転生したらハズレ斬魄刀の使い手だった件【完】   作:ノイラーテム

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空座決戦:後編

●見切り

 俺が負傷退席から回復して復帰するまでの間に、状況はドンドン進行していく。

基本的には原作通りで、こちらのメンバーが重傷化していない分だけ僅かに良好だ。

 

僅かに。その表現が我ながら笑えて来る。

No1~3と相対する戦いはバックアップが居るのが大きく、負傷者も即回収。特にバラガン戦は鬼道での表面防御を雛森たちが思い付いた事で、皮一枚・二枚分ながら安心して見ていられた。

 

「だが……こっからだよな」

 仮面の軍勢が応援に駆け付け、十刃全てが倒れてなお藍染は余裕を崩さない。

これから始まるフルボッコ・タイムが、実は茶番でしたとか、逆にフルボッコにされるだとか知っていると苦笑しか出なかった。

 

「一角、もう大丈夫なの?」

「ああ。弓親のお陰でな。帰ったら酒でも奢るわ」

 ここで卍解して参戦することに意味はない。

藍染なら簡単に対処するだろうし、弓親が瑠璃色孔雀を見せた代償にも成りはしないだろう。

 

俺のプライドを守るためにだなんて、安い決意過ぎるだろう。

やはり俺が卍解するとしたら、クインシー戦で誰よりも早く実行すべきなのだ。例えば原作で未知の敵に対して解放した、雀部副隊長の様に。

 

だが、それはそれとして出番がないわけじゃない。

原作よりも一護が温まっていない。時間なり犠牲なりがもう少し足りないのだろう。原作に無いその時間を稼ぐのだとしたら、俺以外に居ないだろう。

 

(さてと。そろそろかな。頼むぜ雛森ちゃんよお)

 懐から取り出したソレは、先ほどと変わらない筈だった。

MPゲージが減っているがそこから止まっている。接近戦が始まると予想された時点で見守る体勢に移行していると思うので……。おそらくは縛道でのブロックなり、回道での治療の為に控えているのだろう。

 

そう、ここまでは……だ。

 

俺はその時に備えて、解放を一つ引っ込め斬魄刀を通常時の長さに戻した。

何度も振るってきたサイズ。長さも大きさもその触感さえも、手の延長の様に良く理解していた。理想を言えば無解放なら何万回か経験が増えるが、そちらでは流石に威力が足らないのでしょうがない。

 

「……っ!? みんな……」

「始まりやがったか! どいてな一護!!」

 味方のラッシュが始まったのに、一護が驚いた顔をしている。

原作を見ていればその理由が判るが……。この時の俺には、もう一つ確信があった。

 

俺は瞬歩というよりは霊圧を込めたジャンプで飛び込むと、大上段で構えて雛森の姿をした存在に切り掛かる!

 

「ちょっ! 一角。何してんの!」

「……」

「雛森だったら避けられねえよ! なあ、藍染!」

 乱菊が驚いている僅かな間に、俺は振り切ったはずの刃を跳ね上げる。

袈裟斬りから小さな弧を描いて振り上げられる逆袈裟は、Vの字を描いて雛森の姿に吸い込まれるはずだった。

 

先ほどまで手にしていなかったはずの斬魄刀で防がなければの話だ。

 

「……どうして判ったのかな?」

「前と同じだよ。歪めた幻影でも完全催眠でもこの際、大した差はねえ!」

「馬鹿な……それじゃあこの藍染は一体……」

 他のメンバーは原作通り驚き、重症状態の雛森保護に忙しいので無視する。

差があるとしたら、興味深そうに首を傾げる藍染と、見抜く方法を探り始めている総隊長のガン付けくらいだ。

 

「その対策は十分にしたつもりなのだがね。少しだけ興味が出て来たよ」

 藍染は少しだけ悩んだフリをして、チラリとこちらに目を向けて刀を構えた。

おそらくは話を聞いてやるから語れ、無視するなら鬼道で範囲攻撃に巻き込むと言った所だろう。判ったから脅すなよ。

 

「麻雀で俺はイカサマしなかったけど、実は盲牌も得意なんだよな。アレって周囲を探る訓練に丁度良いだろ?」

 盲牌というのは麻雀で牌の裏側を触って確かめる技だ。

それだけなら手品みたいなものだが、次に自分が手に入れる牌を予約するように触れて確認すれば、次に何が来るかを予想できるイカサマになる。

 

「後はあんたならどうするかを考えて決め打ちしただけだな。鏡花水月は条件付きで五感以外も誤魔化せるんだろ?」

 鏡花水月は五感を支配下に置く。

だが口にしていないだけで、実は霊圧なんかも誤魔化せるはずだ。その為には相手の事を良く知っていたり、その差を他の人間も知っているという常識を覆さねばならない。

 

「なるほど。雛森君の裏切りを警戒せずに、ワザワザ戦場に連れ込んだのはその為か」

「千差万別の状態で相手を探すよりもよほど確実だからな。あんただって苦労して失敗するよりも、確実に成功する相手の方が良いはずだ」

 さて、条件さえそろえば霊圧なんかも誤魔化せる。

位置情報や移動ルートなんかも、瞬歩や疑似転移で誤魔化せる距離なら何とかなるだろう。

 

だが混戦しており、お互いに必死な条件で可能な方法は?

しかもこちらは完全催眠対策をしている可能性があるのだ。その対策している相手を確実に黙すには、どうしたらよいのか?

 

その方法は、チェスで言うキャスリングが確実だろう。データと位置の完全入れ替え。

何もかも良く知っている相手なんか都合よく存在しないが、雛森のように手塩にかけて育てた相手ならば別だ。この場合は雛森を良く知っているというよりは、自分が誤魔化せる範囲の霊圧情報になるように育て上げたのだ。

 

良く似た人物がもう一人に変身するよりも、二人で同じ別人に変装した方が見分け難いという手法によく似ている。

 

「なっ! 斑目……てめえまさか雛森を囮に!」

「そう言わんでください。藍染風に言うならその方が無実は証明できますし……ちゃんと対策くらいはしてますから」

「形代人形とは……。今時古い手法を使うものだ」

 俺が取り出したのは雛森のマーカーだ。

雛森が監視を拒んでいない以上、手元のマーカーが彼女の減りゆく体力を示している。そしてそこまで雛森が覚悟しているのである(藍染が自分を有効活用することも含めて)。

 

ならば雛森の受けたダメージを、肩代わりする人形を用意しても良いだろう?

古い呪術だから人形を傷つけると、雛森が簡単にケガするけどな。だから人形そのものは此処にはない。

 

「呪術自体はマッド……じゃねえや涅隊長が見つけてくれましたよ。それが使えるというヒントはあった。鬼道はもともと死神の使う魔法みたいな技術の事じゃない」

「そう。かつて最古の死神たちがその手法を確立するまで。鬼道とは力を持つ幽霊・幽鬼の類を操る呪術という意味だった」

 鬼が力持ちというのは近年の話だ。

千年前、さらにその千年前には鬼とは幽霊などの霊的存在の事を示していた。

 

つまり、鬼道というのは死神の力を有効に使って術を放つという物なのだ。

鬼道を応用することで、形代人形を実際に使えるようにするのは可能だろう。だいたい、義魂技術・義骸技術ってものもあるしな。

 

もっとも仮に成立しなかったとしても、体力ゲージが減り切るまでに介入すればいい。

原作で死ななかった雛森を助ける方法が、僅かに増える程度でも意味はあるだろう。そういう意味で、死ぬ予定の人間に術を掛けるよりは確実なのである。

 

「面白いね。だからといって二回目があるとでも?」

「それはやってみないと判らねえだろ? それと知ってるか? 古い死神の中には未知存在の名前を付けて、管理とかを始めた連中が居るらしいぜ? 俺らが出来ても良いだろうよ」

 話は終わりだとばかりに藍染が構えると、俺も構えて相対した。

きっと恐怖よりも笑顔なんだろうなーと自覚しつつ、もう少し時間を稼ぐために剣術合戦に持ち込む。

 

「分類が終わるまで私が付き合う義理はないな」

「棒振りごっこにつき合ってくれたら、菓子のオマケくらいは出るかもだぜ!」

 藍染にソレへ付き合う必要は無い。

だが何となく、こいつは付き合ってくれるような気がした。そもそも剣術指南って地位は原作に無い。藍染が興味を覚え研究を開発させたかったくらいだろう。

 

だから奴自身ではなく、移動しているであろう場所に向けて振り抜く。

三連撃……。ただし全く同じ場所、俺が藍染ならばこう構えているという場所に向けて寸分狂いない軌道で斬撃を浴びせた。

 

「っ! まさか君如きに見抜かれるとは思わなかったな」

「俺だったら鏡花水月を使った剣術を磨くぜ。例え直接戦闘に向かなくてもね。それが斬術って奴だろう?」

 ガチンと奇妙な音がして、奴の斬撃を跳ね返しつつ逆撃。

三度目の斬撃が無防備になった場所に吸い込まれるはずだったが、小さな音がして体を背けたのが判る。

 

そして元の位置には誰もおらず、刃を向けた先に奴が居た。

そこが俺を葬って次の場所に移動し易いポイントだからだ。あえて言うならば、似たような場所よりも俺を総隊長への盾にし易いってのもあるかもしれない。

 

「俺なら最低二つは技を作って、いつでも使えるようにするね。一つ目は今と同じ攻撃用。もう一つは切り込んできた奴を切り刻むために」

「正解だ。褒美を渡せないのが残念だが……刃を延ばすなり可能ならば卍解しないのかね?」

 俺も奴も冷や汗を浮かべているが、理由は全く違う。

俺は一歩間違えば死ぬという事であり、奴は戯言につき合ってノーミス・クリアを逃すという程度に過ぎない。霊圧で防御すれば無傷なのに、剣術ごっこにつき合ったせいでカスリ傷がついてしまう程度の事だった。

 

「生憎と俺が完全に把握できるのはこの状態なんだ。間合いもこのくれえだな」

 例え洗脳されても間違う事のないのは龍紋を解いた状態までだ。

刃を伸ばしたり、卍解すれば騙されるどころか反撃で斬られてしまう。藍染の斬術は天井に届いているのだから。

 

だから始解だけでカスリ傷をつけるしかない。だが、それでいい。

その程度の傷であっても、時間を稼ぎつつダメージを与えられるなら意味があるだろう。カスリ傷を何万回と繰り返せば倒せるかもしれねえだろ?

 

「なかなか興味深かったが、まあそれもタカが知れた。他にも予約が控えている。座興はこれまでだ」

「そうかよ! 俺はまだそのつもりだぜ!」

 基本的に藍染の剣術は隙を持たぬ無拍子という技、これとスウェー移動の組み合わせだ。

催眠やその下位である幻覚と併用し、自分の姿を誤魔化しながら隙の無い斬撃を浴びせる。余計に振り被らなくとも、相手が油断している所に叩き込めばいい。

 

ゆえに戦いの初動は三つ。

何もない場所に幻影を残して移動しながら斬りつけての攻撃。

斬りつけて来た相手の攻撃をスウェーでかわし、斬りつけて攻撃。

最期にその場で留まり、催眠や鬼道を併用することだ!

 

「はっ!」

「君は勘違いをしている。予定を決めるのは私だ。それと……」

 僅かに動いた気配。

俺を斬るためにどうしたか? それとも元の位置に戻った? いいや移動はしていない!

 

おそらくは刃を立ててブロックしつつ、反撃で鬼道。

そう思って強打を行い、鏡花水月を跳ね飛ばしに掛かった!

 

「久しぶりの痛みだな。やはり素手で掴むのは無茶があったか」

「な……に?」

 気が付けば手で刃を握り込まれていた。

猛烈な霊圧防御で傷もついていない。痛みがあったとしてせいぜい衝撃の分だけだ。それも先ほどと違って、ワザと受けるつもりなのでプライドには瑕がつかない。

 

問題なのはどうして右手が空いているのか。

そして……どうして奴が左手に鏡花水月を構えているのかだった……これではまるで……。

 

「君に興味を覚えたのは、同じ技に至ったからだよ。私はそこで止めるのが効率良いと規定してしまったが、君は色々な技を生み出し続けた。選ばなかった道の先を見たようで面白かったよ」

「チクショウ……そういうことか。当然……想定すべきだった……な」

「一角!」

 右手の刀を左手に持ち替える技。

俺は曲芸の様にジャグリングしたが、藍染は鏡花水月で代用した。

 

斬魄刀が直撃すればそれだけで勝てる。

そんな戦場では俺もこれ一つで済ませることもあった。もっと素質のある奴ならば同じ術理を覚えていてもおかしくはない。

 

「ぬかった……ぜ」

「一角。そこで寝ておれ。おぬしの見切りはとくと見せてもらった」

「ならばこの茶番につき合った甲斐があるというもの。そろそろ本番といこうか」

 急速に意識を失う俺の脳裏に、ビリビリと震えるような霊圧が感じられる。

 

おそらくは総隊長が刀を抜き、他の連中を下げつつ前に出たのだろう。

 

その後は殆ど原作と同じ流れであったが、気を失う直前、原作よりも楽しそうな藍染を見たような気がした。

それなりに努力したはずなのに、刀を振るえば霊圧や霊圧だけで勝利して来た奴にとって、努力した甲斐があったと笑ったのだろう。

 

原作よりもマシな未来を目指してみたものの、ソレが報酬と言うのはいささか皮肉が過ぎるような気がした……。

 




 という訳で破面編終了。

藍染さんに挑んだものの『鏡花水月を見切った』という結末以外に得るものなく負けてしまいました。
まあレベル違い過ぎてしょうがないのでしょうが……。
原作は一護がいろいろ言ってましたが、この話では『見切られた以上は使う必要がない』という理由で使わなくなります。
対策されてる可能性があるのにやる必要は無い普通に戦えば勝てるんだし……という感じですかね。

●雛森のデータ
 原作知識だけでは不安だったので、理論付けの為です。
リアルタイムで更新される情報なら、鏡花水月で誤魔化せません。
五感以外にも霊圧も誤魔化せるとして、その相手は限られているはず。
雛森ちゃんを使ったのは、日番谷隊長を煽る以外にも理由はあったのかな?
と適当な理由を付けてみた感じになります。

形代人形とかは呪術物の小説・漫画などから適当に。
今頃技術開発室では、並べた幾つかの試験体の内、雛森人形が盛大に壊れてるんだろうなあと。
義骸とコピーした義魂とかの費用考えたら効率は悪そうな技術だと思います。

●藍染の剣術
 原作でやってる消えながら斬撃とかに理屈をつけてみました。
最期に右手から左手に持ち替える斬撃だけオリジナル。

一角も使える技を使えない筈はない。
むしろ、同じ技を思い付いたから興味を覚えて剣術指南に推薦してみた。
一角が剣腕で上に立ったものの、霊圧問題で勝てずに努力してるのを楽しく見てた感じですね。
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