転生したらハズレ斬魄刀の使い手だった件【完】   作:ノイラーテム

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終局に向けて

●報連相

 不眠不休でにらみ合いと小規模な戦いが続く。

その状況が一転したのは翌日になってからだった。

 

「賊軍が移動を開始しました!」

「四十六室より伝達! 防備を固めた上で追撃を許可するとのこと」

「あの無能ども。足を引っ張っただけでは気が済まぬのか!?」

 砕蜂が激高するのも無理はあるまい。

昨日の戦いは本来、一角らと戦っている敵部隊を後方から襲撃するはずだった。これが急な転身命令のせいで無駄な犠牲を出したのだ。

 

流魂街と精霊廷の結節点は四方にあるが、滅却師(クインシー)たちが襲撃したのは四十六室に縁深い所謂……行政エリアであったというのも大きな影響を与えているだろう。

 

「そこまでしておけ。唸りたいのは貴公だけではない」

「お前の所は被害が少なかったから! ……いや。なんでもない」

「善後策を考えようや。それが死んだ拳西たちに向けた餞やがな」

 狛村左陣に怒鳴ろうと掛かろうとする砕蜂だが、平子真子が睨むと黙り込んだ。

彼の友人である六車拳西。そして日番谷冬獅郎・松本乱菊……実に三名もの戦死者が出たのだ。

 

相手は陣地を作って待ち受けており、連携して攻防を巧みに使い分けていたために、想像以上の被害が出てしまったと言える。

 

「当初の予定は必ずしも上手く行くとは限らへん。今回の結果で横車には抗議するとして、何かええこと判ったん?」

「勿論ダヨ。もう少しで卍解簒奪を防ぎ、奪還する手段が完成する。それまでは復帰組以外は解放を遠慮願いたいものだネ。完成し次第に転送措置を行う」

 九番隊の隊長である六車拳西は戦死したが……。

その際に卍解が奪われなかったことが新事実として発覚した。技術的な問題なのか、それとも滅却師(クインシー)側の問題なのかは不明だが、(ホロウ)由来の力が混じっていると卍解を奪えないとの事だ。

 

そこで涅マユリは技術開発局の粋を集め、急ぎその対策を行っている。

 

「諸君らに渡した内の片方はその際に使う転送マーカー。そしてもう片方は敵を倒した際の処理を簡便化するモノになる」

「処理用の薬品が三つあるんは何なんや?」

 マーカーがあれば掴趾追雀で位置情報を補足する必要が無くなる。

首を傾げるのは処理役が三種類ある事だった。今まではワザワザ廃炎を使っていたのだが、その代用だけなら一つで良いだろう。

 

「一つは周辺の霊子ごと焼き払う物。一つは周囲の霊子を攪拌する物。最後の一つは適当な場所に霊子を転送する物だヨ」

「一角が言っとったやつですかいのう」

 これは以前に斑目一角が頼んでいた物だった。

滅却師(クインシー)は霊子吸収能力があるので、倒した敵の霊子を吸収しかねない。そういう懸念があったので提案されていたのだ。

 

「昨日の戦いで敵隊長格の滅却師(クインシー)数名を倒したはずだが、測定結果が合わない。そこで急遽誂えた。まったく忌々しい連中だヨ」

「それで三つですかい。……あいつも自分の意見が役立って満足して逝ねるでしょう」

 普段は口を挟まない射場鉄左衛門の言葉にマユリは軽く頷くだけで済ませた。

ゾンビ化しただけで彼の力を持ってすれば所有権を奪取できるだろうし、元に戻すことも可能であるかもしれない。しかしながら、それは興味の一つでしかない。あえて口に出して約束してやる義理などないだろう。

 

「それと、これが敵軍の新情報だヨ。連中の特殊能力の詳細が分かった。その強度は破面以上、完現術以下。君たちにはその対処を的確に……」

「もう良い」

 マユリの言葉を総隊長である山本元柳斎が遮った。

ここまでは必要な情報だったので黙っていたが、これだけの情報があればもう良いと判断したのだろう。

 

「奴は。ユーハバッハの居所は掴めたか? 儂が求めておるのはそれだけよ」

「……申し訳ありません。候補が絞れた程度です」

 元柳斎は温厚になったが昔は無茶ばかりを行う男だった。

一罰百戒・一族滅殺などは可愛い物で、賊をかくまった者もろともにその地方を焼き払って族滅を行ったことも一度や二度ではない。

 

そして温厚になったという事は、必ずしも牙が抜けたとは限らないのだ。

親しい者を次々と傷つけられ、殺されて、黙って居られるほど涼しい男ではない。

 

「賊軍自体の対処はおぬしらに任せる。総員で出払っても構わん。一刻も早くユーハバッハを探し出せ!」

「はっ! しかし……四十六室の方はよろしいので?」

 思わず首をすくめるように皆頷いた後で、当然のことを聞き返した。

行政エリアを固めろという命令が出ているのだ。横車で作戦を曲げたこと自体には抗議するにしても、既に発行された命令自体はどうしようもない。

 

「儂自身が出向く。それ以上の警備などあるまい。お主らは資料を基に確実に賊軍を葬っておけ」

「そういうことでしたら」

 どうやら四十六室に腹を立てているのは元柳斎も同様らしい。

大将ゆえに自重を求められている事を逆用し、警備しろと言われた場所へ自身が赴くことで片付けるとのこと。まさに睨みを効かせるということだろう。

 

「しかし元柳斎殿を一人にするわけにもいかん。奴らの方が目的を変え兼ねんからな」

「それについては私に案がある。あそこの地区ならば鬼道衆やご意見番たちにツテが使えるからな。それよりもお前たち、耳を貸せ」

 狛村たちに砕蜂が提案したのはひどく単純な事だ。

行政エリアの防御ならばご意見番……引退した大前田稀ノ進らや、鬼道衆を動かすに足る理由になる。十三隊とは独立している隠密機動の長でもある砕蜂ならば、鬼道衆の長に援護を要請しても不思議ではないだろう。何より四十六室の命令で守備に就くのだ。協力を要請してなんの問題があろう。

 

「む?」

「拳西たちの仇が討てるならボクも協力させてもらうよ」

滅却師(クインシー)が連携して戦うのであれば死神が連携して悪い道理はあるまい。私は暫し、隠密機動の本分を活かす。手柄はお前たちが持っていけ」

 砕蜂は狛村たちを表に、陰に潜んで戦う事にした。

影から影に隠れて戦う事こそが、隠密機動の本領だ。何も真正面から一対一で戦う事だけが死神の戦いではないのである。

 

●逆転

 それから護廷十三隊は守りが主であるかのように戦い始めた。

代わりに動くのは隊長格たちで、狙うは滅却師(クインシー)の左翼大隊。まずは才能が高過ぎるがゆえに個人プレイに走りがちな者を狙い討ったのである。

 

彼らは滅却師(クインシー)の中でも聖文字で得た特殊能力に長けた者。

その能力は強大だが、能力さえ理解してしまえばそれほど脅威でもない。

 

「嘘……だろ。あのグレミィがこうもアッサリ……」

「別に不思議では無かろう? 想像したことが何でも引き起こせるとしても、相手の位置が判らぬままに攻撃されてはどうしようもあるまい」

 アスキン・ナックルヴァールにとって悪夢が起きていた。

滅却師(クインシー)の中でも最狂最悪を唄われるグレミィ・トゥミューが至極簡単に葬られただけではなく、自身の位置が補足されてしまっているのである。

 

グレミィに関しては最初、相性や順番が悪かった。運が悪いだけと思っていた。

だが実際には他の戦いで能力を確認した後を狙われた。音楽を聞かせた相手に幻覚で攻撃する鳳橋楼十郎との戦いに夢中になった所で、砕蜂の弐撃決殺を本体に受けてしまったのだ。

 

「デスヨネー」

「こらっ!? 逃げるな、貴様!」

 そんな中でアスキンはスタコラサッサと逃走を開始した。

正面から戦うようなポリシーは持っていないし、味方を壁にして裏から攻撃するようなやり方は彼自身も認める事だ。滅却師(クインシー)の中でも屈指を誇る逃げ足の速さで逃走しようとした。

 

「なんという腰抜け。……いや。足の速さを褒めるべきか。あの速さには本気を出した夜一様以外は追いつけまい」

 追いかけようとした砕蜂だが、あまりの速さに絶句してしまった。

何が問題かと言って、戦いもせずに初手で逃げ出したことだ。同時に走れば夜一の方が速いとしても、戦う準備を始めたところで逃げられたらどうしようもない。まして未熟な己では仕方あるまいと思う事にした。

 

「こちら砕蜂。第二目標には逃げられた。次の目標に向かおうと思うが?」

『最寄りの敵には吉良副隊長が向かわれました。現在、同士討ちで被害が出ている区域が……あ』

 奇しくも滅却師(クインシー)たちの多くは戦いのポリシーなど意に介さぬ者が多い。

同様の心情を持つ砕蜂は遠慮なく、一人を複数の隊長格で戦う方法を提案したのだ。それもただ戦うだけではなく、まずは戦闘型の隊長格が戦い、その間に対応能力を持った者をピックアップして送るという二段構えだった。

 

『涅だ。今の報告は忘れ給え。まともに戦う相手には厳しい相手だヨ。こちらで何とかしておく』

 砕蜂が連絡を入れると、返信の途中で割り込みが入った。

おそらくは情報を管制している場所にマユリもいるので、研究の手を留めて待ったをかけて来たのだ。技術開発局を一時的に放棄しているので、こんなこともあり得るのだろう。

 

「あいつ忙しいとか言っていなかったか? まあ良い。ひとまず吉良の後詰めに向かう。その間に次の標的を頼んだぞ」

『了解しました。判明している情報含めて送信します』

 砕蜂は首を傾げながらも研究成果が使える対称なのだと思う事にした。

 

 

「立ってくだサイよスーパースター! あんたは……倒れちゃ、駄目、なんda……」

「ジェーイムゥーズ!? おのれ、いたいけな一ファンを攻撃するとは!」

 バラバラにされても蘇っていた小男が、枯果てるように死んでいく。

その声援を受けて戦っていた男は、怒りに燃えて激高した。

 

「そいつの声援を含めてキミの能力なんだろ? 僕が手加減する訳ないじゃないか。檜佐木さんの仇も討たないといけないしね」

「まだ……死んでねえよ」

 援護に駆け付けた吉良イヅルの近くで檜佐木修兵が死にかけている。

正確には重傷を負って気絶しかけていたのだが、死の窮地に際してオチオチ気絶して居られなかったのだ。

 

何しろ、まさしく死の淵ともいうべき場所に立っているのだ。

ここで気絶したら、先ほどの小男と同じ末路だろう。

 

「この卑怯者め! ジェイムズやワガハイから奪った力で戦う気だな! だが見ておれワガハイとて、そこの男から卍解を奪って……」

「奪った力で戦う? 馬鹿言っちゃいけない。この力はそんなに便利な物じゃあない」

 メダリオンを掲げて卍解化しようとする大男……マスク・ド・マスキュリン。

だが吉良は思わず苦笑した。戦いの中で会話に夢中になり、ベラベラ喋りながら戦うなど苦笑物だ。

 

だがあえて説明することにした。

彼が使った『卍解』は、時間こそが最大の味方だったから。そして檜佐木が降下範囲から逃げるまでの時間を稼ぐためだ。

 

「ただ全ての霊圧が失われるだけさ。そこに区別などないよ。敵も味方もこの僕ですらも」

「なにぃぃ!?」

 吉良は伸びて来る鎖を受けただけでガクリと腰砕けになった。

だが、それはマスキュリンも同様である。いや、卍解する前は元気だったことを考えればその差は明らかだ。

 

「ぬおお!? 馬鹿な。ワガハイの鉄拳が効かぬだと!?」

「力を振るう時は、その力の恐ろしさを十分理解するべきだったな」

 そもそもマスキュリンは誤解していた。

檜佐木から奪った卍解、風死絞縄はダメージを与える能力ではない。多大な攻撃力を持つマスキュリンを束縛するのに絶好な、縛道を究めた卍解なのだ。

 

本来は倒された鳳橋の代わりに檜佐木が足止めに来たのだが、マスキュリンの方が一歩上手だっただけ。いや……こうなることも含めて、檜佐木は計算していたのである。

 

「チクショウ! 騙しやがったな!」

「ウルサイな。だけれど、やがてこの領域は静寂に包まれる。椿の花が朽ちるように……誰も彼も力を失い機会を失い枯れ果て、詫びるかのように蹲る」

 フラフラになりながらも吉良は卍解を解かない。

このまま戦えば勝てるというのに、解くはずがない。例えこのまま相打ちで倒れるとしても、これほど屈強の滅却師(クインシー)である。副隊長が二人死んだとしてもお釣りがくるだろう。

 

「ゆえに侘助。……寂庭侘助椿」

 ガクリと吉良もマスキュリンもうなだれる。

力なく膝を着き、吉良に至ってはシャムシール化した斬魄刀を杖にしなければ倒れそうだ。

 

何処にも行きつけない、報われもしない無情の力。

それがこの卍解の能力であった。

 

「ええい! そんなの関係ねえ!! おまえが先に死ねい!」

「っ!?」

 マスキュリンは最後の最後で卍解を捨てた。

メダリオンを砕くと一気に完聖体化して、残りの力を振り絞って霊子を一点に集中させる。

 

そして神聖滅矢が迸る瞬間……背中から大きな針が突き立てられた。

それも二度。

 

「何人……汚ねえぞ……チクショウ……めえ……」

「弐撃決殺……砕蜂隊長か」

「無事ならば戦列に復帰しろ。無理なら四番隊に救護してもらえ」

 放たれる瞬間、ギリギリのところで援護が間に合った。

 

蜂紋華が刻まれ消えゆく中で、華奢な女性が一人佇んでいる。

あまりに都合の良いタイミングに、思わず尋ねてみる事にした。

 

「スイマセン……何時から?」

「吉良が卍解してからだな。防御用の霊装を解除して攻撃に集中するのを待っていた」

「……お手数をおかけします」

 二人の男は苦笑しながら去っていく砕蜂に頭を下げるのであった。

ゆえに侘助とはだれが言った言葉だろうか……。




 という訳で逆転開始です。

砕蜂無双というよりは……。仲間の死神が死んでる最中にも、情報収集して戦闘傾向とデータ集めた隠密機動の活躍になるでしょうか?

●被害
 六車拳西・日番谷冬獅郎・松本乱菊が前日の戦闘で死亡。
この三人が前回のラストで討ち取ったと言っていたメンバーです。
これに追加で鳳橋桜十郎が死亡。重傷者は狛村左陣・檜佐木修兵の二人。
本来は死ぬはずなかったし檜佐木も重傷の予定じゃなかったのですが、マスキュリンとジェイムズが二人で一組。生き返るというのを知らなかったのでこうなりました。

クインシー側はマスク・ド・マスキュリン以外に、グレミィ・トゥミューが行殺、舞台裏でペペ・ワキャブラーダとエス・ノトが死んでます。
この四人が死んだ事で左翼大隊は壊滅。

●死神側の動き
 集団戦・ゲリラ戦を挑んでくる相手にタイマンで戦う理由はないので、こちらもやってやるよ状態。雀部さんは生きてるのでマシに見えるけど、シロちゃんとか死んでるので総隊長ゲキオコ。四十六室の命令ブッチして、総員でぶっ殺してこいと命令してます。

●クインシー側の動き
 左翼大隊は基本的に大火力の持ち主ばかりで、個人で行動しないと味方を巻き込みかねない連中なので仕方ない面もあります。アスキンは右翼に合流するか、それとも単独で任務続行するか悩んでる感じですね。

残った右翼大隊と前線部隊は目的に沿って行動中。
陛下と親衛隊が原作通りに藍染さんに会った後、帰還なんかせずに目的を果たす予定です。

●卍解
 69さんは小説で出たとのことなので、wikiから少し持って来ました。
奪われても構わない卍解として作戦に組み込んだ感じ?
侘助の方は幾つか前の話の後書きで出た、何もかも失われる卍解。
月姫の格闘ゲームを知ってる方には枯渇庭園がモデルと言えば判り易いでしょうか。
持ち主含めてだ柄もが頭を下げて、詫びるように死んでいきます。

●一角の復帰は?
 能力の判明したペペとエスノトが語られることなく死亡。
これをやったのはマユリの手勢。……という辺りで察していただけると幸いです。

次回に復帰するというか……当初の予定では時系列飛ばして復帰。
その後にあの時こんなことがあった……とする予定でした。
しかしながら順番通りにやった方がいいのと、隊長たちが報連相しつつ、どんな作戦で倒していったか?
そういうのを解説する回を入れるために書き直した感じですね。
今思えば何も考えずにその後(今回の話)を書いて、次回の頭の一角の話・その後の話を書いておけばよかったなあと思わなくもないです。
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