転生したらハズレ斬魄刀の使い手だった件【完】   作:ノイラーテム

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道筋

 滅却師(クインシー)の本隊は健在だった。

規律のとれた右翼大隊が後背を守り、バランスの取れた前線部隊が蹂躙していく。左翼大隊は火力こそ高いがはみ出し者ばかりだったこともあり、それほど被害を受けた印象はない。

 

それぞれが隊長格に匹敵するがゆえに、進撃そのものは快調。

一同に懸念があるとしたら、何のための成功なのか不明だという事だ。

 

「そろそろ目的を話してくれても良いんじゃないか?」

「目的は当初から霊王宮への進軍、それは変わってない。……だがそんなことを聞いているわけじゃないようだね」

 石田雨竜の質問にユーグラム・ハッシュヴァルトは頷いた。

他のメンバーも同様の疑問を浮かべていたからだ。

 

「霊王宮へ行くには王鍵とかいうのが必要なんだろ。藍染だってそのために空座で事件を起こしたんじゃないのか?」

「その指摘は正しい。だが我々は最初からある裏道を使用する」

「裏道? そんな都合の良いモンが隠されてるってのか?」

 石田に加えて今度はバズビーも会話に参加して来る。

そんなものがあるのであれば、藍染はとっくに奪って利用しているはずではないか?

 

「確証がないだけで隠されてなどいないよ。そうだな……一方通行の道があり、それを逆用するのだと言えば判り易いかな?」

「一方通行の道? まさか……」

 ユーグラムの言葉に石田は内心で青ざめた。

自分が持つ聖文字の能力が、起きた現象をソックリ相手に返すモノだとは告げてない筈なのだから。

 

「少し話は変わるが、死神の王族特務は全員が歴史に残るほどの創作物を作り上げた者だという。その創作物はあまねく死神たち全てに分け与えられ、その力を強化している」

「……?」

 突然話が変わったことで、一同は首を傾げた。

これだけではまるで判断ができないため、黙って続きを促した。

 

「この図式は逆だと考えられないか? 王族特務にしたからこそシステムに取り込まれて、その能力を効率的に死神たちが利用できるようになっている。そして、それを受け取る場所があるんだ」

「確かに本来であれば王族特務は強者であるべきだ……」

「作り上げた物を渡すために、霊王宮を空けるなど言語道断。そういうことか!」

 ここに来てようやく他のメンバーもその歪さを理解した。

近衛兵と言う意味では滅却師(クインシー)における親衛隊の様に強さが基準であるべきだ。なのに霊番隊は全員が生産者である。

 

「幾つか候補は考えられるけれど、本命はおそらく……」

「「真央霊術院!」」

 毎年少なくない数の死神が護廷に努める。

候補という意味だけで良いなら、その数倍が存在するのだ。その全てに斬魄刀と死覇装が渡されることになっているが……霊番隊がその都度に降りてくるという話は全く聞かない。

 

精霊廷で普通に生産できるという話も聞かないし……。

死神のその後を決定付ける程の性能と、その特殊性を考えればおかしなことだらけであった。

 

「我々数名による聖隷ならば強制的にこじ開けることも可能だろう。無論、陛下が全霊を傾けられれば瞬時に開くだろうが、そんな状況は唾棄すべき展開だ」

「当然だね。我々聖十字騎士団は陛下の手足であるべきだ」

「陛下のお手を煩わせるなど言語道断」

 冷めた目で見る者も居る中、忠誠心に篤い蒼都やBG9は声を荒げる。

ユーグラムは満足そうに頷いて指を三本程伸ばした。目的を果たすための条件が三つあるという事だろう。

 

「陛下が用件を終わらせるまでに確保すること。かといって焦り過ぎて通路を閉鎖させないこと。そして聖隷による逆行儀式を滞りなく運営することだ」

「要するに時間と余裕が必要と言う事だね?」

「陽動だろうが壁役だろうが任せてもらおう」

 ユーグラムは自身が全霊を賭して実行すると言い、背中を任せると口にした。

だがそんな話に誰もが頷けるわけではない。

 

「段取りが出来ているのは良いさ。……そこにオレ達の出番はあるんだろうな?」

「勿論だとも。こちらが考えることを相手が考えないと過信するのは愚か者のすることだ。逆行通路を構築できると判った段階で、総員で待ち構えるくらいの事はするだろう」

 リルトット・ランパードが警戒するのも当然のことだ。

見えざる帝国が三界に覇を唱えるのか、それとも新しい世界を築くのか分からない。だが、活躍できない者に明日の目はないだろう。

 

問題なのは明日があるという言葉を、字義通りに捉えているかどうかだ。

昔なじみのロバート・アキュトロンならいざしらず、まだ若いリルトット達スカウト組には役立たずは処断される程度の認識でしかないだろう。だがユーハバッハを良く知る者にとって、ソレは文字通りの言葉である。

 

活躍するような必要性を持たない者は、その時点で活動する者のエサでしかない。

全ての力と命を奪われて再配分されてしまうのだ。その意味では、リルトットの直観は冴えていると言っても良い。

 

「判った。少し戦力をくれ。罠に関してはゾンビたちを先行させて代わりに嵌らせた後で、一気に突破する」

「……了解した。ここで編成を少し改める」

 リルトットの現実的な提案にユーグラムは意外な物を見た気がした。

実に立派な指揮官ぶりで、言わずとも罠の可能性も考慮して作戦を考える。これまでロクに話などしていなかったが、話していれば有益な相談もできたかもしれない。

 

「部隊の壊滅したアスキンとナナナをこちらに組み入れ、代わりにバズビーを手勢込みで前線部隊に入れて攻撃力を補強する。足りるか?」

「十分だ。オレ達の活躍でも楽しみにしててくれよ」

 ユーグラムは部隊編成を修正する。

左翼部隊の生き残りであるアスキン・ナックルヴァールと、狩猟部隊の生き残りであるナナナ・ナジャークープを組み入れ本隊として編成し直した。

 

またバズビー達を前線部隊に組み入れて、高い戦闘力とそれを守るための壁を配置する。

戦いは既に消耗戦になって来ており、敵味方共に全盛期の六割りを切っている。この布陣はその対策であり、『消耗戦になっているフリ』をするものであった。

 

こうして戦いは双方の思惑の内に進む。

ゾンビの反応が消えたところでリルトット率いる前線部隊が突入し、戦いは本格的な物になったのである。

 

 久しぶりの目覚めだった。

正確には起きているような寝ているような不思議な感覚が続いており、起きていると実感したのが今と言うだけなのだが。

 

「意識はハッキリしているカネ?」

「お手数をかけしました。……俺が使えそうなので色々急いでくれた感じの状況っすかね?」

 目覚めた後、最初に見たのはマッドの顔だった。

例の発光する衣装なので、まだ最終段階ではないようだ。

 

「賊軍は霊術院を占拠した後で、無間より出て来た敵の大将が合流に向かってるところダロウ。覚えていることがあったら、さっさと報告するんだヨ」

「了解です。連中の能力とグダグダなコミュニティくらいっすけどね」

 いやーサッパリ記憶にないわ。

とはいえ素直にそんなこと口にしたら、治療を中断されてこの後はフェードアウトになりかねない。乗り遅れないためにも、情報をでっち上げておこう。

 

「一番やばい情報は、例の吸収能力の行き先は親玉に紐付けされてるってこと。そして付与能力もあることから部下は個性のある水風船くらいの扱いで、不満に思ってる連中も多い感じでした」

「ということは逃した霊子は全て奴のところへか……」

 もし俺に意識があったらこの程度の事は理解していたはずだ。

詳細を誤魔化しつつ適当に修正して報告しておいた。

 

しかしマッドの表情が不満と満足の入り混じった感じなので、霊子吸収対策はそれなりにしていたようだ。これは安心できる情報だった。

 

「連中の生き残りとその能力はこの程度把握しているヨ」

「別格なのはやはり親玉と上位隊長格っすね。あくまで連中の会話を聞いたレベルですが、親玉は予知能力。騎士団のリーダーは親玉の能力が反動を負荷を起こしている時の代行。他には親衛隊とか言うのが、どいつもこいつも頭おかしいとか」

 出逢っていない俺が知っているのも変だが、伝えないと意味がない。

原作知識を活かせる千歳一隅のチャンスなので、連中が誇っていた・恐怖していたという態で、程ほどに能力を説明していく。

 

こうして公然と原作知識をひけらかせるなら、ゾンビニなった甲斐があったなあ……。とか自分を誤魔化していると、現時点で判明している撃破情報に驚かされた。

 

(グレミィを覚醒剣八抜きで倒してる……だと?)

 どうやったんだよ……。

思わず驚愕したというか、総隊長生きてるしこのまま行けば原作知識なんか要らねえんじゃ? と思う瞬間だった。

 

「基本的には詳細なんか掴めるような状況ではありませんでした。ですが奴らはアルファベット管理しているようなので、おおよそ想像はつきます」

「全知全能。天秤。命令。破壊。毒物。通り抜けは貫通能力として……奇跡? 良く判らない能力ダネ?」

 当てずっぽうであるという態で、強引にこじつけて能力を予想したことにする。

ミニーニャはパワーの代わりに破壊力でD、代わりにアスキンをポイズン。キャンディスをライトニングのLにして、Tを貫通か何か具合にすれば説明は容易い。

 

幸にも俺の戦術予想はそれなりに当たっているし、過去にも原作知識で補強した事もあるので信用されたようだ。そういえば占い師の卜占は二割当たっていれば、当たっているような気がするという話を思い出した。

 

「そこは奴らの言ってた無敵の力に当て填めただけですね。進化とかはアルファベットをもう使ってるので」

「と言う事は攻撃を逸らせた歪曲能力はWあたりか。だいぶ掴めて来たネ」

 陛下が無間から出て、合流までに遠距離攻撃を仕掛けたらしい。

その時にこちらの攻撃が当たらず、連中の反撃で防御したはずの攻撃が貫通したりと、補強材料はあったようだ。マッドの方で適当に組み立ててくれたのは正直助かる。誤魔化すのにも限界はあるしな。

 

「後はいかに親玉の能力で霊子の入れ替えをさせないかじゃないでしょうか? 前にも言いましたが、倒したはずなのに別の奴が強化されたんじゃあ意味がありません」

「それについては解決しているヨ。色々試したが攪拌して認識を誤魔化すか、即座に転送して除去してしまえばいい」

 マッドが不満なのはそれでも万全ではないという事らしい。

聖別で十割、死亡で八割として、六割に抑え込む程度にしか過ぎないとのことだ。

 

だが原作を知っている俺としてはそれで十分に凄い事だと思えた。

ひとまず騎士団の連中を屋内に誘い込んで、霊子吸収対策や認識攪乱の掛かった結界内で倒すという案を相談して穴だらけの報告を終えた。




 という訳で捏造ルートと、一角の復帰回です。

●捏造ルート
まずはクインシーが霊王宮に突入する方法をでっちあげてみました。
というか斬魄刀と死覇装が特殊過ぎて、精霊廷で生産できそうにない。
その辺の違和感を活かして一方通行(投下専用)……。
またはアイテム転送専用のルートがあるとしてみました。
聖別でそのルートを乗っ取ってしまえば、霊王宮に行けるだろう。
無理でも強引に飛んでいくための道標にはできるという感じですね。

なお死神側は狛村隊長が総隊長を庇って死亡。砕蜂・大前田が長距離狙撃で重傷退場。
クインシー側はロイドのもう一人とロアーなお猿さんが死亡しております。

●晴れ時々嘘情報
 ゾンビ化されてる時に何がない会話を聞いた。 = 凄い強いというくらい。
あとはアルファベット管理なのを逆用して、単語をでっち上げで説明しています。
あの時にとっ捕まったことで、原作知識を活かせる布石になってる感じですね。
ザ・デストロイヤーとザ・ポイズンとか大ウソこいてる情報もありますけど。

●霊子対策
 実のところ、あんまり対策の影響は出てません。
どっちかというとこのままいけば霊王を吸収しないので……。
全知全能で刀狩りカウンターできないってことの方が重要でしょうか。

なので頂上決戦は無視して、次回からは一角が配下の大物と戦う予定です。
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