転生したらハズレ斬魄刀の使い手だった件【完】   作:ノイラーテム

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勝利の代償

前線部隊(フロント・アルメー)

 改めて周囲を見渡すと、宣戦布告どころか完全な部隊編成による侵攻だった。

拳銃使いのナイスミドルを司令官として、バンビーズに先ほど倒したドリスコールを加えた七名もの騎士団が居る事になる。

 

残り六名、消耗したキャンディスを数えないとしても五名も残る大仕事だ。

加えて司令官のロバート・アキュトロン……だったよな? 通称カーネルは京楽隊長の目を奪ったツワモノであり、その能力が解説されてないのが若干不安だった。

 

「なによもう。こんな奴ら、あたしが一人居ればジ・エ……」

「よしなさい。先ほどドリスコールがどうなったか見なかったのですか? 迂闊に能力をひけらかすものではありませんし……何より陛下は確実な仕事を求めておいでです」

 自意識過剰でお調子者のバンビエッタは最初話を聞き流していた。

だが陛下と口にした瞬間、顔をしかめるあたり意識はしているのだろう。

 

「別に名前くらい知らなくても察せるぜ? つーか当て物のコツは判った段階で口にしねーんだよ。名探偵だって言ってるだろ。今はその時ではないってよ」

「アタマツルツルだから頭良いってアピールなんでしょうかねえ? イキッってますよお((´∀`))」

「そうかもな。頭茹で蛸にしていきなり切り掛かってきそうだし、ミニー。出番だ準備しとけよ」

 ムカツク!

なんでこうバンビーズの連中はこういう奴ばっかりなんですかね!?

怒り頂点なりって大爆発しても良いですかね!?

 

「剃ってるだけだからツルツルでも蛸でもねーよ。いいか、そこのピンク髪は近接戦重視型で俺の卍解と相性良いんだろ? んでそれを促したロリが四天王の実質的なリーダーだ。んでそこの女が外見特化型で四天王一番の小物枠!」

「こいつ、オレ達のこと初見で見抜きやがった!? 注意しろよ!」

「はあっ!?」

 俺が原作知識を隠すためにでっちあげた察相術を披露すると、その反応は様々だった。

リルトットは普段面倒くさいからバンビが前に出るのを放置している。一歩引いて周囲を見てるわけだが、今回ばかりは本気で驚いたようだ。バンビを建てるおためごかしを捨てて忠告を放った。

 

「あたしが小物だって言いたいわけ!?」

「もし四天王ポジだとすりゃあ、昔から付き物なのは五人目だ。居るんじゃねえの? 厄介な能力で味方からも恐れられる奴。てめえはそいつを隠すための派手派手担当ってことだ」

 恐ろしいことにバンビは自分が美人だという事を否定しなかった。

まあバンビーズはみんな外見だけならグンバツだからな。ミニーニャとキャンディスはちょっとばっかり好みから外れるが、みなベッピン揃いだ。

 

「ふ、ふ、ふ……ふざけんな!!」

「戦場でふざけてるのはてめえだよ」

 激高して霊圧を上げるバンビに合わせて、俺は往復で衝撃波を二発放った。

威力よりも距離と範囲重視。ソニックブレードが左右から交差することで、ストームブレードとでもいうべき真空波が奴の周囲に着弾する。

 

「物理攻撃? こんなもの……っ」

「馬鹿野郎! さっさと逃げろバンビ!」

 ストームブレードは物理攻撃なので奴には効かない。

だからダメージ目的じゃないし、だいたいその手前で着弾させている。では何が目的か?

 

それは土煙を上げて視界を遮断させ、同時に……誘爆させるためだ!

ジ・エクスプロードは霊子を撃ち込んだ対象を爆発させる。つまり土煙の層が厚ければ、十分に物体として認識されるし場合によっては真空断層も役に立つだろう。霊圧攻撃ではない剣圧が、初めて役に立った瞬間である。

 

「お前らも離れろ! 誘爆するぞ!」

「範囲攻撃だとは思ったが爆発系かよ? 自業自得だぜ」

「っ!?」

 大爆発を起こしてバンビの周辺が吹っ飛んだ。

まさか手前で爆発するなどとは思ってもみなかったのだろう。だが油断は禁物だ。全部が全部土煙で爆発するだけでは無いし、距離も至近ではないので殺しきれないだろう。

 

「ファーああああああああああっっっっくく!! コロス殺すころす! 全部の皮を引っぺがして塩水を塗り込んでやるわ!! その後でチョンギッて、あいつの後ろにぃぃ!!!」

「おっ。生きてた。ああなると手に負えねえから近寄るんじゃねえぞ」

「は、はい!」

 出て来た出て来た。

爆炎の中から火傷の痛みに耐えながら、バンビが完聖体で出現する。そして血走った目で高い位置まで移動し、土煙に隠れて移動する俺を探し始めた。

 

っていうか、何の皮を引っぺがして斬るおつもりなんですかね?

女の子が口にして良い言葉じゃないと思うんですが。ていうか、あいつビッチだったな。

 

「悪いな。アバヨ嬢ちゃん。逃-げるんだよーっ!」

「逃がすわけないでしょうが! やあぁぁっってやるわよ!!!」

 確認もせずに次々と放つ爆発を回避するため、俺は衝撃波を放ちながら左右に移動。

ジグザグに移動して見せつつ、衝撃波を盾にしたりゾルダートに紛れてとある場所を目指す。

 

しかし面倒なのはゾルダートではない。

連中はバンビの攻撃に巻き込まれまいと右往左往しているが、バンビの爆撃だけなら霊子に当てる物さえあれば何とでもなる。だが『それ以外』はどうしようもないので、ジグザグ移動で回避パターンも入れているだ。

 

「くそ。また命中しやがった。どうやって当ててんだテメー」

「教えるわけはないでしょう? 貴方ならば避けてしまいそうです。今も致命傷は避けているようにね」

 俺が目指しているのは前線部隊司令官(フロント・アルメー・コマンダン)のロバート・アキュトロンだ。

バンビーズを伴っての行動は宣戦布告だけにしては過剰戦力過ぎる。威力偵察を兼ねているのだとしたら、相当な被害を出さねばならないだろう。具体的に言うと、司令官の戦死とか大多数の重傷化とか。

 

とはいえそれが簡単であるはずがない。奴直衛のゾルダートも居るしな。

そこで仕方なくバンビを怒らせて、一斉に掛かって来れない状況を作り出したはずだった。なのにこいつは平然と射撃を撃ち込んで来た。

 

(何の能力か知らないが厄介過ぎる。俺が転生者じゃなかったら詰んでるぞこれ)

 ロバート……通称カーネルの攻撃は四方八方からやって来る。

ジグザグで避けているのに、真横から斜めから撃ち込まれたことは二度や三度ではない。ダメージを負い過ぎて足を留めれば、バンビの爆撃で一撃死しかねない。

 

この状況で俺が足を留めないでいられるのは、俺に原作以外の漫画知識があると言う事だ。

シチュエーションはシェイクスピアの時代に、特殊能力の類はクールジャパンの時代に出尽くしたと言われる。ジョジョの奇妙な冒険だけでも、銃に関する能力……応用できるモノを含めれば無数にあった。

 

しかし決定的な情報がない。

それさえあればもう少し特定し、奴の使い方を逆算して何とでもできるものを。……そんな時にまさに天女の一助がもたらされた。

 

『斑目指南。すみません遅れました。現在二か所以上で襲撃を受け、そちらに向かってるのは、あたしだけです』

(雛森の天挺空羅! やっぱり本格的な侵攻か。厄介だが、それでも援軍が来ると知れただけで助かった。返信を弓親に頼むとして……? あ……?)

 天挺空羅は一方的な通信だが、中継者を介して返信できなくはない。

後方に弓親を置いて援護してもらってるのは、ハンドサインで連絡を入れて、あいつから送り返してもらうためだ。

 

そしてどんな作戦で介入してもらおうかと考え、簡単なサインで伝えれるかと苦心した。その事がカーネルの能力に気が付かせてくれた。到着よりも先に天挺空羅を使った雛森をマジに天女かと思え始めて来る。

 

「理解したぜ! てめえの能力をな!」

「馬鹿……な。こんな短い時間。こんな状況でどうやって!?」

 俺は奴の視線を見ながら、どこが攻撃ポイントなのかを適当に判断した。

それだけでなく攻撃ポイントから俺に対して向かって来るラインから離れるように瞬歩で飛び抜ける。

 

そうして接近する間に片手はソニックブレードでバンビへの牽制を放って爆発を遮り、もう片方の手を敵の目から隠した。弓親にハンドサインを送る為である。

 

こんな状況で複雑なサインなど送れるはずがない。

ゆえに指示は一つ。以前から決めていた『卍解を使用する』『援護を頼む』という文言だけである。

 

「てめえの能力は転送能力か何かだろ? それもただ指定地点に送るだけじゃねえ。モーションも方向も無視して、好きな位置に砲口を開くことができる能力だ。能力名はザ・ノーティファイってとこか!」

「そんな……ありえません! 特記戦力でもないただ席官風情が!?」

 伝達するだけで攻撃できるはずはないが、奴らの弓も弾も霊子製だ。

どちらかといえばジョジョに出て来た拳銃系ではなく、ガンダムのファンネルやリフレクターに近い使い方だろう。それゆえにただ攻撃ポイントとして転送するだけではなく、そこから砲口を開き二次的にも使える射界を創る二種類の使い方があるのだと考えられる。

 

だからこそ殺気を感じて避けるだけではダメなのだ。

避けてもそこから別方向に飛んでいくのであれば、そのラインも避ける必要がある。

 

だが、まだ届かない。

ドリスコール戦を見て警戒している奴を倒すには、ただ切り込んでも、ここで卍解してもまだ届かない。もう一枚・二枚の作戦を立てる必要があった。

 

「卍解! 龍紋鬼灯丸!」

「来ましたか! ですが……ここまで来るのは予想済みだったのですよ。能力を見抜かれたのは予想外でしたがね」

 俺が飛び込みながら卍解するのと、奴がバックステップを掛けるのは同時だった。

本来ならば当たるべき速度と軌道。それを無視して、不可解な軌道をカーネルは掛けた。

 

天へと召されるかのように、四角い翼を煌かせて。

 

早い話が完聖体を使って避けたのだ。先ほど焦って見せたのは芝居だったのだろう。

おそらくは奴の完聖体は転送能力を強化し、自分自身を無反動で移動させることができる……飛廉脚の上位互換化か? ならば俺の攻撃を見てから避けるのは容易いのだと思われた。

 

「この程度、我が神の歩み(グリマニエル)を持ってすれば何とでもなります。……やりなさい」

「は~い。潰れてくださーいツルツルさ~ん><」

「死ねえええええ!」

 カーネルの指示で周囲から攻撃が一斉に撃ち込まれる。

過剰攻撃も良い所で、俺に逃げ場はない。四方に撃ち込まれるバンビの爆撃、上からは投げつけられた巨大な瓦礫。他にもカーネル自身の攻撃もあるだろう。

 

文字通りの殲滅攻撃。

出て来た時に口にした『総掛かりで磨り潰せば良い』という言葉に偽りなどなかった。

 

「終わりです。死角などありませんよ」

「あるだろ? 死地であっても想定外ならば都合が良い場所がよ!」

「躊躇せず前進した? あいつ、死にに行きやがった。狂ってやがる」

「はあ? 馬鹿じゃないのあいつ?」

 それはただのパズルだった。

どこに移動しても危険ならば、危険を覚悟すれば良いだけの話である。

 

刀の攻撃だって、仕方がない時は急所を避けて刀を受けることもあるのだ。直撃さえしなければ爆発の中に飛び込んでも良いだろう? 致命傷でさえなければ良い。

 

「馬鹿な……死ぬ気ですか!?」

「自爆とはいえ女の肌を焼いたんだ。焼かれる覚悟の一つくらい出来てるよ!」

 バンビの爆撃よりも前に出て、その爆風に乗って更に速度を上げる。

死んで当然の攻撃を受けて火傷くらいならばお釣りがくる。そのために死地と判って飛び込んだのだ。

 

奇襲といえば奇襲であるが正面突破なので対応できる時間はあった。カーネルは驚いた顔で何とか軌道を変更し、回避に成功したようである。それが間違った選択肢であるとも知らずに。

 

「しかし! 見えてますよ! この程度で……!?」

「じゃあ……これは見えるかよ?」

 俺が振り抜いた龍紋鬼灯丸が突如として消える。

奴の間違いは龍紋鬼灯丸が直撃すれば耐えきれないと思ってしまったこと。そして完聖体で強化した移動力を使って良ければ、回避できると思ったことだ。もしイチかバチかで静血装で全力防御していたら倒せなかったかもしれない。

 

「刃が消えた!?」

「刃が消えるか。消えたのは……卍解だ」

 静血装していなければ卍解していなくても倒すことは可能だ。

だが普通であれば、こんな短時間で解除できるはずがない。それゆえの盲点。大仰な卍解を回避してしまえば何とでも対処可能と思ったやつの敗因である。

 

「こんな……ところで。申しわ……けありません。へい……か」

「……すまねえ鬼灯丸」

 俺は奪われていく龍紋鬼灯丸を見ることもなく走り出した。

今頃はメダリオンに回収されている頃だろう。だが今だけが脱出のチャンス。こんなところで足を留めるわけにもいかない。

 

囲まれているのは同じだが、そろそろ雛森の援護が始まるころだ。

指揮官を失ったことで出来る僅かな隙。望んで死地に飛び込み、相打ち覚悟で飛び込む殺し屋と戦いたいかという隙。それを突いて俺は逃走するはずだった。

 

実際に俺を攻撃しようとした連中の殺気は感じられない。

このまま逃走できる。移動経路に居る連中だけ片つければ良いと思った俺は、一つだけ失念していたのである。

 

俺を攻撃する気もなく……カーネルを助ける気もない。

どちらが死んでも利益を得ることができ、そもそも攻撃する必要のない奴が居たことを。

 

そいつが一度も姿を現していないことを忘れていた。

 

「邪魔だ! どけ!」

「きゃっ。痛った~い」

 立ち塞がる連中を切り捨てた時、その一人が平然と笑っているのを見てしまった。

流れるような黒髪はバンビと同じだが、小柄で華奢な姿が一つ。体に大きな傷ができたというのに微笑んでいる。

 

「どうしようボク、穴を空けられちゃった。瑕モノにされちゃったよぅ。責任取ってもらわないと」

「ぬかった……呪術屋……かよ。コイツが……五人……目」

 そこに居たのはジゼル・ジュエル。

Zの聖文字が示すはザ・ゾンビ。死神を含む死者を操る特殊能力である。




 という訳で一角は負けてしまいました。
死んでしまうとは情けない。まあ死神は最初から死者扱いなんですけどね。
一人称が基本ですが、一角がゾンビ化してしまったので、次回は三人称になる予定です。

●前線部隊
 戦線布告するだけではなく侵攻部隊です。
そこで一角は突撃して、かき回せるだけかき回して撤退予定でした。
手加減できる相手でもないし、カーネル強いから忘れても仕方ないのですが。
というか攻撃する気がないから殺気がないし、斬っても駄目なのは相性悪いですね。

なお数に囲まれて活躍してますが、原作知識あっての事。
バレると大変なので察相術とか戦術眼とかフカしてますけど。
なお他の方面にもタイムラグを付けて襲撃されており、そちらは原作知識ないので大変。

・前線部隊の現状:
ロバート・アキュトロン(死亡)
ドリスコール・ベルチ(死亡)
バンビエッタ・バスターバイン(負傷中)
キャンディス・キャットニップ(負傷後退)
ジジ・ジュエル(治療活動中)
ミニーニャ・マカロン(龍紋鬼灯丸を取得)
リルトット・ランパート(黄煌厳霊離宮を取得)

・部隊編成
親衛隊:計三名
狩猟部隊:キルゲ(死亡)他、計四名(本来は遊撃隊)
前線部隊:ロバート(死亡)他、計七名
右翼大隊:ハッシュ他、計六名(ロイド兄弟含む)
左翼大隊:グレミィ他、計五名(現段階のアスキンは此処)

●カーネルことロバート・アキュトロンの能力(捏造)
 原作では不明なので、notify=知らせる・届ける。を採用。
適当にNで調べた結果なので、ノーモーションくらいで良かったかも?
色々と解釈可能なので、カーネルが口にするのではなく、一角が適当に命名。
いずれにせよ、弾道や射角が存在しなくなる転送能力です。
完聖体はこの能力が自分の体にも影響し、一切の負荷なく急発進やターンが可能。
いきなり移動し始めたり、奇妙な方向に移動することが可能になる。
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