転生したらハズレ斬魄刀の使い手だった件【完】   作:ノイラーテム

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ソード・ダンサー

●アバヨ剣術、また来て死客

 剣術を覚えてもあまり強くならないことには愕然とした。

良く考えたら霊圧によるオサレバトルの世界に、地味な剣術など意味が薄いのだろう。

 

もちろん同格同士では大いに意味がある。

顔を突き合わせる死神同士の野仕合などでは、護廷十三隊に正式な所属もしてない新米にも関わらず、俺はかなり強い方だった。

 

「コイツのお陰で強かったともいえるし、気が付くのが遅れたとも言えるな。まあ最悪の事態じゃねえ。ラッキーでいっか」

 全ての元凶は斬魄刀である龍紋の始解だ。

徐々に肉体強度と霊圧が上がる為、一太刀浴びせるだけで十分にダメージが通せたのだ。要するにソレを剣術を覚えて強くなったのだと誤解していたらしい。

 

「逆に考えりゃ、斬術を覚え直すだけで十分に強く成れるわけだしな。やっぱりラッキーだぜ」

 俺は深刻に考えるよりも楽観的に考える現金なタチだ。

時間は有限なので惜しいとはいえるが、死ななきゃ幾らでも鍛え直せる。それに明確な目標が決まったという事は、余計な考えで悩む時間も不要だという事でもある。

 

「よーし! そうと判ればさっそく特訓だな。弓親が戻るまでに素振り百回でも……」

「むーり♪」

 素振りに合わせて霊圧を集中させようとブンブンやってると、楽しそうに弓親が戻って来た。

一回目よりも二回目、三回目と振るたびに強くなっている気がした直後なので、とてもガックリ来る。まあ戦ってたのは雑魚ばかりだし、瑠璃色孔雀を開放したら一瞬だろうから仕方ないのだろうが。

 

「一角ってばゴキケンじゃない」

「まーな。てめーも技に手応えでもあったみてえだな」

 お互いに秘密特訓なので特に報告し合う事もない。

何となく察せるところはあるかもしれないが、やはりお互いに突っ込まないのが義理という物だ。

 

 

「見事に腰掛としていきましたね。いつでも他の隊に移れますよ」

「それも教官殿のお陰であります。これまでご教授ありがとうございました」

 この日も帰りに四番隊へ顔を出し、収穫した素材を提出する。

基本的に四番隊は直接戦闘しないので、収集ノルマは年間を通して行う物だ。

 

だが俺らは回道修行の為に在籍する気マンマンなので、修行がてらにサッサと納入したという訳である。

 

しかし俺が剣術と斬術の差に気が付けなかったのは、この人……卯ノ花隊長のお陰でもある。

俺が修行している姿を見ているはずなのに、ちっとも忠告してくれなかった。まあ隊長は忙しいし霊術院の講義でチラっとみただけ、そのままやって来た新米の面倒を見るはずもないので当然ではあるが。

 

(……もしかしたら、昔を懐かしんでいたのかもな。能力に天と地の差があったとしても、新しい剣術の開発なんだし)

 卯ノ花隊長は御存じ初代剣八という秘密持ちであるが(矛盾ではなく加年での忘却)。

全ての流派やら剣の流れ……要するに剣理は我が手に有りと、八千流と名乗ったそうだ。俺が調子に乗って剣術の基礎だけ上げてるの見て微笑ましく見守っていた可能性もある。

 

まあそれもここまでなので、気にすることもないのだが。

 

「過去にも四番隊への在籍をあくまで経過と捉えている者はおりましたが、ここまで明確な腰掛にする人も珍しいですね。何を望んでいるのですか?」

「そりゃあ俺より強い奴に逢いに行くってやつですよ」

 珍しく新米相手に言葉を重ねる卯ノ花隊長に俺は本心を吐露した。

ゲームで見てから行ってみたいセリフでもあったが、せっかく転生したのだ。自分の力がどこまでいけるか試す以上に楽しいことはないだろう。

 

「やられて死ぬのは仕方ありませんが、それで戦えなくなるのは惜しいですから。できるだけ愉しんでやろうと……おっと。失礼を申しました」

「言葉は飾らなくとも良いのですよ。実に佳いことです」

 ソレが卯ノ花隊長の望みでもあるのだろう。

裏表のない微笑みを見ることができた。この表情を表の意味だけ見てる奴が多いんだろうなーと、原作読者として内心でドヤ顔をさせてもらった。

 

ともあれ在籍というものは大きな事であり、腰掛にして移籍するのは会社のみならず嫌われる。

それを笑顔で送り出してくれる卯ノ花隊長には感謝しかなく、せっかく声をかけていただいたので深く頭を下げておくことにした。

 

「ちょいとヤバイくらい強い奴の噂を聞いたんで確かめてきます。本物なら勧誘してきますが、死んだら笑ってやってください。またお目に掛かれるかは判りませんが、これまでのご指導ご鞭撻。誠にありがとうございました」

「気にすることはありません。その人とともにまた逢いましょう」

 さりげなく更木剣八の所在を掴んだことを告げると、微笑みの闇が濃くなった。

 

もしかして察してるどころか嫉妬していらっしゃる?

……卯ノ花隊長が嫉妬マスクになって殺意を覚える前に、丁寧に辞することにした。

 

剣八と戦って生き残れるかは運不運も関わると思うので、改めて一期一会の礼をして下がる。

 

背中に感じる殺意の霊圧を受けながら、俺は避けては通れぬ……。いや、待望の剣八戦へと挑む。

 

●来いよ剣八! 挑戦者アリ!

 集めた情報で居所や動きを確定させつつ、突貫で斬術の稽古に励んだ。

素振りに霊圧を載せるとこから始まり、動かない目標相手ならば走術から至る斬撃に載せられるところまでを達成してタイムアップ。

 

いよいよ剣八の所在を掴んだので、後はぶっつけ本番で実践訓練するしかない。

 

「いよう! この辺で一番強いんだってな! てめえと戦ってみたかった!」

「あ? 取り込み中だ。気にするなら後にしろ。気にしねえならまとめて掛かって来な」

 更木剣八はいつものように誰かと戦っていた。

たいていは犯罪者だったり(ホロウ)だったりするので、気にせずにダイナミック・エントリー。蹴り飛ばして挑戦した所、別の相手と切り合っていた。

 

「それじゃあ後でタイマンしようぜ! 約束したかんな! 聞いてねえとか言うんじゃねーぞ」

「ウルセエ野郎だな。口より手を動かして愉しんでろよ」

 どう見てもカタギじゃない武装している連中を蹴散らしていく。

どう考えても選り分けて戦っているようには見えないので、攻撃可能な位置には入らずにその他大勢を蹴散らしていった。

 

「見たか俺の方が倒した相手は多いぜ」

「知るか。お前が勝手に割り込んで、獲物を喰ったくせによ」

 そして邪魔者をギャラリーに変えると、お互いに次の獲物を求めて相対した。

 

「俺は班目一角。ひとかどの男って感じの意味だと思えばいい。てめえは聞いてるぜ。更木で一番なんだってな! さあやろうぜ、ザラキィィィ!」

「ちったあ静かにできねえのかよ。しかしなんだな……。いいぜ、オレは更木だ!」

 間の距離ももどかしく、一気に走り込んで死神(シジン)剣を浴びせた。

刀で弾かれて掠った程度だが、やはり手応えが硬てえ。

 

直撃じゃねえとダメージを与えられない。そう踏んだ俺は一回ごとに異なる半歩のリズムを刻み踊る様に攻撃してみた。

 

「シャアア!」

「なんだ? 見た目とタイミングが違うのか? やるじゃねえか。もう一回やってみろよ」

 同じ半歩でも踏み込みが異なる。

一回目は10cm、二回目は20cm。三回目は15cm程度と攻撃直前にステップを変えて直撃させた。

 

なのにちっとも効いた様子はなく、『あー驚いた』程度の揺らぎしか感じていないようだ。

 

「チッ。いきなり見切りやがったってか? いいぜ、連撃でよけりゃあ見せてやらあ」

「能書きは良いっつってんだろ」

 次なる打ち込みはいきなり容易く弾かれ、予想して居なかったら大変なことになっていただろう。反撃を最低限食らって我慢しつつ、両手に構え直して右斜め上から左下に抜ける袈裟斬りを浴びせた。

 

「お? 今のは手元で伸びたな。別の技を組み合わせたってのか」

「そうだが……。なんで一の太刀を受けて無事なんだ? 最低限で済ませたこっちの方がよほど食らってんぞ」

 振り切った俺の刀は左手に持ち替えていた。

両手で柄元を抑えてから、左手一本で振り下ろす時には柄尻を握り締める基礎にして奥義に当たるフェイントの一つだ。

 

一の太刀というのは本来、一撃で決める渾身の一撃ないしフェイント技である。食らって無事な方がおかしいのだ。

 

「昔を思い出してちっとばっかし楽しくなってきやがったな。盛り上がっていこうじゃええか!」

「これでも強くなったつもりなんだがよ。自信なくすわあ。……まってめえを斬れば新しい自慢話もできるか!」

 今度は剣八の方から切り掛かってきた。

俺は自ら奴の方に倒れ込み、予想以上のタイミングですれ違う。縮地の理論には幾つかあるが、間合いを誤魔化すタイプの縮地に当たる。

 

そのまま倒れる寸前に起き上がり、回転を掛けて脇の辺りにある筋肉を狙った。

回転を掛けることで勢いを増し、かつ、刀の動きが予想よりも小さいのにフルスイング可能なのだ。

 

「よしっ。一角が巻打ちから流し斬りを完全に決めたね!」

「まだだ。つーかその解説は止めろ。フラグにしか聞こえねーだろうがよ」

 技名なんか連呼しないので、知り合いは俺の技を勝手に呼んでいた。

それにしても巻打ちはともかく、流し斬りはねーだろう。確かに流れるような動きで剣速を高めつつ、急所を狙う技なんだが……。どこかのゲームを思い出して気が気でない。

 

「ふう。今のは効いたぜ。……だいぶ掴めて来たな。てめえの技はタイミングと方向をずらすだけで、正面から来るってのは同じな訳だ」

「逃げ回って勝っても楽しくねーからな。斬ったり斬られたりするのは好きだがよ」

 恐ろしいことにこれまでの攻防で全部暴かれた。

なんか相手の方に才能があり過ぎて、剣術でFPSをやってる気分だ。やはり命中させるだけの剣術では、同格はともかく格上には効き難いのだろう。

 

「ホラヨ! これならどうするってんだ? やってみろよ!」

「やってやるさ! ヒュー!」

 剣八は自ら身を出し出すように迫りつつ、刀の軌道は俺の動きを覆うように放ってくる。

こちらがどう動こうともそのラインに居る事には変わりなく、同時に奴の剣速をどうするかを考えれば、タイミングの方も読めてくるという寸法だ。

 

一太刀ごとに手の内を剥かれていく、清々しい程の窮地。

だがまだ負けてない。それどころかヒット数だけならば俺の方が有利だ。ならばここは相打ち上等!

 

「痛っつああああ! りゃあ!!」

「押し切る気か! ハッハー! そいつはオレの方が得意だぜ!」

 斬撃は奴の刀にこそ浴びせる。

そのまま衝撃で奴の剣速を鈍らせ、二撃目にこそ本命を託して斬撃を放つ剣戟戦。これまでのソードアクションを放り捨てて、意地と意地のぶつかり合いを行うことにした。

 

動き回っての戦いではまだ斬撃に霊圧を載せるのは難しいが、この方法でならば十分に可能!

奴の方が基礎威力は高いが、霊圧さえ載せてしまえば互角の威力が出せる。先ほどまでの累積ダメージを考えれば、ダメージレースは有利に立ったはずだ。

 

ただし、ソレは基礎耐久力を考えなければの話だ。何もしなければ向こうの方が恵体であり、霊圧が上なのでタフさが異なる。

 

「はっはっは……ふー。お互い血が登って来たし、ひとまず次ので最後にしねえか? とっておきをくれてやるぜ」

「なんだよ、せっかく楽しく成って来たのにつれねーじゃねえか。しかしとっておきってのは面白そうだな」

 とりあえず回道で体の痛みだけうっちゃっておく。

ペナルティが無くなったとしても、この状態から治療するような術は覚えていない。そもそも俺は回復しながら戦うロードとか神官戦士ってガラでもないからな。

 

「フェイントとか気にすんなよ! 見ての通りただの担ぎ抜刀!」

 ここまで来たら余計な小細工は無用。

刀を担いで背中に構え、両手で縦にフルスイングすることで肩を発射台にする担ぎ抜刀。

 

少しでも霊圧を高め、刃に載せ、それもただ放つだけではなく切っ先に集中させる。糸の様に細く……。

 

「真・死神(シジン)剣!!」

「ハハハハ!! 楽しいよなあアア!!」

 あろうことか奴は高速の剣を無視して、我が身で受けながらこっちを叩き切って来た。

高めた霊圧を刀に集約し、ただひたすらに無心で放つ強者の剣だ。嫉妬するほどの才能が、余計な物を削ぎ落して俺に迫る。

 

「なあ? 本当にここで止めちまうのか? まだまだ愉しめそうじゃねえか」

「悪いが俺の方が限界だな。……良かったら正式な死神にならねえか? お前さんなら最強の死神……剣八に成れると思うぜ」

 未練たっぷりで告げる剣八に、俺はため息ついて予備の薬を投げて渡した。

自分もタップリ薬を使って治療を始めるが……ヤバかった。

 

そういえばこいつって無意識に手加減してた時期なんだよな。

こっちが出力上げたら、こいつも出力上げるに決まってんじゃん。下手すりゃこっちだけ死んでたし、運悪かったらダブルKOで二人とも原作前に死亡である。




 という訳で剣ちゃんとの戦いです。
出会う前に霊術院へ行って死神に成ってるので、こっちからスカウトしに行くコースに変更です。
やちるとの絡みは矛盾が成立しないように、特に描写して居ません。
(もう更木剣八と名乗っていてもいいし、今から名乗ってもいい)

頑張って戦いましたがまだ勝てませんでした。斬術と剣術を混同していたロスタイムは惜しかったですね。
それでも原作のまるで相手に成ってない状態から、七・三か六・四で不利なレベル。運が良ければ行けたかもしれん……くらいには善戦しています。

始解? もちろん雑魚戦で解放して剣ちゃんとの戦いの中では普通に発揮しています。
自分だけ解放して卑怯とか、そういう概念は死神の中に無いので。斬魄刀を手に入れた者同士、解放に至っていないとか解いていないとかは言い訳にならないという考え方ですね。
(最初から最強で弱くなってる状態。やちるが常時解放の卍解みたいなのはその為……と考えたら、最初から最高の才能と言う始解といえなくもないので、手加減なんかできないのもありますが)

●今週のでっちあげ剣技
『隠密歩法:すり足』
 幾つかある走術系の技の一つ。
踏み込みで位置を調整が、一歩と半歩を分けたり、半歩の距離を変える。
今回は微妙に歩幅の違う半歩で小刻みに誓って攻撃した。

『一の太刀』
 流派ごとに極意は違うが、要するに一撃で決める奥義。
威力重視の流派もあれば、確実に急所を狙うような流派もある。
今回使ったのはフェイント系の奥義で、柄の長さの分だけ見切りが狂う。

『倒れ込み縮地』
 この技は幾つかの理論があるのだが、今回使ったのは間合いの短縮。
カウンター移動とも言える行動で、相手の内側に入り込んでいく。
仮に五歩の間合いで相手が一歩詰めるのだとしたら、こっちも詰めて三歩に。
後出しから先手を取るために倒れ込み、そこから強引に起き上がる。

『巻き打ち』
 刀を振って勢いを増す技……ではなく、回転を掛けて動きを短縮。
自分の位置を強引に前にねじり込みつつ、短い距離でフルスイングする。

『流し切り』
 流れるような動きで相手を斬り、軽くなる分を急所攻撃で補う。
相手が霊圧防御高いと無効化されるので注意しよう。
なお、タフかつ技量が高いと完全に決まって筋肉を切っても、あまり意味がない。

『担ぎ抜刀』
 背中に刀を回し、肩を経由して引っこ抜くような斬撃を放つ。
居合に近いというか、抜き打ちという剣理の一つらしい。
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