インフィニット・ストラトス~光に奪われし闇~   作:ダーク・シリウス

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異世界VS異世界

暖かい日差しと晴天は桃色の花が満開に咲いて彩っている地上を見下ろし、白い鳥達が鳴り響く大鐘楼の音で空へと羽ばたく。とある場所の白い教会に多くの参列者たちが集い、豪華絢爛なドレスや黒いタキシードスーツ、各々の正装で身に包んで続々と集まっている。

 

「・・・・・お前が結婚するなんてなぁ」

 

黒い正装で身に包む少年が感慨深く白い正装の出で立ちの少年を見つめる。隣に立つ少年も頷く。

 

「思いのほか早かったよな。この世界に来て二年目になったけどさ」

 

異世界へ連れ去られた一夏達が二年前のことを思い出しながら懐かしむ。この世界に拉致された当初は烈火のごとく反発や抵抗した者は殆どだった。だがしかし、明日を迎えるためにはこの世界で生きるしかなく従順なフリをしつつ与えられた衣食住を、仕事を甘んじて受け入れ今日まで生活をして来た。その間、様々な出来事や出会いに事件があったものの誰一人息災で生きて来た。

 

「元の世界、今頃どうなっているんだろうな」

 

「ラーズグリーズが怒り狂って大暴れしていないといいんだけど」

 

「・・・・・怖いこと言うなよ秋兄」

 

どうしようもないことだが、そうなっていないことを元の世界へ戻れない自分達は祈るしかできないこの状況に、三人達がいる控室の扉が勢いよく開けられた。

 

「うおっ!?って、マドカ・・・・・」

 

「おい、何時まで呑気に駄弁ってる」

 

「あ、ああ・・・・・時間か。ありが―――」

 

「貴様に礼を言われたくはない。この世界に私達まで巻き込んだことを恨んでいるのだからな」

 

黒いドレス姿で二年間の歳月で成長したマドカの瞳は、怒りと憎しみで満ちていて纏う雰囲気は触れれば切れそうな剣吞さを醸し出していた。

 

「「「・・・・・」」」

 

マドカのように変わってしまった者もいればそうでない者もいるが、極めてマドカはこの世界を恨んでいると思わせる程に憎悪を抱いてしまっている。もはや姉である千冬以外はまともに対話が出来ないほどだ。鼻を鳴らして去るマドカを見送ってから一夏達もそれぞれの赴く場所へと移動を始める。

 

「問題、起こらないといいな」

 

「これから結婚式が始まるもんな」

 

もしも発生したら自分達も対処しよう。家族の結婚式を台無しにしたくないから―――。

 

 

 

開始する結婚式。多くの参列者が前方を見て一人の新郎と数多の新婦が将来を誓い合うことを神父の代行者として美しい女性が問いかけ、新郎新婦達は一斉に誓い合った。その後、新婦のブーケ・トスを始める為に広い外へと出た。未婚の女性達が密かに殺気立っているが気付く者はいたり気付かないふりをする男性人達は距離を置いて見守る。そして新婦がそんな女性達に向かって後ろ向きで投げたブーケは、狼のように群がる彼女達の中に吸い込まれた。誰が取れたのか分からなかったが、幸運にも手にした女性から離れた女性達の輪の中に佇む者の姿が拍手を送られる。

 

「―――え」

 

一誠はその女性を見て絶句した。新婦も一瞬誰だか分らなかったが直ぐにブーケを手にした者が誰なのか理解して言葉を失った。

 

「・・・・・どうして、ここに」

 

「あら、辞職届も出さず勝手なことをしているあなたに伝えたい事があってここへ来たのに随分な言葉ね」

 

「伝えたいこと・・・・・って」

 

女性はニコリと笑みを浮かべていった。

 

「織斑一誠君、クビよ。そしていなくなる貴方の代わりにこの子が仕事を全うすることになったわ」

 

一誠の背後に発する光の中から飛び出す八つのピットとパワード・スーツを装着している人物。

 

「紹介するわ。彼の名前は―――織斑ラーズグリーズ・F・アヴェンジャー。貴方の兄よ」

 

『―――――っ!?』

 

「そして貴方に全てを奪われた者が今度はあなたから奪う者の名前でもあるわ」

 

ラーズグリーズの身体が真紅の光に包まれ、機械に侵蝕された枯れた木のような姿の体長二メートルの真紅の龍となった。

 

『・・・・・返してもらうぞ。全てを』

 

グパッ、と大きく口を開き―――一誠を頭から丸のみにした。腹の中に送り込まれた一誠に宿っている魔力とラーズグリーズの魔力がドクンと同調した鼓動が成り、感じ取った。

 

「一誠ぇええええええええっ!」

 

『・・・・・五月蠅い』

 

尾で新婦の腹部を突いて吹き飛ばしながら他の大勢の新婦にも薙ぎ払って蹴散らした。一連の行動を見て唖然と見ていた面々は我に返ったところで臨戦態勢の構えに入る。

 

「誰だお前は・・・・・グレートレッドの姿にしちゃあ奇妙奇天烈な姿をしているな」

 

「よくも一誠ちゃんやあの子の可愛い娘達の結婚式を・・・・・」

 

「覚悟できているんだろうな」

 

ラーズグリーズのかつての記憶から甦る懐かしい者達。今となっては自分の敵として相対してしまっているのに不思議と何も感じない。

 

『・・・・・分けていた魔力がようやく一つになった。ついでに聖杯も取り戻した』

 

「おめでとう、ラーズグリーズ。―――いえ、我が主よ」

 

「我が主・・・?」

 

「・・・・・やはり、まだ気づいていない様子ね」

 

呆れで溜息を吐く彼女は全身から銀色の魔力を解放した。魔力に包まれる彼女の服がメイド服に成り変わり、容姿は完全に別の女性の顏となってその琥珀色の瞳を見た者達は愕然とさせた。

 

「リ、リーラ・・・・・なのか?」

 

「お久しぶりでございますね。揃いも揃って馬鹿みたいに勘違いなさっている皆様。それと、私の今の名前は桐生カーリラです。確かに前世、この世界では―――リーラ・シャルンホルストでございますが、間違わないでいただきます」

 

深々とお辞儀をするカーリラの隣で人化に戻ったラーズグリーズに叫び声が届く。

 

「兄さん!」

 

「ラーズグリーズッ!」

 

結婚式に参加していた、この世界に連れ去られたマドカ達が掛けて寄ってきた。ラーズグリーズは飛びついてきたマドカを抱き留めた。

 

「待っていた、ずっと待っていたぞ兄さん!絶対に来てくれると信じていた!」

 

「まさか、貴方が来てくれるなんてビックリしたわ」

 

「お前、どうやってきたんだよ!」

 

「ここに来れたってことはもしかして元の世界に帰れるのか?」

 

詰め寄られて質問攻めを受けるラーズグリーズに、自然の動作でフルフェイス越しで顔を触れてくる千冬と顔を見合わせた。

 

「・・・・・信じていたぞ」

 

「・・・・・(コクリ)・・・・・束姉」

 

束を呼ぶラーズグリーズの言葉に呼応して、式場の上空に浮かぶウサギ型の巨大宇宙船が光学迷彩の機能を解除して姿を現し、束の声が聞こえて来たのだった。

 

『やぁやぁちーちゃん!箒ちゃんとまどっち達、皆のアイドル束さんが迎えに来たよー!』

 

「ね、姉さん!?」

 

「何だあれっ!?」

 

「・・・・・宇宙船型IS」

 

「「「「「IS!?あれが!?」」」」」

 

誰もが吃驚する事実に思わず突っ込んでしまった一夏達であった。あの宇宙船に乗れば元の世界に帰れるという認識はまだできないでいるが、それ以前にこのまま見過ごしてくれる甘い相手はこの場に居なかった。

 

「あー、色々とツッコミたいが一先ずお前さんを捕らえさせてもらうぞ」

 

「・・・・・まだ結婚していないのか」

 

「おい、脈略もなしに言ってくるんだお前・・・・・っ」

 

「まだしていなかったのですか。趣味が恋人なんて悲しすぎますね」

 

「リーラ、お前もだ!聞きたいことが山ほどあるからな!」

 

半ギレな前髪が金髪の黒髪、顎髭を生やしている中年男性が光の槍を具現化してラーズグリーズに突き付ける。

 

「・・・・・捕まえるのは無理」

 

「ISとやらでこの場を切り抜けるつもりか?それこそ無理だぜ。既に解明しているから倒すのは簡単だ」

 

「・・・・・なら、手始めにリサイクルしてきたもので戦ってもらう」

 

『というわけで、私とらーくんが回収と開発したモノと戦ってもらうねー!』

 

ウサギ型の宇宙船から夥しい数のISと―――。

 

「『混沌と破壊を齎す機械龍(カオス・マーシナリードラグーン)』!?」

 

アジ・ダハーカが聖杯で用意て私兵に使っていた置き土産が放たれた。

 

「・・・・・急いで全部倒した方がいい。この辺り一帯に攻撃する指示をした」

 

「てめぇっ!?」

 

「・・・・・頑張って」

 

レーザー攻撃、魔法攻撃の雨が結婚式場に振ってくる。迎撃し始める彼等彼女等を眺めている暇はなく、ラーズグリーズに攻撃しかかる者達も現れる。

 

「ラーズグリーズ、この場で滅するわ!よくも、よくもイッセーをっ!」

 

「・・・・・ちぃ姉達を元の世界へ連れ帰る」

 

「そうはさせない。彼女達はこの世界で―――」

 

「・・・・・あいつらの意思を無視して無理強いにするそれは、兵藤一誠が嫌うことじゃなかったか」

 

良く知っているために思わず口を閉ざして異を唱えようとした次の言葉が喉につっかえた。

 

「・・・・・どうなんだ」

 

「・・・・・例えそうでも、最後は納得してくれたわ」

 

「・・・・・納得?そうせざるを得ない状況化だったからじゃないか。そうさせた原因は、お前達の身勝手なエゴだろ」

 

「何ですって・・・・・!」

 

「・・・・・もう、お前等と話をするのも面倒だ」

 

ブレードを粒子召喚して天に向かって突き出し『リヴァーサル』を発動した。少ししてこの式場に空を赤々と照らして振って落ちてくる超超超巨大な隕石が突っ切ってくる。

 

『なっ―――!』

 

「全て潰れてしまえ」

 

「そうはさせるか!」

 

黒髪に赤い瞳の女性が両手の間に集束、圧縮した気を隕石に向かって放出した。

 

「川神流星殺し!」

 

極太のビームが隕石と衝突、貫いたが、未だ隕石は健在で地表に墜落してこようとする。これには唖然としてしまうこの世界の強者達。

 

「―――破壊尽くし続けなさい!」

 

紅色の髪と同じ魔力を迸らせる女性の号令に、落ちてくる隕石に向かって魔力を放つ女性達や結婚式に参加してきた面々の総力を挙げて隕石を粉砕、破砕、消滅していく。

 

「・・・・・リーラ」

 

「かしこまりました」

 

「待て!その子達を連れさせない!」

 

「・・・・・お代わりが欲しいなら、好きなだけ味わえ」

 

ラーズグリーズは―――更なる超超巨大な隕石を、今度は数十も同時に地球に落としかかった。数多の隕石で出来た影は晴天だというのに夜みたく地上に影を落とす。真っ暗になった空を見上げ、絶望が過った。

 

「ば、馬鹿なっ!?」

 

「流石にこの数を同時には壊せれねぇぞ!」

 

「ヴァーリ、頼む!」

 

「僕も力を貸そう」

 

青光りする黒髪の持ち主で、歳は14、5ほどに見える端正な顔立ちの美少年が上空に手をかざしただけで幾つかの隕石が木っ端みじんに破壊してみせた。

 

「・・・・・破壊神もいたのか。やはり、厄介だ」

 

「では、当初の予定通りに」

 

「・・・・・ああ、無限とドラゴンをぶつけよう。その前にまずお前等だな。クロウ・クルワッハ、ヴァーリ・ルシファー」

 

拳を突き出してくる邪龍最凶と魔力を放ってくる白銀の鎧を纏う者からかわし距離を置く。

 

「私達だけ警戒してもいいのか?」

 

「・・・・・忘れていない」

 

豊かな鬣を生やし黄金の獅子を彷彿させる鎧を身に纏う男性がラーズグリーズと対峙する。

 

「・・・・・サイラオーグ・バアルか」

 

「リアス達の結婚式を蔑ろにしたお前を、この拳で叩き潰す」

 

「ああ、同感だな」

 

「どうしてくれましょうかしらね?」

 

更にラーズグリーズを取り囲むように兵藤誠と兵藤一香が身体からオーラを滲ませていた。

 

「ISの能力を使われる前に殴り飛ばす。そのミイラのような身体だと一撃すら致命的だろ?」

 

「・・・・・その通りだ。だが、何の対処もしていないとでも思っていないのか」

 

「聖杯の能力も使っても同じよ。貴方の玩具も時期に全部なくなるし、あの時の貴方の味方があの船の中にいるなら負けるつもりはないわ」

 

残されるのは敗北。と言いたげに魔方陣を展開する一香。拳を構える誠とクロウ・クルワッハ、サイラオーグとヴァーリ・ルシファー。この絶望的な状況の中でラーズグリーズは嗤った。

 

「もう一度言おう。こうなる展開を予測できるのに何の対処もしていないとでも思っているのか」

 

―――ウサギ型の宇宙船から複数の影が飛び出してきて、ラーズグリーズの周囲に降り立った。その人物達を見て、誠達は思考を停止しかけた。

 

 

「・・・・・は?」

 

「え・・・・・」

 

「・・・・・これは」

 

「・・・・・」

 

「どういうことだ?」

 

 

「そろそろ出番だと思ってきたぜ」

 

「久しぶりだな。今度は敵として会いに来たぜ」

 

「・・・・・」

 

「複雑だが、まぁ違う世界の別の知り合いと同じ顔をした人って割り切って思えばいいか」

 

 

ラーズグリーズを助けに現れた四人。全員が黒髪か真紅の髪、双眸が金か金と黒のオッドアイ。感じる魔力も全員同じで気配も同じな彼等は―――。

 

「一誠が・・・・・四人だと」

 

「何これ、何がどうなってるの・・・・・?」

 

「・・・・・魔法の類じゃない。奴らから様々なドラゴン、邪龍の気配も感じる」

 

「全員、個の兵藤一誠だということなのか」

 

「信じられん・・・・・」

 

呆然と佇む五人に対してフルフェイスマスクを外すラーズグリーズは、聖杯を取り出して能力を発動する。器に銀色の液体を作り出して飲んだり頭から掛けたりして、命の理を覆す力を使った。

 

「・・・・・四人じゃない」

 

身体から蒸気が発してラーズグリーズを隠す。煙の中で骨と皮の身体が肉付きを取り戻し、健康的な肌が再生していく。頭皮に髪が伸び始め欠損していた目と腕も復元する。

 

「・・・・・改めて名乗る。俺は・・・・・」

 

煙の中から身体が人としての肉体を取り戻せたラーズグリーズが姿を見せる。

 

「元の世界では織斑ラーズグリーズ・F・アヴェンジャー。だが、この世界で生まれた俺は兵藤一誠と言う名前だったよ」

 

背中まで伸びた黒髪に触れながら手で真紅色に染めた。

 

「「「「「―――――」」」」」

 

「手始めに玩具で遊んでもらった。今度は一方的な蹂躙を始めさせてもらう。覚悟しろよクソッタレ共」

 

ラーズグリーズの言葉に呼応した四人の兵藤一誠達は瞬時に龍を模した真紅の鎧で包むと目の前の相手に向かって飛びかかった。

 

五人の兵藤一誠が戦闘を開始したことで、宇宙船から降りてくる者達も自分が戦う相手を見つけて戦っていた。

 

「初めましてね。この世界の私のウェディングドレスは白なのね。私の時は黒だったわ。ふふ、懐かしいわね」

 

「あら、私は真紅だったわよ?」

 

「わ、私達が、二人・・・・・?」

 

「リアス、私、成神くん、白音ちゃん、イザイヤ、アーシアちゃん、ギャスパー君、ゼノヴィアちゃん、イリナちゃん、ロスヴァイセさん、レオーネさんまでも・・・・・」

 

黒髪ポニーテールの女性が同じ自分達を見つめ自分の目を疑う。それはこの場に居る全員がそうである。

 

「やっぱり驚くわよね。まぁ、並行世界から来たのだから当然なのでしょうけれど」

 

「私達はラーズグリーズの協力でこの世界に来たの。この世界の貴方達をお仕置きするためにね」

 

「お仕置きって、何の・・・・・」

 

困惑する紅髪の女性に対して、同じ紅髪の女性達は憤慨した。

 

「「貴女のせいで愛しいイッセーに疑われてしまったのよ!貴女と言う前例が浮上したせいで!」」

 

 

「並行世界の私か・・・・・」

 

「同じ白龍皇であるが、人数差で負けてしまうな」

 

「さて、どう戦う?」

 

「勝負だ、この世界の白龍皇」

 

「・・・・・私でもまだ幼い頃の私は弱い。事実上三対一だ」

 

「よし、私に対する侮辱だな。絶対に倒す。その後、ラーメンのレシピを教えてもらうぞ」

 

「「一理あるな」」

 

「・・・・・それだけは譲れないな」

 

 

「兵藤一誠、この世界のクロウ・クルワッハは私が相手をする」

 

「そうか?じゃ、お願いするな。他とこに行ってくる」

 

「というわけだ。同じ邪龍同士、そしてこの状況を作ってくれたラーズグリーズに感謝して戦おうか」

 

「全力でいこうじゃないか」

 

「ふふっ、これはたまらないな・・・・・!」

 

 

「久しい、オーフィス」

 

「我、オーフィス」

 

「我もオーフィス」

 

「我が三人・・・・・不思議」

 

「オーフィス、勘違いしてる」

 

「何に?」

 

「我が好きなイッセーのこと、お前のせいで我も勘違いしてしまうことが分かった」

 

「だから、お仕置き。ラーズグリーズがそう望んでいる」

 

「オーフィス、許すまじ」

 

 

「やぁ、この世界の私と神ちゃん」

 

「ちょっくら話をしようぜ?」

 

「おいまー坊。俺等いつの間にか幻術でも掛かってるのか?」

 

「どうやらそうじゃないらしいよ神ちゃん。さて、穏やかではないそうだけどどんな話だろうかね」

 

「「義息子を勘違いするバカな俺(私)への説教だ!」」

 

 

「くそっ!何なんだお前達は!」

 

「五月蠅いなっ、どうして気付かないんだお前は!」

 

「全くだ、おかげでこっちはいい迷惑だ!」

 

「だから何なんだ、何の話だ!」

 

「「まだ解らないなら、川神流無双正拳突きっ!」」

 

 

「ふぅん、並行世界の私ね」

 

「そうよ。貴女は、問題なさそうね。同じ魔人として安心したわ」

 

「当然よ。魂を分け合った者同士なのだから見間違うはずがないじゃない」

 

「なら、適当に他を蹴散らさない?」

 

「いいわね。久々に楽しめれそう」

 

 

「厄介だな、同じ能力を使う相手を戦うのは」

 

「この程度で厄介だと思うのは貴様が弱いだけだ、凍り付け!」

 

「言ってくれる。手加減はしないぞ!」

 

 

「・・・・・やっぱり、あの子がいっくんだったんだね」

 

「一誠様・・・・・ああ、ようやく会えました」

 

「安心した」

 

「ええ、本当に」

 

「並行世界の私まで勘違いされるとすごくショックだもんね」

 

「他の方々は怒り狂っていますけれどね」

 

 

戦場の強い気配を感じ、釣られてきたのか、この世界のアジ・ダハーカ達が次々と現れ空から見守っている姿勢でいるその様子に異世界の兵藤一誠が気付いた。

 

「お?この世界の邪龍が来たぞ!お前等、出してやれ!」

 

「え、いいのか?ま、こいつらも戦いたがっているし」

 

「・・・・・分かった」

 

「この周辺一帯、地獄絵図となるだろうなぁ」

 

 

四人の兵藤一誠達が黒い魔法陣を展開。内に宿るドラゴン達を現世に召喚させた。三頭龍、黒い鱗に覆われ時折紫色の発光現象がする邪龍アジ・ダハーカ達がこの世界のアジ・ダハーカと対面を果たす。

 

『貴様等、よくもとんでもないことをしてくれたもんだな!特にお前ッ!この俺が我が主を勘違いしてしまう間抜けにするとは許さんぞ!』

 

『邪龍でも勘違いすることもあるだろ』『この世界の俺は老眼になってんのかー?』『記憶もおかしくなってるなら回復魔法がお勧めだよ!』

 

『異世界の俺は三頭それぞれ喋るのか』

 

『どうでもいい。この瞬間を楽しむだけだ』

 

『俺が、四体だと・・・!?』

 

同じ力、魔力、能力を持っていても数の差で不利な状況になる。異世界とこの世界のドラゴン達の戦いは地上よりも激しい戦場と化なっていく一方、ラーズグリーズは千冬達を全員宇宙船の中へ転移して束と山田真耶を引き合わせた。

 

「ちーちゃん、ひっさしぶりぃっー!」

 

「お、織斑先生ぃ~!」

 

「山田先生!貴女も来ていたのですか」

 

「もう大変でしたよ~!織斑先生が突然の行方不明と同時に、専用機持ちの生徒達も一斉に姿を暗ましたことを政府に包み隠すのが~!」

 

童顔の彼女がみっともなく泣くとますます子供っぽく見えて、すまないと申し訳なく頭を撫でて宥める千冬。改めて彼女達の顔を見て首をかしげた。一ヶ月前よりも大人っぽくマドカ達が成長しているように窺えるのだ。

 

「・・・・・マドカ達、成長した?」

 

「ああ、この世界で二年も過ごしていた」

 

「んん~?私達は一ヶ月程度だよ?」

 

「何だと?」

 

「・・・・・異世界の時差が違う。もう少し遅かったら十年以上だったかも」

 

「ってことは、元の世界に帰るとそんなに時間は経っていないということなのね?」

 

安堵で胸を撫で下ろす楯無。しかし、ラーズグリーズにとっては。

 

「・・・・・マドカが俺より年上」

 

「兄さんが弟・・・・・。兄さん、お姉ちゃんに甘えてもいいぞ?」

 

「馬鹿者、それは私だけの特権だ」

 

そこで張り合ってきた千冬が自分の胸の中にラーズグリーズを抱き締めた。負けじとラーズグリーズの腕をつかんで懐に引き寄せるマドカ。二人の負けん気の引っ張り合う光景を目の当たりにされる他の面々は恐る恐る口を開く。

 

「えっと、二人ともラーズグリーズに話を聞きたいからその辺で・・・・・」

 

「「・・・・・」」

 

「続きは元の世界に帰ってからで頼む!ってことで、ラーズグリーズ。お前その顔は一体どう言うことなんだ」

 

秋十が強行的に話を進ませて疑問をぶつけた。

 

「・・・・・元々こんな顔だった」

 

「元々って、本当に俺達の、俺達の家族だったのか?」

 

「・・・・・元家族だ。ミイラの身体の理由は知っている筈だ」

 

問い掛けた一夏と秋十に驚愕の真実が襲われ、開いた口が塞がらない。

 

「兄さん。ずっと聞きたかった。あの男は一体誰なんだ」

 

「・・・・・あいつも、俺達の家族。名前は織斑百春。出生は同じだ」

 

「織斑・・・・・百春?」

 

「血の繋がった家族なのは安心したが、どうしてお前に偽って?」

 

「・・・・・政府が俺から男性操縦者がISを動かせる秘訣を探るため、影武者が必要だったからだ。それ以降の事は元の世界で語った」

 

「織斑一誠君の影武者として今で生きていたってことは・・・・・」

 

楯無の言葉を最後まで言わずとも首肯するラーズグリーズ。怒髪天が衝く勢いの怒りを露にするマドカ。

 

「殺すっ!」

 

「殺しちゃダメでしょ!てか、アイツはコイツの腹の中にいるんだけどどうなってんの?」

 

「・・・・・腹の中に入れば分かる」

 

マドカ以外ラーズグリーズから一歩下がった。誰も蛇のように生きたまま丸呑みされて喰われたくないためであるが、セシリアがおずおずと尋ねた。

 

「あの、だとしたらあの方達は貴方と勘違いしていらっしゃるのでは?」

 

「うん、そうだよね・・・・・」

 

「どうするつもりだラーズグリーズ」

 

シャルロットとラウラも気になっていたようで訊くが、ラーズグリーズの顏が顰めた。

 

「赤の他人のお前等が気にする必要なことか」

 

「赤の他人って・・・・・」

 

「・・・・・お前等はマドカ達の学友。織斑百春に全てを奪われた俺は生きた亡霊、お前等とは何の関係も持っていない無関係。赤の他人以外何だって言うんだ?」

 

「何度も一緒に戦ったり助けてくれたり・・・・・」

 

「・・・・・そんなこと都合よく勝手に思いこんでいるだけ。何時から戦友になった」

 

突き放す言い方をするのでイラッと来た鈴が食って掛かった。

 

「じゃあ、どうしてこの世界に来てアタシ達を連れ戻そうとしているわけ!?」

 

「・・・・・連れ戻すのに、助けるのに理由は必要か?」

 

「僕達の為、なんだよね・・・・・?」

 

「・・・・・理不尽な目に遭っている奴らが目の前にいる。見過ごせないだけだ」

 

踵を返してマドカ達から離れるその背中越しから言う。

 

「・・・・・俺は経験上、人の人権を蔑ろにする奴や理不尽に強いる奴が嫌いだ」

 

それだけ言い残して宇宙船から出て行くラーズグリーズの言葉に、誰も何も言えなかった。戦場へ舞い戻り状況を兵藤一誠から聞き出す。

 

「・・・・・戦況は?」

 

「この世界のお前の元父親と母親、魔王と神とドラゴン以外はほぼお前のお望みどおりになってるぜ。ドラゴンの方は、思いっきり楽しんでいるみたいだからまだまだ時間は掛かるっぽいな」

 

「・・・・・こっちは大丈夫?」

 

「異世界にトばされたっていう兵藤一誠とDとこのオーフィスとクロウ・クルワッハ以外の家族が全員やられた以外はな。善戦はしたがまだまだ実力不足ってとこだ」

 

負傷者は『二人目』の兵藤一誠が生産したという回復薬で傷や魔力を回復させている。

 

「凄いよなあいつ。フェニックスの涙以外で欠損した身体や手足を元に戻す薬を作れるみたいだぜ?しかも異世界産の賢者の石も大量に作ったってよ」

 

「・・・・・興味ある」

 

「だな。もっかい、あいつのいる世界に遊びに行こう。ってことでオーフィス、そろっと神々にも相手してやってくれ。神相手だと俺等も正直大変なんだ」

 

『四人目』の兵藤一誠の催促に龍神同士の戦いは、リンチのごとく一方的に殴られ蹴られて地面に倒れこんだこの世界のオーフィス以外のオーフィスは頷き、神々へ無限の力を放っていく。が、その中には神々を相手にしている兵藤一誠達がいて彼等の悲鳴が聞こえてくる。

 

「うおっ!?今オーフィスの魔力が掠ったぞおい!鎧が削れたし!」

 

「・・・・・危ない」

 

「おいこら!オーフィスに曖昧な指示を出すんじゃねぇ!」

 

「・・・・・巻き込んでない?」

 

「はっはっは。うん、お前等ごめんな。お、復活したな彼女達」

 

回復薬で復活した『二人目』の兵藤一誠の家族達が再戦と構え直す中、とある報告をする。

 

「イッセー、【ランクアップ】と新しいスキルが発現した」

 

「見て、私も」

 

銀色の携帯型のプレートを見せつけ、【ランクアップ】の証明を見せる金髪金眼の少女と銀髪碧眼の少女。

 

「こんな時にかよ。いや、こんな時にこそか。ぶっちゃけ、嬉しいことに俺もだ!」

 

「本当に嬉しそうだね。それにしても神様と戦って【ランクアップ】って・・・・・」

 

「それだけ神は凄まじい俺達冒険者なんかよりも比べ物にならない【経験値(エクセリア)】を持っているってことだ。もしかするとだ皆、よーく聞け」

 

 

「―――この世界の神一人につきレベルも上がるとして、十人も倒せば十レベル分も【ランクアップ】も夢じゃないかもな」

 

 

『・・・・・』

 

攻防一体の風を纏い、燃え盛る炎の猛威を大剣に纏って振るい、玲瓏な歌声で詠唱を唱え魔法を放ち、唸る拳と槍のように鋭く繰り出される蹴り・・・・・この世界の敵として戦っているが何故だろうか。

 

「彼女達の動きが更に鋭く攻撃が苛烈になっているな」

 

「・・・・・【ランクアップ】ってなに」

 

「あー、レベルアップの事じゃないか?あそこにいる兵藤一誠達の世界はダンジョンとモンスター、冒険者がいる話だったし」

 

「・・・・・納得した」

 

冒険者にとってこの世界は【経験値(エクセリア)】の宝庫そのものなのかもしれない。その上、超越者の神々と全力で戦えるなら【ランクアップ】も夢ではない。倒すことは極めて難しいことだろうが、それは冒険者と言えど普通の人間の力だけの話だ。

 

「お、魔法で分裂した兵藤一誠の分身体達が彼女達の鎧と化したか。なるほど、あんな風にも出来るんだな。色々と学べれるな今回の戦いの中で」

 

「・・・・・俺も出来る」

 

「そうなのか。ということはお前と限りなく近い並行世界の兵藤一誠なのかもしれないな」

 

全身にドラゴンの魔力を帯びる彼女達の一撃は、神々にも通用できるようになり対等の戦いが繰り広げられていった。

 

「・・・・・神は厄介。だから、サポートする」

 

ラーズグリーズは神々にだけ対してリヴァーサルを振るった。何を反転させたのかはラーズグリーズと神々だけが知って、気づく。その中で極めて厄介な神―――隕石を破壊した神は。

 

「破壊と消滅の力、どっちが上か勝負だシヴァ兄さん!」

 

「神々の中で極めて厄介だからな」

 

「どちらも同じオーラを放つ存在が二人同時とは・・・・・何だこれは、力がでない?」

 

二人の兵藤一誠が破壊の神と戦い始めたが、神側が己の力が全く振るえなくなった原因不明に動揺が隠しきれず、神としての肉体ひとつのみで接近戦を強いられてしまう。その結果、冒険者達の攻撃は面白い程当たって倒されていったのだった。

 

「で、お前は来れからどうする気だ?」

 

「・・・・・クソッタレの元親は?」

 

「あー・・・・・あそこだ」

 

指差す兵藤一誠の先に視線を向ける。視界に入る光景は―――。

 

「お前ぇッ!顔が同じだからって自分の息子と間違えるなんてどういうことだぁっー!!!」

 

「あなたねぇっ、ふざけるんじゃないわよっ!おかげで息子に疑惑な目で見られちゃったじゃないの!」

 

「ぐっ・・・!だから、さっきから・・・・・・何なんだってんだお前等はよ!」

 

「息子を間違っているって何なのよ!」

 

誰にも介入が出来ない地面が凹みクレーターになっている場で怒りと罵声を織り交ぜながら格闘している並行世界とこの世界の兵藤誠。己の全ての知識をフル活動して魔法のフルバーストを非難しながら放つ兵藤一香。

 

「今横やりしたら確実にアレだから止めておけ」

 

「・・・・・やっぱり、間違われるのは嫌なんだな」

 

「そいつはしょうがない。そういうもんだからだとしか言えないな」

 

ならば、自分は適当なに相手を見つけて戦いを仕掛けるかと兵藤一誠から離れる。どいつにしようかと考えていた時、光の槍が飛来してきて魔力を帯びらせたブレードで弾く。

 

「ラーズグリーズ・・・・・」

 

「・・・・・アザゼルのおじさんか」

 

六対十二枚の翼を背中から広げ、疑心暗鬼な眼差しで見つめてくる者に攻撃の矛先を向ける。

 

「お前、一体何者だ」

 

「・・・・・リーラの口頭の言葉を忘れたのか」

 

「半信半疑なだけだ。織斑一誠が兵藤一誠の生まれ変わりだと誠達から聞いて、この目であいつを見て接した手前・・・俺もそうなんだと信じていたんだからな」

 

「・・・・・だからなんだ」

 

「織斑一誠がいた異世界に、次元を超えて並行世界へ移動できる技術はないと聞いている。だが、お前は、お前達は異世界からこの世界にやってきた。その理由はなんだ」

 

光の槍を突き付けるアザゼルの質問に対してつまらなさそうに答えた。

 

「転生を司るミカルに、俺が復活した際に一度だけ願いを叶える約束を交えた。それを行使しただけだ」

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