転生したらハズレ斬魄刀の使い手だった件【完】   作:ノイラーテム

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予知能力

 後もう少しで目的地と言うところで彼方の空が輝いた。

原作で言うと完聖体が連鎖した時だというべきなのか、それとも聖別で誰かが強化された時だというべきなのか。

 

 あえて違うとしたら種類の違う絶叫が周囲に木霊したことくらいだろうか?

四つのエネルギーが前線で迸り、直ぐ近くでも二つ。近い方の片方は揺らぎが大きく、もう一つは微動だにせず霊圧の強大化だけを感じられた。

 

Take That You Fiend(これでも食らえ)!」

「ふふふはははーHAHAHA!!」

「……」

 最初の四つは判り易い。

凄まじい雷撃が天空を光で染め上げ、無数のミサイルがサーカスの様に踊り始める。

そしてマグマの様な炎が、空に掛け橋を造った。

 

それをやったのは稲妻の翼を持つ女であり、ヘリコプターのような異形。

そして見慣れた男がいつもの姿で炎の翼を広げている。

 

だが四人のうち最後の一人はどうにも歪な姿を晒していた。

 

「い……やーっ……!?」

「なんだ、ありゃ。姿がブレてやがる……」

 バンビの姿だけが一定化してない。

BG9のように機械化はしてないが……。その姿が元の姿から幼女まで明滅しながら移り変わっていた。

 

こんな姿は原作で見たことない。……ていうかロリ・バンビって誰得なんだ?

 

「さっさと制御しろよバンビ。てめーの力が一番この戦況におあつらえ向きなんだからよお」

「判ってるってば直ぐにあいつらを倒して……」

「お姉ちゃんたちに褒めてもらうんだ……」

「死ぬのはヤダ! ミニーは死んだ。リルだってあんなに頑張ってたのに、あたしも殺されちゃうの!?」

 姿が変遷し、心も移り変わっている。

建前と本音が入交り、明らかに幼児退行した言葉まで飛び交っていた。

 

そして雫の様に、あるいは涙の様に霊子が零れては周囲を爆発させていく。

 

「そういや暴走してるって言ってたな。そうか……もしかして」

「教えてもらえるとありがたいな。せっかくの戦力が不安定で困っているんだ」

 後もう少しで目的地。

それは逆に言えば、向こうが迎撃に出て来るなら直ぐにでも出会えるという事だ。

 

困った事に合流するはずのサポートが間に合っていない。

バカバカしいとは知りながら少し歓談して時間稼ぎに励むとする。

 

「てめーらの領地から出てくるときに制限時間とかないか? 死神や破面と違って死覇装……魂を固定化する装備がないだろ?」

 ここはソウル・ソサエイティ、全てが霊子で作られている世界。

一護たちだって霊子に肉体を変換して来ているのだ。体の芯がブレ、霊子に強制的に書き換えられて行っても仕方あるまい。死神だってその存在を固定化するために死覇装なんてものがあるのだ。防御機能なんざオマケである。

 

「許容時間はまだあったと思うが……。聖別で受け入れた霊子を制御できていないのかな」

「50が150になるのと400が500になるんじゃ意味がちげーよ」

 涼しい顔で首を傾げるハッシュヴァルト。

まあこいつには理解できないと思う。騎士団の長であり、陛下不在時の全権を預かる存在だ。霊子の制御に劣っているはずもない。天才ゆえの無知というやつだ。

 

 50が150になる場合、+100ではあるが総量は元の三倍である。

対して400が500になる場合、増えた量は元の三割弱に過ぎない。ハッシュヴァルトのような天才では想像もしなかったのだろう。この天然チートやろう、頭の中身ポテトなのも大概にしやがれ。

 

「そういうものかな? まあ良い。バンビエッタに関しては放っておけ。BG9、お前のザ・キリングフィールドで制御すればよい」

了解しました。総司令官閣下(ヤー・ヘル・コマンダン)!!!!」

 ハッシュヴァルトの命令にBG9は冷静なのだか興奮状態なのだか判らない返事を返してくる。

かなり遠距離の言葉なのに返事したから、大声を出しただけかもしれないが。

 

見ると雫の様に落ちていた霊子が、意思を持つかのように本隊の方へ向かっていた。

おそらくはザ・キリングフィールドというのは、放った力を誘導弾の様に使う能力なのだろう。完聖体化すると仲間の攻撃も誘導できるのだろうか?

 

「あ、こいつ、人の意見を参考にしやがって。汚ったねーぞ!」

「……そうだな。君が一撃入れるたびに、君の質問に答えようじゃないか。できるならば、だが」

 俺がツッコミを入れるとハッシュヴァルトは原作で見たこともないような笑顔を浮かべる。

何かしら企んでいるのか、逆に吹っ切れて戦いに専念したいのだろうか?

 

とはいえこいつには幸運と不運を入れ替える力がある。

どうしたものかと迷っていると、奴の方から切り掛かって来た!

 

「来ないならばこっちから行こう。ただ私は司令官でもある。同時に指示を出させてもらうがね」

「そうかよ! 随分と余裕だな!」

 浅い一撃は明らかに囮。

俺の攻撃を誘っているのに、ワザワザのってやる必要は無い。だが迷っていても仕方ないのでとにかく一撃入れてみる事にした。時間稼ぎをしつつ情報が得られるならば御の字だ。

 

まずは牽制の斬撃を刀の峰で跳ね上げながら、『<』字状に首を狙った斬撃を入れる。

首筋に浅い傷。追撃したいところだが、囮である以上は奴も次の一撃を放つはずだ。

 

盾の死角から放って来た蹴りに逆らわず態勢をワザと崩した。

そしてブリッジ気味に胸を反らすことで奴の本命である盾攻撃をかわし、こっちの蹴りで盾を蹴って飛びのいておく。

 

「今の傷は一撃に入れて良いのか? どうせ治療しちまうんだろうが」

「こちらも確認の意味合いがあったから構わないが……やはり起動しないか。面白い」

 俺が質問して良いのか確認すると、奴はサッパリした表情で頷いた。

そして不思議そうに盾に移した傷を眺める。

 

「そんじゃあコイツについてだ。なんで俺の刀に鍍金した? こいつは滅却師(クインシー)由来の銀だろ?」

「そうだ。君のお陰であの通路を思い付けた。まあ、その褒美のような物だな。死神と言う魔物退治には銀が良く似合う」

 俺が鍍金された龍紋の切っ先を見せると躊躇せずに頷く。

静止の銀とはいっていないこともあるだろうが、特に嘘を吐く気はないようだ。

 

(しかし先ほど機能しないと言ってたが、こっちにダメージを跳ね返しも写してもこねーな。小さな傷じゃあ効率悪いからか? それとも本当に機能不全なのか?)

 自分の不利になることを口にする必要は無い。

何か罠を仕掛けているのだろうが、このままではラチがあかない。それに……この銀メッキが静止の銀だとすると、奴の思惑が変わって来る。

 

仮にそうだとするとこのまま睨み合うべきではないだろう。

俺には陛下を倒すだけの霊圧がないこともあり、グダグダ羨むよりは、ハッシュヴァルトに傷をつけて有意義な質問をする方がマシかもしれない。

 

「俺のお陰だと?」

「それは次の質問をする権利を得てからにしてもらおう。それなりに意味があるのでね」

 爽やかな笑顔を浮かべたままハッシュヴァルトは切り掛かって来る。

やはり原作で見たこともなく、しかも俺に向ける意味がない。こいつに同性愛のケがないのは知ってるし、あったとしても標的はバズビーのはずだ。訳も判らずに決闘じみた戦いを繰り返す。

 

「そうさせてもらうさ!」

 まずは片手で切り結び、鍔競り合いの途中で両手を添える。

突如変わったバランスに盾で殴ろうとした奴は眉を顰め、盾を胸の前に移して俺の追撃を遮りに掛かった。

 

「温いな。時間が掛かれば状況は変わるぞ? 例えば……ナナナ! そろそろのはずだ」

「ビンゴだぜ! 術式の弱点が見えて来たところだ!!」

「しまった! 強化した奴の中に、弱点看破使いが居たのかよ!」

 俺はその軌道で刀を振らず、自ら倒れつつ盾を無視する。

そして立ち上がりながら逆袈裟で奴の剣に浴びせるが、ハッシュヴァルトは無視して厄介な奴に声を掛けた。

 

だが、その力は俺に向かったモノではない。

ナナナ・ナジャークープの力は相手の防御を下げ、あるいは麻痺させるものだ。俺を捉えていれば楽に倒せたはずなのだが……。

 

「ちっ! 仕方ねえ。本気で行くぞ! 質問に答えやがれ!」

「……良いだろう。『その時』が来た。これが未来を見るという事だ」

 俺に『無防備』の力が向けられなかったこともあり、なんとかなった。

衝撃が消えぬままに同じ場所を切りつけ、先ほど鍔競り合いで造った隙を広げて、隙間を縫うように刺突を入れる。

 

天へ龍が登るような道筋ができたのは、その時だった。

 

「一定以上の能力と言う物はパズルのようなものだ。私のザ・バランスは幸運と不運を入れ替えるが、運の寄らない君の攻撃は入れ替えることができない。同じように……能力をパズルのように使えば、道は開けてくる!」

「まさか……。弱点看破をセキュリティに使いやがったのか!?」

 思いもしなかったが、術式のセキュリティに無防備が効くならば予定時間を早められるだろう。

マッドを含めて奴らが総力を結集しても時間は掛かるし、陛下が参加しなければ時間は掛かると踏んでいた。

 

だが、親衛隊を始末してまで得た能力をその為に使うとは思わなかった。

ということは前線の四人に与えた力は、あくまで時間稼ぎのオマケのようなものなのだろう。

 

「絶望するが良い! ナナナ、ニャンゾルを連れて陛下の露払いをしろ。私と雨竜は奴らが用意している対滅却師(クインシー)結界を潰してから行く」

「嘘……だろ。そいつまで見抜いたってのかよ!?」

 原作で伊勢さんが身に着けた対滅却師(クインシー)結界。

ハッシュヴァルトはご丁寧に『自分以外が覚える事が可能な様に洗練すべきだった』みたいな事を得意げに告げていた。

 

だから俺は対策会議に伊勢さんが考案していると言った時、雛森ほか得意な連中を紹介して大規模に開発していたのだ。原作で見抜かれた様子はなかったので、安心していたのだが……。ハッキリいってこいつはショックだった。

 

「くそっ……最後の最後で僕に負担を押し付けたな……」

「へへへ。ここまで先を読んでるたあ流石は次期皇帝陛下。怖い怖い。それじゃあ先に活かせてもらうぜ」

 どうやら石田も儀式に参加していたが相当疲労している。

石田を疲れさせて反逆を防ぐつもりなのか、単にナナナと違って強化されてない事が影響しているのか分からない。だがかなりマズイ状況なのは間違いがない。

 

っていうか、親衛隊を復活させなかったとしても……。

零番隊と範囲攻撃って相性悪いよね? 立ち上がりの速いバーンデッキは対処に困るというのがカードゲームでは良くある話だ。

 

「ちっ。迷ってる暇はねえようだな。……燃え上がれ龍紋!」

 本当のことを言えば卍解で奴の防御を突破したい。

だが確定しているから運が挟まる寄りが無いというならば、ソレを実行できるのはこの状態までだ。奴が静血装を使っていない一瞬を突いて倒すしかないだろう。

 

「そうだ。それが見たかった。滅却師(クインシー)で最も剣を得意とする私を上回り、追随を許さぬほどの剣腕。是非に見せて欲しいものだ」

「そうしてやるよ。時間切れにならねえ内にな」

 陛下たちが滅却師(クインシー)だけで上に行っても駄目、ハッシュヴァルトが聖別されても駄目。

二重の意味で面倒くさい戦いが始まろうとしていた。

 

最初は先ほどの焼き直しから。

奴の刃と鍔競り合い。ただし片手のままで圧倒して見せる。

 

龍紋の解放で強化された体力で筋力を強化するのみならず、柄を掴む指に絶妙な力を掛けることで把握力を増したのだ。

 

「重い……その斬魄刀の力か」

「そうだ。そして、ここからが真骨頂だぜ?」

 体力が増えるという事は別に馬鹿力だけが売りではない。

鍔競り合いの態勢のまま刃を刃の上で走らせ、奴が一番バランスを重視してないところを把握。その段階で俺は体を入れて踏み込んだ。

 

皮肉にも斬術指南ではなく剣術指南として培った経験だ。

俺は何人もの死神を相手することで、鍔競り合いの経験だけでも相当なもんだと自負している。というか鍔競り合いなんか狙わねえと普通は起きないからな?

 

「鍔競り合いの最中に腕相撲ってのは初めてだろ?」

「くっ。刃筋が流される。面白い。上には上が居るという事実。その相手に剣腕以外でならば有利だという事実。そして今まで見向きもしなかった、剣戟中の中に行程を入れるという作業!」

 このままでも斬れる。

だがそこに意味はない。もはやこの程度では何も答えてくれないだろう。揚げ足を取れば口にするかもしれないが、真実を保証するすべはない。あくまで奴を満足させつつ、深いダメージを与える必要があるだろう。

 

奴が盾の裏で何かしているのは判るので、ひとまず小さな弓を作っているのだと思っておく。そして盾で強打と見せかけて、放って来たところで転がった。立ち上がって逆袈裟というところまでは同じだが、狙うはその手前。ソニックブレードを放ったのだ。

 

そして放った剣圧に追いつき第二撃。

焼き直しでありながら別の行程。そして両手を添えて無解号で龍紋の長さを一瞬だけ伸ばす。即座にサイズを戻そうとするが流石に神槍ほどの速度では戻らない、奴が二発目の矢を放ったところでワザを受ける事にした。

 

「痛てえ! だが耐えられねえほどじゃねえ!」

「貫通してるんだぞ!? 狂ってる。だが納得はできる。私の切り替えに間に合わないと判断したのか」

 もし避けてから放ったのでは確実では無かった。

どうせ反射されるのであれば、自分の攻撃を二倍喰らうよりは良い。奴が静血装を解いていたら、喉元にキツイのを一発入れていられたはずだ。

 

「勉強になる。物事を為すには犠牲無くして進めない事が良く判った」

「俺と同じでワザと受けたのか。そうだよな、防御を固めりゃ刃はそれほど通らねえ」

 相変わらず奴は静血装を解きもしねえ。

それでも先ほどよりダメージを与えられたのは、龍紋を伸ばした分だけ大きさと霊圧が一瞬上がったからだ。とはいえ隙をワザと作った分のダメージを考えれば、元が取れるかは怪しい所だが。

 

「褒美だ、次の質問をするが良い。だが急げよ……陛下は今まさに、霊王宮に向かわんとされている」

「仕方ねえ。……ひっかけを交えて聞きたかったんだが時間が足りねえか」

 正直に答えるとは限らない。

だからなんとか引っ掛けておきたかったが、ここで賭けに出るしかないだろう。どっちみち一護や剣八が突き放されたなら手詰まりだ。

 

「このメッキ。石田家の開発した静止の銀だな?」

「その通り。……私も今、思い出したよ。そうか……君から攻撃を受けることを開放のキーにしていたのか」

 帰ってきた答えは意味不明な物だった。

何かの賭けをハッシュヴァルトもしていたらしい。

 

だが……ユーハバッハが儀式で造った道に踏み込むところだった。

何かを計画していたとしても、聞き出すのが少し遅かったのかもしれない。




 最終戦の前編です。一角はハッシュヴァルトと戦って終了予定。

●聖別による異形化
 いきなり霊子が増えたけど親衛隊ほど自我が確立してないので仕方ないですね。
キャンディス:ネコ目になって翼や服装が無数の稲妻になる。(まとも)
BG9:ヘリコプター化。(異形枠)
バズビー:原作のまま。(変化なしだけど、ちょっともらった力が少ないの)
バンビ:姿が異形化し小学生から大学生まで姿が変遷していく。(暴走枠)
ナナナ:ゴーグルが目玉になり、弱点を見抜き易くなる。翼がオセロ。
ポテト:たくさん増えたけどまるで変わってない。

『ザ・キリングフィールド』
 今週の捏造能力。弾丸やミサイルの機動を自在に操る。
完聖体と強化により、味方の攻撃も操れるようになる。
なお相手によっては跳弾の方が効くというオチも。(殺気を読める人は)

●対クインシー結界
 七緒さんが覚えてた術。
一角の入れ知恵で大規模化の術と、強固にした術の二種類を造った。
ユーゴ戦のサポーターは彼女なのだが……。そこまで大規模にすると予知できるよね?
●一撃入れるたびに質問に答えよう
 答える義理はないですな。ただ時間稼ぎには成ります。
ただし記憶を封じておき、一撃入れるたびに思い出す仕掛けを造ることもできます。
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