転生したらハズレ斬魄刀の使い手だった件【完】 作:ノイラーテム
●差異が引き起こす大きな流れ
藍染との戦いが終わった後、原作との差異が少しだけ生まれた。
大きな流れが2つと、それに付随する小さな流れが幾つか。
その流れが何かは追々説明するとして……俺は絶賛水没中だった。
他の重傷者ともども薬液の筒に放り込まれている。生態科学とかロボ系のアニメに出てくる光景を思い出すぜ。
なんでかって?
そりゃこういう時に頼れる織姫ちゃんが、とある理由で消耗してたからだな。
重傷ではあるが危険水域に無い俺たちはマッドの所で薬液漬けなわけだ。
もうちょっとしたら四番隊に連れて行ってもらえるのだと信じたい。連れてってもらえるよな!? 俺自身が改造されたりしねーよな!?
「それで、そっちは問題ないんだな?」
『うん。今のところは平穏無事。雑多な連中はこないだの一件で自分を保てなくなってるし、狂騒した奴らは魂葬したものね』
弓親から現世の話を聞きつつ、完現術にはまだ時間があることを理解した。
自分の目で見たわけでもないが、いきなり『月島さんのお陰でね』なんて言わないだけ良いと思っておく。
『という訳で今はゆっくり傷を治してなよ。話したりするだけなら今でもできるみたいだしね』
「おう。こっちは暇だしな。何かあったら相談には乗るぜ。んじゃ」
「……」
こうして通信を切るわけだが、隣にいる連中からの目線が気になる。
随分と熱く灼熱の視線が弓親に注がれていた。
「なんだ。てめえらそんなに弓親の事が気に成んのか? 飯の席くらいは紹介してやれるが」
「アホか! あたしらのアヨンをやった奴と一緒に飯が食えるか!」
「……どちらかといえば苦手」
「好みでいえば犬の隊長さんの方がまだマシかねえ。逞しくて良い男じゃないか」
薬液に使ってるお仲間の中に、従属官三人娘が居る。
原作では織姫に治療されて慣れ合わずに去って行ったのだと思うが、彼女が消耗していたおかげでこうなっちまった訳だな。
なお同じ様な筒に狛村隊長も収容されており、お互いにマッパなので見舞いに来た女性陣に男見物されると非常にツライ。
「てめーら何を呑気に飯だの合コンの話をしてんだよ!」
「合コンかは別にして、ハリベル様を交えて色々交渉しないといけないのは確かだけどね」
「エネルギー補給できるかはともかくとして、食事そのものには興味があるわね」
三人娘の戯言は置いておいて、ハリベル達は捕虜というより残党として有条件降伏した形だ。
即時、滅殺せよとの意見もあったのだが上の方から(零番隊か?)ストップが掛かったのもあって、一時的に処分待ちとのことだ。
しかしこの処置は継続し、虚圏を穏健派に統治させたいという思惑で固まっていた。
世界のバランス問題もあるのだろうが……。
「度し難い愚図どもだネ。次の脅威に対するために、少しでも資料に成りそうなモノはかき集めておくんだヨ」
という方便をマッドが口にした為である。
半信半疑の連中が多い中、原作を知っている俺としては、その頭脳がどういう理屈で結論を導き出したのかとても気になる。
冒頭で述べた、大きな流れの一つとはこの話に関連するのだ。
「しかし本当にク……アレが再起するのでしょうか?」
「そんなことも判らないのカネ? やれやれ。一から説明するのも面倒だ。斑目指南、説明してやりたまえ」
「え、俺ですか?」
技術開発局では既に
俺は所属が違うのになあと思いつつ、薬液のある場所で会議されてるので逃げられない。
というかいきなり振られても困るんだが……。
「阿近。涅隊長の検体情報を並べ直してみろ。明らかな偏りが出るはずだ」
「お? こいつは……」
俺がマッドに見せてもらった情報は、血装関連だけなので逆算は難しくない。
これに原作知識を重ねて判断するピースを増やすと、見えてくる物がある。
「この分布を見てみろ」
「これ、おかしいですね。近年になるほど技術が洗練されてるのに……総数がおかしい?」
マッドが下っ端に金を掴ませて人体実験したのは、おそらく二百年前の話だろう。時期的にその辺の理由危険視されて蛆虫の巣送りになり、浦原が出獄させたのか?
「涅隊長は石田の祖父で最後だと思っていた。実際には石田と……一護が居たわけだが、ちょいと技術が洗練され過ぎてるよな? あいつら二人が強いのは別にして」
技術が後年になるほど洗練されていくこと自体は奇妙ではない。
しかし個人の技量ではなく、全体の技術レベルの向上にはそれなりの母数が必要なのだ。
絶滅しつつあったとしても、それなりの数が居たはずだ。
現に途中までの分布グラフは正常である。技術レベルもそれを裏付けている。だが不思議なことに、近年になってパタリと死んだ
公式記録ならば穴があるだろう。実際にマッドは金を掴ませている。
だが、今見比べている資料はそのマッドが調べたデータそのものなのだ。限りなく検体を集めたはずなのにコレでは、どこかおかしいと思わざるを得ない。
「そういえば石田と虚圏で一緒になったらしいですが、聞いてみたので?」
「その辺りに抜かりはないヨ。ちゃんと聞き出しているさ。……石田雨竜の母を始めとしてあちこちで一斉に死んだそうじゃないか。死神の仕業だと思っていたようダガネ」
原作における聖別を知らずとも、マッドはそこに辿り着いた。
おそらくは石田が見せた
どうして滅びつつある者がそんなことをするのか?
マッドの回答は、死神を倒し三界を制覇することなのだと結び付けたようだ。現時点では可能性に過ぎないが、原作よりもよほど早い準備だと言えよう。
●物事の白と黒、呪術の白と黒
ようやく重症状態を脱し、四番隊への移送が確定化した。
しかしその直前、ある程度は動けるようになった頃に尋ねて来た者が居る。
「条件次第で以前に話していた件を教えても良いぞ。奥義ではなくあくまで障りだがな」
「それだけありゃあ十分ですよ。あの時の見切りに関してですね?」
砕蜂隊長と交換条件で色々教え合うことになった。
マッドの提言で隊長格もそれぞれ修行することになり、俺が鏡花水月を見切ったことで、少し見方を変えてくれたらしい。
代わりに瞬閧とはいわないが、鬼道を練り合わせる初歩を教えてくれることになったのだ。
……夜一も使う技であり最初はそこまでするか悩んだそうだが、京楽隊長が早々と見切りを覚えていたので、対抗意識か何かで踏み切ったらしい。
「最初は狭くていいんです。自分の周囲を完全に把握しつつ。相手の動きを予想してください」
「そのくらいは判っている! それで判らないから相談に来ているのではないか!」
砕蜂は知っての通りクールに見えて湯沸かし器な性格をしている。
これでも瞬間。と付きそうな昔よりは沸騰しなくなっているのだと思われた。
「自分ならこう動くってのは判りますよね? なら特定の相手の行動を徹底的に想像するんです。夜一さんと浦原さんの……」
「夜一さまだ! ……だが言いたいことは判った。夜一さまがどう動くか、人の御姿でならどう動かれるか。猫の姿でならばと想像するのだな」
俺の言葉を遮って早口でまくしたてる。
自分の中の妄想上の夜一との特訓を思い浮かべているのだろうが……鼻息荒く感情が昂っているようだ。ナニを想像しているんだか。
百合百合しくて尊さが溢れてきそうになるが、嫌いな相手である浦原の相手の特訓も思い浮かべてくださいねと忠告しておいた。
「それが終わったら後は世界に色を付けます。空気の形が見えはしませんが、地面に現れる陽炎で何となく判ります。花粉症の奴なら山から流れる風も把握するでしょうね」
「判断材料を増やすのだったか……京楽の奴が隠れ鬼とやらでしていたな」
陽炎現象が起きる時、暖かな空気が立ち昇る姿が見えるのだが……。
実はそこまでのレベルに成らずとも、影を見れば舞い上がる塵で見える時がある。最初は見逃すことがあっても、見慣れるとこの影を簡単に見つけられるようになる。花粉症の人間が山の方を見て睨むのも、嫌悪感もあるが何となく空気の揺らぎが判るからだ。
「そうやって他人の行動に色を付け、世界の動きに色を付けて行けば判る様に成ります。まあ俺には4mが精々ですがね」
つーかそれで十分。
刀の間合いだけでも完全に把握し、相手が何処に移動しても切れるのであれば白兵屋の俺としては問題ないと言える。
そんな感じで完全催眠の見切り方を教える代わりに、鬼道の混ぜ方を習った。
初歩でしかないがその初歩すら知らなかった俺としては物凄い成果があったと言えるだろう。ようやく転生していた時に考えた妄想が、コネを得る段階まで進んだと言える。
(これで少しは火力が上がるかな? まあここまでやっても陛下を切れる気はしねーけど)
問題なのは陛下の持つ全知全能は進化する事。
今の段階までなら切れるかもしれない。何処に移動しても切れるのであれば、未来予知で避けようと当てる事が可能なので『回避』は無効化できるからだ。
問題が生じるのはそこからで、霊圧防御すれば防げるのであれば弾かれて終わりである。
ましてカウンターすれば攻撃が中断されて運命が変わる場合、攻撃が防がれてしまう恐ろしい防御法なのだ。これが進化して斬魄刀を折ったりできるのだからたまらない。
(その前段階で何とかするのが一番なんだが。王様が倒れる主な原因は毒殺……
正直な話、藍染以上に対処が思いつかない。
あえていうなら
そんな出口の見えないことを考えていた時、俺よりも数日早くラボを出立する人間が居た。
「狛村隊長。その節は申し訳ありません。本当のことを言えば東仙隊長も助けたかったのですが」
「言うな。今にして思えば東仙は断罪されることを望んでいたと思う」
正確にはソウル・ソサエティに蔓延る悪を処分し、その後に断罪される……だろうか?
小説に関しては読んでは居ないので良く判らない。俺に判るのは例え自分の正義が通されたとしても、その正義が自分自身を許さないだろうという高潔さくらいだ。
「今は一人だけでも助けられた事を喜ぼうではないか」
「そうですね。準備の結果が無駄にならなくて済んだと阿近たちも言ってましたよ」
苦笑しながらとある設備を見る。
それが義骸技術や義魂技術を使ったとある呪術だ。
それは雛森を監視しイザとなれば助け……裏切ったら呪殺するものだった。
古来の呪術は同じ物を白と黒で使い分けることができる。
雛森に付けられた傷を人形に移すことができるように、形代人形に付けた傷を雛森に移すことができるのだ。
「という訳で……今のところ、問題は山積してます。藍染隊長の考えた計画の中で、俺らに使えるものがあれば教えてくださるとありがたいんですが」
さて、形代人形を使えば呪殺できる。
と言う事は材料や呪物などの条件さえそろえば、雛森以外を呪うために使えると思えないだろうか? 具体的に言うと反乱者に傷がつけられないか、だ。
呪い殺すことが不可能でも、位置情報だけでも把握できれば鏡花水月対策になると、試すだけは試したのだ。その時にデータを取るため、雛森・藍染以外にも形代人形を用意している。
東仙も助けたかったというのは、雛森を助ける予定の方法を応用できなかったからだ。
殺害が速攻で終わったこともあるが、確実に死なせるように配慮した霊圧の威力が強過ぎて助けられなかったのだ。生きていれば破面化した東仙の力は
「ええよ。ボクの知っとる内容でええなら何でも聞いてえな」
「お願いしますよ」
光り輝くその数字は、義魂ナンバー特103。
モッド・ソウルに偽装され、本体の修復を待つ一人の隊長であった……。
大きな流れの2つ目はこの男の生存。
呪術の応用でギリギリ助かった所を、後から合流した織姫が限界まで力を使って助けたのだ(ひより含む)。
その魂は義魂の形で保存され、表向きは死んだ事になっている文字通りの隠し珠である!
という訳で完現術編をスルーして修業編です。
原作とは違う大きな変化が二つ置き、それに付随して流れが変わっています。
●大きな流れ
1:市丸がギリギリ助かった。
ひより他の致命傷者の治療含めて織姫消耗してダウン。
2:マユリがクインシーの事に気が付いた。
以前からの疑い含め、何がない会話の中で幾つか情報を採取。
何者かがクインシー復興の為に動いていると気が付いたようです。
●小さな流れ
1:三人娘とハリベルが、有条件付き降伏
敗残兵をまとめて組織立って撤退、当面の対立を避ける。
場合によっては戦力供出。という流れで決着がつきます。
織姫ちゃんが治療できなかったかったから仕方ないね。
2:クインシーの技術・総数曲線がおかしい
必ずしも霊魂になってソサエティに渡らないが、時期・総数がおかしい。
原作の流れで微妙に判り難かった部分は、聖別の影響だとしました。
その痕跡に気が付き、逆説的にクインシーの組織があると判明したとでっちあげ。
3:一角のコミュが上がった!
鏡花水月を見切って藍染に迫ったことで株が上がりました。
まだまだだが、認めてやろう。という物ですが、マユリの新しい敵問題で変化。
京楽隊長は新しい技、隠れ鬼を体得。
砕蜂はヒントを求めてやって来て無窮瞬閧を思い付くキカッケにしつつ、一角も技術UP。
なお、今の一角の強さは普通の隊長並み。
強い隊長・仮面をつけた弱い隊長格 > 普通の隊長・一角 >弱い隊長格
4:市丸が義魂(義骸?)に隠れて生存!
まだ体はダメと言うか、技術開発局に訪れた他の隊長格が見ても
「こりゃだめだ」と判るが、知っている人が見れば「可能性がある」と判る程度。
という感じになっています。
今は療養空けなのでこの位ですが、次回に本格的な修行と装備調整に成るかと。