転生したらハズレ斬魄刀の使い手だった件【完】   作:ノイラーテム

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修業編:中編

●手段の捨拾選択

 体が動くようになってようやく四番隊の隊舎へ。

特訓始めると怒られるので、妥協案として日課の素振りやランニング以外は鬼道用の霊圧を混ぜる訓練だけ。

 

先に言っておくとそれほど都合の良いことは起こらなかった。

瞬閧とか陰も踏めやしない。もちろんソニックブレードが霊圧攻撃になったりなんて奇跡は起きなかった。期待してたから動けない間に遠距離剣技も考えたんだけどな。

 

「まあ俺も器用な方じゃないし、これで満足しとくか」

 向上と言うか改善されたのが鬼道を混ぜる過程で、霊圧の出し方が良くなった。

鬼道がそこそこ使えるようになり、付随して斬・拳・走がそれぞれマシになった感じだ。

 

まあ新しい鬼道覚えてる余裕なんてないから、前に行ってた体力強化を正式に覚えただけ。この際だが、出力が上がる事や訓練方法が増えた事だけでも良しとしよう。

 

「なんだ阿近。お前が経過観察なんて珍しいな。つーか妙な施術してねえだろうな?」

「んな暇人な事するか。『用意』が整ったと伝えに来ただけだ」

 回復しながら増やせる体力の幅で何ができるかを確かめていた。

今の俺は剣腕だけ飛び抜けていて、他の技術は隊長格以下。霊圧出力が上がったことで、総合して戦闘力は普通の隊長レベルってとこだろうと認識する。

 

そんな中で阿近が面会に来たのだが、もちろん傷の具合を確かめに来たわけではない。

破面たちの処遇が決まり、空いた時間で不自然なくあってもおかしくないタイミングを狙っただけだ。表向きが薬液治療による経過観察と、その診断と言う事になっているに過ぎない。

 

「例の件は?」

「問題ない。本物の義魂丸を経由してリアルタイムで交信する」

 実は生存している市丸の意見を聞く件に関しても、念には念を入れて直接会話しない。

あくまで俺たちは妙な個性の義魂丸と会話し、義魂丸同士で通じる会話を通して市丸と相談するのだ。

 

正直な話、俺は要らない気もするのだが……薬液に浸かってた仲間なのと原作を知っているがゆえに中立的な回答を続けたこともあり、虚側に列席を求められてる感じだ。俺も怪我御問題で特訓できないし、手持無沙汰だったから断る理由ないしな。

 

「しかしここまで徹底する必要があるのか?」

「仕方ねえだろ。何処に耳があるか判らねえって話だしな。……こっちだ」

 こんな面倒くさい手法を取っているのには理由がある。

滅却師(クインシー)の技術に陰に隠れる方法があるからだ。小さくは武装を管理するアイテムポケット程度だが個人も……原作を知ってる俺は国家すらも隠していることを知っていた。

 

陛下の全知全能で見た未来情報まで遮断できるか判らないが、それでもやっておくに越したことはないだろう。

 

そして通された部屋には俺と義魂を繋げたモニターが一つ。

義魂を通して会話が行われて整理されるので、この段階でワザワザ他に人などいない。今頃マッドたちは他の部屋のはずだ。

 

「アランカルの人ら強化するのに可能な事で、ボクがゆうたこと覚えとる?」

「主に戦闘技術、エネルギーの蓄積、能力の先鋭化でしたっけ」

 破面たちと交渉し、条件の一つとして共闘。

不利益の代償として滅却師(クインシー)と戦い得る能力を与える。そんな選択肢もあったが、馬鹿正直に話すわけにもいかない。先に市丸とだけ相談を行うことになっていた。

 

 整理するとだいたい、この案は以下の様になる。

戦闘技術の向上は、破面たちの組み立てが良くなるが戦力そのものは上がらない。

エネルギーの蓄積は、ヤミーやジオ・ヴェガの様にタフな重戦闘型に切り替えが可能になる。

能力の先鋭化は、要するに第二階層解放だ。圧倒的に強くなるが原作で語られてない消耗が予測されていた。

 

「ならボクが良く考えた方がええゆうた理由も判る? まさか自分が担当するとは思わず考えてへんとか」

「それぞれにメリット・デメリットがあるから、よく考えておけってことですよね」

 姿なきはずのモニターから、挑戦的な台詞が聞こえる。

しかしトーンにはそのイメージはなく、あくまで確認でしかないのだろう…… 。

 

●破面という名のサナギ

 当たり前だが、この間まで敵対していた相手を単純に強化するなどナンセンス。

強く成ってもらわないと戦力にならないとしても、選択肢を選ぶのはこちらだ。当然ながら熟考した結果として、ヤバかったらこの強化案そのものが無くなる段取りである。

 

「真っ先に消えるのが戦闘技術っすね。俺らの強みが無くなるので、後日の禍になる」

「せや。ボクらだけが持っとる強みは渡さん方がええ」

 戦闘技術というものは訓練やら戦闘で磨くことができる。

つまり相手からは感謝され難い上に……覚えられるとこちらがハメて一方的に勝つようなことができなくなる。将来を考えれば、一番教えてはならない選択肢だ。

 

相手の続きを待つ方がいいのかもしれないが、多面会話の問題ゆえか返信まで時間が掛かる。

面倒なので、直ぐに反応が判る会話に関しては適当に続けることにした。

 

「エネルギーの蓄積は攻撃力とタフネスだけが増えるので一番無難。しかし……」

滅却師(クインシー)相手ゆうのが難点やね。溜めた霊子ごと吸われかねんわ。正直ナイナイ」

 大して強くならないし強くなるのも個体だけなので一番問題がない。

だが残念なことに、敵は滅却師(クインシー)なのだ。足を遅くする重戦闘形態なんか的にしかならないだろう。

 

となると残るは一つなのだが……。これには物凄い問題が幾つか付属していた。

 

「では能力の先鋭化しかないっすね。問題は今の環境で可能かどうか。次にそんな御大層な力を与えても大丈夫なのか」

「藍染……さんも今の段階で可能やゆうてはったよ。アランカル達はサナギやってゆうてはった。期待通りいかへんかったんで癇癪起こしたようやけど」

 恨み骨髄である市丸も逡巡した後で敬称を付け足した。

今でも五番隊を中心として慕う者が多いとか、仮面の軍勢もそれほど嫌ってるわけでもないというのが何となく察せられる。

 

それはそれとして問題の検討だ。

能力の先鋭化を行って第二階層解放すると劇的に強くなる。滅却師(クインシー)にも勝てるようになるだろうが、強過ぎてしまうのだ。

 

「しかし四番さんがでけたとは意外やったねえ。いや、それも含めての重用やったんかも」

「知っていたかはともかく、藍染隊長のやり口なら狙っていたような気はしますけどね。本当に狙っていた……それが正しい回答であったのであれば色々できることもあるでしょう」

 第二階層解放に関しては一護たちから聞き出したようだ。

霊圧変化で気が付いた事で尋ねたのだろう。ウルキオラが偶然だとか才能で至ったのでなければ……意味不明に思われた原作知識も合わせて解決できるような気がしてきた。

 

「へえ……。おもろいな。キミ、彼の事知らへんかったと思うけど?」

 義魂丸をモニターに接続してるだけなので表情は見えない。

しかしスウっと蛇の様に目が細まったのではないかと思われるトーンが感じられる。できれば時間を変えて反応して欲しいと思ったが今回は即座に返答があった。

 

他の連中も興味がある話題だったのか、それほど時間がかからずに返信が返って来る。

とはいえ今回の話は以前(生前)から疑問に思っていたことなので、それほど躊躇せず話を続けられた。

 

「そいつの事なんか知りませんよ。俺が知ってるのは三人娘。あとはバラガンとかいうのが『老い』を司ってたという言葉だけです。その件で気になって尋ねたら……」

「ああ。三番さんは『犠牲』やったね。その従属官も似たような傾向にある者が多いちゅーことか」

 まず原作では意味不明な分類が存在する。

死の形がどうのことうの、なんか調べたらそれ以前は七つの悪徳であったという。

 

これはただのオサレなのか? それとも単に性格や環境のアーキタイプなのか?

だが、ここに第二階層という単語の条件を代入することで、見えて来る物があった。そしてハリベルが犠牲であり、三人娘は彼女に心酔しているから似たような傾向にあると思われるという一点が大きい。

 

「仮に三人娘も同じく犠牲を司り、単純に目立つから先に確立した。四番……ウルキオラでしたっけ? そいつが後から目覚めたばかりだとするなら、そいつの司るモノ、直近であるがゆえに環境が関係して来るかと」

「あーそうゆう事か、うん。四番さんは『虚無』やね。織姫ちゃんに一番影響されとったわ。納得納得」

 俺が適当に誤魔化しながらしゃべっていると、モニターが分割。

四番という単語にウルキオラという文字が付随した。どうやらマッドが手に入れた情報がこちらに回ってきているらしい(本人とは思えないのでネムかな?)。

 

「勝手に納得しないでくださいよ。まあ今回のは俺も判りますけどね。虚無がキーワードであるなら、どうして自分は虚無なのかずっとなのか、人と知り合って浮き彫りになったんでしょ」

「なるほどやね。アヨンくんは三番さんの為に働きたいゆう犠牲心から。三番さん自体が目覚めてないのは、忠誠心と犠牲は別もんゆうことやろ」

 おそらく司る死の形とか悪徳とかいうのは方向性のことだ。

崩玉で虚としての一度紐つけを失い、サナギとして再構成される。死の形や悪徳に寄ることで、あやふやになった魂を特定のベクトルに進ませる訳だ。第二階層というのは感情と寄り向き合うことで、深度が増したのだろう。

 

この流れに重要なのは斬魄刀と死覇装。

斬魄刀が己を映す鏡であるならば、死覇装は魂の形を破面として固定する物だと思われた。結果から見ればウルキオラだけが第二階層に到達できた理由として、検証サイトか何かでは死覇装の存在が大きいと書いていたような気がする。

 

「ここで重要なのは連中の方向性が犠牲ってことっすよ。他はともかく……話の方向によっては、穏健派の国家を作らせれるんじゃないっすか?」

 三人娘がハリベルの為。

ならばハリベルは獣から進化した破面という種族の王として自覚させれば良い。

 

元からハリベルは後ろ向きな性格をしているし、種族全体の母として自覚するならば進化も容易いだろう。そして何より……女王であるならば、ソウル・ソサエティとの対立は避けるはずなのだ。

 

●交渉と褒章

 マッドとも協議してハリベルに第二階層突破させる方向で話はまとまった。

だが真正直にそんな事をさせられないし、馬鹿でもない。あくまで協力するならばの見返りだし、こちらを出し抜いてしまわないように重しを付けなくてはならない。

 

具体的に言うと情報だけ伝えて逃走されても困るのだ。

レジスタンス化されると面倒だし、味方が増えずに将来の敵だけを増やしかねない。だから国家を成立させて女王として苦渋の判断をさせる必要がある。

 

「それで私たちに話を?」

「ああ。将を射んとすればつーだろ? 進化する情報を渡すにしても、元からできる奴なら損得も少ないって算段だ」

 存在強度の問題で先に薬液プールから出て来た三人娘と個別会談。

ちなみにアパッチは文字通り瞬間湯沸かし器なので後回しになっている。

 

俺は男なのでハリベルの胸を見たくないわけではないが、アレを見ながら話すと理性が保てなさそうだしな。

 

「織姫ちゃんがあんたらと仲良ければ個人的な付き合いで話した方が良いとは思うんだけどよ。そうでもなさそうなので損得で話してる」

「確かに。でも素直に頷くと思って?」

 思ってない。だからこそ相手を選んでるって寸法だ。

 

「今回の話で好都合なのは放っておいても暴走しない、動く方向が判ってるってことだな。そのうち敵は来るし容赦はおそらくない。そしてあんたらはハリベルに心酔している」

「……断る理由はないようですね」

 嫌そうな顔をしているが納得はしたようだ。

これが感情で先走るアパッチ相手には話せない。彼女の役割はむしろハリベルに奮起させる役目になるだろう。

 

「先渡しの報酬ってわけでもないが、実験も兼ねて教えとくぞ? 能力とスイッチ的に腕になったんだろうが、実験だけなら髪だとか薬液治療で済む範囲で適当に試してくれ」

「ソレ、女に話す内容でもないような……。いえ、女の命だからこそ?」

 最初は左腕ではなかったはずだ。

破面は一部を除いて超速再生が失われるため、破面化前に使った能力でない限り、徐々に小さいパーツから試したはず。そして同一の部分で混ぜるバランスが整い、より犠牲が大きい方が強度が強くなったのだと思われる。

 

なお、こいつらに話して実験させることには俺にも意味がある。

ミニ・アヨン改を相手に実戦訓練できるのと、倒した後の素材を龍紋鬼灯丸の外装打ち直しに使うためだ。何度も実験してできたパーツを使って、刀の鍛造に使う折り返しに使用する。

 

「あんたらのキーワードは犠牲。誰のための犠牲なのか、何のための犠牲なのかを理解して三人が三人とも納得すればいい」

「決まってる。ハリベルさまの為。新しい王国の為」

 思うに、もしこの考えが正しいのであればハリベルは後もう少しのはずだったろう。

藍染こそが破面の王国を作り上げ、ハリベルにその第一の剣を捧げさせれば良かったのだ。そうすれば彼女はその身を喜んで犠牲にしたはずだ。

 

逆説的に失敗した顕著な例がバラガン達だろう。

自分が指揮すると言いながらやったことは号令をかけ増援を出しただけだ。そこに老獪さはなく、技術の研鑽も、知識の蓄積もない。奴らこそ『老い』を上手く使えば強力な一団になっていたはずなのに。言葉は悪いがただの老害に成り下がってしまっている。

 

「それで足りなければハリベルの苦労を思い起こせばいい。あの外見と頼もしさを考えるから難しいんだ。責任感に押し潰されそう、誰かに変わって欲しいと思った結果が、藍染。だが奴には女を支える甲斐性が無かったってな」

「っ!?」

 そこまで思ったことはなかったのだろう。

まあ宝塚で男役を張れそうなイケメンぶりと、グラマラスさを持ったあの胸、そして母性溢れる思いを考えれば仕方ないだろう。原作を知るとある識者はハリベル・パイと呼んだが、あの胸が元凶だと思えば判るだろう?

 

 

 下ネタに流されたような気がするが、この話は此処までだ。

三人娘が納得して、どうやら成功したようだという成果が出た複数回確認できた所でストップ。あとはハリベルの説得待ちということになる。まあその後は監視付きで別れるわけだから、顔合わさないしな。

 

「オメデトウ! 君があの娘たちを誑かしている間に、私の研究も次のステージに進んだヨ」

「人をジゴロみたいに言わんでください。口説いたわけでも口説けた様子もないですしね」

 さて、マッドと馬鹿話をする理由はない。

ここに来ているのは鬼灯丸を打ち直して欲しいという希望の結果だし、その内容に関してちゃんと相談するためだ。次こそはキチンと話さないと不安でならない。

 

「私は浦原たちのように境界を曖昧にするなどいう不確かな方法に頼らない。死神の魂と虚の魂を折り合わせて叩き、私自ら定める方向に作り上げる事に成功したという訳だネ」

「具体的にはどんな能力があって、どこまでの強度に成るんです?」

 話すと長いので単刀直入に尋ねる。

もちろん元の形状が重要であることと、攻撃力を重視した上で容易く壊れないことは伝えてあった。

 

「以前からの奴は攻撃力主体。新しく蟹を使ったのが霊圧攻撃が可能になる物。まあこれは本人の鬼道によるから君向きではないと思うがネ。サーベルタイガーは単純に比重変化ダヨ」

「そいつはありがてえ。ぜひ最初のでお願いします。興味だけなら他のにも惹かれますがね」

 やはり俺と相性が良いのはエドラドを元にしたものだろう。

動けない間に考えていた技が無理だったので、フィンドール・ベースの物も使いたくはある。しかし俺にとって最も必須なのは原作に匹敵する攻撃力強化なのは間違いがなかった。

 

ともあれ外道な相談をしているのは間違いないので、形状と能力に念押ししてこの辺で終わらせておこう。後は体を癒しつつ、鬼道を混ぜて霊圧強化。総合強化された体に各種技を馴染ませていくだけだ。

 

治療されていく中でやって良いことも増えるが、相変わらず特訓の類は制限されている。

仕方ないので見つからないように小さな瞬歩を行って元居た位置に戻るダルマさんが転んだ状態。あるいは居合いの要領で瞬間的に斬術を練り上げていくという地道な日々が続いた。

 

俺が剣術指南役隊長並みとして扱われ、隊首会への出席許可と給料の微増が伝えられたのはその後の事である。




 という訳で治療と初歩修業が終了。

本来は昨日書き上げていたのですが、千手丸とマユリって家族じゃね? とかいう考察で半分埋まってたので書き直してました。
破面関連の伏線下積みが終わったので、次回にクインシー関連の布石を打ちながら修行して修業編終了です。

●破面たちと第二階層の話
 色んな考察とかヨタ話を見ながら、適当に取り繕って強化案をでっちあげ。
第二階層に至れた理由付けなので、筋だけ重視したので編だったらすみません。
とりあえずハリベル達は強く成ったぜ! 掛かって来いよキルゲ!(フラグ)。
原作よりも虚圏に出向する騎士団メンバーが増えるはずです。
破面王国 vs 狩人中隊 という感じですね。

●一角の順当強化
 とうとう霊圧と出力が隊長格並みに。
鬼道とか色々な面でまだまだ劣っていますが、剣腕は二番目なので隊長格。
ただし仮面組が復帰したことと、一角の地位はそのままの方が扱い易いのでそのまま格上げ。
戦術面での参謀扱い……。
ガンダムで言えばMS参謀でアムロ、トランスフォーマーなら航空参謀でスタースクリムかな。

『龍紋鬼灯丸ver1.3』
 形状が元に戻った上で炸裂用の宝玉が付随。
外せないのかと文句言ってますが、実戦で使ってからと言われてる状態。
原作の龍紋鬼灯丸を柄だけ細身にして、球飾りが紐でくっついてるイメージです。
(刃も太刀みたいな細身のはずなので、残りは全部破面由来の外装)

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