転生したらハズレ斬魄刀の使い手だった件【完】   作:ノイラーテム

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終末にして、創造の剣

 静止の銀の存在について機能面での謎と、出自についての謎がある。

 

前者についてはそれほど悩まなくても済む。

滅却師(クインシー)の霊装技術……それも生態を経由するモノが異様に発達している事を考えれば、何かしらヤバイ薬でも使っていると推測できる。それが聖別によって吸い上げられる過程で、作用だか反作用が一点に集中したのだろう。鏃にして撃ち込めば過供給なり反発が起きてショートするのも頷ける。

 

問題なのは後者、何者が影響を与えたのかと言う事である。

石田竜弦が完成させたのは間違いがないが、本当に彼が独力で完成させたのか? それとも親の宗弦や他の滅却師(クインシー)なのか? その答えが目の前にあるような気がした。

 

「てめえが供給元か。ならもう一組あってもおかしくねえだろうよ」

「その回答は半分ほど正解かな。私はヒントが正しく渡るようにしただけだ。元より石田宗弦は帝国のありように疑問を抱いていた。それに私が直接手を出しては色々と問題が出る」

 先ほどまでのやり取りが嘘のようにハッシュヴァルトは口を開き始めた。

もはや死合をやって剣技を繰り出し合う必要はないと言わんばかりだが、不思議と静かな殺意はそのままだ。先ほどまでは笑顔が不思議だったが、今度はその殺意が不思議である。

 

「ジ・オールマイティーは予知能力だけではない。未来を改変する力がある。だがその方法は独特でね、判るかな?」

「自分が干渉した結果で良い未来を築き、紐付ける。紐付けたことで扱い易くなった未来を吸収するんだろ? だから知らない事実は覆せねえ」

 自分が関与可能な範囲では全知全能だが、関与不能な事ではそうでもない。

だから石田竜弦は舞台に上がらないことで、ユーハバッハの予知から外れた。石田雨竜は視界外から撃ち込むことで回避しようとする意思を突破した(静血装での防御は静止の銀で突破できる)。

 

ゆえにジ・オールマイティーに察知されないためには、ギリギリまで関与を控える必要がある。

滅却師(クインシー)結界に気が付かれたのは、作戦の一環として組み込んでしまったからだ。伊勢さんを操って仕掛けさせれば、もしかしたらワンチャンあったかもしれない。

 

「その通り。だからこそ私たちは記憶を封じていた。君に斬られるまで私もバズも雨竜も全てを忘れている。今が……その解放の時……だ」

「っ!? 急に疲労した!?」

 ハッシュヴァルトの顔色が急に悪くなり、今にも膝を着きそうになる。

もしかして静血装を張ってなくて出血させていたのかと思ったが、そういう訳でもない。

 

代わりに飛び出し、元気に走りながら霊圧を上げて行くのは石田であった。

 

「石田!?」

「話は後だ! アンチサーシス!」

 石田の力が天へと掛かる光の橋に及んだ時。

その現象は突如として正常に戻った。おそらくは破壊でも消去でもなく、儀式の行使後と前の状態を入れ替えたのだ。まだこれだけの力を発揮できるのも驚きだが、不自然だからこそ理解できることもある。おそらくはハッシュヴァルトが霊子を譲り渡したのだろう。

 

「どういうことだ?」

「ジ・オールマイティーは万能の様に見えるが、まったく関与の方法がない、関与しても意味がない事であれば機能しない。そして考えてもおらず、実行できないことも予知しない」

 奴の言う事を信じるのであれば、石田もまた記憶が封じられていたらしい。

急に役目を思い出したのか、あるいは目の前の大問題を見て咄嗟に判断したのか。どちらにせよ、ユーハバッハは予知できない状況だ。

 

そして儀式後とその前を入れ変えるのであれば、まったく干渉する意味がない。

連中が操作していた『道』は一方通行で下に降りるだけだ。この道に干渉しても降下速度が変わるだけ、道を吸収しても下に落ちるだけでしかない。石田の行動そのものを止めようにもユーハバッハ本人はとっくに移動中である。

 

「そして間に合わない筈だった、破棄される予定だった対滅却師(クインシー)結界が起動する。それでチェックメイト、吸血鬼狩りの始まりだ」

「あれは疑似六重詠唱? てーことは大前田のおやっさんか! 鬼道長や雛森も……」

 六枚の断空が霊子の矢を無力化しながらユーハバッハへの援護を喰い止める。

同時に総隊長らしき霊圧が膨れ上がり、その後ろに居た別の誰かが何らかの結界が起動するのが伺えた。邪魔するはずだったハッシュヴァルトや石田は何もしてないので作戦通りに発動しているのだ。

 

そして俺たちが戦っているエリアの周辺にも、同様の結界が広がっていく。

 

「斑目指南、遅れました」

「助かったよ。もしかしたら……、コレで説得できるかもしれねえが……」

 伊勢さんが到着し原作でも見た結界を起動する。

その内部に似たような結界が発生するが、発展形で能力を抑える物だろう。

 

「なあ、ユーハバッハを吸血鬼って呼ぶってことは、最初から反乱起こす気だったんだろ? だったら……」

「無理だ。それに頷くには幾つもの障害がある」

 爽やかな笑顔に皮肉気なモノが入り混じる。

先ほどから続く殺意から考えても、此処で終わるはずはないのは良く判っていたが……。

 

「まだキャスリングの可能性があるだろう? 私をベースに再生される可能性を打ち消すには、常に静止の銀の影響下にある必要がある。それに……」

「それで俺の刀にメッキを……。それに、なんだ?」

 ジ・オールマイティーをハッシュヴァルトが預かることがある。

知性や叡智を復活させてない間に預かり、帝国を導くための処置だ。だが同時に、ハッシュヴァルトにユーハバッハと言う自我が紐付けられていることもである。

 

この状態で俺が静止の銀を塗った刀で奴と死合っていれば、こちらの道もまた閉すことができるということなのだろう。

 

「あの吸血鬼を退治したならば、私は皇帝ということだ。戦っている部下がいるのに逃げ出せないとは言うまい。……だが、道を示す必要がある!!」

「判ったよ。能書きはもういいよな」

 俺たちは誰にも促されることなく前に出た。

この期に及んで勝負する必要ないなんて嘘だ。一度始めたら決着つくまでやりたいのが戦士のサガである。そこに御大層な理由があるならば止める理由もないだろう。

 

出入りを止める結界の中に俺が自ら侵入し、決着をつけるための戦いを開始した。

 

「能力は下がっちまったようだが、手加減はしねえぞ」

「ふっ。だからこそやり様はあるという物だ。それが剣術というものだろう?」

 結界の中では全力防御しても意味がない。

先ほどまでカスリ傷だったものが、今では軽傷くらいにはなるはずだ。俺の方が手数が多いので、繰り返せばあっという間に血だらけである。

 

だからこそ奴は静血装を起動しっぱなしということはせず、適宜に配分して攻め掛かって来た!

 

 先ほどまでの戦いが策謀の一環であるならば、ここからはハッシュヴァルトとしての意地なのだろう。笑顔ではなく吹っ切れてはいるが、どこか緊張の入った表情だった。

 

「もう無いかもしれねえ機会だ。愉しんでいこうぜ、皇帝陛下!!」

「そういう訳にはいかないな!」

 刃と刃を打ち鳴らし鍔競り合いに持ち込む。

当然ながら焼き直しではないのでお互いに一工夫を入れながら打ち合った。

 

俺は身を翻して盾に体当たりを掛けつつ、不自然な態勢でありながらも今まで以上の力を入れる。

二点に力が掛かる奇妙な状態にも関わらず、ハッシュヴァルトは僅かに後退して力の作用を一点に絞った。

 

「聞け! 生き残りし全ての同胞よ! 陛下亡き後、私が指揮を執る。バズビーを先頭に包囲網を打ち破れ!」

 奴は盾で俺の動きを誘導しながら、どうにか腕を自由にして鍔競り合いを打ち切った。

そのまま盾を引いて斜めに剣閃を浴びせて来るが、さっきの不自然な態勢はこの状況を奴の手で作り出させるものだ。慌てる必要などない。

 

俺も斜め下からすれ違うようにして一閃、その途中で軽く跳ね上げて奴の軌道は逸らせる。

奴の刃は俺のすぐ横を薙ぎ、俺の刃は腹を切り割くはずだった。いや、確かに切り裂いたのだ。

 

だが奴の傷は思ったよりも深い。

おかしいと思った瞬間に、こちらにその傷が移って来た。それも同じような傷がもう一つ。

 

「何? まさかここに来て機能し始めただと?」

「手を抜いていたわけではないよ。安全圏に引き籠るのを止めて、まともな勝負に出たことで霊圧操作に運不運が出て来たんだ」

 ザ・バランスによる幸運と不運の入れ替え。

これに加えて盾の機能を使う事で、こちらの攻撃を二倍にして跳ね返してくる。今まで機能しなかったコンボだが、奴の言葉を信じるならば異様な戦闘法だった。

 

「まさか……。てめえ、霊圧操作が間に合うかどうかの博打をしやがったのか」

「そうだ。私は剣の勝負だけではなく、静血装と動血装の切り替えを瞬間的に行っている。綱渡りだが……どうやら君は運が良いらしい」

 静血装を全開にしても防げないし、確定事項だから入れ替えれない。

だが間に合うか危い状態で切り替えを行っていれば、そこに運不運が挟まる余地がある。大抵の奴ならば俺の方が確実に隙間へ差し込めるが、ハッシュヴァルトならば良い勝負ができるだろう。

 

「まさか俺がツイてるって事実がこんな所で裏目に出るたあなあ。しかし、そいつは一歩間違えば死にかねないぞ?」

「博打は痛い目に合うから面白い。前にそう聞いたことがあってね。いや、未来の君から聞いたんだったかな?」

 今のは軽傷だから奴も平気な顔をしていられる。

だがこれが間に合わないほど、あるいは集中力を乱されるほどの致命傷だったら話は別だ。手を抜いたら一瞬で意識が削がれることもあり得るし、俺がその隙を見逃すはずはねえ。

 

「てめえも狂ってるよ。よくもまあそこまでダチ公の為に命を懸けられるもんだ」

「これまで散々欺いてきた反動さ。掛け替えのない親友の為に命を張りたくなった」

 自嘲気味だが緊張感がほぐれて良い笑顔に成っている。

実に清々しい独りよがりだ。今の奮戦がバズビーに届くはずがない。

 

だからこそ、俺は奴が自分の為に愉しんでいると理解できた。

情けは人の為にあるんじゃない。巡り巡って自分のため、結果的に周囲の為に成ればよいんだ。

 

「キャンディス! バズビーの開けた穴を広げろ! BG9に殿軍を任せる!」

「「Ja!!!」」

 見れば天空に炎の柱。

その穴の中をゾルダート達の生き残りが走り、その上からキャンディスが雷撃を放って近づく死神を牽制している。ヘリコプターは追いすがる隊長格を牽制するために必死で応戦しているようだ。

 

「逃がしてやりてえところだが、そうもいかねえしスッキリしねえ。運が良かったら捕虜にしてやるから取引でもするんだな」

「願い下げだね。それでは吸血鬼が復活するかもしれない。私は絶望の中で希望を求めて銀の剣を振るう!」

 俺たちは笑って最後の一撃の為に準備運動をすることにした。

奴が振るう高速の剣を、後から動き出した俺の斬魄刀が打ち落とす。そこから隙間を狙って首を狙う一撃には、流石に盾で防いで血装を間に合わせた。

 

傷をこちらに移す小さな隙。

そこを狙って俺は身を翻し、連続で三度の刺突を放った。

 

「やっと穴が判って来たぜ。てめえは傷を移せても、出血による体力までは入れ替えられねえ」

 奴はどうして盾を構えているのか?

それは盾の能力が強いからではない。傷を移す行為には幾つかの穴があるからだ。

 

まず認識している攻撃一つ、または一括りの連続攻撃のみ。

だから三度の刺突は防いだり反射はできる。だが、三度に隠した慮外の四撃目はどうしようもない。だからこそ普段は盾で状況をコントロールしているのだ。そして血を失ってフラフラな意識は当然の事象なのでどうしようもない。当然、崩れた態勢は言わずもがなだ。

 

「こちらもようやくわかって来た。君の攻撃は速いんじゃなくて早い。所作に無駄がないんだ」

「そうさ。俺の攻撃は言うほど速くねえ。他人の半分の隙で、他人の半分の予備動作で、他人の半分のタメ。それを組み合わせてるのに、不思議と半分の速度にしかならねえんだ」

 攻撃は速ければ速い程良いという物ではない。

当たらなければ意味がないし、当たってもこうして反射されては意味がない。反射を躊躇う程の重傷であり、あるいは軽傷でも次につながる一撃でありさえすればいい。

 

「小動物は人間よりも早い思考速度と初動があるんだったか。なるほど、まともにやって勝てない筈だ」

「おうよ。一寸の虫にも五分の魂ってな」

 いきなり剣豪が切り掛かれば、燕だろうが蠅だろうが切り捨てられる。

だが今から斬るというサインを出して切り掛かっても無理だ。奴らはこちらの剣が届く前に、そもそもこちらの刃の範囲から逃れているのだ。究極の後の先は、後から動いて先の先よりも早いという感じだろうか。

 

「さて、そろそろ終わりにしよう。私も合流しないといけないのでね」

「名残惜しいがそうすっか」

 滅却師(クインシー)たちの生き残りが一気に郊外に向かった。

そこからどう生き延びるのか知らないが、俺の知ったことじゃねえ。外伝小説を読んでないこともあるが、俺には剣の届く範囲しか興味がないんだ。

 

「てめえは滅却師(クインシー)最終形態(レットシュテール)を使う」

「ふふ……。死神に予知されたのは初めてだ。君の卍解は、龍紋鬼灯丸と言うのだったか」

 俺が霊圧を上げて行くと奴は盾を捨てて剣を両手で構えた。

卍解を開放し両手にずしりと言う重みが加わり、対して奴の周囲が全て失われていく。真央霊術院の一部であったものが消え、その全てが一枚の翼に変わった。

 

天を覆う程の光の剣。

それを見て俺はかつてないほどの笑みを浮かべる。

 

「その剣は絶望が深い程、夜の闇が濃い程に燦然と輝く銀の剣。ゆえに希望と言う……だったかな。番組が違うが見れて満足だ」

「私はこう呼びたい。終末にして創世の剣……BLEACHと」

 あまりにも巨大な剣の出現に護庭の全員が止まった。

このままでは巻き込まれる。そう思って追撃の手が止まる。その切っ先の前であり、対峙するのは俺ってことだ。

 

誰よりも前に出て、誰よりも強い奴と出会う。

 

死合いって奴はこうじゃねえと面白くねえよな。

 

「「さあ!」」

「「これが最後の一撃だ!!」

 互いの剣が一閃される。

もはや全ての余技は必要ない。ただ振り抜くだけで良い。

 

そして互いの一撃が炸裂し合う。

俺の一撃は奴を切り殺し、奴の一撃は俺ごと霊術院を切り割いていく。

 

それほどの一撃を受けて俺が生きているのは大した理由じゃない。

 

奴には守るモノがあり、可能ならば自分も脱出するための時間を稼がねばらない。目晦ましも含めた横薙ぎの一閃。

 

俺には守るモノがなく、ただ自分が愉しむだけ。縦に振り下ろす殺人の一閃であれば良い。

 

どちらが先に届くのかは言うまでもない。

俺の一撃が先に決まった分だけ奴の攻撃が弱まり、その事を理解した奴は笑って目晦ましにこそ力を注いだのだ。

 

試合にも勝負にも俺が勝ったが、それは俺が身勝手な戦士であったからだ。

だが勇敢で理知的な皇帝にとって、味方が生き延び民が蘇るのであれば、それはそれでまた勝利であろう。

 

そこに価値の差などないのだから。




 という訳で一応の最終回です。
次回はエピローグというか、その後にどうなったか?
あとは何か書きたいことがあれば、外伝を書く程度かと思います。

●静止の銀について
 あまりにもクインシーの技術が進んでおり、しかも血管を通してるとか
最終形態以上の完聖体があり、それもユニット化して扱い易そう。しかも聖別で奪える。
とか便利過ぎたので、むしろヤバイ薬を投与しているのだと判断しました。
聖別でこのコントロールするしやすくする薬を過剰反応させてしまい、血栓ができる。と。

そしてユーゴがヒントを渡したとか言ってるのは想像ですが、一応の理屈はあります。
静止の銀は聖別した相手の血と混ぜることでその者の能力を一瞬止めるとあります。
しかしクインシーの能力を止めるのではなく、聖別した者。というのは不思議です。
これを判断できるのって、作者を除けば未来を見れる陛下とユーゴだけですよね。

●記憶封鎖による未来予知・未来改変の脱却
 原作でも知らないことは改変してません。
あくまで新卍解の脅威を知って先に折るとかですしね。
なので自分の手で関与したことが改変可能な範囲だとしておきます。

まあ原作よりも早く進んでるので、この時点での陛下はあまり強くないのですが。
後はクインシーの能力を下げる結界込みで、総隊長・剣八・一護がぼこぼこにするだけ。

●ユーゴとの二戦目
 対クインシー結界や疲労もあって静血装でも防ぎきれないので戦術を変更。
血装の切り替えを勝負に持ち込むことで、運不運を介入させてザ・バランスを起動。
一歩間違ったら一撃で終わる戦いながら、上手くやって一角に上回っています。
「俺はツイてる!」
「君は幸運だなあ。じゃあ私の不運をあげよう」

その後はクインシー全員を助け出して、しかもできれば死神と話し合う余地を残したい。
そんな贅沢な悩みをユーゴが持ったことで、ギリギリの勝負ではなくなりました。
なので単純に戦いたいだけの一角が勝利。
でも仲間も逃げてるし、満足できたのでユーゴもまた勝利です。

なお完聖体ではなく滅却師最終形態を使ってる理由は簡単で
前者はユニト化しているがゆえに同時操作が難しく、後者は古い物の操作力が多いため。
そしてユーハバッハが最後の賭けをして、体のコントロールを奪っても意味なくするためです。
(ユーハバッハは三重苦なので、奪い続ける能力がないと自滅する)

●終末にして、創世の剣。BLEACH
 ブリーチという名前が使いたかっただけです。
後はここで一切を白紙にして、仕切り直すという感じですね。
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