転生したらハズレ斬魄刀の使い手だった件【完】 作:ノイラーテム
ファイト! 一角!!
●良くある転生前の末路
生前、学生の時分はスポーツをやっていた。
幸いにも才能があり全国大会でも良い所まで行ったが、運悪く体を壊して何もかも台無し。
就職は縁を頼りに体育会系の会社に勤めたが、運悪くブラックな会社だったらしい。
働いて働いてその結果が病気になり、遂には死んでしまったという訳だ。
だからという訳ではないが、いわゆる転生した時。真っ先に確認したのは自分が健康かどうかだ。
生前の全盛期どころではない肉体に歓喜し、踊り出しそうになった。
そして踊っている最中に気が付いたのだが……。
「ここブリーチの世界じゃね? しかも俺一角かよ」
気が付いたらブリーチの世界で斑目一角になっていた。
ブリーチは知っていても登場人物を良く知らない人に説明するならば、簡単な一言がある。
あの有名な斬魄刀ガチャで一番の役立たずを引いた男と言えば判るだろうか?
●俺が一角!?
そのことに気が付いた俺は、混乱するよりも先にどうするかを悩んだ。
まず健康体でエネルギッシュな細マッチョ、この時点で恨むことなんかない。
だから悩むべきは、最も使えない斬魄刀と呼ばれる龍紋鬼灯丸をどうするかだった。
「確か本人を映して式神みたいにするんだっけ? ということは俺がルートを変えたら他の能力を持てるのか?」
最初は悩んだ。実に悩んだ。
丁寧に剃っているはずの頭が、本当にハゲるのではないかと思うくらいに悩んだ。
「止め止め、考えるの止め。バカの考え休むに似たりだ。俺にゃあ無理だな」
そして考えるのを止めた。
だってそうだろう?
理屈なんかエライ人にでも聞かなきゃわからない。
それが有効かどうかなんかO悦だか愉悦とかいうスーパー鍛冶屋じゃないと判らないし、それだって最中和尚だかシステム:レイオーだかで決まっていているとしたら、コントロールは難しい。
そんなコネなんかないし、コネを作るために出世する為に斬魄刀を鍛えるなんて本末転倒だ。
「それになんつーかなあ。……別に鬼灯丸が弱かったとは思えねえんだよな」
まだ斬魄刀なんか持てないので、水辺で自分を映しながら考える。
座禅を組んで刀と対話するのではなく、自分自身の姿を睨みながら班目一角と対話する。
もし一角が原作を全部聞いて、己と龍紋鬼灯丸の一件を聞いたらどう思うだろうか?
『はっ! そいつは俺が弱かっただけだ。俺がそれだけ強く成れば問題ないね』
きっとそう答えるのではないだろうか?
実際、自分も似たような考え方をするからだ。
スポーツで体を壊した件だって、自分が全国区並みの強さを持てたために夢中になったから。そして超高校級と呼ばれるほどの強さではなかったからだ。
人生をやり直したとしても……。流石に超高校級と呼ばれるほどの才能を身につけられるとは思わないが、プロで通用するレベルでフィジカルを丹念に鍛えた程度の差だろう。
もし生まれ変わったらあの時の選択をやり直したい……。
そう考える人間は多いと思うが、俺はそこまで器用な人間じゃない。
何度生まれ変わっても同じような選択肢を選ぶだろうし、精々が選択肢までの努力を少しでも積み上げるくらいである。
●俺が一角だ!!
そういう訳で俺は斬魄刀の能力を変えるなんて無駄な努力をするよりも、俺自身が強くなる努力をすることにした。
それで強く成れるのかと思った人は考えて欲しい。
もし剣八が持ったら、鬼灯丸は上位に位置する強い刀に成ってはいないだろうか?
もし藍染が持ったら、他の弱いとされる能力だって強いと言われるのではないだろうか? あのイケ面とイケ声で『おはよう土鯰』なんて言ったら天相だって蹂躙するだろう。
「スッキリした顔してるけど……何か面白い事でも見つけたの?」
「おう。思う事があって一から自分を鍛え直してる所だ」
原作でも良くつるんでいた弓親が話しかけてくる。
最近はずっと河原で睨んでいたのに、突如として体を鍛え始めたら何かを決めたと思うだろう。
そういえば原作とやや違うところがあるが、コイツが微妙に違う。
原作よりも年少なせいか、何か妙に色っぽく見える。少年が青年に変わる間の中性的な雰囲気というやつだろうか? これでヤマジュン……じゃなくて福山潤ボイスである。俺にそのケがあったら危ない所だった。
「機会があったら護庭十三隊にでも志願しようかと思ってよ」
「射場さんみたいに? 止めないけど先に霊術院に行った方が良いと思うけどね」
俺らは二人以外でもつるんで、愚連隊みたいなことをやっている。
その中でも射場さんはグレてて知り合いだった。あと阿近とかもだな。
その射場さんは親への反発でグレてらしいが、突如真面目に成って死神になった。
元から霊術院には顔を出していたので、アッサリ十三隊に行ったらしい。……いま思えば、親御さんが病気になったのだろう。
「学院? 面倒くせえが……。強くなるのに必要ならそいつも悪くないかもな」
「へえ。珍しいね。一角が勉強しようだなんて。特に鬼道とか興味なさそうだったのに」
目を丸くする弓親に俺は頭を振って見せる。
別に勉強が嫌いなわけではない。頭を使うよりも体を鍛えている方が性に合ってるし、色々と鍛えたいことが多いからだ。学問なんぞに時間を費やすくらいなら、その数分の一でも訓練なり実戦に充てたいとは思っている。
「知った上で使うかは別だろ? 自分と合っている合ってないとか理解した上で、俺向きの能力を伸ばすさ。それに鍛えるのに向いてる術とかあるかもしんねーだろ?」
「あははは。そういう所一角らしいね。いいよボクも付き合ってあ・げ・る」
そう言って抱き着いてくるのだが、この弓親リリィは怖過ぎる。
危く道を踏み外す前に、引き剥がして素振りを繰り返した。煩悩退散・煩悩退散。俺はBLなんぞに興味はねえ!
●どの力が欲しいか?
という訳でなんとか霊術院の枠に合格した。
正確には学校として入学したというよりは、流魂街から死神を目指す人間が一度は放り込まれる虎の穴的な存在としてだが。
「ひとまず基本は全部覚えとくか。まあ鬼道なんざ使うこたあないだろうが」
斬・拳・走・鬼。そして鬼道は破道・縛道・回道に分化する。
斬魄刀の基礎攻撃力も主にこの順で一応は強くなる。まあ直接攻撃系よりも鬼道系・概念系の方がハマると強いのだろうが。
生憎と器用な生き方はしていない。
最初から鬼道系とかにする気はサラサラない。学院で費やす訓練もかなり絞って覚えていく予定だ。
まず鬼道は薬学を中心に回道をほんの少し。
原作でも鬼灯丸の柄尻に薬を入れて管理していたし、購入するよりも自分で覚えた方が便利ではある。回道に関しても止血だとか負傷で起きるペナルティを軽減する自己麻痺系の術だけ覚えればよいだろう。破道と縛道に至っては訓練方法や注意事項だけ倣って後は適当に聞き流した。
要するに鬼道に関しては、霊圧を上げる・発散する手段の一環として覚えたという訳だ。
自分自身を強くする。鬼灯丸を強くするという命題に関して、その答えは自分の中に合った。
『瞬閧』
あの夜一さんと砕蜂が使う格闘強化秘術である。
もちろん自分が覚えられるとは露とも思ってはいないが、参考にして霊圧を強化する訓練手段として取り入れたのだ。
食わず嫌いは良くない。
斬・拳・走・鬼を最低限覚えた後で、自分=霊圧を強化するために妥協をしないだけだ。苦手な部類である鬼道に関しても、時間を取られ過ぎない程度に頑張らねばなるまい。
「それでも時間が足りねえなあ。走術も捨てるか」
何も瞬歩を覚えて高速移動する必要なんてない。
踏み込みを強化し、勢いを上乗せする。あるいは崩れた態勢からのリカバリー手段として走術を覚えるのだ。
戦いにおいて自分が常に全力を出せるはずがない。
同時に体のキレが悪い者が、全力を出せるはずもない。
それなりに鍛えておけば、戦いで困ることもなくなるだろう。走術に関して言えば自分の勢を殺さず、むしろ勢いを利用して強化する。その為に覚えようと思う。
後は斬術を基本として、拳術は体を鍛える一環として。
そして斬撃を強化する反動として利用することにした。
瞬閧は使えないだろうと諦めたが、他を利用してはならないという理由はない。
斬撃と拳打を組み合わせて強打し、斬撃と疾走を組み合わせて勢いを利用する。もちろん俺に才能があるなら鬼道だって使ったさ。
そんな流派があるかは別にして、この世界は特殊能力だの特殊な術が開発できる世界である。
斬・拳・走・鬼を併用して剣術として強くなる戦闘方法があっても良いのだと思う事にした。自分を鍛える手段はいくつあっても良いじゃないか。
●力が欲しいか?
学問も多少はやらされたのだが、そこで他愛ない事実に気が付いた。
鬼灯という植物は毒草と薬草としての機能があるのだそうだ。主に痛みを和らげる薬や漢方なので、毒も神経毒として薬に取り込むのだろう。
そんな他愛ないことを適当に覚えたころ。奇妙な声が聞こえる事が度々あった。
あまりにも使い古された言葉であり、ブリーチが流行ったころにはその言葉が乗るARMSは漫画としては古典になってしまったこともあって、自己願望から来る幻聴かと思ったくらいだ。
『欲シイカ?』
『力が欲しいカ?』
段々と近づいてくる声。
何度目かになると流石に俺の頭でも理解できた。
待望の斬魄刀と対話である。
「そりゃ欲しいがな。俺がまず欲しいのは自分が強くなることだ。人様の力を借りて強くなっても仕方ねえんだ。強くなるのに近道なんてねーだろ?」
一角の卍解が脆かった理由として、ファンの間では幾つか考察がされていた。
いわく、隠していて鍛えていなかったから。
いわく、本当の名前ではなく仮の名前を教えてもらっていた。
いわく、壊れてから第二段階に移行する。
いわく、単に説明書を読まずに機械を壊すかのようである。
いずれにせよ、一角が弱かった。斬魄刀の能力を引き出せてなかった。使いこなしていなかったという事だろう。
「しかしよ……。てめえナニモンだ?」
鬼灯丸じゃないのか?
そう思ってしまうような違和感がそこに存在した。闇夜の中に赤い目と巨大な闇がそこにあった。
狛村隊長の明王ほどじゃないが、デカクてゴツイのだ。しかも装甲でもあるのか太ましい。
まるでワタルかグランゾートの世界の魔神であるかのようだ。セリフも相まってARMSのジャバウオックを思い起こさせる。
『カ・カ・カ! 良い答えだ!』
そいつは俺の問いには答えず大笑いをしやがった。
赤い瞳が揺れるのだが、その眼は炎の魔神のようであり龍のようでもあった。
そういえば鬼灯のホホとは、火。
そして例えの一つとして、ヤマタノオロチの眼が鬼灯の様であったという。
『確かに強くなるのに近道などない!』
「こいつ……人の話を聞いちゃいねえ」
あ、こいつ俺だわ。
そう思った瞬間である。話半分に聞きながら、自分に興味がある所だけを抜き出すカクテルパーティ効果の申し子。
『だがあえて問おう』
そいつの姿が一回り小さく成り、ロボットじみた魔神から鎧武者程度のサイズになる。
良く見ればガワも鎧ではなく、相手の姿が見極められていないだけらしい。もう少し理解し合えれば、原作のあの姿になるのだろうか?
『貴様ならばこの中から何を選ぶ!?』
「だから今自分を鍛えてる最中の奴に、能力選ばせんなつーの!」
そいつが出したのは、無数の武器だった。
そこには名刀があった。巨大な剣があり、燃える刀がある。
そこには槍があった。薙刀に長巻に三尖刀までありがる。
そこには斧があった。叩き割る大振りな刃、自らも傷つけそうな両刃、あるいは山刀のような肉厚な刃だ。
ああ、これを突き詰めれば竜紋鬼灯丸のあの姿になるのではないだろうか?
もし状況に合わせて使うと言えば、原作で見たあの三節棍になるのではないかと思った。卍解に至れば姿だけは斬魄刀屈指のオサレと呼ばれるあの姿になるのだろう。
もしかしなくとも、ここで正解を選んで原作を短縮すれば……。
一足先に強くなって、原作よりも強く成れるのではないだろうか?
時間は有限だし、使いこなしていないのが問題ならば、あるいは卍解を鍛えていないから問題であるならば今からショートカットすれば強く成れる?
一瞬だけそう思ったのだが……。
やはり俺は自分を曲げられないらしい。
「だからよ。武装は手足の延長つーだろ? 俺はもっと強くなってから選びてーんだよ。俺はまだ……自分がどうすれば強くなるか迷ってんだからさ」
斬・拳・走・鬼。それらを用いて自分を鍛える。
まだ道半ばであるし、本当に可能かどうかすら分からない。
それこそ鬼灯丸には先ほどの姿で俺とリンクし、黒縄天譴明王のごとく自己修復した方が強いかもしれないくらいだ。ワタルが竜神丸に乗るみたいな感じで『鬼灯丸!』とか格好良くね?
しかし。
しかし現実は残酷である。
中途半端な答えを良しとしなかったからか、あるいは心のどこかで既に選択してしまっていたのか……。
鬼灯丸は一つの能力を俺に示したのである。
『そうか。強く成りたければ呼ぶがいい。我が名は龍紋……』
「え? ちょっと聞こえねー。つーかまだ決めてねーよ! ワンモア・プリーズ!」
そこにあったのは刀身に龍の紋様が描かれた一本の刀であった。
三節棍どこ?
ていうか鬼灯丸って名乗ってねーじゃねえか!
……ちなみに解号も良く理解できなかったので、探し出すまでかなりかかった。チクショウ。
まあ全力で俺のせいだから仕方ないけどな。
「そっか……。俺は健康な体が欲しかったんだよな」
という訳で一角の話を思いついたので書いてみました。
今回は導入と能力説明会、次回は戦闘回になります。
良くある転生物ですが、不健康な死に方したので健康な体で暴れるだけで嬉しい。
一角も好みのキャラだったので問題ないという感じの性格になっております。
というかどうやったらハズレ能力強化できるか考えて……。
「あれ? 一角だったら小難しい能力欲しがらないよね。というか時間を巻き戻しても同じ決断するよな」
と思ったのがキッカケでもあります。まあ鬼灯丸を剣ちゃんが使えば普通に強いしね。というのもあり、一角が卍解で戦い慣れてないだけだと思う尾もありますが(あそこから強くなる可能性もありますが)。
斬魄刀『龍紋』
龍紋鬼灯丸の異なる姿。
自己強化能力が先に来て、三節棍とかは後の強化になる。
解号:燃え上がれ!
始解能力:
徐々に体力や霊圧が強化されていく。
テンションが限界に達した所で肉体強化は止まるが、そこから霊圧が一気に増える。
ただし卍解の霊圧上昇よりも、霊圧の上昇値が低く抑えられ、代わりに肉体も強化されているのが特徴。これは転生者が生前に体を壊したことで、どこか強い体が欲しいと持っていたことも影響しているかもしれない。
一言で言うと「俺自身が剣八になる能力だ」