「戻ったか? では指揮官、今日もよろしく頼む」
重桜の空母訓練の騒動から帰ってきた僕は、本日の秘書官、エンタープライズさんによって迎えられる。うちの母港では、高難易度海域では必ず組み込むくらいの、ユニオン最強空母と言っても過言では無い。執務もてきぱきとこなしてくれる為、こちらは大助かりである。だが1つ、
「指揮官は戦争が終わったら何がしたい? 私も付いて行くぞ。あなたとなら、きっと何処へ行っても幸せだろうな」
この絶対なる信頼感と忠誠心。歴史的に見ればエンタープライズさんの方が凄すぎるから、僕の行く所で大丈夫なのかと逆に不安になる。どこへ行くかは何も決まって無いんだけども。
「エンタープライズさんは何かしてみたい事はある?」
「私か? 指揮官と一緒なら何でもしてみたいな。今まで戦う事しか知らなかったから、そっちなら多分指揮官の方が詳しいだろう?」
凄いね、僕への信頼感。
「あ、でも強いて言うなら、」
「私達の祖国へ来ないか?」
エンタープライズさんの祖国、アメリカか。外国には殆ど行ったことが無いため不安もなくは無いけど、ワクワクもしてくる。
「そんなに楽しみなのか? 指揮官は可愛いな」
そんな事もサラッと言うのはイケメンすぎる。
「まぁ、自由と呼ばれている国には興味があったからね。僕は自由が好きなんだ」
フリーなんて最高だ。何でもやるぞ!
「ほぉ、指揮官は自由が好きなのか。私の故郷は良いぞ。基本的に自由だから、自分で責任さえ取れれば何してもOKだ。それならば、私と一緒に暮らそうか? きっと指揮官にも合うと思うぞ」
まぁそりゃそうだよね。自由には責任が伴うって言うし。かと言って僕は平凡に暮らす予定だけど。
「そういえば指揮官。最近母港で妙な噂を聞くんだが、KAN-SEN達が指揮官を取り合って姉妹喧嘩をしたり、指揮官を拉致して眠らせたり、修羅場に巻き込まれたり……何か心当たりはあるのか?」
すごい正確な噂だなぁ……ボク、ナニモワカラナイ。
明石さんの発明品、ヤンデレ測定器が原因であると説明した。
「……そんな事をしていたのか、あなた達は。遊んでいる場合じゃ無いんだぞ。KAN-SENからの愛情度……それは私も測れるのか?」
「問題ないにゃ〜!!」
「「うわっ!?」」
明石さんが執務室の扉が壊れる勢いで入ってきた。ここ最近緊急事態が多くて、勢いよく開かれる事が多かったから、そろそろ、ここのドア壊れるんじゃないかな。
「エンタープライズは、指揮官への愛情度はどのくらいだと思ってるのにゃ?」
「指揮官とならば、どんな運命が来ようと一緒に背負っていくつもりだ。命の果てまで、歩み続ける。それくらいの覚悟は思っているぞ」
エンタープライズさんの覚悟が半端ない。ここまで来ると数値が怖い。
「行くにゃー!」
エンタープライズ→指揮官
ヤンデレ度:64
「案外普通なのにゃ「ふざけるな!」」
「「!?」」
エンタープライズさんは数値の不満さに激怒した。
「指揮官への想いが、こんなに低い訳ないだろうが! もう一度測らせてもらうぞ!」
何度もボタンを押すが数値は変わらなかった。
「まだ終わってないにゃ、エンタープライズ。指揮官からの愛情度も残ってるにゃ」
「何……? つまり、両想いもあれば一方通行もあるということか。面白い! かかって来い!!!」
またベルファストさんや加賀さんの時みたいに、僕に聞こえない事を言った後、エンタープライズさんはタブレットを割りそうな勢いで画面をタッチした。何で艤装まで展開したのかな……?
指揮官→エンタープライズ
愛情度:42
「42……? これはどういうことだ?」
「指揮官は普通より、少しエンタープライズに遠慮している所があるって事にゃ。ちょっと想いが重い所もあったりするんじゃないかにゃ?」
エンタープライズさんはしばしの沈黙の後、グルン! と僕の方を向いた。
「……指揮官? 私に遠慮している事があったら何でも言ってくれ。何? 気にする事はない。私と指揮官の仲だ。今まで長い苦楽を共にしてきたんだ。今更、遠慮する事はないだろう? もしかして、食事の事か? 確かに思い返せば、あの時の私は、指揮官が料理を作ってくれたにも関わらず、『そんな暇があるなら』などと突っ跳ねてしまったな。あの後、ホーネットだけでなく、赤城やウェールズに滅茶苦茶怒られてしまったが。今さらながら、あれが指揮官への愛だと気づかなくて一週間は後悔し続けた。その事で怒っているのであれば、申し訳ない事をしてしまった。だから今度は私が指揮官に料理を振る舞おう。味か? ヴェスタルのお墨付きを貰ったから安心してくれ。だから、指揮官……」
「私のために遠慮しないでくれ」
「え……うん」
私と指揮官の仲、辺りから何言っているのか分からなくて、最後しか分からなかった。
エンタープライズさんは、たまに暴走するからなぁ。
「ハロー指揮官! あっ! またエンプラ姉が指揮官に重い事言ってる〜! そんなんじゃ指揮官は振り向いてくれないぞー?」
「お邪魔します……ホーネット、執務の邪魔をしてはいけませんよ? 心配だから様子を見にきたけど、相変わらずね」
ヨークタウン型姉妹三人が揃った。
「ホーネット? 私は重い事など言ってはないぞ? 至って普通な事だ。ヨークタウン姉さんまで……心配しすぎだ」
なんだかんだで仲良さそうで嬉しい。
「指揮官は重い姉より私、ホーネットの方が好きだよねー?」
「何を言ってるの……? 重い訳ないじゃない。指揮官様は私の光、希望なの。そんな軽い妹には相応しくないわ」
「「「は?」」」
ごめん、今の発言を訂正したい。明石さんの方を向いてみる。
「ほら、明石さんの大好物だよー?」
「うう……胃もたれしてきたにゃ……ギスギスは良いけど、重いのはキツいのにゃ〜」
おい!? ポテトの食い過ぎだ!!
「指揮官、あの二人もついでに測ってきてにゃ……明石は少し休むにゃ……」
「分かったよ。はい、胃薬」
胃薬とのトレードで明石さんのタブレットをもらう。
「ヨークタウンさん、ホーネットさん。僕へのヤンデレ度が測れるみたいだけど「「やる(やりますわ)」」」
即答である。スキル【スクランブル】持ってたっけ……?
「じゃあ私からやってにゃー! 指揮官!」
ホーネットさんがいち早く手を上げたので、先に測る。
ホーネット→指揮官
ヤンデレ度:0
☆0ボーナス!
次に測る、指揮官からの愛情度の数値によって、天使か悪魔になり変わります!
「……え?」
「あれー? ゼロってどういう事?」
今までの事を踏まえると、一番マシという事なのかもしれない。
「恐らく、一番純粋に愛してるのかなと」
「やったー!!! そうだよねー! こんな【重い】姉二人より、私が一番だよねー!!」
あくまでもKAN-SENからの愛情度って意味なんだけどね。
「ホーネット、まだ終わってないぞ。指揮官からの愛情度も残っているんだからな」
あ、そうなんだ。丸聞こえである。そこまで露骨に贔屓はしてないから、そんなに変わってないと思うけど。
「余裕余裕!! 見せてよ! 指揮官の愛情度!」
☆0ボーナスにより、指揮官からの愛情度が50以上であれば、指揮官はホーネットに好印象を持ちます。49以下だと、苦手意識が口から漏れてしまいます。
指揮官→ホーネット
愛情度:16
☆やってしまいましたね。
「……16? え? え??」
「ホーネット……私が言うのも何だが低すぎないか?」
「え……? 嘘だよね? 指揮官。私、姉二人と違って重くないよ……? サバサバしてる私の方がいいよね……? 私の事、姉たちのついでに仲良くしてるの? 違うよね……? 嫌いにならないで……」
ホーネットさん「そういう所があるんだよなぁ……」
「!?」
ホーネットさんは、自分の評価の為にお姉さん二人を下げているけど、他人から見ると良い行為とは言えないから、結局自分も下げてしまうことになるんだよね。
ホーネットさんの場合は二人の姉が、凄まじい歴史を持っているからコンプレックスに思うのは仕方ないと思う。比べられて嫌な思いもしたと思う。だからこそホーネットさんには……あれ?
ヨークタウンさんとエンタープライズさんははてなマークを浮かべている反面、ホーネットさんは泣き出してしまった。
「もうやだぁ……辛いよ……」
「ホーネットはどうしたのかしら……?」
「たまに睡眠中にも泣き出すことがあるんだ。ヴェスタルに見てもらった方がいいんじゃないか……?」
ホーネットさんだけは部屋を別々にした方が良いかもしれない……。
「ホーネットさん、周りがどう思おうと、僕はホーネットさん個人を見ているから。明るいホーネットさんの事、僕は良いと思っているから!」
「指揮官……」
「指揮官様……」
「「逆効果(ですわ)だぞ……」」
え? と呆気に取られていると横からホーネットさんに抱きつかれれた。
「えへへ……指揮官は私に惚れたかにゃあ? ……絶対に離さないからね」
いつものホーネットさんに戻った? のかなあ。最後の一言がやけに重たい。
「次は私ですね。指揮官様、お願いします」
「……おい、ホーネット。指揮官から離れろ。指揮官が迷惑してるだろうが」
「え~? そんな事ないよねー? 私は重く抱き着いてないからね……」
「なんだと……? 私だって抱き着いた事がないのに……」
再び始まる。なんというのだろうか、ギスギスレーン?
僕はそれに構わずヨークタウンさんを測る。
ヨークタウン→指揮官
ヤンデレ度:94
「「「高っ!?」」」
初の90台の数値に妹二人と僕は驚きを隠せなかった。
「うふふ~それはそうですもの。指揮官様は、悲しみに溢れた私の、希望の光なのだから……。ねえ指揮官様。平和になったら、いえ、平和を目指すために【私と二人で】暮らしませんか? 指揮官様は重桜の方ですので、亡命という形にはなりますが、今度は私が光となり、自由と平和をお約束いたします」
「……姉ちゃん、今の発言は重すぎない?」
「……いくら姉さんでも、さすがの私も黙っていないぞ」
ヨークタウン型で内戦待ったなし。
「あとは指揮官様からの数値ね……ふふふ」
指揮官→ヨークタウン
愛情度:17
「……あら? あららららら? 目が霞んでよく見えないわ~……」
KAN-SENの間では目のハイライトを消すことが流行なのだろうか。
「姉ちゃん……低すぎるよ。私と大して変わらないじゃん……」
「ヨークタウン姉さん……そんなんで亡命させられるのか……?」
ヨークタウンさんは、着任当時から儚げなところがあり、ホーネットさんとはまた別の重さがあるのは感じていた。それでも会話を繰り返していくうちに自信を持ってくれて、明るくはなってくれたけど、まさか亡命の事を考えているとは思わなかったな……。
「ああ……希望の光が……もう手首を切った方がいいのかしら……」
「「「(姉ちゃん)ヨークタウン(姉)さん、それは絶対ダメ」」」
「「「「……」」」」
「エンタープライズ先輩! 私と演習しませんか!?」
どんよりと重くなった空気を壊してくれたのは意外な人物だった。
「エセックス……!」
「エセックスさん!」
「空気重っ!? 指揮官とヨークタウン型の先輩方、いったいどうしたんですか?」
「実はだな……」
エンタープライズさんが僕の代わりに、ヤンデレ測定器のことを説明してくれた。
「へえ、明石さんはそんなのも作れるんですね。それってKAN-SEN同士は測れるんですか?」
それは思ってもなかった。ダメ元で試してみるか。
エセックス→エンタープライズ
ヤンデレ度:67
高くない? エセックスさん着任してから3日経ってないよ?
「エセックス、高くないか……?」
「そりゃそうですよ! 憧れの先輩ですもん! それで結婚式はいつにしますか?」
「何を言っているんだ!? 私にその気はないぞ! 指揮官一筋だからな!」
「あはは、冗談ですよ……冗談。指揮官とも測りましょうか」
一気に重い空気を吹っ飛ばしてくれたエセックスさんに感謝だ。
エセックス→指揮官
ヤンデレ度:91
「「「「は!?」」」」
「エセックス!? どういうことだ!? もう指揮官に手をつけたのか!?」
「あらら~こんなところに平和を遮る人がいたなんて~……」
「エンタープライズ先輩、落ち着いてください! ヨークタウンさんは艤装をしまってください! 確かに着任して日は浅いですけど、指揮官は良い人だって分かりますもん!! それで指揮官、」
「結婚式はいつにしますか?」
「エセックス……お前えええええ!!!」
「ちょっとエンタープライズさん!? ここで爆撃はまずいよ!? みんなもここで演習を始めないで―――!?」
四陣営による緊急会議の結果、ヨークタウン型三人、エセックス級一番艦は単独での執務室の入室が厳しく制限された。緑色のタブレットを持ちながら、真上の大空を眺める。
「今日の執務室は綺麗な空が見えるなぁ……」
指揮官→エセックス
愛情度:30
次回は作者のピックアップしたKAN-SENのシーンの挿絵集にしようと思っております。少々時間がかかるのでしばしお待ち下さい。
もしよければ良かった話を聞かせてください。
-
加賀編
-
ヨークタウン型+α編
-
ハウ編
-
鈴谷編