警報が重なり、司令室の照明が赤く染まる。
大型モニターに映るのは、制御を離れて暴走軌道に入った初号機の反応だった。
ミサト「初号機は?」
リツコ「……独断で出撃しているわ」
その言葉に、司令室の空気が一段冷えた。
綾音は歯を食いしばり、前方スクリーンを見据える。
綾音「弐号機の人、下がって!」
外部回線に割り込むと、軽い調子の声が返ってきた。
マリ「せっかくのデビュー戦だもん。戦いたいニャン」
余裕を装っているが、弐号機の機体データは限界に近い。
綾音は即座に判断する。
綾音「カエデ、マギと司令部に悟られないように。直接、弐号機と接続して」
カエデ「了解しました。秘匿回線を構築します」
視界の端で、カエデの瞳が淡く光る。
その瞬間、通信は完全に遮断された。
綾音「久しぶりですね、マリさん。この回線は安全です。誰にも聞かれてない」
マリ「へえ、用意周到だね」
高速で敵の攻撃をかわしながら、綾音は息を整える。
今から話す内容は、知られてはいけない。
綾音「秘策があります。信じてやってくれますか」
マリ「面白そうじゃん。聞かせて」
綾音「あなたがビースト化して、私が疑似シン化。暴走はさせない。その隙にコアを引きずり出して叩く」
一瞬の沈黙。
次いで、弾んだ声が返ってきた。
マリ「なんでそんなこと知ってるの?」
綾音「転生者だから。……説明は後で」
マリは短く笑った。
マリ「いいね。早速やるニャー」
弐号機の拘束が外れ、機体が獣のように身を屈める。
マリ「モード反転。裏コード、ザ・ビースト」
咆哮のような振動が戦域を揺らす。
マリ「我慢してよ、弐号機。私も我慢するから」
司令室では、観測不能な数値が次々と跳ね上がる。
マコト「エヴァに、こんな機能が……」
マヤ「リミッターが次々解除されていきます。プラグ内、モニター不能」
リツコ「プラグ深度、マイナス値ね」
マヤ「危険すぎます。初号機も同じ反応が……!」
綾音は秘匿回線をさらに切り替える。
綾音「レイちゃん、聞こえる?」
レイ「……聞こえる」
綾音「あなたは行かないで。ここは私たちで倒す。自爆なんてしたら、あとで一緒にパーティーできないでしょ」
レイ「……わかった」
その返事を合図に、戦況が一変した。
ビースト化した弐号機が敵のATフィールドを力任せに引き裂く。
初号機は白く発光し、破砕したATフィールドを手裏剣のように投射する。
さらにカエデが通常弾を即席で対ATフィールド弾へ改造し、弾幕を張る。
全ての防壁が崩れ、露出したコアが引きずり出される。
一撃。
閃光とともに、敵性反応は完全に消失した。
戦闘後、マリは処分対象となるはずだったが、インパクト阻止と被害抑制への貢献により、正式配備が前倒しされ、不問とされた。
綾音はシンクロ率過多により一度エヴァに取り込まれたものの、無事サルベージされ、一週間の検査後に復帰した。
アスカも、カエデが治療ポッドのプログラムを書き換えたことで、翌日には前線復帰可能な状態まで回復していた。
その後。
ネルフ本部、食堂。
綾音「今日は集まってくれてありがとうございます」
綾音「私とレイちゃん、アスカでカレーを作ります」
戦闘の噂は瞬く間に広がり、当直以外の職員まで食堂に集まっていた。
鍋いっぱいのカレーはすぐに空になり、余った分も全て配られた。
綾音「あー、楽しかった」
レイ「人に料理を作ると、胸があたたかくなる」
アスカ「まあ……悪くない暇つぶしね」
だが、その穏やかな時間は長くは続かなかった。
やがて世界はネルフとヴィレに分かれ、決定的な対立へと進む。
綾音たちはヴィレ側につき、カエデの開発した兵器でゼーレとネルフを壊滅させた。
その最終局面で、綾音は暴走したエヴァに取り込まれ、今度はサルベージされることはなかった。
意識が途切れる直前、彼女は理解していた。
これは終わりではない。
次の世界への、転生なのだと。