インフィニット・ストラトス~光に奪われし闇~   作:ダーク・シリウス

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永久の別れ

「転生の神、ミカルだと・・・・・だが待て、あいつは最初に原始龍が見つけて・・・・・」

 

「・・・・・原始龍も勘違いしていたことになる。それに比べて転生の神ミカルは俺達を直接この世界に送ってくれた。アザゼルのおじさん、この事実をどう受け止める」

 

「―――すでに勘違いしていたアジ・ダハーカ達から説明を聞いて鵜呑みにした。私はこの子に、織斑一誠はメリアから。私は一誠様と一緒に転生したためこの姿ではなかったのでメリア達は私達の存在を気付かず、特に一誠様はとある事情で表に出られず裏で生きていました。ですので表にいた一誠様と同じ顔を持った織斑一誠が兵藤一誠の生まれ変わりだということを、どいつもこいつも勝手に勘違いした結果がこれです」

 

ラーズグリーズに遅れて宇宙船から出てきたカーリラが更に詳細を付け加えてアザゼルを凍り付いたように固まらせた。

 

「・・・・・前世の兵藤一誠の証を一つ以上揃えた状態で、ノコノコと何も知らずにこの世界からやってきた連中が、同じ顔をした兵藤一誠の生まれ変わりを見てどんな反応をするかアザゼルのおじさんでも予想と想像がつくだろ」

 

「・・・・・まさか、お前、本当に・・・・・」

 

「・・・・・もう今更だそんなこと。主張と正しさを調律するのが面倒この上ない」

 

祝福がされ送られる結婚式場は戦場と化して、今では廃墟も当然のように建物も地面も風景もボロボロ。周りを見回して自嘲的な笑みを浮かべる。

 

「・・・・・殺したいほど憎んでるが、恨んでるがこいつも俺の家族らしいからな。心と感情は納得していないが織斑千冬、織斑一夏、織斑秋十の為に元の世界へ連れて帰る」

 

腹部を添えながら言うラーズグリーズをアザゼルが焦燥の色を顔に滲ませた。

 

「待て!そいつもお前も、あいつらに説明しておけば!」

 

「―――十六年、いや。リーラから聖杯を受け取ってから十一年ぐらいか」

 

意味深に告げだすラーズグリーズ。魔法で復活する前のミイラの姿でアザゼルに語る。

 

「時が来るまでずっと生きて待っていた中、俺は三年間も非人道的な研究と実験の被験者にされて、生きているのが奇跡的なこの姿にされた。それでも生きていたのは昔の家族と再会を果たすためだ」

 

「・・・・・っ」

 

「・・・・・この状態の俺はISで身に固めないと数時間も生きていられなかった。顔も隠さないといけなかった。こんな醜い顔で表に晒せるわけがないだろうアザゼルのおじさん」

 

ISを装着して、フルフェイスマスクを被った姿で言い続ける。

 

「・・・・・分からないだろうアザゼルのおじさん。この姿で再会の想いを焦がれ続けていた俺と、人として何不自由なく生活を送れていた織斑一誠を偽っていた俺と同じ顔を持つ奴が同じ場に立って、あいつらが我先に選んだのは・・・・・俺じゃなくて俺じゃない奴だった」

 

握り締める拳がギリッと音が鳴り、ラーズグリーズの心情を露にしているようであった。

 

「・・・・・それでも一縷の望みに懸けた。あいつらと戦って、同じ戦い方をすれば気付いてくれるんじゃないかと―――だけど、駄目だった。全ての聖杯を揃えても、あいつらは織斑一誠こそがずっと会いたかった兵藤一誠だと、俺の目の前でハッキリ否定しやがった・・・・・絶望したよ」

 

突然、空気が鈍重に震える音が周囲に轟きだす。この異常な現象は何かと戦っていた者達も察して戦闘を中断し、重苦しくなった場の中で顔を俯くラーズグリーズ。

 

「・・・・・俺は何のために頑張っていたのかもあいつらは、否定した。全てはあいつ等と一緒に過ごすためだったのに、なのに、なのに、なのに・・・・・!」

 

カーリラが催促する。

 

「一誠様、当初の目的は果たしております。元の世界に帰りましょう。この世界に長居をする理由はございません。ここにいても私達の心が負担に掛かるだけです」

 

「・・・・・・」

 

重苦しい空気がフッと和らぎ、音も止んだ。同感と思ったのか四人の兵藤一誠達に向けて言葉を送った。

 

「・・・・・皆、ありがとう。元の世界に送り返す」

 

「ラーズグリーズ。本当にいいんだな?話し合いも和解もせずに」

 

「・・・・・和解しようが俺は元の世界で暮らす。こいつらとは永遠に会うことは―――」

 

「―――待って!」

 

遮った女性の声。一体誰だと目を向けようとした時、黒い着物で身に包む黒髪の黒と赤、黒と紫のオッドアイの女性達がラーズグリーズの足元の影から現れた。

 

「待っていっくん!」

 

「お待ちください、一誠様!」

 

「―――――」

 

ハッキリと己の事を昔のように呼ぶ目の前の女性達に信じられないと言った表情を浮かべる。この二人もきっとそうだろうとまだ見ぬ彼女達に対して憂いていた。だがしかし、それを裏切る彼女達の言動にカーリラも少なからず驚いた。

 

「・・・・・貴女方は、悠璃様と楼羅様。何故・・・・・」

 

「何故って、それはその子こそが私達が会いたかった『兵藤一誠』だと分かっているのかって疑問かしらリーラさん」

 

黒髪に黒い瞳、黒いドレスの黒尽くしの女性も微笑みながら現れる。

 

「私はその子の魂を分け合った魔人よ?魂を調べれば直ぐにわかるわ。この娘達は愛ゆえに、でしょうね」

 

「シオリ様。ですが、この場に居るということは織斑一誠と結婚するためでは?私達がいた世界に貴方達の姿は確認できませんでしたが」

 

「この格好を見なさいな。私は拒絶したから祝福する側だったのよ。悠璃と楼羅に至ってリーラさん達は知らないでしょうけれど。兵藤一誠じゃないからって結婚前夜、姿を暗まして逃げていたのよ?いつの間にいたのか分からなかったけれど。後ついでに、異世界に行かなかったのはこの世界で待っていたからよ私は。この二人に関しては立場上安易に動けないのは判ってるでしょ?」

 

実際、二人はどうしてここにいるの?という的な視線を向けられ二人は答えた。

 

「・・・・・ここにいるのは、一応結婚式を見守ろうと思っていたからだよ」

 

「そしたらこの騒ぎです。手助けをしようとしたら同じ顔の私達に見つかって今まで一緒にいました」

 

「・・・・・織斑一誠が兵藤一誠じゃないことを、他の連中に言ったのか」

 

悠璃が間も置かず否定した。

 

「無理、心底外見で判断してるっぽいから何を言っても無駄だと悟って放置してたし」

 

「正直、どうしてこんな痛恨な間違いを気付かないのかと目を疑いました」

 

「では、特に違いの要因は何なのか教えてくださいませんか」

 

「「可愛さ!」」

 

え、そこかよ?とアザゼルのツッコミを流すラーズグリーズ達。悠璃が手を歪ませて作った影の空間の穴に突っ込み、そこからアップルパイを取り出す。

 

「ほらいっくん。いっくんの為に作ったアップルパイだよ?」

 

「・・・・・」

 

「はやっ!D、何時の間にそっちに行った!?」

 

ラーズグリーズの横に仲間が気付かないほど移動し、ショタ狐状態で物欲しげに悠璃のアップルパイを凝視するD。

 

「・・・・・」

 

アップルパイを受け取り、ジーと視線を送ってくるショタ狐を一瞥。ラーズグリーズはアップルパイを二つに分け御裾分けとばかりDにも渡すと、ありがとうと述べるDと一緒に一齧り―――ラーズグリーズも食べた瞬間にショタ狐と化して、ショタな狐が二人美味しさのあまり顔を輝かせた。

 

「これだよこれ。やっぱり本物のいっくんはこうじゃないと!」

 

「はぁ・・・・・懐かしいです。こっちまでなごみます・・・・・」

 

「並行世界のいっくんも可愛いー」

 

「残念です。この瞬間の撮影が出来ません。え、出来ます?あの、焼き回しを・・・・・」

 

「これ、他のいっくんにも出来ないかな出来ないかな?」

 

「試してみたいですね」

 

可愛さに引き寄せられたかどこから現れたのかわからない並行世界の悠璃と楼羅達が揃うと、姦しくなって戦場と場違いな騒がしさを醸し出す。

 

「俺、あれは無理。お前等は?」

 

「できるけど」

 

「皆の前で控えさせて欲しいかなって・・・え、アイズとアリサ。何その期待した目は。見てみたい?いやちょっとそれはな?戦いに来ているんだから空気を読まないと」

 

とばっちりを食らいそうな他の兵藤一誠達も神妙そうな顔を浮かべる。そして戦場は殺伐とした感じではなくなってしまい警戒はすれど戦意を抑える。

 

「んー、もう戦う感じじゃなくなったか。だとすればこれならいけるか?」

 

「話し合いか?でも、ラーズグリーズはそんなことする気はなさそうだぞ」

 

「俺達もお咎めなしになるだろ。責任はとるが」

 

『四人目』の兵藤一誠はこの世界の兵藤誠と兵藤一香の所へ歩み寄る。並行世界の己と戦いを繰り広げ肩で息をするほど消耗している様子だが、まだ戦える余力が残っているようでもあった。

 

「さてさて、そろそろ本題に入ろうかね。お前達がここまでやらかされた原因を知りたくないか?」

 

「「・・・・・」」

 

「ラーズグリーズじゃあ、あまり信用できそうにもないから話し合いの場にリーラを付けよう。お前達全員も大人しくしておけよ?じゃないと三人のオーフィスと俺達兵藤一誠がもれなく大暴れをする特典付きだ。―――いいな」

 

戦力は圧倒的に不利。異常さが特有の兵藤一誠達や無限の龍神が場に三人もいる。神々も戦っていたというのに戦況は有利にもならなかった。おまけに並行世界の兵藤誠と兵藤一香が勝てなくても負けず足止めを食らわされた。フリーな状態のオーフィスが攻撃の矛先を向けられれば如何に神々とはいえど勝てない存在。それだけ最強のドラゴンは伊逹ではない。

 

「・・・・・わかった。これ以上戦場を大きく広げられたら日本がもたない」

 

「・・・・・」

 

こうして戦いは並行世界からやってきた者達の勝利に等しい結果となり、負傷者の手当てと戦場の結婚式場は、兵藤一誠達が率先と動いたことで怪我の回復や戦場の爪痕の復旧はスムーズに進み、元通りに戻ったのであった。野に放った並行世界のドラゴン達の回収も動いている間、話し合いの場が設けられた。

 

「では、不肖ながらこの私が我が主の代わりに全てをお話します。お二人が未だ、私に信頼をしてくださるならこれからお伝えすることは全て嘘偽りではないことを承知の上でご静聴してください」

 

テーブルを挟んで座る三人。カーリラから語られる異世界で転生した自分と織斑一誠のこれまでの経緯。

 

『・・・・・』

 

静かに話を聞いておかしなことを言わないでいたカーリラが、次に信じられないことを言い出したので思わず口を開きかけたが、冷たい眼差しで睨まれて口出しは出来なかった。それから聞かされる話は織斑一誠と名乗る別人が織斑一誠として表舞台に立ち、闇に葬られた本当の織斑一誠が非人道的な実験と研究から篠ノ之束に救われ、ミイラのような身体にISという身体を得て時を待っていたのにアジ・ダハーカが『絶対天敵(イマージュ・オリジス)』として当初の計画とは違う行動を起こし、一部除いてそれに便乗し出す邪龍達。『絶対天敵(イマージュ・オリジス)』と人類の対立する中、織斑一誠と偽る者に光を奪われたことで闇の―――ラーズグリーズ・F・アヴェンジャーとして名を変えて時にIS学園の敵として、時にアジ・ダハーカ達の敵として戦い、共闘もしてきた中で・・・・・。

 

「クロウ・クルワッハ。貴女が勘違いした原始龍の使いとして封龍剣の回収のため、この世界に現れてから更に計画の狂いが更に劇的に加速して止まらなくなりました」

 

「・・・・・」

 

「貴女に責任はございませんが、メリア諸共勝手な事されて深く遺憾に思い、怒りを覚えました。原始龍も余計なことをしてくださらなければ狂った計画の修正は出来たものを・・・・・」

 

今更言ってももう遅い話であるが言わずにはいられなかったカーリラは締めくくった。

 

「後はご存じの通り、異世界にお二人が我が主の家族を率いてやってきては織斑一誠と偽る者を一瞬も疑わず我が子同様に勘違いして受け入れたことで、私達の計画は破綻も当然の結果になってしまいました」

 

カーリラの背後で佇んでいたラーズグリーズが龍人化となり、腹部を膨張するや否や腹から大きな何かの輪郭が浮き彫りしながら食道に上り、凶悪で鋭利な牙が生え揃う口の奥から粘液塗れの何かがテーブルの横で吐き出した。

 

「この計画を知っているのは私と一誠様、転生する前にお伝えしたアジ・ダハーカ達だけです。さて、この計画の事をあなた方が可愛がっていた織斑一誠は果たして知っているのでしょうか?勿論その計画は転生して生まれ変わった主は何も覚えておらず知りませんでした。私が保有していた一誠様の『記憶』の聖杯を再度一誠様に宿したことで改めてお伝えしました。『記憶』はこの世界にまつわる全ての事のみ。転生時の時の記憶は一切ありませんからね」

 

汚いそれに水の魔法で洗い流し、意識を強引に覚醒させるべく電撃を浴びさせたラーズグリーズ。

それは全身が突然の強烈な刺激と激痛によって無理矢理眠りから覚めて悲鳴を上げた。

 

「うぁあああっ!?・・・・・な、なんだこの状況?俺、ラーズグリーズに喰われたんじゃ」

 

『・・・・・クソ不味かったから吐き戻した』

 

「事実かよ!」

 

案外元気そうに突っ込む織斑一誠。カーリラは質問する。

 

「一つ質問を、私は誰でしょうか」

 

「え?・・・・・リーラ、さんだよな?」

 

「ご名答です。では、IS学園がある元の世界では私はどんな人物なのか、名前と仕事の内容を教えてください。貴方が兵藤一誠の生まれ変わりならば同じ世界で私と既にお会いしていてわかりますよね?」

 

手を突き出すラーズグリーズが織斑一誠の周囲に透明な結界を張った。

 

「念のためにどこかの誰かが念話などと小細工がしないように施しました。尚、沈黙や黙認は認められません。私達は互いを愛し合う仲なのですから隠し事はなしの筈ですよ」

 

「・・・・・」

 

「さぁ、お答えください。直ぐにわかる事です」

 

突然の質問に記憶上しか知識がない織斑一誠は、元の世界の彼女のことが分からず必死に考え込むその行動が沈黙―――否、リーラという単語をどこかで聞いたことを思い出して内心信じられないが口にした。

 

「桐生カーリラさん、ラブアンドピースの事務所に属してる俺の専属マネージャー」

 

「正解です」

 

内心安堵で溜息をする。だが、本当に桐生カーリラなのかと目を疑ってしまう。完全に別人なのだ。信じられないと思う気持ちはおかしなことじゃないと思いたい織斑一誠はまた質問される。

 

「では、私とあなたしか分からないことを教えてください。当然ながら聖杯の関係以外の事です」

 

「え、俺達しか分からない聖杯以外のこと?」

 

「はい、貴方と初めて出会った際には私が保有していた『記憶』を宿しておりませんが、今ならお分かりになられる筈です。まさか、お忘れですか?」

 

織斑一誠は・・・・・分からなかった。彼女、カーリラが言うように聖杯を始めて受け取ったことがない。しかも聖杯以外のお互いしかわからない話なんてした覚えも ない。話し合いの場に居たメリアが酷く動揺していることすら気付かない。

 

「待ってくださいリーラ。貴女は聖杯を彼に宿していなかったのですか?私達より出会って再会していたのに?」

 

「メリア、元の世界で私が持っていた聖杯とアジ・ダハーカが保有していた聖杯も持っている所を見ていた筈です。そして織斑一誠から一つしかない貴女が保有し、直接宿した聖杯を奪った。あの時、誰も彼もが損な疑問すら抱いていない事実を今も呆れていますが」

 

「・・・・・っ!?」

 

「あの時、どうして既に宿した聖杯を我が主からわざわざ取り出したのか―――パフォーマンスです。復活する瞬間を皆に見せる為にです。リーラ・シャルンホルストという人物を知る者達がいる目の前で真実を教える為に」

 

しかし、それでも兵藤誠達は織斑一誠を選んだ。実に嘆かわしいことだと悲観する。

 

「そん、な・・・・・」

 

「至極、残念極まります。一誠様の幼少期から長年共にいた友人がこんなにも間抜けだったことに」

 

メリアから織斑一誠に顔を向け直す。

 

「結局、貴方も沈黙するばかりで何もお答えしませんでしたね」

 

「・・・・・」

 

「ハッキリ告げましょう。貴方は織斑一誠以前にも兵藤一誠ではない。本当の名前は・・・・・織斑百春。織斑家の末弟の者です」

 

な―――と口から吐露した驚愕の籠った一文字の声。織斑一誠は目を見開いたまま開いた口が塞がらない様を皆に窺わせた。

 

「織斑、百春・・・・・?千冬ちゃん達の末弟・・・・・」

 

「一誠、じゃない・・・・・別の子供・・・・・?」

 

その通りだとカーリラは魔方陣を展開して宇宙船からある資料をこの場に転送した。それを二人に提供する。

 

「証明するものはこちらに。それともナヴィ様に彼の詳細の情報を探ってもらいましょうか?」

 

「―――ナヴィちゃん!」

 

呼ばれた桃色の髪にグラマスな体型の女性が人壁の奥から出てきて、無言で織斑一誠の情報を確認した結果。彼女は静かに瞼を閉じて目を伏せた。

 

「・・・・・こんな典型的なミスを仕出かすなんて」

 

「まさか・・・・・」

 

「リーラの言う通りよ。この子は、織斑一誠じゃなかった。織斑百春って名前の人間よ。嘘じゃないわ」

 

彼女の情報網に嘘偽りがないと周囲の認識である。よってリーラの話は正しくあり虚偽ではないことに二人や結婚したばかりの織斑一誠の家族は凄まじいショックを受け、中には地面に腰を落として座り込んでしまった。

 

「事実をご確認できましたか?真の兵藤一誠、織斑一誠は誰なのか・・・・・」

 

織斑一誠改め織斑百春に近づき異形の手で織斑百春の襟を掴み宇宙船に向かって飛翔したラーズグリーズを見上げていた目を一瞥して目の前の者達に視線を変える。

 

「彼をこの場に残すのはあなた方にとって苦痛以外何物でもないでしょう。元の世界に連れ帰って差し上げます」

 

次いで、悠璃と楼羅、シオリに顔を向け尋ねる。

 

「私達は並行世界の兵藤一誠様達を元の世界に送りながら元の世界に帰りますが、どうしますか?」

 

「迷惑じゃなかったら、一緒に行ってもいいかしら?」

 

「もういっくんと別れ離れになるのは嫌!」

 

「一緒に同行させてください」

 

分かり切っていた言動に微笑まし気に口元を緩め、銀色の魔方陣を展開する。魂がない抜け殻な状態のかつての家族達に向かって一言。

 

「我が主に絶望を与えた貴方達も因果が巡るとは皮肉ですね。今度は貴方方が絶望を抱きながら余生をお過ごしください」

 

「リー、ラ・・・・・」

 

「では、これで本当に永遠にさようならです。二度と私達の世界に来ないでください。我が主より下回る代わりの男性などこの世界にいくらでもいます。その男性と好きなだけ結婚をして子供でも設けて最後は死んでくださいませ。―――私と一誠様から絶縁されたかつての家族の皆様」

 

永遠の別れ際の言葉を残して三人と一緒に銀色の光に包まれて宇宙船へと転移した。やがて動き出す宇宙船はドラゴン達の回収に勤しんでいるだろう並行世界の兵藤一誠達の元へと高速で移動する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・俺を、殺す気なんだろ」

 

「・・・・・殺す価値はもうなくなった。お前は俺と同じ苦しみを生きながら味わってもらった方が溜飲も下がると考え直した」

 

「お前・・・・・」

 

「・・・・・帰ったら政府を潰す。その後はお前が織斑家の末弟として勝手に生きてればいいし、勝手に自殺すればいい。これからも裏で生きる俺の関わる事じゃない」

 

「千冬姉さんやマドカが黙っちゃないぞ」

 

「・・・・・そうだよなぁ。仕事がクビになったお前の穴を俺が埋めなきゃいけなくなる感じだし」

 

「・・・・・でも、元々はお前の仕事だろ、よかったじゃないか。昔みたいに戻れるぞ」

 

「・・・・・やっぱり殺すか。それとももう一度俺の腹の中に入るか?」

 

「ごめんなさい。勘弁してください。蛇に丸呑みされた蛙の気分はもう嫌です。

あれはもう一生のトラウマだよぉ・・・・・!」

 

 

 

 

「千冬姉、一誠の奴をどうするべきなんだ?」

 

「私達の末弟だそうだ。あいつの世話をしたいならお前達が甲斐甲斐しくすればいいさ」

 

「ふん、私は死んでもあいつを嫌っているからな姉さん」

 

「マドカは変わらんなぁ・・・・・でもま、一誠じゃなかった百春か。改めて俺達の末弟として受け入れようぜ。問題はラーズグリーズ・・・・・か」

 

「「ラーズグリーズは何が何でも一緒に暮らさせるぞ。お前達も手伝え、いいな」」

 

「「異口同音になるほど熱意が伝わってくるなぁ・・・・・」」

 

 

 

 

「もう二度と、とは思えないが滅多に会えなくなるかもしれないから記念写真でも撮らね?一日二日だけじゃ足りない写真撮影会だ」

 

「お、いいねぇ。賛成だ」

 

「・・・・・また会える。今度は俺から会いに行く」

 

「兵藤一誠だもんな。俺達の寿命は一万年以上もある。いつか必ず会える時があるさ」

 

 

 

 

「いっくん、いっくん!いっくんの住んでいる世界に戻ったら私と楼羅の子供を作ろうね!」

 

「こらー!らーくんをいっくんと呼んでいいのはこの束さんだけだー!」

 

「ラーズグリーズだかららーくん?じゃあ、私もそう呼ぶね」

 

「らーくんでも駄目ーっ!」

 

「ふふ、悠璃が元気になってよかったです」

 

「私的にはあの子と魔人の子を増やせるなら問題ないわ」

 

「私もです」

 

「おい、兄さんの子供を作るのは私が先だ。これからも永遠にだ。だからお前達の出番はない。まぁ、しわくちゃの顏のばあさんからなら考えてもいいがな(笑)」

 

「「「へぇ、面白いことを・・・・・」」」

 

 

 

「あー、ラーズグリーズ・・・・・一誠って呼んでいいか?」

 

「・・・・・まだラーズグリーズ」

 

「まだ、ね。お前これからどうする気だ。束さん達と一緒に住むままか?」

 

「一誠、お前はこのまま家に戻ってこい決定事項だ異論は認めん」

 

「・・・・・束姉ヘルプ」

 

「ちーちゃん、それはまだダメかなー?らーくんはこれからも一緒に住むんだからさー」

 

「ほう?ならば勝負でもするか。お前の望み通りISで最高の舞台で弟を懸けた決闘をするぞ」

 

「あのちーちゃんが凄くやる気出してる!?でもこの束さんも臨む所だよ!元の世界に帰ったら早速らーくんと用意するからね!わーい、楽しみが増えたー!」

 

 

 

「「「・・・・・」」」

 

「・・・・・何?」

 

「「「同じイッセー、我、興味ある」」」

 

「・・・・・お持ち帰りは」

 

「「「駄目」」」

 

「俺も元の世界のオーフィスと会いてぇ・・・・・」

 

 

和気藹々な一同を載せた宇宙船は『四人目』の兵藤一誠の力によりこの世界から別次元の並行世界へと移動してこの世界から完全にいなくなった。その後の兵藤誠達は―――。

 

「・・・・・俺達はなんてことを・・・・・」

 

「ああ・・・・・私は、私達は・・・・・」

 

「イッセー・・・・・イッセーェ・・・・・」

 

「う、うう・・・・・っ」

 

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい・・・・・!」

 

「あ、ああ・・・あああああああっ!」

 

「そんな、そんなっ、そんなぁっ!」

 

友人達や神々から同情や憐みを向けられ、またその友人達と神々も同罪だと悔やみ、神の力を振るえなくなった神々は今後の未来を見据えて検討をするのだった。

 

 

「行っちまったか・・・・・」

 

「完全に気配が消えました。もうこの世界にはいないでしょう」

 

「あの坊主に悪いことをした・・・・・シアが酷く落ち込んでしまってやがる」

 

「ネリネちゃんとリコリスちゃんも・・・・・」

 

「彼等、これからどうなってしまうのかしら」

 

「・・・・・分からない」

 

「あの子に謝りたいわ・・・・・」

 

「誰でも同じ思いだ。しかし、現状彼がいる異世界に赴く術は今はない」

 

ならばどうする?否、既に決まっていると各勢力のトップ達はある計画を企てた。これから何百何千、もしかすると何万年も時間は掛かるだろうが時間はまだたくさんある。アザゼルは吐露する。

 

「待ってろよ。絶対に会いに行くからな」

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