インフィニット・ストラトス~光に奪われし闇~ 作:ダーク・シリウス
異世界から千冬達を連れ戻してからラーズグリーズ達は再び表から姿を暗ました。異世界同士の時差の差は幸い三年生のダリル達がまだ学園に通える年内であって、異世界で二歳も歳を取ってしまったが敢えて今まで通りの学園生活を過ごし、クラスメートに疑問をぶつけられても口外せず秘匿を貫いて数か月の時が過ぎIS学園は卒業式を迎え、ダリルとベルベットとグリフィンは卒業証書授与を受け取り晴れて無事に大人の世界に旅立った。
進級した一夏達も二年生、楯無とフォルテは三年生となって学園生活を送ることとなった春先のことだった。織斑一誠が名前を織斑百春に改名したことで世間は軽く奇異と疑問で賑やかになった頃、とある二人は奇怪な事務所に訪れていた。
「社長、お久しぶりです」
「・・・・・久しぶり」
「いやぁ~ん!桐生ちゃんと一誠ちゃん~!会いたかったわぁ~ん!会いたかったから桐生ちゃんは休職にしておいたからいつでも復帰できるわよん!」
「抜かりない人ですね。ですが、そうしていただけて助かりました」
「二人には約束をしてもらっているからねん!このぐらいの手配はお茶の子さいさいのさいさいよん!」
「・・・・・約束を守りに来た。また、よろしくお願いします社長」
「ええ、ええっ!また昔みたいに一緒にお仕事を頑張りましょん一誠ちゃん!」
ラーズグリーズはカーリラと一緒に仕事に復帰して一歩ずつ昔の頃を取り戻す。手始めに業界内の人脈を愛らしさをアピールしながら築き上げていって一ヶ月後。
「桐生ちゃん!今日も一誠ちゃんのお仕事が沢山入ってきたわよぉん!その中にはなんと、子役として映画の出演よ!」
「もう?CM数本請け負っただけなのに早いわね」
「んもぅ桐生ちゃん!一誠ちゃんの魅力は天井知らずどころか青天井以上、神クラスなのよん!アップルパイを食べてる瞬間の写真や可愛いキャラクターのイラストの商品なんて一時間も経たずに完売!人気アイドルなんて何?ごみの種類なの?と思われてるぐらいわかっているでしょう!?」
「言われるまでもないわ。けれど、昔のあの子の売り上げと比べると圧倒的ね」
「そりゃあ、獣属性付きの可愛いショタちゃんが女性の心を射止めちゃってるからん!一誠ちゃんがカバー曲を歌うだけでも絶対にヒットすること間違いなしね!」
「歌手どころか全てにおいてあの子は成功して見せる魅力があるわ」
「そうねん!それじゃあ、一誠ちゃんに連絡をお願いね?」
「わかったわ」
専用機持ち達のクラスに―――何故かIS学園の制服を着たショタ狐のラーズグリーズとウーノからトーレ以外のナンバーズ達が教壇の横に立って、真耶と肩を並べる彼彼女等の担当教師として千冬が口を開いた。物凄く疲れ切った声音で。
「はぁ・・・・・今日からお前達と一緒に学ぶことになった者達だ。自己紹介など必要もないぐらい知っているからさっさと授業に入るぞ」
「いや、いやいやいや!?何がどうしてラーズグリーズ達がIS学園に、俺達のクラスに編入することになったのか説明を!」
「私は兄さんと一緒に学園生活が出来るなら大歓迎だ!」
歓喜するマドカを除き、至極当然な疑問を抱く秋十の気持ちは同感だとウンウンとほぼ全員の専用機持ち達が頷いた。ラーズグリーズがその疑問を打ち明ける。
「・・・・・束姉が原因」
「姉さんが・・・・・?」
身内の名前が出た箒が反応し、百春を見つめるラーズグリーズ。
「・・・・・そいつ、織斑一誠が織斑百春に改名したならば正真正銘の織斑一誠としてデビューをするべきだと言って俺やチンク達をこの学園に寄こした」
「幸い、日本政府を潰したラーズグリーズの素顔はここにいる者以外誰も知らない。織斑一誠として生きることになったラーズグリーズのことを日本政府は追及する暇もなければすることもできない」
続いて語る千冬の意味深な最後の言葉に何となくでも察する一夏達。ラーズグリーズという日本の闇の一つが存在する以上、下手に刺激をすれば己の首を絞め立場を自分から失うことになる恐れが大いにある故に千冬が言う通り、追及する暇もすることもできないだろう。
「・・・・・今の日本政府に俺をどうこうする術もないしISもない。というか、ISを提供する代わりに篠ノ之束とジェイル・スカリエッティ、ナンバーズに織斑一誠と名乗る者に関して日本限定だけど一切の干渉をしないことを束姉が脅した」
それはもう日本内ではやりたい放題な現況ではないのかと思わずにはいられなかった。
「つまり、兄さんは光の世界で堂々と歩いて生きることが出来るようになったのだな」
「・・・・・そういうこと。以後よろしく」
何とも言えない状況になったが、ラーズグリーズが同じ学園の生徒として一緒にいることになるならば、事を構えず済めるとも仲良くなれるかもしれないと思ったところで千冬が催促する。
「話はここまでだ。授業を始める。ラーズグリーズ、いや、『一誠』とナンバーズ。生徒としてこの場に居る以上は私に逆らうような真似だけは止めておけよ」
「・・・・・ちぃ姉」
「馬鹿者、ここでは織斑先生だ」
「・・・・・ちぃ姉先生?」
「・・・・・」
言い聞かせても直さない生徒に拳骨(すごく痛くない威力)を落とす。のだが、ラーズグリーズ改め織斑一誠は殴られても口元を緩めて嬉しそうだった。
「・・・・・んふふ」
「何故笑う」
「・・・・・嬉しいから」
目を細めて自然な動きで千冬に抱きついて微笑みをこぼす。飼い主に甘える小動物のような、顔を擦り付ける一誠を困惑する千冬をしばし羨望の眼差しが一部から向けられる。
「あー、一誠?聞いていいか?」
「・・・・・?」
「どうしてそんな姿なんだ?」
ピコピコと動く獣耳、緩慢的に揺れる九つの尾。獣属性を備わってる今の一誠は別の姿にならずとも普通に生活できるじゃないのか、と秋十は思った。
「・・・・・俺もISを動かせる」
「うん?ああ、そうだな」
「・・・・・織斑百春と顔は瓜二つ」
「吃驚するぐらいにな。流石は兄弟ってやつだよな」
「・・・・・そんな男が突然、世間に現れたら余計で面倒な諍いが生じる」
「ん・・・・・?」
「・・・・・後日、俺の存在も公式発表される。そこにいるクーリェ・ルククシェフカと同じ待遇で学園にこの姿で通えば面倒なだけで済む」
面倒なだけ済む?
「お前にとって面倒なことって何だ?」
「・・・・・初詣みたいな寄って集まってくる連中と接すること」
「そう言うことならば私が全身全霊で守ってみせるぞ兄さん!」
そしてマドカをフォローするのが一夏と秋十、百春という事実は暫くして思い知らされるのであった。
「で、では授業を始めますね?皆さん、新学期でも頑張りましょう!」
真耶の促しでようやく授業を学ぶ姿勢になる。一誠達は宛てられた席に座ってIS学園の生徒として一夏達と学園生活を過ごす。よもやこんなことになるとはIS学園も一誠達も想像もしなかった。が、イマージュ・オリジスが消失した今・・・世界は平穏を取り戻して光に奪われ闇に生きるしかなかった少年は―――奪われた光の中で心機一転とゼロから人生をやり直して生きることを始めた。