転生したらハズレ斬魄刀の使い手だった件【完】 作:ノイラーテム
●短い逢瀬、殺し逢い
来た道を戻る中で闇色のドームを見上げる。
射場さんと戦っている最中にできた物だが、時間的にまだ間に合うだろう。
そう思っていた所に待ち受ける影……狛村隊長だ。
「まさか鉄左衛門が退けられるとはな。腕を上げた物だ」
「相性の問題じゃないですかね? まだ総合力じゃ負けてましたよ。今はまだ、ですがね」
縛道を上手く使われていたら負けていた可能性がある。
そんなことは言わなくても良い事だ。たられば何か仮定の話でしかない。白兵戦以外の鬼道で負けていたとしても、使わせなければよい話だ。
単純に俺の火力x速度が、バランス型の射場さんよりも短期決戦に向いていただけの話。
もちろん回道やら薬の準備のお陰で、特攻しても死ななければ何とかなるという算段もあったが。
「いずれにせよ、余計な手間を増やすわけにはいかん。東仙が本気に成っているようだしな」
「それなら早くした方が良いっすよ。隊長なら概念系以外は何とかするでしょうし……もう一人も駆けつけて来るから俺が戦闘を愉しめねえ」
邪魔どころか手間ときたもんだ。
相手にならないのは正直判っている。俺が攻撃力特化型だが、速度以外のすべての面で狛村隊長は上位互換だ。欠点もあるがそんなものは格下に卍解を使わなければいい。
「驕りだな。貴公の腕は知っているが、まさか叶うとでも?」
「今はまだ、ね。ただ俺と違ってもう一人は鬼道も得意です。見たところあの卍解は縛道系で優位に立つものでしょ? 四方八方撃たれたら面倒な手間になるんじゃないですか?」
余計な手間ではなく、面倒な手間。
想定以上の戦闘力だと告げてやった。弓親の総合力も上がってるし、やらないだけで表裏比興に戦えば剣八もヤバイまであるしな。
「それが驕りだと言うのだ。貴公とあの五席を合わせてもワシには届かん。まして……」
「五席では副隊長には勝てん……ですか? 言っときますけど恋次はこないだまでウチで六席でしたからね?」
余裕かましていた狛村隊長が何か言おうとしたところでピクリと止まった。
おそらく弓親が檜佐木に勝利しつつあるのだろう。俺の霊圧探知は近距離に絞ってるつーか、攻撃範囲が限界だから判り難い。
「どうやらその様だ。さっさと片つけよう」
「そうすることをお勧めします。自分も精一杯の抵抗を……。っと。これじゃ弱気過ぎるな。踏み潰される虫にも五分の魂があることを知りやがれ!!」
射場さんはバランス型なので攻撃型の俺にとって相性が良かった。
しかし同じタイプで上位互換の狛村隊長に対しては最悪だ。
そう思って弱気になりかけた自分を叱咤する。
目の前の小手先に捉われて小利口に動いた結果が今の自分ではないだろうか? 弱気な自分と共に中途半端な自分にオサラバするには、ここで奮起せずしてどうするのか?
正直な話、ブリーチはスパロボみたいな話だ。
スーパーロボット大戦で言えば、巨大ロボのスーパー系ストーリーにリアル系が混じり込んだようなイメージだと言えば良いだろうか?
剣術にこだわった自分はなるほど命中性の高い武器と、これまた命中を高めるコマンドがある。
だがしかし相手に対してダメージがなかなか通らないし、向こうの攻撃は無理すれば当たる。そして当たったらそれで終わりかねない大ダメージなのだ。
確かに俺は原作よりも強くなったかもしれない。
しかし龍紋鬼灯丸は原作の一角が持っていた特化ダメージよりも弱くなってしまった。
一発の華があり、原作ファンの中でも余計な能力がないシンプルさが美しいとまで言われた鬼灯丸ではなくなってしまったのだ。
「俺じゃ勝てない? だからどうした! そう言い続けてやるよ! そしていつか辿り着いて見せらあ!」
「良かろう! その心意気見せてみよ! できぬのであれば命と魂ここに置いていくがよい!」
俺の気持ちとは別に、同時進行でソウル・ソサエティを巡る物語も進行している。
小を切り捨てて大を活かすことを疑問視しながらも、総隊長への恩に対して葛藤を押さえつける狛村隊長。
彼もまた揺れる自分を叱咤して此処に居るのだろう。
大義の為に揺れる狛村隊長と、自分一人の能力に固執する俺。
卑小なのは俺の方かもしれない。
だがしかし! 誰がそんなことを決めたのだ。そんなことは知らないと嘯いて俺は刀を抜き放つ!
「燃え上がれ、龍紋! 燃え上がれ、俺の心!」
正直、ヒーローには成れやしねえ。
SFの主人公みたいにビームサーベル抜いて主役にも成れない。
「天譴!」
「シュウっ!」
危機一髪だって救えねえ。何しろ俺の方だって危機一髪だ。
片腕だけ出現して切り掛かる巨大な手を、ギリギリで回避しながらカウンターで長刀を伸ばす。しかし予想されていたのか、容易く回避されてしまった。
だが、だからと言って何もかもが駄目な訳じゃない。
瞬歩で消えゆく大太刀を追いかけるように大ジャンプ。そして大上段からの唐竹割りの態勢に入った。
「迂闊! ワシは動いて居らぬぞ。コレはどうする!」
「そりゃそうだろうよ! 絶!」
カウンターで刺突を浴びせず、放ってからの大ジャンプは最初から囮だ。
二撃目で無防備な空中に向かって放たれる横薙ぎの天譴を、強引に前転して回避した。
足場無しで行われる動き。そんなことができるはずがない?
何を言ってるんだ。死神は霊子を固めれば空中で戦える。コレはそこまでの技術じゃない。ただ一瞬だけ足場を作って、前転するために踏み出しただけのことだ。
「悪足掻きだな。体制が崩れてしまっては折角の剣技も……」
「もう既にやってるよ!」
前転から前転に繋げて、そのまま回転切りに移行する。
背中を発射台に打ち放った担ぎ抜刀。普通ならば前転中は足場がないゆえに無意味な動作。だが重い長刀を振り新たに足場を作ることで、新たな前転と共にそれを成し遂げたのだ。
右も左も化け物ばかり。
知った事かと嘯いて、俺は刀を抜き放つ。
「完成しろ新しい剣技! 絶歩、担ぎ抜刀!」
「くっ……!!」
狼を喰らう抜刀が、振り抜かれた!
立ち上る血飛沫に俺はやってやったと笑みが零れたが……。
次に視界に写ったのは、狛村隊長の傷が胴ではなく腕にある事。
そして腕だけではなく全身を現した明王が居る事に、俺は少しだけ残念に思いながら意識を手放した。
「惜しいな。あと少し、腕ごと胴を斬れば勝てたのに……よ」
「惜しいな。貴公との戦いはもはや戯言に成り下がった。……元柳斎殿!」
原作を思い返せば他愛ない事実だ。
総隊長に何かあったと判断した狛村隊長が、黒縄天譴明王で防御しつつ決戦の地に向かったのだと……俺は後から駆け付けた弓親に聞くことになった。
●オマケ『弓親x69』アレキサンドライト
時を遡る事、僅かな刻限。
踊るような剣戟が周囲に火花を散らせていた。その鮮やかさを剣戟ではなく剣劇と言った者もいるかもしれない。
「大した守りだが、そろそろ諦めろ。足運びや守りに比べて攻めが足りてねえ」
「十一番隊じゃあ負けを諦めるのは死ぬ時だけだよ。それにボクは勝てる喧嘩で引く気はないんだ」
剣舞にも似た動きで綾瀬川弓親は檜佐木修兵の攻撃を凌いでいた。
だが反撃は一切通らず、頼みの藤孔雀も複数の刃が一つも届いてなどいない。修平の方が始解を行っていないにも関わらずだ。
「喧嘩で猶更死ぬことはないだろう。それに五席が副隊長には勝てねえ」
「良い事と秘密の事を教えようか? 十一番隊の内部評価じゃ恋次よりボクの方が評価が上でね。それは彼が副隊長になった今でも変わってない」
ピクリと修平の眉が動いた。
修平にとって恋次は霊術院時代の後輩で、特待生同士だったし今では副隊長同士だから実力は良く知っているからだ。
「もう一つ。十一番隊じゃあ斬拳走鬼は自分を鍛え、死んでも戦いに勝つために学ばされる。でも、そうは言うけど戦いはあくまで斬術の事なんだ。みんなド突き合いに命をかけてる奴らばっかりでさ」
そう言って弓親は荒い息を吐いた。
防御に徹するだけ……いや美を表すだけなら剣舞を幾ら続けても疲れはしない。違和感を持たせないために攻撃も行ったから披露しているだけだ。
杖の様にするため一直線に固めて長く伸ばした藤孔雀の刃を、一振りして元の扇状に戻した。
「ここからが内緒の話。十一番隊じゃあ鬼道系の斬魄刀や鬼道主体の戦闘は馬鹿にされる。だからボクは曲光の使い方だけは必至で磨いたね。だから今ではこの術だけは詠唱だけでなく術名も破棄できる」
「っ!? まさか!」
弓親は刃の根元をサラリと撫でた。
そこには比礼……腕や肩を守る護身布がハラリと閃いたからだ。
「さて、ボクの本当の斬魄刀の能力は何でしょうか? そして呑気に踊っている間に何をしたでしょう?」
「くそっ! 刈れ、風死!」
もう一度踊るようなポーズを弓親がした時、修平は飛びのきながら解号を唱えた。
そして鎖鎌を振り回しながら、鬼道の詠唱に移る。
「破道の五十三。てん……」
「遅い。ボクの方はもう展開し終わっている。咲き狂え、瑠璃色孔雀……とね」
鎖鎌の刃が無数の風を起こし始めた時、その動きは突如止まってしまった。
まるでナニカに絡みついてしまったかのように……。いや、訂正しよう。
修平の動きまで、ナニカに絡み取られていた!!
「霊圧が吸い取られる!? こんなもの、何時の間に!?」
「そりゃさっきだよ。霊圧を極力下げて剣舞より下にすることで、霊圧探知に反応しないようにしておいたんだ」
だからこそあんな派手な動きが必要だった。
斬撃を何処に設置し、何処に埋伏しているか全て記憶しながら舞い踊る。
美の化身であり芸術である弓親にとってその程度のことは何でもない。
「馬鹿な鬼道はともかく解号までは……」
「おっと。それ以上は君が知る必要は無い。咲き誇れ、瑠璃色孔雀!」
詠唱破棄すれば威力は下がるが鬼道は唱えられる。
術名は怪しいが威力を無視して最低限で良いなら可能かもしれない。
だが斬魄刀の解号までは無理だと口にした時。
弓親は今度こそ二つ目の解号を唱えた。それは霊圧を吸収して蓄積する一つ目と違い、ただ相手の行動を捨て去るためだけの解号である。
喋る余裕のある一つ目と違い、二つ目は一気に修平から余力を奪い去って気絶させたのであった。
無解号。それができるのは、卍解に至った者だけである真実を秘匿するために……。
という訳で、ソウル・ソサイエティ編での戦闘を終了します。
今回は時間の問題で短かったので、弓親の戦闘をオマケで居れております。いきなり視点変更して申し訳ありません。
●狛村隊長戦
射場さんとの戦いが速めに終わったのですが、それでも時間がないのでこうなりました。
もし一角が無傷だったら、起きていてもう少し戦ったかもしれませんが……。まあどのみち、剣八戦を抜けたようにその場で抜けたでしょう。
●弓親と修平の戦い
すまんな、卍解できるなら解号要らんのだ!
という訳で曲光しながら、影響度を抑え込んだ瑠璃色孔雀の羽を埋伏しながら戦闘。
剣戟戦が終わった時には、全てが終了しているという感じの戦闘でした。
というか声優が福山潤だったので、コードギアスのルルーシュのごとく、隠しておいた画面全体攻撃したかったんですよね。
それとアヨン戦で雛森ちゃんがやった曲光・伏火・赤火砲を練り合わせたコンボ。アレを見た時……「これで瑠璃色孔雀隠せば強くね?」と思ったのもあります。
●今週の剣技
『絶歩』
一歩だけの空中足場。ジャンプ中の軌道変更用。
以前に覚えている最中で上手くいっていないと書いたけど、その時の反省を技として利用したもの。
空中戦するのではなく、空中で加速・軌道変えるだけなら一瞬でも良いよね、と。
『絶歩、貪狼担ぎ抜刀』
空中に一瞬だけ作った足場で前転しながら、思いっきりグルグル回転して突撃する技。
抜き打ちの速さと強さを兼ね備えるが、基本的に隙だらけ。
なお、元ネタは狼やワンコが行う抜刀牙だそうな。
『
主にガード主体の剣舞で、足さばきと防御を向上。
その間に鬼道で色々と攻め立てる技。
ぶっちゃけ戦国物で軍師が踊りながら登場し、扇を掲げて策を述べる動きである。
『無詠唱』
魔術物作品で登場する高速詠唱。
詠唱破棄よりも更に発展し、同時に強度を最低限まで落とした物。
とはいえ強度の全く関係ない曲光でならば問題ない。今のところ弓親専用の技。
●瑠璃色孔雀の二つ目の解号と、卍解
始解2:
解号:咲き誇れ、瑠璃色孔雀
効果:
一つ目の解号のダメージ効率・速度効率UP版。
吸収とかしないので、その威力・霧散化速度は非常に速い。
もちろんおしゃべりできないし、行動する端から吸い上げるので、引き千切るとかも難しい。
『皇覧瑠璃色不二孔雀』
瑠璃色孔雀の卍解。
効果:
詠唱した鬼道、鬼道系斬撃を再現する。
発射角度・強度・場所は使用した時と全く同じ。当然ながら霊圧は余計に必要。
上手く使えば強いが、術を保存して持っていくこともできないし、相手にヒットするとも限らない。
解説:
唯一無二の素晴らしい美を知り、一は至高の美、並び立つ二はいない。
ゆえに自分は三であるという美意識。
素晴らしいモノを眺め、素晴らしい光景を共に作り上げるモノ。
自分で美しさを表現するが、真に美しきは他者の煌きであるという真理に到達しなければ卍解できない。
一角たちのあがきもがく姿を見て、自分はそれを見守りたい、共にありたいと願っていると気が付いたことで体得した。
●本体の姿
アラビア風 + スペイン風の皇帝装束をまとった瑠璃色孔雀。色彩は
FSSを知っている人には、フィルモア皇帝の着ている服と言えば判り易い。
孔雀が持つ瑠璃色(青と緑の中間で艶のある色)とは、皇帝自身ではなく皇帝が美しいと定めた色の事である。