インフィニット・ストラトス~光に奪われし闇~   作:ダーク・シリウス

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真実と違和感

異世界から来訪した誠達の登場によって織斑一誠の日常生活は一気に変わった。授業がある平日の時は異世界の散策に行くが、異世界の女性達が一誠の為に順番を決めて弁当を作るように、学校が終わると一誠を誘って拠点として異世界から持って来た家で一緒に夕餉を楽しみ大勢の女性達が裸体を晒して入浴としたり、密着した状態で添い寝をしたりとハーレム生活を迎えた。男なら誰もが羨む酒池肉林のような生活に一誠は―――。

 

「・・・・・平穏が欲しい」

 

精神的に参っていた。突然昼食中に溜息混じりに呟いた家族を秋十が応じた。

 

「どうした?綺麗なお姉さん達にちやほやされる生活で平穏が欲しいなんて贅沢な悩みだな」

 

「一人で過ごす時間が全然ないんだ。一人二人は当たり前のようにいて、毎日おはようのキスから休みのキス(唇以外の箇所も)をしてくるしスキンシップの度が超えて身体を押し付けてきたり、俺を争って喧嘩をしたり、休みの日は戦う特訓以外、一緒に外出という名のデートをされて、帰りが遅いとホテルに連れ込まれそうになって大変なんだ・・・・・」

 

「「「「・・・・・」」」」

 

幸せの代償ってやつなのだろう。特に酷いことをされているわけではないので弟、友人の境遇に同情はしない一夏達。

 

「まぁ、その内に慣れるだろ。頑張れ有名人兼ハーレム野郎」

 

「くっ、他人事のように・・・・・!」

 

「「「「実際、俺達の関係のない事だからな」」」」

 

助けてくれない家族と友人に肩を落とす。

 

「一誠、魔力は使えるようになったのか?」

 

「・・・・・ようやく、初歩中の初歩が出来るようになった。使えなかった原因もわかったし」

 

「原因があったのか?」

 

「得た魔力が膨大過ぎるんだってさ。だから兵藤一香さんが魔力を分割して封印すると、人差し指からライターの火みたいな小さい火が出るようになったんだ」

 

その証拠を見せるため、人差し指から火を灯す一誠に、一夏達は感嘆の念が宿った拍手をしながら素朴な疑問をぶつけた。

 

「膨大過ぎるのが何が駄目なんだ?」

 

「分かり易く例えるとコップの器が俺の身体、水が魔力だとする。コップが小さいのに膨大な水の量が溢れ続けているとコントロールが難しいんだってさ。しかも魔法の知識もない素人がぶっつけ本番しても成功しない方が珍しくない言葉も頂戴しました」

 

「うん、それで?」

 

「コップに入れる水の量なら今まで通り練習すれば、子供の内でも初歩の魔法が出来るようになるって言われた。本当にその通りだったから吃驚したよ」

 

コップの中に指を入れてゆっくりと引き抜くと水までもが指と一緒に引っ張られ、宇宙の中で漂うようにプカプカと浮かび上がる。コントロールができた証を見せられ驚嘆する一夏達はまた拍手を送る。

 

「おー、すげぇーマジックだ」

 

「いや一夏。本物の魔法だから。これだけでもご飯を食べられるな」

 

「まったくだ、羨ましいよ一誠」

 

「ISより希少な力だよなそれ」

 

「俺的にISに乗って皆と空を飛びたいけどなー」

 

IS、乗れるのに。と淡い願望を吐露する一誠は残念そうに苦笑いする。その時、『混沌と破壊を齎す機械龍(カオス・マーシナリードラグーン)』の出現を報せる警報が学園中にけたたましくなった。一夏達は昼食を中断して急いで出陣する。

 

 

 

織斑一誠に斬りかかり返り討ちに遭って、再びISを失ったラーズグリーズは再びISで身に纏う時までどことなく不安を覚えさせる雰囲気を醸し出している。目を離せば消えてしまいそうな気配の薄さに危うさを感じていこう、ナンバーズが付きっ切り傍に寄り添い、甘えさせたり甘えたりして一緒に過ごす時間を増やした。

 

「・・・・・」

 

それでも、覇気がなく幽鬼のようなラーズグリーズを心配するナンバーズ。励ますにしてもそれで元気になるような相手ではないことを分かっているため・・・・・。

 

「・・・・・日本中に俺の存在を知らしめてやる」

 

『・・・・・』

 

突拍子もなく、何かしようと考えていたのかそう口にしたラーズグリーズにきょとんと顔をしてしまう。

 

「ラーズ、それって本当の名前を教えるってこと?」

 

「・・・・・政府が俺を隠すなら、俺から表に出てやるだけ」

 

「ずっと、落ち込んでいたんじゃないんだね?」

 

「・・・・・ごめん」

 

今まで気遣ってくれたこと、間際らしかったこと、他にも色々と念を込めて謝るラーズグリーズを笑って許すナンバーズ達。

 

「それじゃあ!らーくんの目的を実行するためにテレビ局を乗っ取っちゃおうか!束さん、可愛く出演しちゃうよー!」

 

気配を感じさせない登場の仕方をする束に驚くナンバーズ。ワンピースを翻す、くるくると回りながらやる気を窺わせる束をラーズグリーズは褒める。

 

「・・・・・見飽きない可愛さ」

 

「らーくんも、カッコいいよ!さぁさぁ、決行は明日の朝!すこーりゅん達にも手伝ってもらうからビシッ!と決めてね、らーくん!」

 

 

 

 

 

その事実はまだ誰も知らされていない闇に葬られた真実。人々は胸にどんな思いを抱くか。どんな感情を露にするか。世界はどうなるのか、知ることができるのは明日の朝である。

 

 

―――翌朝。

 

テレビを点けてニュースを見ようとする日本国民達。今日はどんなニュースが放送されるか、織斑一誠と政府を中心とした話をするだろうなと思う人々は少なからずいる。通学、通勤前の朝食中に見聞するお茶の間に・・・・・。

 

『やっほーっ!皆、天才科学者の篠ノ之束さんの朝のニュースを見てくれてありがとうねー!そんな皆に私はとっても嬉しいよ!あ、どのチャンネルでもこの私のニュースしか見れないからたっぷりと私の話を聞いてちょうだいね!きゃは☆』

 

テレビ局を占拠しかつ、日本のすべてのネットワークを支配した束の姿がテレビの画面に映り出す。画面の隅っこで拘束されてる数人の男女。束は主役のように立ち振る舞いお茶の間の皆さんにお報せをするのだった。

 

『さてさて、皆にはとある発表があるんだよね。そ・れ・は、先日バカな政府が記者会見で明かした話しが実はまだ他にもあったことだよー?』

 

『勿論、嘘は言っていないし事実だけれどさ?でもね、織斑一誠のクローンと人工で他の男の操縦者を増やす実験、実は織斑一誠じゃなくて別の人間がその被験者なんだよね!』

 

『しかもしかも、織斑一誠が世界で始めてISを動かしてはいません!本当にISを動かしたのは別の子なんです!私と一緒にその頃から開発の手伝いをしていたのも別の子なのだ!ISの開発者たるこの私が記者会見で発表した政府の事実は、嘘であることをここに証明しまーす!だって、私はその瞬間を間近で見てたから当然だよ?もー政府はなに嘘っぱちなことを言うんだろうね?』

 

『というか、ISを動く秘訣が身体検査と血液検査程度で分かるなら今ごろの世の中は、お猿さんが人間に進化したように人類を超えた超人類なってる話だよ』

 

『そんなんだから、政府と権力者達はこの子の人権なんて無視する非人道的な実験や研究を続けたんだよ。しかも三年間もね』

 

テレビに映り込むISを装着してるラーズグリーズ。束は彼に近寄って肩に手を置く。

 

『さぁ、ご覧あれ!これこそが世界で初めてISを動かした男の、世界で唯一私が認めた私の助手にして、動かす男を増やすために研究しつくされた者の姿を!』

 

束の手によってISが解除して晒される片腕と片目がない生きたミイラ。お茶の間に悲鳴と驚愕、子供の泣き声。

 

『見てるかなー?頭から足の先まで枯れた木みたいに細く、浮き彫りする骨と皮しかない彼を。奇跡的にもまだ日本政府と権力者達に粛清するため、余命二年しかない短い命を燃やしてまだ生きているんだよ』

 

束に支えられながら生きている証拠としてカメラにゆっくり近付く。ドアップで映るラーズグリーズは隻眼でカメラを覗き込みながら伝える。

 

『・・・・・初めまして、俺は織斑ラーズグリーズ・F・アヴェンジャー・・・・・織斑千冬の弟にして・・・・・政府の闇に葬られた者だ』

 

『俺を・・・・・こんな姿にまでしたすべての人間を・・・・・一人ずつ、一人ずつ悪霊が住み着いている人気の無い場所へ・・・・・連れて・・・・・お前達も闇に葬ってやる・・・・・』

 

『はーい、以上、織斑ラーズグリーズ・F・アヴェンジャーくんことらーくんからのお話でした!因みに雲隠れしようとしたり、海外に逃げようたって、この束さんが逃がさないから逃げられないからね?うふふ、死ぬ瞬間ってどんな感じなのか体験をしながら詳しく教えてね!まずは―――日本一おバカの代表の大統領から迎えに行くからちゃーんときったない体を洗って最後の晩餐ならぬ朝餐を楽しんでねー。それじゃ、ばいばーい!』

 

ブツンと画面がブラックアウトした。この時、日本は朝にも拘わらず異様に静まり返った。

 

 

「カーリラ・・・・・あの子・・・・・」

 

「政府が黙っているわけがないわ。当然、彼等彼女等もね」

 

 

 

 

「集まったな。では説明する」

 

専用機持ちが作戦指令室へ招集を掛けられ集まった面々の顔触れを見回しながら千冬は告げる。

 

 

「ラーズグリーズがテレビ局を占拠して大統領の命を狙うことが朝のニュースで宣言した。これより専用機持ち達には大統領の護衛をしてもらうことになる。失敗が許されない任務だ」

 

「ま、待ってくれ・・・どうしてラーズグリーズが大統領の命を狙うんだ?理由が分からないよ」

 

「・・・・・テレビのニュースを見たか」

 

誰もが顔を暗くして訊く千冬に不思議そうな顔で「え?」と漏らした。

 

「ニュース?いや、見てない・・・・・」

 

「・・・・・なら、各々出発前に確認をすることだ。話は以上、時間までに準備をしろ」

 

何時もの覇気が感じられない織斑千冬を皆、素朴な疑問として抱き―――そしてその理由を知ることになった。

絶句、驚倒、愕然する中たった一人だけ、喜々として笑みとても嬉しそうであった。

 

「織斑ラーズグリーズ・・・・・!?」

 

「俺達の家族だと・・・!?そんな、何かの冗談に決まっている・・・!」

 

「―――兄さんッ」

 

 

出発時―――国会議事堂前まで電車の乗り継ぎを繰り返して移動する。IS学園の制服を身に包む少年少女は人の目を集めるぐらい目立つが、お通や状態の一夏達は静かに目的の駅まで移動する電車に体を揺らされながら佇んだり席に座った。全員が考えていることはラーズグリーズの素顔、そしてラーズグリーズが織斑の姓を名乗ったこと。

 

「・・・・・ねぇ、箒。ラーズグリーズってさ・・・・・」

 

「・・・・・今は、何も言わないでくれ」

 

「・・・・・うん」

 

二人の中でラーズグリーズの正体を突き止めた。残すは疑問のみ。実際に会って話し合うために箒は手をギュッと膝の上で握り締めた。

 

 

長い時間を掛けて護衛対象がいる国会議事堂に辿り着く。しかし、護衛をする者の傍ではなく、国会議事堂を守るように警備するのが一夏達の役目だった。皆と出会い任務の詳細を説明したのは大統領の秘書、艶がある長い黒髪に黒い目をした女性。

 

いつ何時でもラーズグリーズが現れてもおかしくはない。警戒を強めて怠らない一行は空でも見張った。

 

―――しかし、敵は内にいた。

 

任務に就いて空が朱色に染まり目に見える世界が暗くなりかけようとしていた時であった。突然の地震が起きて街中を歩いていた人々は悲鳴を上げ、安全な場所へ避難行動するためその誘導を一夏達がする。地震の震度はどんどん増して地面に亀裂が国会議事堂を囲むように走り、線が繋がるとゆっくりとゆっくりと空へ上昇するえぐり取られたかのような大地と国会議事堂。

 

「なっ、しまった!まさか、既に中にいたなんて!?」

 

「皆、直ぐに追いかけるわよ!」

 

楯無の指示に従い、浮遊する国会議事堂を追いかけるのだったが、中に突入して政府の要人や大統領をくまなく探しても―――人っ子一人もいなかった。だが、議員達が集い議会を行う専用の大広間の中心に。

 

「・・・・・」

 

大統領を含む大勢の議員とラーズグリーズが一人いた。

 

「ラーズグリーズ・・・・・ッ」

 

学生寮にテレビはなく、外の情報は学園に届かない。情報が入ってこないため遅れて知ったラーズグリーズの真実に衝撃を覚えた一夏達は、躊躇いの色を顔に浮かべさせた。

 

「ラーズグリーズ・・・・・彼等を開放して」

 

「・・・・・」

 

「あなたが憎むべき相手なのは判っている。だけど、こんなことしても過去は変えられないわ。あなたの立場を、自分の首を絞めて余計に苦しめるだけよ」

 

説得を試みる楯無の思いは届くことはない。

 

「・・・・・俺が守る、立場・・・・・奪われた、もはやない。・・・・・だから、過去の清算、するだけ」

 

「ラーズグリーズッ!お前、俺達の家族なのか。どうなんだ!」

 

ぶつけてくる秋十の疑問に「・・・・・今は関係ない」と返す。

 

身体のリング状の武装がない。恐らく国会議事堂を浮かせているためなのだろう。それでもラーズグリーズは赤黒いブレードを召喚して大統領のうなじに添えた。

 

「お止めなさいっ、あなたのしていることは意味のない過ちを犯しているだけですわよ!」

 

「邪魔をするなら・・・・・容赦しない。お前達の、居場所を奪う・・・・・家族、家、、仕事、何もかも」

 

「ラーズグリーズッ。お前、一体何なんだよ。どうして織斑の名字を名乗るんだ。俺達はお前のことなんて何一つ聞かされていない。今の今まで知らなかった」

 

セシリアの制止も介さず一夏の抱いている謎は―――ラーズグリーズから返ってくる言葉にますます深まる。

 

「・・・・・織斑一夏。小学生の頃、さつまいもと栗を焼こうとして、焚き火に火力を上げすぎて小火騒動になり般若の織斑千冬に叱られた」

 

「は?」

 

「・・・・・織斑秋十。小学四年生の頃、一目惚れした経験を織斑千冬に教えて、付き合う方法を学ぶが相手は近所に住む大学生の男性だった」

 

「なっ!?」

 

昔の話を打ち明けられ、一夏は吃驚して秋十は激しく動揺した。特に秋十の過去の深意はどうなのかと、周りからの奇異な視線が集中する。

 

「あんた、男が好きだったわけ・・・・・?」

 

「違う!?俺の初恋は綺麗な女性だと思ったら女装した男性だったから玉砕した!」

 

「・・・・・相手は『十年経ったらもう一度告白してね?』とまんざらでもなかった」

 

「どうしてお前がそこまで知っているんだぁっー!?」

 

最後、期待してる顔のマドカ。

 

「・・・・・織斑マドカ。織斑一誠が好きで異性として付き合いたい強い願望を抱いていた」

 

「ふふっ、今も結婚したいほどに思ってるぞ」

 

えっ!?とマドカを除く全員が絶句した。

 

「お、おいマドカさん?あれだけ一誠を毛嫌いして愚兄としか呼ばなくなったのに、実際は嫌悪の裏返しだったのがっ!?」

 

「ふざけるな愚兄二号。あんな奴等、勝手に死んだとしても唾を吐いて痛め付けてハイエナの餌にしてやるぐらい嫌いだ」

 

「お、おま、それは、一誠が、落ち込む・・・・・」

 

マドカにISでのボディブローを食らわされ、腹部を両腕で押さえながら悶絶する秋十。

 

「謎だな。どうして事細かに知ってるんだラーズグリーズ」

 

ラウラも疑問を口にする。まるで―――同じ時同じ場所にいたから知っていたようだと。その疑問は一夏達も同じでもある。それは答えてくれるのかと耳を傾けてると、ラーズグリーズの背後から焦燥が孕んだ声が聞えて来た。

 

「な、何をのんびりと話しているのだ!さっさと人の皮を被った化け物を捕まえろ!大統領も救うのだ!ISはそのために在るのだぞ!敵をせん滅せよ!」

 

『・・・・・』

 

議員から催促され、気を改め、引き締めて臨戦態勢の構えをする一行に告げる。

 

「・・・・・全員は助からない」

 

「・・・・・何故と聞いても?」

 

「・・・・・この国会議事堂、俺のISの能力で空高く浮かせている。解除すればあっという間に地上へ落ちて・・・・・この中に取り残された議員と・・・・・地上にいる住民や周辺の建物が・・・・・第二次災害に遭い死者と負傷者がでる」

 

『―――――っ!?』

 

衝撃的な告白を告げるラーズグリーズに言葉を失う全員。催促した議員へ振り返る。

 

「・・・・・死にたくなかったら大人しく、黙って。次はない」

 

「な、なんだと!私を一体誰だと思っている、この実験動物が―――!?」

 

ドスッ!

 

立ち上がって激昂した議員の胸から鈍色の鋭利な爪のようなものが生えだした。血に濡れたそれは、議員の後ろに隠れるように立つ者が刺したのだ。

 

「あの子の忠告を無視した、貴方の自業自得ですね」

 

「な・・・・・何故・・・・・!?」

 

「これから死にゆく者に教えても意味のない事よ」

 

議員から引き抜き、悠々と歩いてラーズグリーズに近づく―――大統領の秘書。倒れて静かに息を引き取るだろう人間に場は緊張に包まれた。

 

「・・・・・まだ、その時ではなかった」

 

「ごめんなさいね。貴方のこと悪く言う者だからついやっちゃったわ。だけど、証拠も十分すぎるほど手に入ったし、そろそろ政府内の潜入と諜報活動も潮時でもあったからね」

 

長い黒髪は金髪に変色し蠱惑的な顔立ちになって別人と化する秘書に二人を除く一同が目を張った。

 

「君は一体・・・・!」

 

「私はドゥーエ。ジェイル・スカリエッティの手によって生み出された戦闘機人、主に潜入とスパイを主な活動しているわ。だからあなた方が隠していた裏の秘密を全て篠ノ之博士、ジェイル・スカリエッティ、そしてこの子にも流してリークしていたわ」

 

「まさか、大胆にも政府内に潜り込んでいたなんてね驚かされたわ。だけど、自ら正体を現すからには逃がさないわ」

 

「私達を捕まえるより、人質の救助の方が優先しないのかしら?勿論、地上の人間もね?」

 

自分達は絶対的有利な立場にいると言外するドゥーエ。それは楯無が気付かないわけでもなく悔しそうに奥歯を噛みしめる。だが―――!

 

「やんちゃなことをしているようね」

 

この空間に床から浮かび上がった魔方陣の光と声と共に現れる長い紅髪の女性、大和撫子を思わせる艶の入った長い黒髪をポニーテールにしてる女性達を始めとした十数人の男女。

 

「ごきげんよう、私はリアス・グレモリー。貴方達を捕まえに来たわ。無駄な抵抗をしないで大人しく捕まってくれないかしら。特にラーズグリーズと言う人、貴方の身体を考慮して手荒な真似だけはしたくないわ。この世界の人間には危害を加えることは避けたいの」

 

だけど、抵抗するなら容赦しない。と冗談ではない真摯な眼差しで見つめて言うリアス・グレモリーという女性は続けて言う。

 

「ねぇ、ラーズグリーズ。この建物を浮かせているのは魔法なのかしら?」

 

「・・・・・IS」

 

「IS・・・・・不思議な兵器ね。ここまで物理の法則を超えるようなことも出来るなんて」

 

「魔法だったらどうするのかしら、リアス・グレモリー?」

 

「何でもないわ。ただの質問ですもの。白音、レオーネ」

 

「はい」

 

「とっ捕まえればいいんだな?」

 

首だけ縦に振って首肯する。彼女の仲間、白い猫耳と二つの尾を生やす白い着物で身に包む女性と獅子を彷彿させる豊かな金髪と体つきの女性が近づきながら言う。

 

「抵抗しないで大人しく捕まってくれよー」

 

「・・・・・」

 

手を振っておちゃらけた風に言ってくるが窺える立ち振る舞いに隙がない。ラーズグリーズはどうするのかと信じて次の行動をしてくれるのを待つドゥーエは、突然腰に腕を回された。もう片方は大統領の襟を掴みだす。

 

「リヴァーサル」

 

三人以外の全てを空気で吹き飛ばし、その瞬間に天井から降って落ちて来た極太のビームが二人の姿を隠し消失するビームと共にラーズグリーズとドゥーエ、大統領が消えていなくなっていった。

 

「今のは!?」

 

「魔力は感じませんでした。これがこの世界の・・・・・」

 

「あの二人を―――」

 

刹那、国会議事堂が浮遊力を無くして重力に逆らわず地上へと落ち始めた。ラーズグリーズが反転の能力を解除、更に宇宙から巨大な隕石を落としたのだ。地上から見上げて見守っていた人々は、その様子を目の当たりにした途端にすぐに阿鼻叫喚、出来るだけ遠くへ走って逃げだす。

 

「異世界は凄いなー。国会議事堂丸ごと浮かせることが出来る技術があるなんてね。しかもこのタイミングで隕石とか、本当に魔法みたいだ」

 

朗らかに上を見ながら逃げる人々と逆の方、落ちてくる国会議事堂と隕石の中心に向かって行くのは、魔法使いのようなローブに家紋があり長い髪を一本に結って、銀髪に眼鏡を掛けたメイドの女性と歩く若い男性。落ちる巨石と化した国会議事堂と隕石に向かって手をかざす男性は笑みを浮かべた。

 

「いずれ、復活したあの子もこんなことが出来るようになるといいな」

 

落ちてくる二つの石塊が不自然なまでにピタリと空中で停止した。それからゆっくりと国会議事堂が降ろされて、隕石も降ろされる。

 

「隕石は残されるのですか?邪魔なだけかと」

 

「異世界の隕石だよ?持ち帰って調べたいんだ」

 

「そういうことですか」

 

 

 

「どちらも失敗に終わってしまったね」

 

「・・・・・その前提でした」

 

「本気でしようとしなかったの?」

 

「・・・・・した。でも、結果は判ってた。どちらでも構わなかった」

 

「そうなの、それで、この大統領はどうする?」

 

「・・・・・利用価値はない。適当な場所に捨て置く」

 

「私を殺さないのか・・・・・」

 

「・・・・・死んで楽になりたいと思ってるなら、日本列島を崩壊する。・・・・・それがどういう意味か、解っている筈だ」

 

「・・・・・」

 

「・・・・・自分の息子にも業を背負わせてしまった、お前等政府が今の俺を、作り出したその責任・・・・・簡単じゃない」

 

 

 

 

「任務は失敗。大統領は攫われ、議員の一人がスパイ活動していたナンバーズによって殺害・・・・・か」

 

「織斑先生・・・・・」

 

「・・・・・ラーズグリーズ」

 

 

―――†―――†―――†―――

 

 

大統領の拉致と議員の一人の死亡によって任務は失敗に終わった後、IS学園に帰還した一夏達は沈黙を纏って千冬の下へ集まった。

 

「ご苦労、と言い難い結果になってしまったな」

 

「はい、私達の対応のミスです・・・・・申し訳ありません」

 

「私に謝っても意味はない。この失敗を次に活かせるのがお前達の義務だ」

 

「次、と言うと・・・・・?」

 

「お前達が帰還している間にまた篠ノ之束の奴が日本中に放送した。次は防衛省の大臣を狙うとな」

 

『・・・・・』

 

「政府と権力者が件の計画に関わっている以上、ラーズグリーズが奴ら全員の報復と粛正が終わるまで繰り返すと思え」

 

次の瞬間、空中投影されたディスプレイが千冬達の目の前に浮かび、束の顔が映り出した。

 

『残念、もうその情報は中古だよん。らーくんはもうとっくの昔に防衛省の大臣の報復を終えたよちーちゃん!』

 

「束・・・・・!」

 

『今度のは凄いよー?生きたまま顔を燃やしたんだよねー。うふふ、今頃は病院で治療受けているんじゃないかなー?ま、殺されないだけマシって思えば、らーくんの心優しい配慮に感謝しなくちゃねそいつは』

 

それはもう狂気でしかない。ラーズグリーズは優しさを捨てた復讐の鬼と化した悪魔だ。

 

「今すぐラーズグリーズを止めさせろ束!」

 

『やだでーす。これは人として生きられなくなったらーくんの復讐でもあるんだよ?あの実験でもう二年も生きられなくなったあの子が唯一の生き甲斐にして、あの子の心が初めて癒えるための狂った行い。もう時間がないらーくんの無念が残らないためにはこうする他ないのだよちーちゃん』

 

真剣な表情で顔を顰め、拳を硬く握る千冬を見返して淡々と言う。

 

『だから次からは誰を狙うかは教えないけどらーくんが最後に狙う相手ぐらいは教えてあげるよ。最後は―――織斑一誠だから夜道に出歩かさない方が賢明だよ?』

 

「っ・・・・・」

 

『ちーちゃん、らーくんを止めたかったらちーちゃん自身が止めてあげてね。じゃ、ばいばーい!』

 

ディスプレイが閉じて静寂な沈黙を残して消失する。

 

「・・・・・千冬姉。ラーズグリーズって本当に俺達の家族なのか・・・・・?」

 

「・・・・・その質問に肯定したら、お前は受け入れるのかラーズグリーズを」

 

「・・・それは・・・・・」

 

「無理だと思うなら二度と私に同じ質問を言うな。自分の中で禁句にするんだ。いいな」

 

「姉さん、それは私と愚兄二号も含めて言っているのか」

 

マドカは秋十と自分も確認すると短く「ああ」と答えられると意味深に笑みを浮かべだす。

 

「そうか・・・・・ならば私は今後からラーズグリーズのことを愛情込めて『兄さん』と呼ぼう」

 

「・・・・・正気かよマドカ。俺は受け入れ難いぞ」

 

ミイラの顔と身体なラーズグリーズと肩を並べて仲良くなれる自信はない、と顔を顰め拒絶の色を浮かべる秋十を心底から非難の眼差しで睨みつける。

 

「だから愚兄なんだお前は。あの篠ノ之博士が嘘を言っていると思っているのか?」

 

「それは・・・・・だけど・・・・・」

 

「『家族を大切にできない奴は家族じゃない』この言葉は確か―――かつて貴様が言っていたな愚兄二号」

 

「っ・・・・・」

 

「非道な目に遭って今のラーズグリーズの行いは誰からでも褒められたものではないが、それでも家族として受け入れるべきではないのか?酔狂に織斑と姓を名乗るからには深い事情がある筈だ。私はそれを考慮して受け入れるつもりだ。対してお前は、お前達はどんな思いでラーズグリーズの事を考えているのだ」

 

一夏にも話を振り秋十と共にラーズグリーズに対する思いを聞こうとした矢先、千冬が話に加わった。

 

「マドカ、身内同士の話は他所でやれ。篠ノ之達に聞かせる話ではない」

 

「・・・・・ふん、それもそうだな。他にラーズグリーズの敵がいるこの場でする話じゃないか。姉さん、話は終わったな?ならば帰らせてもらうぞ」

 

一夏と秋十の手首を掴み作戦指令室から連れ出す。さらりと仲間から敵視されている風な発言を残され箒達は微妙な気持ちをされた。後に一同も解散して寮室に戻る際。

 

 

「・・・・・あたし、マドカに訊いてみるわ。箒はどうする?」

 

「・・・・・部屋に来るといい」

 

 

 

それから誰もが寝静まった夜の時間帯で、鈴は箒の部屋に訪れた。相手の了承を取らず入ればベッドの縁で腰を下ろして対面している箒と―――同じ相部屋の住人のマドカ。入ってくる鈴を見てマドカは口を開く。

 

「これで揃ったか。それで、私から聞き出したいことは何だ」

 

寝ようとするマドカに聞きたい事があると、話は鈴が来るまで待ってくれと箒は伝えた。その鈴が現れると開口一番に口開いたマドカに問うた。

 

「・・・ラーズグリーズのことだ。単刀直入で言わせてもらう、ラーズグリーズって名前は偽名だな」

 

「・・・・・」

 

「沈黙は肯定と受け取るわ。これまであたしと箒はラーズグリーズと篠ノ之博士にナンバーズと関わってから色々と考えていたことがあるの。あんなミイラの身体を見て以来ずっとね」

 

壁に寄り掛かりながら部屋の淡い照明灯の光を視界に入れ見つめる鈴。

 

「京都でもナンバーズと会って、気になる話を聞かされたわ」

 

「十年前・・・・・初めてISを動かしたのは一誠であると私は直接本人から聞かされた」

 

「あたしもそうよ。マドカ、あんたも当然知っていわよね。同じ家族なんだから」

 

「ああ、そうだ。ちぃ姉には内緒だよ?と楽しそうに言ってくれたからな」

 

「ふぅん、だったら最初政府が織斑一誠こそが十年前、初めてISを動かしたのは最初の男だって話、その事実は篠ノ之博士本人が否定したけど、ラーズグリーズが篠ノ之博士とISを開発する当初から関わっていたことは本当なんだ。それ千冬さんも知らなかったでしょ」

 

鈴の言葉に言い返そうと口を開きかけたが、マドカはこの会話の深意に気付きまた意味深に笑みを浮かべる。

 

「いや、知っていた」

 

「「!」」

 

「と言えば、お前達の中で出ている答えは確定するか?」

 

だとすれば、だとすれば・・・・・!

 

「・・・・・教えて、『織斑一誠』って・・・・・」

 

「・・・・・」

 

気分がよさそうに笑うマドカ。

 

「はっ、伊達に幼馴染の関係を持っていないか。あの愚兄達と違って、ここまで答えを自分で見つけるとはな。いいだろう・・・・・教えるつもりは毛頭もなかったが、自分で気づいたならば私が知っている全てをお前達に打ち明けよう。ただし教えるには条件がある。ラーズグリーズの味方になれ」

 

「なっ・・・・・」

 

「鈴はともかく、篠ノ之、お前はラーズグリーズの味方になる理由はあるだろ。私が気付かないと思っているのか?しかもその理由は私個人にとっては忌々しい限りだっ」

 

戸惑う箒を更に動揺させるマドカ。

 

「だが、今のお前には極めて難しい気持ちになっているだろうな」

 

「・・・・・」

 

「故にさっきの条件は冗談で済ませてやる。ありがたく思え」

 

「何であんたが上目線で言うのよ」

 

「当然だろう?私がお前達より下である事は一度もないのだからな」

 

傲岸不遜な態度でいるマドカの鼻っ面を折ろうと気持ちで喧嘩を買う鈴。

 

「へぇ?言ってくれるじゃない。だったら今度勝負しなさいよ」

 

「いいだろう。料理対決でもするか?勝敗は篠ノ之に決めてもらう。お題と試食と審判もな」

 

「上等よ」

 

勝手に勝負の中立に立たされ、当人がいる目の前で決められてしまい、ささやかな抵抗を試みる。

 

「・・・・・私の意見はないのか」

 

「「ない」」

 

呆気なく二人から切り捨てられる箒だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~ナンバーズ達との日常編~

 

「ふむふむ、生命の理を覆す聖杯・・・・・中々に興味深いっ。無人機に命を与えたら面白いことにならないかね篠ノ之博士?」

 

「興味はあるけれど、反乱なんかされるのも嫌だからしないよー。というかそんなのISじゃないし。女の子が操縦してこそISだよ」

 

聖杯に宿っていた物を手に入れた今、奪われても支障がないので二人の科学者から目を輝かせて調べさせて欲しいという願いを叶え、壊さなければ好きなだけ調べさせることにしたラーズグリーズは、手に入れた『力』の感覚を取り戻すために特訓をしていた。

 

「・・・・・」

 

しかし、ミイラのような身体の弊害か思うように力を開放することはできないでいる。やはり、生身の身体でないと発揮できないかと心中落胆して肩を落とす。

 

「おいラーズ、何落ち込んでんだよ」

 

「そうそう、今のラーズでも十分強いっスよ」

 

少年的な雰囲気を持つ少女ノーヴェと赤い髪を後頭部でまとめた少年的な容姿で、ややノーヴェに似た外見をしているウェンディに話しかけられ振り返りながら言い返す。

 

「・・・・・ISがなければもやし以下」

 

「ははは、そりゃそんな身体だからしょうがないっス。それで生きているだけでも凄すぎるっスよ?」

 

「そうだ、だから女々しい考えをするんじゃねーぞ」

 

励ましに来たのかと二人をジッと見つめる視線にノーヴェは提案の言葉を述べながら拳を構えた。

 

「暇なら私と勝負しろ」

 

「ということで、何時ものように相手になってやってくれないっスかね?ラーズに構ってもらえないと苛立つっスからねー」

 

「ふざけた事を言うな!?」

 

いいだろう、と拳を構えるラーズグリーズが示す姿勢に合図もなしで飛び掛かるノーヴェ。突き出される拳は軽くかわされても流れるように足を振るって追撃する。横から迫る足に片腕で防ぎ、片手で掴み取り思いっきり降り投げるラーズグリーズの手から解放されながら空中で体勢を整え、床に着地した直後には目と鼻の先まで迫られていた。突き出される拳に負けじと突き出す拳がそれぞれの顔の頬に掠る。それから足も駆使して踊るように格闘術を繰り広げる。

 

「てめ、もやし野郎のくせにどうしてそんなに強いんだよ!戦闘なんて碌にしたことが無いだろが!」

 

「・・・・・もやし言うな」

 

「がっ!?」

 

腹部に重い一撃を食らい床から足が浮くノーヴェ。続けざまに躊躇なく女の顔にISの手で突き刺し殴り飛ばす。吹っ飛ぶノーヴェは瞬時で追い伸し掛かるつもりのラーズグリーズからバックステップで回避し、戦意が折れない強い眼差しでラーズグリーズを射抜きながら飛び膝蹴りを繰り出す。顔面を狙ってくるその蹴りを後方に飛び退きつつ交差した両出で防ぎ、衝撃を和らげる。

 

「うおおおおおっ!」

 

「・・・・・」

 

 

今日も長くやっていそうっスなーと傍観者姿勢で立って見守るウェンディ。そして大体こんな時にやってくる面子は決まっていると出入り口の方へ目をやれば。

 

「ノーヴェが一番手だったか」

 

「ラーズ、今日も凄い」

 

「順番を決めましょう。勿論じゃんけんで」

 

トーレ、セッテ、ディード、近接戦闘が主な戦いをする三人は暇があればラーズグリーズと組み手をする。ほぼ毎日誰か、今日みたいに三人揃ってするときもある。その際、ラーズグリーズから接近戦のイロハを学ぶので実力はメキメキとつけて、戦闘能力が向上するのだからいつの間にか訓練や戦闘時だけ戦闘の師のような関係を構築した。

 

「がふぅっ!?」

 

あ、終わったと腹パンを食らったノーヴェは、肺の中の空気を吐き出したような声を発しながら倒れこんだ。そして倒れた者を運ぶは必須だとお姫様抱っこをして、ここ訓練場の壁際にまで優しく連れて行く。

 

「お、下ろせ・・・っ!」

 

「・・・・・」

 

顔を赤くして照れと羞恥で暴れるノーヴェを無視し、安全な場所にゆっくりと下ろして立ち上がりトーレ達の方へ顔を向ける。

 

「・・・・・誰」

 

次に戦う者は誰だ、と言葉足りない問いだが共に過ごした時間は長くじゃんけんで決め合った結果、ディードが挙手する。

 

「私です。よろしくお願いします」

 

赤い刀身の双剣を持ちながら訓練場の中心に移動するディードに呼応してラーズグリーズも赤黒いブレードを二振り粒子召喚して構える。そして、一気にどちらからでもなく前へ飛び出して今回は双剣同士の戦いの訓練を始めた。残りの二人もしっかり訓練してもらう。それが昼時までの日常。

 

昼頃になると、ラーズグリーズが十数人分の料理を手慣れた手つきで用意する。今回の助手はセインにクアットロ。暇そうなナンバーズがいたら声を掛けるのがラーズグリーズのやり方である。

 

「ラーズちゃーん。お野菜洗ったわよー」

 

「・・・・・一口サイズ」

 

「はいはい、切ればいいのねー?おねーさんに任せなさーい」

 

「久々のカレーだなぁー。夜は何する?」

 

「・・・・・中華」

 

の何しようかなと鍋の中を混ぜながら考えていると、二人がすかさず食べたい中華の料理を主張してくる。

 

「フカヒレ作ってちょうだいね?」

 

「はいはい、私は中華まんがいいな!」

 

「・・・・・」

 

大体の夕食は、こうして一緒に誰かと作る時にその時に決まるのが常であった。結果、夕餉までにラーズグリーズが様々な中華料理を作り上げて束達の口と胃を大いに楽しませ喜ばせた。

 

夕餉の後はのんびりと寛ぐディエチ、オットー、チンクと大型テレビの前で何かしらの番組の放送をするか四人でゲームをする事もある。今回は四人でキャラクターを選びバトルロワイヤルをするゲームをしていた。

 

「「「「・・・・・」」」」

 

無言で勝負をする四人の沈黙が真剣さを醸し出していた。ゲームの中では一進一退、攻防を繰り広げガードをしたり隙あらば攻撃をしてダメージを蓄積して倒していく。そして誰かが一人勝って他は負けてゲームが終わると、

 

「「「「はぁ・・・・・」」」」

 

揃って溜息を吐くなどどれだけ集中をしていたのか分かってしまうほどだ。それでもまだゲームをし続けるつもりで皆で話し合う。

 

「次は何をする?」

 

「最近、面白そうなPCゲームがあって皆とやってみたいものがあるけどいい?シューティングゲーム」

 

「・・・・・どんなの」

 

「シューティングか。無論やってみようではないか」

 

ディエチが提案したPCシューティングゲームをするためにそれぞれ自室に戻り、その日、時間が許される限り何度も挑戦して楽しんだのであった。

 

就寝前はミイラのような身体を晒すラーズグリーズにウーノとクロエが献身的に濡れたタオルで優しく拭く。

 

「痒いところはありませんか?」

 

「辛かったら言ってね?」

 

「・・・・・ん」

 

清潔を保つために最初はクロエが、次にウーノまでもが自主的に(ジェイルの差し金)してもらうようになってから申し訳なさと感謝で一杯になるが、何時か身体が復活したら恩返しをしたいと願うラーズグリーズ。

 

そして就寝は一人ISを保管するガレージのところに向かい、束とジェイルの手によってISのチェックをしてもらう。問題がなければそのままラーズグリーズは自室に戻り柔らかいベッドの上で、傍らに束とクロエと寄り添い眠りにつく。

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