じ色のホイールバイク。バイクには後で触れることにして、甚爾は刃のない刀を手にする。鍔に付いてあるボタンを押すと、刃が飛び出した。
(どうやら、銃とは勝手が違うみたいだな)
ガンツが提供する武器にはX型の形状の銃が二つとY型の形状の銃が一つ。計三種類存在する。
X型──Xガンは、殺傷性のある銃だ。タイムラグこそあるが、敵を内部から破壊出来る。
もうひとつはショットガン型と甚爾は呼んでいる。威力も高く射程も長いが、Xガンよりも大きく、取り付けも出来ないため持ち運びに難が生じる。
そしてYガン。これはまだ星人相手に利用したことがないためなんとも言えないが、撃ってみたところワイヤーが射出された。その後もう一度トリガーを引いたところ、ワイヤーが何処かへと転送されていったため、おそらくは捕獲用のものだと予想する。
これらの武器は非常に軽量だ。スーツを着ていなくとも楽々に持てる。質量と釣り合っていない気もするが、気にしたところで意味がない。
しかし、この刀にはしっかりとした重さが存在する。甚爾の膂力であれば問題なく持てるが、スーツを着ていない常人にはそれなりに重く感じる筈だ。
(西が使わなかったのも納得だな。刀の特性上、星人に近づかなきゃいけねぇリスクがあるし、そもそも初心者じゃ満足に振れねぇだろ)
ロックオン機能が存在し、技術がなくともある程度は使えるXガン等とは違い、刀は技術を要する。そういった方面の補助はないため、初心者がいきなり使うのは難しいだろう。
とはいえ、技量面は問題にはならない。甚爾は生前、多数の呪具を扱ってきた一流の殺し屋。刀もその例に漏れない。
腰のホルスターに二振り装着する。今回のミッションで刀──ガンツソードの性能を存分に試すとしよう。
「で、バイクだが──」
必要はない。
走った方が早い。
『きゃーーーーー!!!!』
耳をつんざくような悲鳴が、ガンツの部屋から響いた。
ついに襲われたのだろうか。なんて下らないことを考えていると、何やら血生臭さが甚爾の嗅覚を刺激した。
「……誤発でもしたか? あるいは西か」
Xガンの銃弾を喰らっても、スーツを着ているならば数発は耐えられる筈。だが着ていないなら、当たりどころ次第では一発でお陀仏。良くても欠損だといったところだ。
扉を開けると、質素な部屋が随分とカラフルに彩られていた。床や壁、天井に付着した血液や肉片。耐えられなかった者たちの吐瀉物。
見渡すと、西の姿はない。どうやら先に転送されたらしい。
「おーおー、随分と暴れたなぁあのクソガキ」
「伏黒さん……どこにいたんですか」
「あそこの部屋」
加藤の疑問に甚爾は親指で指し示す。
「そこの部屋にスーツはありましたかッ!? 計ちゃんがスーツを忘れてしまったらしくて!」
「ねぇよ。あったのは刀とバイクだけ。まぁ使うのはオススメしねぇけど」
「そう、ですか」
加藤の期待には応えられなかったようだ。
ガンツは親切ではないのだ。二つ目のスーツなんか用意したりはしない。
すると、加藤が「あっ!」と声を上げる。
「伏黒さん、その……よければ、俺と一緒に計ちゃんを守ってくれませんか?」
「ああ?」
「伏黒さんは、強い。あなたがいれば、きっと計ちゃんも……!」
「加藤……! あ、ああ! 頼む! 頼みます!」
「……」
加藤の言葉に玄野が感無量とばかりに涙を滲ませる。
二人は必死になって甚爾に頭を下げ、頼み込む。
死なせたくない。
死にたくない。
そんな強い意志を感じる。
一度失った命。地獄のような場所にとはいえ、再び生を受けた。だからこそ、人一倍死ぬことに恐怖を感じ、生きることを渇望している。当たり前に生きることの尊さを実感したのだろう。
だが。
「断る」
そこまでする義理は存在しない。
甚爾の返答に、二人の顔が絶望に染まる。
「そんな……!」
「頼むッ! なんでもするッ、何でもするから!」
「知るか。死ぬなら勝手に死んでろ」
しかし、そこまで突き放してもなお、二人は諦めない。
思わずため息を吐く。
「あのな。ミッションの時間は有限なんだ。制限時間にクリア出来なかった場合のリスクを少しは考えろ。
玄野が生存したとしても、ミッションを達成出来ずに死ねば意味がない。
達成出来なかった場合のペナルティが不明である以上、戦力を一人の生存に回すのは愚策でしかない。
……尤も、ペナルティがあろうが無かろうが、甚爾に玄野を助けるつもりはなかったが。
そうこうしている間にも転送は続く。運が悪いことに玄野の番だ。加藤と岸本が玄野にそこを動かないように言い、玄野は転送されていった。
それから次々と転送されていく。残ったのは甚爾だけ。あのホモと二人っきりになることがなくてよかった。心の底から安心した。
甚爾は転送を待っている間、田中星人の情報を再度確認する。
(田中星人、ねぇ。ボスはこいつとは違う可能性も考えておくか)
ネギ星人の時もそうだった。あの写真のネギ星人と甚爾が相対したネギ星人の見た目は、同じ種族であることは分かるものの別物だった。今回もそういうことがあると視野に入れておいた方がいい。
ガンツは適当だ。それは前回を含めて理解している。不測な事態にも対応出来るよう、ある程度の予測・予想は不可欠だ。
ガンツが甚爾に向かって光の線を照射する。
いよいよだ。最悪、もうこの時点で誰か死んでいてもおかしくはないな、なんてことを考えている間に転送が完了した。
転送先は前回同様に東京の住宅街だった。マップを確認したところ、別の地域ではあるようだ。
(ミッションがまた東京……まぁ、偶然の可能性はあるか。ただ、もし次回も東京なら、ガンツは全国……世界にもある可能性を考えてもいいかもな)
地域ごとにガンツが置かれてある可能性。そしてそこから、星人が本物の宇宙人であるという説の信憑性も高まる。
星人が侵略者だとすれば、東京だけに留まるとは考えにくい。世界各地にそれぞれ適応しやすい環境に星人が居座っているのかもしれない。
「ま、今は目先のミッションだな」
マップに表示されている星人の数は、全部で13体。ネギ星人よりも遥かに数が多い。そのうち一体はガンツ側に囲まれている。おそらくは加藤たち。少し離れたところには7体確認でき、残りの5体は疎らにマップの各所を移動していた。
(7体の星人が集まっている場所──そこに今回のボスがいるハズだ。突っ込んでもいいが、その前に適当に一匹狩ってから向かうか)
ボスの居場所の当たりを付け、方針を決める。
ボスとの戦闘の前に、まだ使用していない武器の性能を確かめておきたい。これからも使うことになるのだ。今回の戦いで完全にできることは把握しておきたい。
閑静な夜の住宅街を、甚爾は素早く駆けていく。丁寧に道に沿って歩く必要はない。塀を乗り越え、屋根へ飛び乗り、駆ける。一連の動作を瞬く間に行い、一直線に最短距離を走る。
そして、ボスの場所から500m辺りのところで甚爾はピタリと脚を止めた。
──ウィィィィ
駆動音が夜空から降り落ちる。見上げると、人の形を模したロボットが此方を見下ろしていた。赤と白のボーダーの服にその見た目──間違いなく、田中星人だ。
ずん、と田中星人は降りてくると、田中星人は甚爾の方を向く。機械故に表情が変わらず、瞬きもせずにこちらを見つめてくるため不気味に見える。呪霊程ではないが。
「よお、オマエが田中星人か?」
【裕三くん!】
「俺は甚爾だっての」
Yガンを取り出し、田中星人に標準を向ける。XガンにもYガンにも搭載されている機能は二つ存在する。ロックオン機能とレントゲンのような透過機能だ。
(こいつ、中に何かいるな)
ロボットのような見た目は外殻。中に人間大の鳥のような生物の骨格が可視化された。ガンツスーツと同じく肉体を強化するものなのか、それとも環境に適応するものなのか、あるいは両方か。
どれにせよ、甚爾がやることは変わらない。
「ま、時間がねぇんでな。さっさと倒させてもらう──ぜッ!」
地を踏み抜く。スーツが動きに合わせて隆起し、甚爾の加えた力を補正する。それにより発揮される力は、実際に加えた力の十倍以上のもの。甚爾は全力の力を加えていないため、本気には程遠いが田中星人相手には十分だったらしい。
【裕──】
「──遅え」
──一閃
田中星人の反応よりも早く、甚爾は攻撃を済ませている。
居合抜刀。
鞘はないが、ホルスターから抜き放つ動作ですれ違いざまに田中星人の脚を切り裂いた。
田中星人の中身が、悲鳴の声をあげる。それを無視して、脚を切断され機動力を失った田中星人へとYガンを撃つ。するとワイヤーが射出され、田中星人へと巻きついた。
トリガーを引くと、空から赤いレーザーが田中星人へと放たれ、みるみるうちに転送されていった。
YガンはXガンとは違い、殺傷が目的とした武器ではないと推測していたが間違いではないらしい。
ただ、転送に時間がかかるのが難点だ。強靭な星人ならば転送までの間に振り解くことも出来るかもしれない。無限に分裂する相手などには有効だろうが、転送よりも攻撃に時間を割いた方がロスも少なくていい。
「さて、それじゃあボスを倒しに行きますか」
ボスの位置はあれから変わっていない。星人の数も数匹減っており、どうやら誰かが倒しているようだ。西か加藤たちだろう。
移動を開始して間もなく、星人の根城へと到着した。見た目はただのボロアパート。こんなところに星人がいるのか、と思ってしまうが、レーダーは間違いなくここを示している。何より、甚爾の五感が中にいる生命体の存在を捉えていた。
数は7。ノーマルな田中星人が六体とより巨大な個体が一体いる。反応は二階からだ。
ご丁寧に玄関から入るような真似を甚爾はしない。
近隣への被害など何のそのと言わんばかりにガンツソードを躊躇なく振るう。その間に10m程刃を伸ばし、斬撃の距離を拡張する。伸ばしたぶん重さが増すが、そんなもの甚爾の膂力の前では誤差だ。
先ほど使用して分かったが、ガンツソードの斬れ味は非常に高い。豆腐のようにアパートが両断され、盛大な破壊音と砂煙と共に倒壊する。
だが、星人はまだ倒されていない──
手応えはあったが、それはボスの護衛をしていた六体の田中星人のみ。ボスはまだ生きている。
煙の先に、巨大な鳥のシルエットが瓦礫を押し除けながら現れる。
【グオララァ!! グオオオオ!!】
咆哮と共にビリビリと空気が震える。煙が晴れ、その姿が明らかになった。
3mはあろうかという巨大鳥。鳥は、憎悪の籠った双眸で甚爾を睨みつけている。
そんな怪鳥に、甚爾は獰猛に笑いかける。
「ハハッ! 悪ィな、お仲間を殺っちまって」
【グァオオオオオオア!】
「ちったぁ俺を楽しませろよ、クソ鳥」
無理だろうな、と甚爾は苦笑する。
敵の強さなど、大体みれば分かる。それは異形でも変わらない。
生前の甚爾は術師専門の殺し屋だ。かと言って、呪霊と全く戦わなかったわけではない。
遭遇することもあったし、相手の術師が呪霊と契約していることもあった。
人ではない存在との戦闘経験は、しっかりと積み重ねている。
このボス星人の戦闘能力は、呪霊で言うならば精々が二級程度だろう。それも下の層の。甚爾の相手にはならない。
巨大鳥がその大きな翼で空を飛び、鋭利な爪で命を刈り取らんと勢いよく向かってくる。知性はそれなりにあるらしく、一点に留まらず縦横無尽に動き回っている。
Xガンでロックオンして撃てばそれで終わりなのだが、試したいことが出来た。
ガンツソードを取り出し、前方へと距離を詰めて地面に突き刺す。そのタイミングで柄のボタンを押す。すると刃渡りはみるみるうちに伸び、甚爾も高く打ち上げられる。
巨大鳥と同じ高さまで来たところで刃の伸長を止め、巨大鳥へと乗り移る。
「よお」
【!】
そして。
──ドチュッ!
大腿部から取り出した二振り目のガンツソードを、巨大鳥の頭部へと突き刺した。
【グァァァァァァアオオオオオ!!!??】
東京の夜空に、怪物の絶叫が響き渡る。
甚爾は笑みを深め、追撃を加える。
ほんの一秒。
その間に50を超える刺突を巨大鳥へと加えた。絶命した巨大鳥は、ピクリとも動くことなく地面へと墜落。ぐちゃり、と衝撃に耐えられず肉塊へと姿を変え、その上に甚爾が飛び降りる。
「まぁ、こんなもんか。ネギやロボよりは遥かに強いが……相手にはならねぇな」
獣臭え、と顔を顰めながらレーダーを取り出す。マップには星人の反応は残っておらず、つまるところこれでミッションはクリアとなった。
甚爾が倒したのは計8体。うち1体はボス星人だ。今回は星人の量も質も前回とは比べ物にならなかった。それなりの高得点は貰えるだろう。
数分もたたない間に甚爾の転送が始まった。
戦闘描写って難しいね。
コツとかってありますか?
次回で田中星人編は終わりです。
GANTZ:F 完結後に書いてほしいもの
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GANTZ:Gにパパ黒√
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かっぺ星人後からパパ黒介入√
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チャットルーム回
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その他(個人でメッセージでどうぞ)