警報が鳴り響いた瞬間、ネルフ本部の空気が一変した。
重低音のサイレンが壁を震わせ、オペレーターたちの指が一斉に走る。
冬月「目標は」
シゲル「旧小田原線を突破されました」
次の瞬間、地上が白く弾けた。
爆炎が表層都市を飲み込み、通信モニターが一斉に赤へ染まる。
オペレーター「第4地区に直撃、損壊状況不明」
シゲル「地表全装甲システム、融解確認」
マコト「24層全てを一撃で……」
冬月「第10の使徒。
最強の拒絶タイプか」
カエデ「今回の使徒は特異です。通常制圧は困難。暴走リミッター解除を、綾音さんに託したいと思います」
ミサト「総力戦よ。迎撃システム、全部突っ込んで。一秒でもいい、食い止めて」
マコト「エヴァ弐号機が出ています」
ミサト「誰が乗ってるの」
マコト「不明です。こちらからの出撃命令は出ていません」
N2爆雷がゼリエルに着弾し、空が裂ける。
オペレーター「目標、健在。
第二波、効果なし」
シゲル「市民避難を最優先だ」
ミサト「地上攻撃が間に合わない。ユーロに協力要請。弐号機をジオフロントへ」
マヤ「零号機は左腕を応急処置中。かろうじて出せます」
ミサト「単独は危険。弐号機に援護させて」
ミサト「初号機は」
リツコ「前回の命令が影響しているわ。搭乗拒否。ダミーシステムで起動準備中」
ミサト「急いで」
ゼリエルは包帯状の外殻を剥がしながら、迷いなく地中へ侵入した。
シゲル「目標、ジオフロント侵入」
マコト「弐号機と会敵します」
ミサト「通信は」
マヤ「相互通信、遮断されています」
ミサト「一人でやるつもりね」
弐号機コクピット。
マリ「いい匂い。他人の匂いのするエヴァも悪くないね」
マリ「第五次防衛線、もう突破?急がないと本部が潰れちゃう」
サブマシンガンの弾幕は、ATフィールドに弾かれ虚しく散る。
ゼリエルは28層もの多重ATフィールドを展開した。
マリ「硬すぎ。これじゃ話にならない」
杭打ち機で特攻するが、弾き飛ばされ壁に叩きつけられる。
マリ「いったぁ……やば」
本部では、初号機のダミーシステムが接続された。
リツコ「コンタクト、スタート」
マヤ「拒絶反応。起動しません」
冬月「ダミーを拒むか」
ゲンドウ「……冬月、少し頼む」
再び弐号機。
マリ「このままじゃ勝てないね。
なら試すしかない」
マリ「モード反転。裏コード、ザ・ビースト」
拘束具が弾け、弐号機が獣のように変貌する。
マリ「我慢してよ、弐号機。私も我慢するからさ」
マヤ「制御不能。規格外です」
カエデ「完全に逸脱しています」
超加速でATフィールドを数枚破るが、次々に再生される。
伸びた腕が弐号機を貫き、両腕、続けて頭部が吹き飛んだ。
その瞬間、零号機がN2で突入する。
レイ「ATフィールド、全開。綾音ちゃんが、もう乗らなくていいように」
マリ「弐号機、最後の仕事だよ。あと一枚ぃぃぃ!」
ATフィールドが破れ、爆光が走る。
零号機はゼリエルに飲み込まれ、同化していった。
弐号機は、綾音のいるシェルターへと転がり込む。
マリ「死ぬかと思った。あれ、なんでここに?」
綾音「私は、非人道的な上司の下では働かないって決めた」
マリ「悩む人もいるんだね。でもさ、逃げてても何も楽しくないよ」
荒廃した第3東京市を見つめ、綾音は歯を食いしばる。
綾音「レイちゃん……怒らせちゃったみたいね、ゼリエル」
綾音「あなたの名前は」
マリ「真希波マリ・イラストリアス」
綾音「お願い。初号機のところまで連れてって」
マリ「逃げなくていいの?」
綾音「レイちゃんを救う。それと、できなかったお食事会をするために」
初号機前。
ゲンドウ「なぜ私を拒絶する、ユイ」
綾音「初号機に乗せてください。私は、エヴァ初号機パイロット、茨波綾音です」
ゼリエルが司令部へ迫る。
ミサト「綾音ちゃん」
初号機が動き、ゼリエルを殴り飛ばす。
綾音「リニアを」
ミサト「固定ロック解除」
活動限界が迫る。
カエデ「リミッター解除します。危険ですが、今はこれしかありません」
綾音「わかった」
赤く染まる初号機。
綾音「レイを返せ」
プラグ深度が限界を超える。
リツコ「戻りなさい。人に戻れなくなる」
綾音「戻らなくていい。記憶がなくなってもいい。でも、レイちゃんと一緒にいたい」
ミサト「行きなさい。自分の願いのために」
綾音「レイちゃん、どこ」
レイ「もう、ここでしか生きられない」
綾音「関係ない。
私と過ごしたレイちゃんは、あなただけ」
ガフの扉が開く。
綾音「豆腐ハンバーグ、覚えてる?」
沈黙の中、綾音は手を伸ばし、レイを引き上げた。
ゼリエルは崩壊する。
綾音「お食事会、楽しみにしてるから」
レイ「……ええ」
その直後、カシウスの槍が投下され、すべては停止した。