インフィニット・ストラトス~光に奪われし闇~   作:ダーク・シリウス

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異邦人と憎悪

クロウ・クルワッハが来てから世界は絶対天敵(イマージュ・オリジス)の出現がパタリと途絶えて一時的な平穏が訪れた。それに呼応して束達も静かに何かを待っているかのようだった。IS学園は第一アリーナの復旧が進む中、一誠は与えられた武器を扱えるように奮闘していた。一夏達も学園生活を過ごしつつ嵐の前触れのようにも思えるこの静けさにピリピリと警戒する。

 

 

 

 

『俺はあの時の仕切り直しをする。ついて行きたければついてくるといい。ただし、相手はISを駆使する者以外なら手を出していい。連れて行く私兵も標的はISと兵器に設定する』

 

『んじゃあ、俺もIS学園に行かせてもらうぜ?あそこに行きゃあクロウの姐御と戦えっからな』

 

『この際だ、全員で行こう。クロウ・クルワッハと戦いにな』

 

《ふむ、IS学園に私達が集えば恐らく、私達の行動を龍の祖が窺っているだろうから奴らが来る可能性はある。用心するべきか》

 

《俺、クロウの姐御と戦いたくねぇよ・・・・・あ、蠅共なら、い、いいけどさ》

 

『本気で喜々として挑んでくるでしょうからねぇ。私も肝が冷えますよ、クロウ・クルワッハと真正面からぶつかり合うのは』

 

再び絶対天敵(イマージュ・オリジス)が戦いを仕掛けようと臨み、その時が来るとき季節は冬に突入する。

 

 

 

IS学園は冬の催事としてクリスマスパーティの準備にかかっていた。特に専用機持ちは戦いばかりだからこそ日常の催事は大切だと楯無の提案でクリスマスパーティをすることになった。それぞれ準備をするために分担して行う。料理班、ツリーの飾りつけ、皆は聖夜に向けて楽しく準備を進めて―――。皆の和気藹々と楽しい気分を引き裂くように警告のアラームが学園中に鳴り響く。

 

「な、なんだ!?」

 

まさか、久しぶりに―――と誰かがその思いを抱いた時、それは具現化した。直ぐ近くで大爆発の連鎖の音が鳴り響いた。

 

『緊急放送、緊急放送!専用機持ちは直ちに全員学園の外へ!絶対天敵(イマージュ・オリジス)の大群が!IS学園を襲撃しています!』

 

「んな、こんな時にだって!?」

 

「絶対狙っていやがるな!」

 

駆け出す専用機持ちは窓の外から飛び出してISを装着して空へ飛び出す。放送通り、学園の各施設にアジ・ダハーカが襲撃してきたよりも圧倒的な数で破壊を繰り広げていた。そしてISを纏う者、一夏達を視認するや否や、一斉に襲い掛かった。

 

「くそったれぇっ!?前回の二の舞になってたまるかぁっ!」

 

「全員、複数に組んで対処をして!」

 

指示を出す楯無。その疾呼の叫びに一夏達は複数で組んで射撃や近接攻撃で襲ってくる『混沌と破壊を齎す機械龍(カオス・マーシナリードラグーン)』を迎撃していた時、あの声が聞えて来た。

 

『遊びに来たぜクロウの姐御ぉー!俺と勝負しろやぁっー!ラーズグリーズ、お前もいるなら前回の勝負の続きをするぜぇっ!』

 

「グ、グレンデル!?」

 

《ひ、久しぶりだな蠅共ぉ~!》

 

「ニーズヘッグまで嘘だろ!?」

 

『私は初めましてですねIS学園の皆さん。私は「宝樹の護封龍(イムソニアック・ドラゴン)」ラードゥンと申します。以後お見知りおきを』

 

「新しいドラゴン!・・・ドラゴン・・・・・なのか?」

 

『ドラゴンですよ。見た目は樹木ですが邪龍です』

 

そして最後にはアジ・ダハーカと黒い祭服を着た褐色肌の美青年に一誠に武器を渡したネメシスが現れた。これにはモニターで見ていた千冬達も驚倒一色、意識を失いかけるほどこれは絶望的な光景だった。現場にいる一夏達も絶望に打ちひしがれそうだった。

 

「これと全部戦えってことですか楯無さん」」

 

「・・・・・帰っていいかしら。生徒会の仕事が溜まってて虚ちゃんに叱られちゃうわ」

 

「お、お姉ちゃん・・・現実逃避、しないで・・・・・!」

 

「死んじゃう、のかな・・・・・」

 

戦意も喪失。心が折れそうなときにアジ・ダハーカが言い渡す。

 

『クロウ・クルワッハ!出てこい!』

 

絶望を目の当たりにする一夏達の前に呼ばれたクロウ・クルワッハが人型の姿で空から現れた。

 

『お前がいては俺の望むシナリオ通りにはならない。この世界に来て早々悪いが退場してもらうぞ』

 

「くくくっ、面白い。これだけの邪龍と一度で戦うことは初めてのことだ。喜んで相手になってやるぞ」

 

《アジ・ダハーカや他の邪龍と組んで貴公と戦うのはこちらも初めてのこと。私も全力で相手になろう》

 

そう言うなり、アポプスは胸の前で手を重ねた。刹那、この一帯が暗くなっていく。周囲を見渡せば、この島を囲うように結界らしきものが展開し始めていた。

 

《この島の規模ならば、数秒あれば私の世界を作るに十分だ》

 

アポプスの全身が―――闇に覆われていく。島が暗黒に包まれていくのと呼応するように、アポプスの体を覆う闇は膨らみ、広がっていった。次第に形を変えて、巨大な物を形作り出す。この島の空に皆既日食のときの太陽みたく、細い光輪状態のようなものが浮かび出していた。それをバックに形を変えた邪龍が宙を泳ぐ―――。結界に覆われたIS学園がある島の空に現れたのは、全長百メートルを超えるであろう長細い蛇タイプのドラゴンだった。色は暗黒一色であり、ところどころ銀色に発光する宝玉のようなものが確認できる。頭部に浮かぶ目は三つあり、すべてが銀色に光る。

 

「これが・・・・・アポプスの正体・・・・・」

 

「ま、待て待て・・・・・どうなってんだよこの世界は、なんでこんな化け物が揃いも揃っていやがるんだよ!?」

 

「異世界から来たって話だけど、こんなレベルのドラゴンがいたなんて・・・・・終わったな俺達」

 

死を受け入れるしかない、そう思ってしまう男の操縦者達に喝を入れる筈の楯無も不安を抱いていた。

 

「(最凶のクロウ・クルワッハでも、この数の邪龍と戦って無事で済むはずがない。メリアさんも弱くはないけれど、私達を守りながらでは邪魔になってしまうでしょうね)」

 

「お、お姉ちゃん、危ないっ!」

 

混沌と破壊を齎す機械龍(カオス・マーシナリードラグーン)』が楯無に牙を剥いた。気付いた頃には噛み殺そうとする無数に生え揃えた金属の鋭利な牙。

 

「―――――ぁ」

 

しまった、もう助からない・・・・・と半ば放心しかけていた楯無は死を直面した。

 

―――しかし。

 

「・・・・・」

 

赤黒いブレードを振るい、楯無から『混沌と破壊を齎す機械龍(カオス・マーシナリードラグーン)』を守り切り捨てた。自分を守るその背中を見つめ、無意識に吐露する。

 

「ラーズ、グリーズ・・・・・?」

 

「・・・・・これで」

 

「え?」

 

「・・・・・昔の約束を、守った」

 

―――――っ。

 

楯無の心臓が不意打ちに高鳴った。かつて、たった一度だけ会った昔の男の子との約束。それを交わしたのは楯無ととある男の子だけだ。それを知っているのも当時の子供だった自分達だけだ。

 

ギャオオオオオオオオオオ・・・・・・ッッ!

 

ラーズグリーズの登場に呼応して『混沌と破壊を齎す機械龍(カオス・マーシナリードラグーン)』が押し寄せる。それらを目の当たりにしてもラーズグリーズは全てのリング状を大きく展開して発する。

 

全て掻き消えろ(リヴァーサル)

 

混沌と破壊を齎す機械龍(カオス・マーシナリードラグーン)』を限定に存在を反転。つまりは存在しなかったことに無の状態にする声が襲ってきた『混沌と破壊を齎す機械龍(カオス・マーシナリードラグーン)』の全てを消した。

 

「―――ラーズだけやらせはしないっスよー!」

 

「他の鉄屑も全部潰してやる!」

 

「当然だ。すべて破壊する。突撃だ!」

 

闇の結界に飛び込むナンバーズ達。そして数多の無人機が『混沌と破壊を齎す機械龍(カオス・マーシナリードラグーン)』に攻撃を仕掛けた。

 

『―――――ッ!!!』

 

加勢に来てくれた彼女達の姿を見て、再び勇気を振り絞りまずは学園の守りから入る。ドラゴンはドラゴンに任せてやるべきことをやろうと一夏達は動き始める。

 

『来やがったな、ラーズグリーズ!俺と勝負しろ!』

 

「・・・・・脆くなれ(リヴァーサル)

 

殴りかかるグレンデルの拳を紙一重で交わしながら、その極太の腕にエネルギーの刃に形成して刃が伸びたブレードを叩き込んだ。

 

『グハハハッ!ンなもん、斬れるわけ―――』

 

ズンッ!

 

『な・・・・・』

 

グレンデルの浅黒い腕が抵抗を感じさせず、ブレードが下まで振り下ろせ、ドラゴンの腕を両断して地に落とした。斬り落とされた腕の断面から迸る青い血、それが何よりドラゴンに対する一撃が有効になったという証になった。

 

「・・・・・リヴァーサル、全ての理を反転する能力」

 

『ッ!?』

 

「・・・・・硬いなら柔らかく、脆い状態に・・・・・反転(リヴァーサル)すればいい。ドラゴンの存在もなかったことに、反転は可能・・・・・それが、俺のIS、リヴァーサルの能力」

 

明かされるとんでもない能力。それでも喜々として戦う意欲を示すグレンデル。

 

『やるじゃねぇか!この世界の兵器でこの俺を殺すことが出来るって、最高すぎるだろう!』

 

腹部を異常に膨らませて口腔から吐き出す巨大火炎球。まともに受ければ骨すら残らない猛火の塊にリングで照準を合わせて反転(リヴァーサル)、迫ってきた方向へ逆戻りする火炎球はグレンデルに直撃する。

 

『グオオオオオオオオオッッ!?』

 

脆くなった耐久の身体に自身の攻撃でダメージを負うグレンデル。

 

《・・・・・あの粗暴なグレンデルを圧倒しているとは》

 

『反転・・・か。厄介な能力だ。ISも認識を改めざるを得ない。魔力も消滅させられ、強さも弱さに反転させられれば流石に俺達も有利ではいられなくなる』

 

ならばやることは一つだと禍々しいオーラを迸らせるアジ・ダハーカとアポプス。

 

『ラーズグリーズ、この世界の人類の代表として全力でお前にも挑ませてもらう』

 

《運命の理をも己の意思で変えるその力、侮れない故にな》

 

「・・・・・人類の代表は、織斑一誠」

 

『現段階で何度も俺達ドラゴンと戦い渡っているのはお前だ。あの者は別枠に入っているに過ぎない』

 

ネメシスまでもラーズグリーズを人類の代表の認識でいる言葉を発して、展開したリングを解除して身体に戻す。

 

「・・・・・別枠、なに」

 

『この世界を救う後の英雄だ。今はまだ眠れる獅子のように聖杯が全て揃うその時まで英雄としての力は振るえないがな』

 

新たに展開する黒い魔法陣から大量の『混沌と破壊を齎す機械龍(カオス・マーシナリードラグーン)』を召喚したアジ・ダハーカ。まだこんなに戦力を残していたのかと、戦慄が走る一夏達の間で緊張で顔の表情が強張った。

 

「・・・・・」

 

―――何が、英雄だ。

 

「ラーズグリーズ・・・・・?」

 

沈黙するラーズグリーズの異変を察知した楯無が声を掛けても返事はない。

 

―――大切な場所を、大切な人達を奪ったあいつが我が物顔で後の英雄気取りに・・・・・?

 

「・・・・・訂正しろ・・・・・アジ・ダハーカ」

 

『なに?』

 

訊き返した直後、ラーズグリーズとアジ・ダハーカの視線が絡み合った。

 

「―――――殺すぞ」

 

ゾクッ・・・・・!

 

『『『『()()()()()』』』』

 

殺気を感じた。純粋な殺意がアジ・ダハーカ達に伝わり愕然で目を見張った刹那、空から蒼穹ごときの鱗を持つ巨龍が現れアジ・ダハーカ達に魔法攻撃した。

 

「ティアマトか、久しいな」

 

『最悪っ、何でクロウ・クルワッハがいるのよ!?まぁ、大方想像できるけど・・・・・』

 

複雑極まりない顔色を浮かべ溜息を吐くいたところ、ティアマトの攻撃を防いだアポプスが真っ直ぐ彼女に見つめながら口を開いた。

 

《ティアマトよ。貴公は敵なのか?それとも味方なのか?》

 

『中立の立場でいさせているわ。事情が変わったからね』

 

久しぶりの再会を喜ぶこともなくアジ・ダハーカ達と対峙する蒼い龍ティアマト。

 

『事情が変わった?どういうことだそれは』

 

『知らない方がいい時もあるわ。今それがアジ・ダハーカ達の状態よ。取り敢えずクロウ・クルワッハ、アジ・ダハーカ達と戦うならよろしくね。私は織斑一誠に用があるから邪魔されたくないわ』

 

『待て、よもや織斑一誠の聖杯まで奪うつもりはないだろうな。織斑一誠に授けた武器を奪おうとしたお前は信用できん。アジ・ダハーカから奪った聖杯は与えたというがまだその確認も出来ていない。ティアマト、今一度尋ねる。本当に聖杯を織斑一誠に渡したのだろうな』

 

臨戦態勢の構えを取るネメシスに真っ向から言い切った。

 

『嘘だったらどうする?』

 

『・・・・・捕らえてお前の企みを吐いてもらう』

 

ネメシスの周囲の空間から放たれる数多の極太の鎖がティアマトに迫るその時、ラーズグリーズがリヴァーサルで軌道を反転させ、アジ・ダハーカに変えた。

 

『あら、ありがとうラーズグリーズ』

 

「・・・・・」

 

『何だと・・・・お前達、いつの間に組んでいた』

 

『契約よ。この子の持つ大切な物をくれる代わりに暫く協力しているの』

 

『・・・・・聖杯を奪ったのはそのためだというのか。武器も奪おうとしたのもラーズグリーズが求めている?』

 

『これ以上、アジ・ダハーカが玩具を量産させないためなのが主な理由ね。そして武器は、IS以外の武器を求めていたから』

 

それだけよ?と答えるティアマトを捕らえようと鎖を飛ばすネメシスから守るラーズグリーズ。

 

『だとしても「約束」を果たすつもりがあるのかティアマト!』

 

『あるわよ。大体、この世界をこれだけ搔き乱してあの子がどう思うのか想像したことがあるわけ?絶対に全力で世界中に土下座して回る勢いで申し訳ないと思うに決まってるじゃない』

 

『ぐっ、それはだな・・・・・』

 

『言っとくけどアポプス達も同罪だからね?』

 

呻くアジ・ダハーカと返す言葉がない邪龍達。

 

『それからね私個人が貴方達の邪魔をするのは、こんな状況化の中であの子を復活させたくない、それだけよこの馬鹿共。ああ、あと私は三つ目の聖杯を持っている彼女と一緒に暮らしているわよ。そして現在進行形、どうしてこんなことになったのかってすっっっごく、呆れてるわ。で、今絶賛、聖杯を渡したいのに渡せない状況ですけど何か言うことはあるかしらアジ・ダハーカ?』

 

『ぬぅ・・・・・っ』

 

『い・う・こ・と・は?』

 

ずいっと顔を近づけて有無をも言わせない威圧を放つ。アジ・ダハーカ相手に口で相手を負かすティアマト。まるで悪いことをした息子を叱る母親のような光景だった。

 

『・・・・・反省はしている。だが、後悔はしていない』

 

『よーし、わかったわ。死刑ねあんた。クロウ・クルワッハ、こいつを殺して』

 

「・・・・・ティアマト、変わったか?」

 

微妙な表情を浮かべるクロウ・クルワッハや他の一同がいる暗黒の結界の中で突如、翡翠の光が差し込んだ。全員がその光に意識を奪われ見上げた先には、翡翠色の美しい魔法陣が展開していてこの空間全域を照らすほどの光量と共に―――。

 

 

 

《やはり、現れるか・・・・》

 

『予想の範囲内だ・・・・・来るぞ』

 

 

 

「な、なんだ、今度は何が起きようとしているんだ!」

 

「とにかく、みんな集まって!」

 

 

 

「ラーズ、あたしらは!?」

 

「・・・・・様子」

 

「状況を把握っスね」

 

 

 

『―――現れるか。彼の者の懐かしい者達が』

 

 

 

最高潮に達した翡翠の光量と共に―――魔方陣が開こうとしていた。そして一夏達の視界に飛び込み現れたのは―――数多の人影。人影は落ちるがまま落ちて地面に難なく着地をしたり宙に浮いたりして次々と翡翠の魔方陣から出てくる。

 

「また、ドラゴン・・・・・?しかもあんなに・・・・・?」

 

「アジ・ダハーカの仕業・・・・・でもなさそうね」

 

外見は人、でも、中には蝙蝠のような、烏のような、白い鳥のような翼を背中から生やす者もいて人間ではないことだけは何となくわかってしまう。一体・・・彼等彼女等は何者なのか?敵か味方か?

 

「―――来てやったぜ、異世界にぃっ!」

 

開口一番、男の謎の歓喜の叫びだった。は?と怪訝になるも直ぐに改める。

 

「本当にいるな、久しぶりだなアジ・ダハーカ達よ!」

 

『・・・・・俺はお前達の登場に心底迷惑しているがな』

 

「おいおい、釣れないことを言うなって!こうして皆で会いに来たんだからさ!」

 

『帰れ、いま俺達ドラゴンとこの世界の人類の戦いをしていたのだ。横から邪魔されてしまうのはいい迷惑だ』

 

「いやいや、それはあまりにも可哀想過ぎるって。お前達と戦える力がある人間はこの世にいないだろ。だったら手助けの一つや二つぐらいしてもいいよな?」

 

『・・・・・話にならん』

 

魔方陣を展開してどこかへ転移して居なくなったアジ・ダハーカ達。『混沌と破壊を齎す機械龍(カオス・マーシナリードラグーン)』も呼応して空に展開された黒い魔法陣へ吸い込まれていくように飛んでいきIS学園から立ち去っていく。ティアマトも続くようにして去った。

 

 

―――†―――†―――†―――

 

残された一同は突如現れた者達と対話を試みた。上空にはラーズグリーズ達が成り行きを見守る。

 

「貴方達は、一体・・・・・」

 

「俺達はアジ・ダハーカ達と同じ世界に住んでいた・・・この世界で例えると異世界から来た存在だ」

 

「異世界の人間・・・・・」

 

「世界が違えど同じ人間同士、仲良くしたいからまずは自己紹介だ」

 

中年の男性は朗らかに名を打ち明けた。

 

「俺は兵藤誠。元の世界では人類最強の一族、天皇家にして兵藤家の当主をしている」

 

「私は兵藤一香。誠の妻で自称、世界最強の魔法使いよ」

 

最強の一族の当主に自称最強の魔法使い・・・・・。

 

「あの、冗談ですか?」

 

「「本気で言ってるけど何か?」」

 

声を揃って言い返されかける言葉を迷ってしまった。

 

「信じられないだろうが、事実を言っているぞ」

 

「クロウ・クルワッハ・・・・・」

 

「その二人限らず、今いる他の者達もお前達よりアジ・ダハーカ達と善戦はできる強い猛者たちだ。ISなど相手にもならぬ」

 

そこまで強い者達が勢揃いしているのは理由がある筈だ。観光をしに来たわけではないだろうと認知する楯無は誠に問い掛ける。

 

「あなた方の目的は?」

 

「この世界にいる転生した俺達の息子とアジ・ダハーカ達ドラゴンを元の世界に連れて帰ること」

 

「転生?息子?どういうことです?」

 

「元の世界で死んだ息子がこの世界で転生して生まれ変わっていることが分かったの。その子は普通の人間だったら会いたいだけで済むけれど、この世界に来る前・・・・・」

 

 

『先に送り出したクロウ・クルワッハからの情報では、彼の者はどうやら生前培った「記憶」と「力」、「魔力」を宿した聖杯をアジ・ダハーカ達に預けたそうです。そして生まれ変わった己を見つけ、再び聖杯を宿すことで復活を望んでいると』

 

『じゃ、じゃあ・・・!』

 

『今はあなた方のことを何も覚えていらっしゃらないでしょうが、聖杯を一つに揃えることが重要です。今現在、一つだけ聖杯は彼の者の生まれ変わりに宿っているそうです。残りは二つ、どうか彼の復活をお願いします』

 

 

「って、説明を受けて望みはあるって知ったわ。だから復活した子供を私達の世界に連れて帰ることにしたの」

 

話を伺って楯無は察した。彼等彼女等が会いたがっている人物は誰なのかを。そしてそれはすぐに叶うことも。ほら、そう思った傍から・・・・・。

 

「皆、大丈夫か!?」

 

話題の本人が黄金の剣を持って駆けて来た。その声に振り返る誠達は―――。彼を、織斑一誠を見て―――。

 

『あ、会いたかったぁあああああああっ!!!』

 

「ちょっ、えええええええええっ!?」

 

性別問わず、津波のように飛び掛かり絶叫を上げる一誠に向かって抱き着いた。

 

「だ、誰!?この人達は誰!?夏兄、秋兄、愛しの妹のマドカ、助けてぇっ!?」

 

「「・・・・・」」

 

「そのまま押し潰されて死ね」

 

もみくちゃにされる家族を見ているしかできない織斑家の兄弟姉妹。兵藤誠達にとってハッピーエンドに進む王道なのかもしれない。しかし、それがバッドエンドに続く道でもある事を気付かないでいる。

 

 

「・・・・・ふざけるな」

 

「ラ、ラーズ・・・?」

 

「ふざけるな・・・・・っ。お前じゃない、望まれている人間はお前じゃない・・・・・!なのに、なのに何で疑わない、何で誰も疑問を抱かないんだ・・・・・!」

 

召喚した赤黒いブレードに殺意を宿し、殺気と威圧を織斑一誠に向けて放ちながら瞬間的に加速した速度で迫るラーズグリーズが振るう剣は剣で防がれた。

 

「いきなり襲い掛かってくるとはね」

 

「敵なら容赦しない」

 

「イッセーを殺す気なら万死に値するわ」

 

「やっとやっと会えた幼馴染に攻撃するなんて許さないわ!」

 

「誰だか知らないが、一誠の敵は私達の敵だ」

 

「もう死なせない、絶対に!」

 

織斑一誠を守らんと多くの女性達がラーズグリーズに迎撃を始める。目を見張る剣技、魔法と魔力の攻撃、妖術、体術―――それらを駆使する女性達と一進一退、あろうことか知っているかのような動きでかわし、弾き返し、避けて全員を相手にしてみせているラーズグリーズの戦闘能力に誰もが目を疑った。

 

「何で、私達の攻撃が当たらないのっ!?」

 

「この世界の人間の強さはここまでだということか・・・・・」

 

 

違う、違うんだ・・・・・!

 

 

「(気付いてくれっ・・・・・気付いてくれ皆・・・・・!)」

 

 

 

「・・・・・ああ、やはり・・・・・」

 

悲痛に項垂れるカーリラ。戻ってきたティアマトが遠見の魔法で学園の様子を彼女に見せたところ、ラーズグリーズが異世界人達と戦っている光景を見ては、この世の終わりを知った絶望の表情をした。

 

「疑う余地もないとばかりに守っているわね」

 

「違う・・・・・違うのよ・・・・・その子じゃないの・・・・・お願い、気づいて・・・・・」

 

「カーリラ・・・・・」

 

「あの子がとても悲しむ。あんな姿にされてまで『約束』を果たされる日を待っていたというのに、これはあまりにも・・・・・」

 

 

 

「―――川神流」

 

「っ!」

 

絢爛な黒い着物を着た長い黒髪に紅い瞳の女性が捉えた。ラーズグリーズはすぐに反応して同じように拳を構えた。

 

「無双正拳!」

 

突き出される二つの拳。そして重なる拳は、ラーズグリーズの装甲を殴った衝撃で粉砕して片腕を奪った。そこにある筈の人の腕がない事に女性の動きが停まった。

 

「なんだお前・・・?だけど人の気を感じるっ!?」

 

リヴァーサルで彼女を吹き飛ばし、片腕だけでも織斑一誠を狙い続けるラーズグリーズ。

 

「―――葬る」

 

気配を極力殺し、姿を戦っている者達の身体で隠し、隙を見せた瞬間に斬りかかった黒い長髪に赤い瞳の刀を持った女性が、ラーズグリーズの懐に飛び込んで装甲を切り裂いた。

 

『―――ッッッ』

 

露になるミイラのごとくな身体、胸部に埋め込まれたISコア、そして真っ二つに割れたフルフェイスで隠された生気のない皮膚のみの顔のラーズグリーズを視界に入れてしまった異世界人達は全員、目を凍結させたように固まった。

 

「なんで、そんな身体で生きて・・・・・っ!」

 

―――異常、の一言で尽きる。人の身ではもはや死んでいてもおかしくない筈の状態だ。なのに、一体何が彼をここまで動かさせているのか分からないため、異世界人達は冷や汗を薄っすらと浮かべた。

 

機動力を失い、もはや自力で動けない体でも怒り、恨み、憎悪といった負の悪感情を宿った隻眼で織斑一誠を睨みつける。

 

「お前だけは、お前だけは絶対に・・・・・!」

 

「ッ・・・・・」

 

「お前が邪魔だ・・・・・!俺が、俺たるために・・・・・お前を・・・・・・必ず・・・・・殺すっ」

 

「ラーズ!」

 

「俺が、俺がそうなんだ・・・・・!俺がそうなんだ・・・・・っ!」

 

駆け付けたナンバーズに連れ去られながら怒りと悲しみを瞳に宿しながら、織斑一誠に呪詛を吐き続ける。

 

 

 

 

「何だったの彼・・・・・」

 

「わかりません。でも・・・・・」

 

「いろいろな意味でとても危険な相手であるのは確かですわ」

 

「イッセー君に恨みを持っているみたいだったけれど」

 

「また襲ってきたら今度は絶対に倒してやるんだから!」

 

「こっちは最強の人達が勢揃いだし、絶対に守り切れる安心感が凄すぎるわね」

 

 

 

 

 

「束ちゃん」

 

「きりゅー、来たんだ」

 

「あの子の様子は?」

 

「全然ダメ、すっかり落ち込んじゃってる。織斑一誠が原因なのはわかってるんだけどねー」

 

「わかってる。あの子にその話をしに来たの」

 

 

 

「・・・・・見てたわ」

 

「・・・・・」

 

「残念だった、仕方がなかった・・・・・そんな言葉しか言えないわ。今の貴方の顔は昔の頃の顔の影すらない別人、同じ顔をした織斑一誠がいたら皆、もう一人の織斑一誠の方へ強く意識しちゃって、素顔を晒した貴方を見ても誰も気づかない、信じてくれない。・・・・・酷な話だけど、貴方もそれを分かってて皆に攻撃した。昔のように切磋琢磨したあの頃を再現して気付いてもらえるように」

 

「・・・・・っ」

 

「それでも、皆は気付いてくれなかった・・・・・私も願ったけど誰一人、一人の男の子に愛しすぎて盲目となってしまってる彼女達は結局・・・・・」

 

「・・・・・分かってる。最悪の予想が現実になっただけ・・・・・」

 

「これから、どうする?顔を取り戻した後の話よ」

 

「・・・・・わからない、虚無感しか・・・・・ない」

 

「・・・・・今はゆっくり考えて。例え彼女達が織斑一誠を選んでも、この世界で生まれた貴方には、貴方を知る人は直ぐ傍にいる。それを忘れないでね」

 

「・・・・・」

 

 

 

 

 

『龍の祖め・・・・・余計なことをしてくれたものだ』

 

《完璧に計画が潰されたな。全世界に私兵を放っても、十数年分も強くなったあの者達が全て一蹴するだろう。無論私達もだ》

 

《じゃ、じゃあ・・・・・素直にお、織斑一誠の所に戻るのか?》

 

『選択の一つだろうな』

 

『俺は殺し合いをしてぇぜ!』

 

『それも選択の一つでしょうね。私もグレンデルに一票ですが。アジ・ダハーカ、今後の活動は?』

 

『・・・・・ゾラードの捜索は続行だ。ニーズヘッグお前がしろ』

 

《えええ~・・・・・あいつ、絶対復活するまで出てくる気、ね、ねぇぞ?探しようが、な、ないし・・・・・》

 

『並行してラーズグリーズの居場所を探りながら家畜を食らえば出てくるだろう』

 

《え?いいの?てか、出てきたらど、どうすれば?》

 

『俺達に居場所を教えろ。奴を捕まえティアマトの居場所を聞き出す』

 

《ん、ん~上手くいくかわからないけどよ、わかったよ・・・・・》

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