転生したらハズレ斬魄刀の使い手だった件【完】 作:ノイラーテム
アスキン戦への援軍二人目は破面のフィンドール・キャリアスだった。
原作でもゾンビ化して参戦したメンツが居たが、俺が奴の能力の誤用を惜しいとレポートしたこともあり、運命が変わってメンバー入りしたのだろう。
原作で見た時は酷い冗談だと思ったが、ある意味でマッドらしい禁断の実験だ。
おそらくは破面たちを人体実験にして、隊長格のゾンビ化と蘇生を行う試験的な意味合いもあったのだろう。黒縄天譴明王が動いているあたり、日番谷や乱菊も蘇生しているはずだ。
「平子隊長はもう移動したのか?」
「エサクタ。君の相手が動きを止めた辺りでね」
視界の歪み対策で全面攻撃は予想できた。
平子の力が最終段階で必要ないと判っていたこともあり、他の援護に向かってもらったのだ。
「となると雛森の攪乱が始まるのもそろそろだな。間に合ったって所か」
「それもエサクタだ。口述での伝言で一斉に仕掛けると聞いている。確かに伝えたぞ」
親衛隊の一斉排除であり総隊長以外の戦力一斉投入。
ゾンビ化した破面だけでなく、蘇生した隊長格たちも含めて相性の良さそうな連中はみんな動員する。オールキャスト・オールイン・マジックパレードとでも言うべきだろうか。
フィンドールも戦闘への介入と伝言を終えた後は、前線部隊の方へ向かう事が決まっている。
俺がハッシュヴァルトのもとへ向かうのとは微妙にルートが違うのでここまでになるだろう。
「あんがとよ。そんじゃ運が良ければ次の対戦で」
「その自由があればな……アスタ・ラ・ビスタ」
そう言って別れた後、走りながらでも見える明王の姿を眺めた。
リジェの攻撃で次々に貫通されながらも、不死化したことで耐えて少しずつ接近しているようだ。
それでもまだ遠い。
リジェの攻撃は威力もあるので動きが縫い止められている。これでは一気に接近できない……誰もがそう思うであろう悲しき奮闘の中で、戦場の周囲が真っ赤に染まり始めた。
「煙幕……僕の視界がこの程度で遮られるとでも?」
「構わぬ! そもそもこの戦いは……ワシが貴様の所に辿り着けば終わる戦いよ!」
例え姿を隠そうともリジェの能力は貫通だ。
多少移動した程度では弾道調整の方が速く、しかもその周囲を削り取っていくので次の移動先も判り易くなる。
ハッキリ言って、これが一対一の戦いならば詰んでいただろう。
だがこの煙幕、赤煙遁の役目はただの着色でしかない。明王の姿を覆い隠すだけならこれほどの範囲で展開する必要は無いのだ。隠しているのは奇襲ではない、『誰が』『何をしているか』を覆い隠しているのである。
(今頃は他でも始まってるはずだな。日番谷たちはともかく浮竹と檜佐木の卍解見たかったなあ)
ペルニダ戦は遠距離攻撃のできる日番谷と乱菊。
この二人を支援するために浮竹が卍解を使う予定になっている。なんでも相手の特殊能力に干渉する能力があるそうで、霊王の右手が『静止』を司っていたのを思い出した。
「おお!? おのれ羽虫が!」
「……馬鹿なっ。ジェラルドの霊圧が消えた!?」
「やりおったな檜佐木。見ておるか東仙よ。おぬしの部下は、おぬしの愛弟子は成長しておるぞ!」
突如ジェラルドの霊圧が乱れ、姿と共に霊圧が小さくなっていくのが感じられる。
その理由は檜佐木の卍解だ。これは双方の霊圧と命を連結し、お互いを再生し合って決着をつけることなく戦い続けるらしい。
最初に聞いた時は何の為にあるのか分からない能力だったが……。
こうして無敵のジェラルド兄貴を拘束している以上、味方がいるなら前提で恐るべき能力だったのだなと思わざるを得ない。剣八以外は羽虫と侮ったことでこの結果になったのだろう。
「いかなるダメージも神の尺度に変換するはず……」
「ダメージなど与えておらぬ。奴の攻撃を奴自身の霊圧で治療させたのよ。お主たちの力……決して無敵などではないぞ!」
親衛隊最強であるジェラルドが弱っていく状況に、冷静なリジェも焦る。
それでも射撃の手を留めず確りと命中させて大ダメージを与えているようだが……今の狛村は不死だ。そして次々に命中する事実には変わらないが、先ほどまでの様によろめかずに済んでいる。
頭を撃ち抜かれても胸を撃ち抜かれても明王は走り続ける。
そしてとうとう、攻撃可能な飛び込んだ!
「ゆけい!!!」
「無駄だ。ジ・イクサクシスは相手の攻撃をも貫通できる! 神の力を授かった僕らを圧倒できるはずない!」
リジェは明王の斬撃と誰かの放った援護攻撃を、自らの体を貫通させて無効化した。
原作では聖別で力を注がれているから気が付き難いが……。
この段階までは原作終盤ほど強くない。あれはあくまで聖別で強化され、完聖体を使用することで可能な異常ぶりなのだ。だからこそ奴の三度の制限は、保有霊子の限界や、自分を戒め鍛えるためなのかもしれない。
もちろん言及されていないだけで霊王の欠片を持っている可能性はある。
だが、少なくとも聖別前なら奇襲攻撃で倒せることは王悦が証明していた。奇襲からの一撃、あるいは回避不可能な概念攻撃でなら倒せるのは間違いないだろう。
「なんやキミ、神なんか? もしかしてボクとキミの相性。最悪なんちゃう?」
「何!?」
そして奴にも最後の時が訪れる。
いつの間にか明王の上に誰かが居た。
細身の男が役割を終えた斬魄刀を下げて佇んでいる。
その刃は刀と言うには短く、不思議なことに一部が欠けていたのだ。
「馬鹿めどんな攻撃だろうと僕には……」
「あかん。その認識はあかん。さっきのボクはもうキミの中に置いてきた。そしてもうソレは始まっとるよ」
ここからでは詳細に見えないが、それは市丸のはずだった。
疑似的な不死を持つ親衛隊戦で最も有効な力を持つ男だった。こいつは原作と違って瀕死だったこともあり、義骸と義魂に移して今まで治療していたのだ。
先ほども言ったが、赤煙遁はあくまで『誰が』『何をしているか』を誤魔化すために過ぎない。
狛村も言ってたじゃないか。明王が接近した段階で終わっている……と。明王の攻撃で倒すなどとは一言も言っていない。おそらくは先ほど誰かの放った援護攻撃の気配は、市丸の神殺槍だったのだろう。
「これは体が溶ける!?」
「せや。
こうしてリジェは親衛隊で最初の戦死者になった。
全身が溶けて消え去り、その『霊圧すらも』消え失せようとしていた。
「市丸隊長……」
「あかんよイヅル。今のキミの隊長は鳳橋サンやろ? ボクは反逆者で司法取引の為に頑張っとるだけやからね」
煙幕に隠れ、明王の陽動に隠れていたのは市丸だけではない。
そこには吉良も赴いており、遅れて解放した奴の卍解で霊圧を消滅させているはずだった。察知されて神殺槍が効かなかった場合、リジェの霊圧を消滅させて倒す為である。
(この様子なら大丈夫そうだな。あの二人が居りゃあジェラルドも簡単だろ。問題はペルニダか)
俺はそれ以上、上空を見上げるのをやめた。
今頃は霊圧が相当下がってるであろうジェラルドを倒すこと自体は難しくないだろう。能力的にも蘇生することなく抹殺できる。
問題なのは静止と進化で拮抗しているだけのペルニダだ。
日番谷も乱菊も遠距離戦ではバランスの良い能力なのだが、必殺能力に欠けていた。日番谷の必殺宣言は何時だってフラグだと読者はみんな言っている。
やがて落ちる閃光が戦況を変えるだろう。
だが原作と違ってペルニダを強化される程度ならばマシな結果だと思っておく。
●
稲妻の如き閃光が落ち、不要とされた者の生命と霊子を奪い去り再分配する。
聖別と呼ばれる無慈悲な振る舞いであり、千年血戦編の難易度を上げた最大最悪の要因である。
「嘘……だろ」
だがそのタイミングと光の方向を見た時……。
俺は自分の想定が甘いことを思い知らされた。まさかフラグでもあるまいし、親衛隊をなんとかできると安心した直後に起きるなど思いもしなかったのだ。
ましてやその力の矛先が原作と大幅に違うなどと思いもしなかった。
こちらが大きく戦術を変えたのだ、相手もまた大きく行動を変えないという保証などなかったのに。
「あれほどの力を誇っていたはずの、親衛隊から真っ先に潰すなんてあり得ねえだろ!」
ジェラルドに市丸と吉良が向かった直後、ペルニダが遠距離戦で五本の矢で圧倒した時。
まだまだ役に立ってる最中で、いきなり力と命を徴収したのだ。
落ち着いて考えて見れば判らなくもない。
メタが張られればもう無敵ではない。これ以上時間を掛ければ倒されてロスが激しくなる。ましてや連中には霊王のパーツが宿り、エネルギー保有量は凄まじいのだ。
『こちら雛森。大変です! 儀式の進捗が進み、最前線のバランスが崩壊しました! 至急、次の作戦を実行してください!』
(くそっ。この場に合わせた最適メンバーに霊子を振り分けやがったのか。しかし……できるからってやるか普通?)
能力といいその熟練度といい親衛隊は別格だ。
己の特殊能力を良く理解しているし、
だがそれを判断できるのがユーハバッハの無情さなのだろう。
総合的に見れば良い判断とは思えないが……最初から自分一人で良いと考えているならば、今の状況を打開できるかの方が重要なのだろう。
(問題は聖別した相手をもう一度復活させられるかだな。できるなら霊王宮に上がった後で残りを始末して、改めて親衛隊を甦らせばいい)
さすがにそこまで無茶苦茶できるとは思えないが、できるなら厄介だ。
親衛隊の忠誠心ならば復活を約束されているからノーカンとか言いかねない。仕えてきた年期から言っても、バンビ達と違って狂信の域に達していた。
「伝令! 隔離して戦闘していた演習場は既に崩壊! 正面回廊にて射場副隊長率いる本隊が応戦しております。斑目指南は急ぎ敵首魁の元へ、更木隊長はまもなく到着との事!」
「判った! 直ぐに向かう!」
考え事をしながら進む俺に、移動力に長けた隠密機動や鬼道衆の連中が伝令を寄こす。
射場さんの卍解は範囲防御ができるらしく、連携して戦う席官たちを指揮して戦っているとのことだ。本来ならば上位席官以外は参戦させたくないのだが、ここが決戦なのでみな連れてきている。
そして目的地が近いのか、足止めに回った連中の死体がそこらかしこに転がっている。
様々なタイプの矢に貫かれ、あるいは爆炎や雷撃で黒焦げになった死体も見かける。死後時間が経っているので、前線部隊が通った時の物だろう。
「
「隠密機動と鬼道衆は手を出すな、怪我するぞ!」
「御意!」
上位の鬼道衆は隊長格と戦える連中も居るが、相手が
負傷中とはいえ荷が重いだろうし、もし聖別で負傷したとするならば戦いを前提にしてる鬼道衆たちは居ない方がいい。
そう思って近づくと……あまりみたくないモノを見てしまった。
「チっ。てめえか……まさか元に、戻せる……とは思ってもみなかっ、た」
「喋るな、傷に響く。通してくれるなら治療させる。そっちの子は俺と同じ方法での蘇生なら掛け合っても良いぜ。……頷くだけでいい」
そこに居たのは右側が半欠けになったリルトットと、ミニーニャだった物だ。
下半身の骨盤がむき出しに成り、男とは違う骨格を見てハアハアできるほどに俺はリョナじゃない。師匠とは違うんだ、信じてくれ。
「くそったれ。こんなザマにされて、まで。護る義理があるか、よ。勝手に通れ……。ただ、バンヒの面倒、見てくれると助かる。……暴走、して……んだ」
「喋るなつったろ。任せとけよ。それに射場さんは漢の中の漢だ」
どう考えても死にかけなのにリルトットはバンビの事を頼むと最後まで言い切った。
原作ではゾンビにされることに無関心だったが、何かしらの差ができたのだろうか? ゾンビ化している間の記憶がないので判断が付かない。
とはいえここからでは援護に向かう時間がないし、交戦中の射場さんに丸投げしておく。
霊子を爆弾化させる能力の事は説明しているし、攻撃よりも防御で時間稼ぎする方が確実なので何とかなるはずだ(再度の聖別は除く)。
「降伏者だ。情報提供できるから絶対に死なせるなよ! 俺は先に行く!」
「はっ! 結界内に後送して治療に当たります!」
見守っていた連中を呼びよせると、俺は戦いに専念して最終決戦に向かった。
という訳で最終戦手前で親衛隊がリストラされました。
メタ張ったら役に立たないから仕方ないですね。
●対リジェ戦
煙幕張って明王が囮になっている間に市丸が接近してました。
貫通防御に重ねて神殺槍を置いて、戻ってきたところで溶かした感じです。
あとはイヅルの枯渇庭園モドキもありますが、まあオマケで。
●対ジェラルド戦
小説で出て来た風死絞縄の話を聞いた時に最初は微妙な能力だと思いました。
しかし、よく考えてみたら不死に近い親衛隊戦では有効なので活躍してもらいます。
攻撃力が高いけど、注意不足なことも多いジェラルド用に頑張ってもらいました。
最期は勝てないと判断されて聖別で死亡。
●ペルニダ戦
日番谷・乱菊の二人が遠距離戦。浮竹隊長の卍解が特殊能力封じとして戦闘。
持久戦で倒せるだろうけど、途中で聖別強化されるのでみんなでフルボッコ。と考えていたら
状況的に無理と考えられて聖別で死亡。
●聖別で強化された人たち。
バンビ・キャンディ・BG9・バズビー・ナナナ・ポテトの六人が強化。
前四人は範囲攻撃で圧倒するため。ナナナはプロテクトの弱点を発見させるため。
ポテトは言わずもがなの総括となります。
代わりにリルトット・ミニーニャ・ジジ・蒼都が力と完聖体を奪われました。
リルトットは腕足だけで済みましたがミニーニャは下半身が巻き込まれて死亡。
ジジは行方不明(捕虜)、蒼都は死亡となっています。
なお雨竜は儀式中なので保留、ニャンゾルは護衛なので保留。
●オマケ浮竹の卍解
『
島のように巨大な魚が、敵味方を書き割りのような二次元空間に招く。
この裏の世界では二次元の様に単純化され、特殊性はただのパワーに変換。
ペルニダはただの強いクインシーになり、神経は扱いやすい鞭に過ぎなくなる。
この能力を使えば特殊性は静止するが、元から強い相手には意味がない。
なのでジェラルドやリジェではなく、ペルニダが対象になった。
●ヘーカ
一護・剣八が向かっていて、総隊長が姿を隠して見守り中。
いざとなれば全て焼き払える総隊長が伏札になることで、クインシー側を警戒させる。
この段階の陛下ならば一護や剣ちゃんの斬魄刀を折れないので、まだ勝てると目される。