転生したらハズレ斬魄刀の使い手だった件【完】 作:ノイラーテム
現場復帰までに俺がしたのは、簡単にリハビリしながら現在の情報を聞いておくことだった。
俺が回収され早々に復帰できたのは、お互いの戦略がぶつかり合った結果だったようだ。
「罠を張って待ち構えてたら最初にゾンビの集団がやって来てね。今はお互いに二枚目三枚目の手札を切り合ってる」
「なるほど。俺はゾンビだったし、そこで回収されたってわけだな」
使い捨てのゾンビに相応しい役目であり、俺の回収は別に運不運では無かったようだ。
護廷にとって罠は足止めに過ぎなかったし、ゾンビの集団しか嵌らなくとも動きを留めればそれで十分。
戦略と言うのは一つ駄目でも、最初から複数の手札を用意しているものだ。
最初の一手が状況把握までの時間稼ぎであれば、次なる手を打っていくのは当然の事。動きを止めた敵に対してお互いが火力で撃ち合って合っているらしい。
「すまねえな。俺が不甲斐ないばかりに不本意な解放までさせちまって」
「ボクにとっても扱い難い卍解を万全の態勢で使える珍しく絶好のタイミングだったから構わないよ。ただ最初は一角だって判らなかったんだ。何しろ御洒落をしてたからね」
弓親の卍解は既に使用された鬼道を再現する物らしい。
それだけならば便利な様に聞こえるが、場所や方向まで固定されるので地雷のような使い方しかできないらしい。今回は張っていた罠が縛道系の大規模術式であったため、再構築することは都合よかったそうだ。
本当に弓親が満足しているかは別にして、相棒がそう言っている以上はここまでにしておく。
「それがコイツか」
「剥がす? 服はともかくその銀メッキは綺麗だからそのままにしてたけど」
俺は変装というか、コスプレさせられていたらしい。
斬魄刀の切っ先には銀メッキが施され、服は死覇装ではなく騎士団の制服。あげくに鬘を付けてロンゲだったので、これは俺だと気が付かなくても仕方あるまい。
しかしこの銀メッキは非常に判断に困る代物だった。
「いや、止めとこう。もしかしたら石田が暗号か何かを仕込んでるかもしれねえ」
「一角が良いならそれでいいけどね」
これがただの銀メッキならならば良い。
騎士団というか
問題なのは採集シーンで登場した『静止の銀』である場合だ。
「……聞かなくちゃならねえことが増えちまったな。連中の幹部と死合に行くとするか」
静止の銀であれば非常に助かる。
だがそれには幾つか矛盾が存在した。石田かそれとも……。ポテトなりモヒカンに尋ねてみなければなるまい。
静止の銀の事を知っているのは石田親子だけで、渡してくれる可能性も彼らだけだ。
「それなら敵の配置図があるから参考にして。今のところ判っている範囲で書いてある」
「挟撃作戦とは手抜かりねえなあ。しかし望む相手と出会うにゃあ、前座を倒さないと無理か」
状況が固定化したことで相手の布陣も判って来た。
こちらは誰かが犠牲になって足止めし、そいつに得意な能力持ちで攻めるという身も蓋もない相性戦術を組んでいる。
どこの十絶陣対策かと苦笑しそうになったが(フジリュー版じゃない封神ネタ)……。
千年血戦のラストはカードゲームじみた戦いなので、仕方ないとも言えた。あえていうならばタイマンしたい剣八が不満を覚えていそうだと今から溜息が出るくらいだ。
「ゾンビ野郎に復讐するんじゃないの? あ、あいつはねえ……」
「男の娘なんだろ? マッドと似てるから判ったよ。俺が聞かなきゃならねえのは石田か……下剋上しそうな奴」
単純に石田に何か問題があって、奴が持ってる鏃を加工しただけかもしれない。
だがもう一つの考えとしてバズビーの存在が居る。奴ならばその場で鍍金くらいはできるし元は陛下と敵対していた。そしてなにより彼の親友であった過去を持つハッシュヴァルトが重要だ。
奴らが元鞘に収まって反旗を翻す場合……。
とても大きな変化になると言えるだろう。だが、その確証がない以上は最終戦に割って入るわけにはいかない。特に石田親子以外は知らない筈の静止の銀をどうして知っているのか?
外伝の小説でポテトがバンビーズを助ける準備をしていたらしいが、俺は読んでいないので判らないのが痛かった。仮に反乱の準備をしていたとしても、原作と道筋を変えた理由が不明なのだ。
「仕方ねえ、コイツと戦ってからだな。平子隊長とあいつらに後詰を頼むか」
ここで先ほど言った別の問題が出て来る。
バズビーは前線でボーボ-燃やしてるので接近しにくいし、知らない可能性がある。ならハッシュヴァルトだが、奴は首領補佐なので直接戦えるはずがない。
だから敵幹部なり親衛隊の中で、俺が倒せそうな相手を戦って潜り抜ける必要がある。
だがそいつは逃げ足が速く、平子隊長の能力がないとタイマンすらできないのだ。他の連中は原作に準じて結界の外から行う攻撃役というわけだ。
●
敵陣に対する攻撃は一斉に行わなければならない。
逐次投入は愚かだし、相性戦術をする以上は手の空いたメンバーが援軍に来られても困るからだ。
「隊長。タイマンの許可が出てる時間を忘れねえでくださいよ? お互いに病上がりですが、俺の方がそっちの獲物を喰いに行くかもしれません」
「言いやがる。こんところ爺さんと試合しかしてなかったしな。少しくらい楽しませろよ」
なんと剣八は総隊長とチャンバラやってたらしい。
なんて羨ましいというべきか、総隊長が死んでないので、卯ノ花隊長との訓練ができなかったようだ。
それはそれとして総隊長も不満を抱えたまま燻っており、剣八と試合することでウサを晴らしていたそうだ。斬術教えるなとは言われているが、試合形式で遊ぶのは無問題という強弁らしい。
「なんだ隊長なら不満の一つも言うかと思ったらゴキゲンじゃないですか」
「まあな。何しろ無敵だかミラクルだか言う奴なんだろ? ちったあ楽しませてくれそうだ」
戦いは大詰めなので親衛隊が出て来る可能性がある。
そこで剣八の相手は、あのジェラルド・ヴァルキリーということになっていた。足止めとしては贅沢なくらいだし、倒せれば御の字ということなのだろう。
問題は倒せるかどうかなのだが、聖別で強化される前ならばワンチャンありえるだろうか?
本人は倒す気マンマンだが、再生して強化され続ける相手とは最悪の相性な気がする。応援を差配するマッドとしては増援で片を付けさせるつもりなので気にしないらしいが。
(まあ倒せるか怪しいのは俺もだけどな。多分……先に倒されなければ行けると思うんだが)
勘違いでなければ自力で倒せる相手だ。
問題があるとすれば先に攻撃されて完封される場合と、相手の能力を勘違いしている場合だ。後者の場合が一番問題なので、俺が予定している増援はその対策メンバーで組んである。
そして戦いは次のステージに進み、相手の一部が儀式らしき物を始めたところで横槍を入れに掛かった。
「よう。他の増援に向かう途中で悪いが、いっちょここで俺と死合おうや」
「悪いけどノーサンキューで。せめてこないだのネーチャンにしてくれ」
俺が選んだ相手は恐ろしく警戒心が高い。
能力的に楽勝で勝てる可能性があるのに、即死攻撃を恐れて即座に転身した。
アスキン・ナックルヴァールと戦う際の最初の問題は、実にこの逃げ足であった。
「確か砕蜂隊長だっけか? その逃げ腰も考えものだよな。あの人の能力は段階制だから、てめえの方が相性良かったと思うんだが」
「……オレの能力説明したっけ? つか、見た目よりも足早えなあ」
そんな訳はない。
砕蜂どころか夜一さんより速いこいつに俺が普通に走って追いつけるはずがない。
そう……普通に走るならばだ。
こいつの足に追いつくために、一人目のサポートを頼んである。
「他の連中の能力が判ったから逆算でな。お前はポイズンのPだろ? で、自分の毒を必殺にすると同時に、相手の攻撃を毒とみなして耐性を得る」
「……惜しいな、オレはD。ザ・デスディーリング、致死量を操るんだよ」
アスキンは雑談に付き合いながらも様子を観察している。
どうやら何かしらの詐術があり、俺が追い付けている理由を探っているのだろう。
「オレの能力を知ってるなら通しちゃくれねえか? こっちの攻撃は必殺。そっちの攻撃は無力化できるんだぜ?」
「逆に聞くけどよ。俺が取っ捕まってる間にBの能力をもらって、ブックメーカーとかいう何もかも思い通りにできる能力があったとする。でも、てめえは諦めねえだろ」
諦めるとしても楽に勝つことくらいだろう。
聖文字で得られる能力は完現術とは違う。一定のルールが存在するし、その法則や強度を理解すれば何とかできるからだ。
俺がそのことを指摘すると奴は嫌そうな顔をした。
「じゃあ仕方ねえなあ。とくと味わってくれよ、オレの切り札をよ!」
「よーし、じゃあ勝負と行こうか!」
奴は逃げることを諦めたのか、怪しげなポーズで能力起動を示唆する。
だがこいつの用心深さから言って狙うのは別のことだろう。まずは今どうして逃げれないのかを理解し、勝つ道を探りながら同時に逃走手段も探っているはずだ。
「あらよっと!」
「ホイサ!」
まるで餅つきのような掛け合いで最初の攻防がすれ違う。
奴は弓を作り上げて速射し、俺は変則的なステップで斬撃を浴びせる。
奴は攻撃を避けると同時サイドステップを掛け、後ろにのけぞりながら静血装で防御。
俺は最初から矢を避けもせずに、通常状態のまま首元へ袈裟切りで切りつける。結果として首ではなく肩口を切り割くに留まった。
「チッ。この周辺……見た目通りじゃねえな?」
「おうよ! 直進しねえ空間ってやつだ。慣れりゃ当てられると思うぜ」
逃走を封じるタネは平子の逆撫だ。
あの斬魄刀の力で視線と体感方向を曲げて、攻撃や移動を直進できないようにしている。
ただあくまで方向の認識が把握できないだけなので、藍染戦でやったことの延長として、感覚に頼らず戦う方法を身に着けていれば問題ない。百年以上振り続けた棒振りのお陰でこの距離ならば問題なく命中させられる。
「二回目の仕方ねえなあ……だ。今度こそ切り札でお前をぶっ潰してやる。先に言っておくが、お前の攻撃は効かねえぞ」
「そうかよ? 気を抜くんじゃねえぞ、もうちょっと肩慣らしをしてえからな!」
そこからの見た目だけは先ほどの焼き直しだった。
違うのは共に二撃目を工夫している事。奴は効かないとか言いつつ同じように防御態勢で身を反らし……何かを腕から外した。
俺は地雷の様に置かれたソレをそっと外野に流しながら、無解号で龍紋を開放して切りつけた。
「あ痛ててて。どうなってやがる?」
「投げつけたやつのことなら、てめえは見た目が頼りにならねえこの空間で目に頼るのか? 攻撃が効いてるって事なら、単にこの刀がさっきと同じ状態じゃねえからだ」
アスキンがやったのは毒入りの腕輪を放り投げたのだ。
サイズが小さくなった上に、地雷の様に置いたので当たると思ったのだろう。だが今のように目で判断してはいけない状態で、俺が指輪サイズになったからといって逸らせない筈はない。
「お前が相手の必殺攻撃を毒……じゃなくて致死量扱いだったか? 耐性を付けられると想像できるのに、対処できない奴が来るわけねえだろ。ヒントその一、鯉の滝登りって知ってるか?」
「っ!? 成長してんのかよ。つーか成長してたって同じ物質だろうが」
しかし慎重な野郎だ。
さっきの攻防だって、耐性を付けていると思てったはずなのに静血装で防御を固めてやがった。ご丁寧にフェイントを兼ねて再度ステップとかも繰り返したので、首を刈りに行ったのに致命傷になってない。伊達に原作で親衛隊入りしてねえなあ。
「常識で考えて鯉がストレートに龍になるわきゃねーだろ。蝶と同じで変態してるんだよ」
「ふざけろよ……。変態したって鯉が龍になるかつーの!」
三度目の正直、今度こそ奴は能力を使用した。
思えばこれまでの攻防は、視線や体感の曲がり具合を確かめる物だったのだろう。それで片が付かないと見て、計測した方向に毒入りボールを放って来る。
もし俺が視線コントールを過信して居たらあっけなく死んでいただろう。
だが原作でこいつの厄介さを理解しているのに油断するはずがない。
あえていうならばこいつは完聖体で一気に決めるべきだったのだ。
やらなかったのは単純に、致死量設定を変更したことを悟られないようにするつもりだったのだろう。
「くっ……またあ!? いい加減にして欲しいなあ。てめえの霊子振動に合わせたんだぞ」
「お。物質の霊子振動に気が付いたのか。スゲーなあ」
龍紋が変態するとしても、物質的に変わるはずがない。
それが可能なのは、斬魄刀が霊子を固めて作られた疑似物質だからだ。霊子の構成パターンや振動パターンが変化し、馴染んでいくことで別の物質の組成になっているに過ぎない。
ジャンプの漫画でバスタードという魔法バトル物がある。
その後編では物質が持つ固有の霊波動だっけな? その振動に逆異相の振動をぶつけて相殺するとかいう、ブリーチで言う反鬼相殺の上位互換技がある。アスキンは似たようなことを思い付き、そのパターンを特定して致死量設定したのだろう。
「進化するとしても、霊子振動の調整にゃあ霊圧の微細な調整が必要だから無理だと思ったんだろ? 俺は借りにも剣術指南だぞ? 俺が何百人の教練相手を務めたって思ってるんだよ」
というか龍紋は霊圧と体力強化が微妙に上昇していく。
先ほどとまったく違う能力になるので、ちゃんと訓練して修正できないと、いつものように剣技を使いこなせないのだ。自分で自分の手足を切ったら笑い種である。
「なんだったら、てめえらがつかうゼーレなんちゃらの振動を抑え込めるぜ」
「なあ。……そこまでできるなら鬼道で攻撃した方が速くねえか?」
攻撃できたら苦労してないんだよなー。
何のかんのと訓練はしたが、自分の体から話すのがとことん苦手なのだ。ハンターxハンターで言うと放出系とは相性が悪いらしい。
そんなこんなで切り合っているのだが、奴の用心深さの為に中々致命傷を浴びせられない。
見れば離れた場所でジェラルド兄貴がウルトラマン並みにオッスオッスしてるので、あちこちで戦いが進展しているのだろう。
……というか、死んだはずの狛村隊長が卍解してるし。
しかも鎧を着てないモードなので即死級の攻撃を不死身でカバーしているようだ。もしかしたらリジェ辺りもその場にいるのかもしれない。
「親衛隊まで出張ってんのか。このままじゃあオレも見限られそうだし、ほんっとーに仕方ねえなあ。今度こそ本気で行くぜ。疲れるから使いたくなかったんだが」
「じゃあこっちも本気出すわ。いっせーのーでいくか!」
この後の展開は何となく読めるが、俺は前のめりでいくことにした。
範囲から逃げ出すなんざ性に合わないし、こちらの攻撃が上手く直撃すれば倒せるからだ。
「
「卍解、龍紋鬼灯丸!」
奴は予想通りに完聖体化。そのまま巨大な毒入りボールを形成するはずだった。
予想と違うが……俺は構わず卍解で奴の静血装ごと突破できる火力を得て粉砕しに掛かった。
二本の大太刀を振りかざし、一本目の保護パーツを二本目で砕きながら叩いて攻撃を加速。逃げ足よりも早いスイングで捉えた!
「ちっ。少し遅かったか」
「そうだ。俺の
奴は完聖体の能力を防御に当てたらしい。
龍紋鬼灯丸を設定することで、耐性を得ると同時に、持っている俺が中毒になる技を掛けたようだ。ただ俺にだけ気を取られ過ぎたようだ。奴の背中から胸にかけて透明な刃が現れる。
技の組み立て自体は良い。
俺が二撃目三撃目を繰り出しても耐えられるし、こちらは振るう事すら難しくなるだろう。
一応は白打も強くなってるので殴り殺せないこともないが、それでは時間が足りない。
何が足りないかって……毒で死ぬよりも先に、増援が到着するからだ。
「そういえば……破面どもと手を組んでたっけ……。ぬかった……ぜ」
「その回答はエサクタだ。正確には第二階層、
「……お疲れ。助かったよ」
俺が指定した増援はゾンビ化して復活した破面。
以前に行った忠告を理解して第二階層を突破した、フィンドール・キャリアスだ。
奴はパーツ取りに使って失われた鋏の代わりに、水分子を重合させて作り上げた透明な剣でアスキンにトドメを刺した。
自分で倒したかったが仕方ない。時間をかけ過ぎたのは他ならぬ俺のせいだしな。
という訳で残り数話で終了です。
前回の後半で何が起きたかを簡単に説明。
霊術院で待ち構えて罠を張り、縛道トラップでゾンピを拘束。
そのまま白兵戦やら鬼道で攻撃していたのですが、一角はその時に回収しています。
とはいえそんな都合の良い隙があるはずはないので、弓親が卍解。
他のメンバーも虚化による卍解奪回を行い、無理やり作った隙に回収しました。
●謎の銀メッキ
静止の銀か? はたまた別物か。同じものだとしたら何のために?
一角の目標としてハッシュヴァルトまたは雨竜に合うというのがインストールされました。
まあ静止の銀だったとしても、クインシーが居ない使えなさそうな半端なですが。
●アスキン戦
逆撫の能力で逃走を封じて、耐性を龍紋の力で突破して攻撃。
あとは地道に攻撃するという戦術です。
最期に毒入りボールだったら自分で倒したのですが、アスキンは防御優先で攻防一体のプール。
二手目でボールを放って倒そうとしたために、時間切れで増援が倒しました。
(時間があった場合は、白打と斬魄刀を使い分けて攻撃。霊子酔い対策したと思います)
●親衛隊とゾンビ破面
逐次投入しても仕方ないので復活した隊長格とゾンビ組を一気に投入。
対ジェラルド:剣八 + ??
対リジェ:狛村(不死)+京楽
対ペルニダ:乱菊・日番谷+浮竹(能力を停止させる卍解?)
という感じです。ゾンビ破面たちは適当に協力してます。
第二階層、
以前に思った第二階層の条件で、死の形またはご悪徳と向き合う事だと書きましたが
バラガンの従属官は老練さだと思ったので、一点突破の技術力と言う意味で
フィンドールを第二階層にしてみました。