【アズールレーン】ヤンデレ測定器   作:そうすけ

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今回、ちょっと物騒な発言多いかもです。

ご了承ください。


サウスダコタ編

「指揮官、母港の見回りかい?」

 

委託組を迎えてから完全に手が空いたので、母港内の安全確認書やKAN-SEN達からの要望書をバインダーで挟み、チェックするために母港内を見回っているとサウスダコタさんと顔を合わせた。

 

耐久や対空が高いことが彼女の自慢の性能で、しかも入手が比較的しやすかった事から、割と古参の一人でもある。大きな盾と身長はまさに鉄壁である。

 

「こんにちは、サウスダコタさん。安全点検や要望書の消化も兼ねてるんだ」

 

ちゃんと安全点検しないと、KAN-SEN達の怪我はともかく、時々来る監査のお姉さんから怒られるからね。仕事に慣れるまでは、秘書艦と一緒に点検していた頃が懐かしい。その時の担当のサウスダコタさんが、よく手伝ってくれてたんだ。

 

「そうか。なら僕は君のガードマンになろう。クレーム処理は危険が伴うからさ」

 

まあ実際、要望書はクレーム対応のことが多い。

 

『指揮官様がイチャイチャしてくれない』

 

『窓ガラスを割ってしまったので修理して欲しい』

 

『指揮官が、お姉さんに手を出してくれない』

 

『マントが切れてしまった。どうにかしろ……え? クリーブ姉貴っぽい? じゃあ良いや』

 

『指揮官様にまとわりつく害虫が許せない』

 

半分が僕絡みである。一度、馬鹿正直に僕宛のクレームの確認をしに行ったら、手錠を掛けられそうになった事がある。サウスダコタさんに助けられたけど。僕への要望書は、サウスダコタさんがビリビリに破いている。

 

「クレーム処理の紙を見せてくれないか? ……ふむ、これは要らないな」

 

要望書の2/3をサウスダコタさんがビリビリに破いてしまった。やはり僕絡みなのだろう。残った要望書はかなり少なくなった。

 

「じゃあ指揮官。何から処理する? 選んでくれ」

 

薄い紙をペラっとめくり、まずはここに決めた。

 

「えっと、『重桜の甘味処にハエが目立ってきた。気温が高いので窓を閉めるのは難しい』か。分かった」

 

「飲食店には避けて通れない問題だよね。この道具を持って行こう」

 

 

 

「あっ! 旦那様! もしかして要望書を読んで下さったのですか? 嬉しいです〜」

 

重桜の甘味処の女将さん、鳳翔さんが要望書の差出人だ。

 

「サウスダコタさんも一緒なんですね。では、こちらです〜」

 

案内された場所には、客席と厨房を行き来するハエが確かに気になるレベルでいた。

 

「空調は効いているんですが、扇風機しか無くて……どうしましょう……」

 

かき氷を食べる分にはちょうどいい暑さではあるけど、お休み処としては蒸し暑い。ハエが育ってしまう温床になってしまっているのは良くない。

 

「じゃあ、ここにエアコンを設置しようか。エアコンが来るまでは、この小バエ取りを天井からぶら下げるよ」

 

「本当ですか!? ありがとうございます〜」

 

鳳翔さんは僕に抱きつく。そもそもな疑問があるんだけど。

 

「今までエアコン無くて、よく大丈夫だったね。どうして?」

 

「今までは打ち水をする程度で平気だったのですが、梅雨が長引いて、気温が異常に高くなり、梅雨の時期にハエが卵を産みつけてたみたいなんです〜。でもこれで大丈夫そうですわ〜」

 

「良かった。じゃあエアコンは饅頭に発注かけておいたから、2〜3日で来ると思う。小バエ取りを吊るしてから帰るね」

 

客席の目立たない壁際や厨房、あとは目ぼしい所に吊るそう。脚立を借りようとしたら、

 

「指揮官、それは僕に任せてくれ。事故から君を守護りたいんだ」

 

そんな大袈裟な、とは思っていたが、サウスダコタさんの真剣な眼差しにより、彼女に任せることにした。

 

「まぁ! サウスダコタさんは椅子に乗っただけで届きますのね!」

 

「指揮官が怪我をしたら、僕は悲しいから」

 

僕が脚立の一番上まで登って、やっと届く高さの天井を、サウスダコタさんは客席の椅子に乗っただけで余裕で届いた。凄え……。

 

「ふぅ、こんなもんか。指揮官、あとは付ける場所はあるかい?」

 

「もう大丈夫そうだね。ありがとうね、サウスダコタさん」

 

「このくらいじゃお礼に値しないさ」

 

「あっ、そうですわ。お二人にお礼のお飲み物です〜。少し涼んで下さいまし〜」

 

鳳翔さんから貰った涼しい飲み物を頂き、甘味処を出る。

 

「鳳翔〜喉渇いたにゃ〜……にゃ? 指揮官、こんなところで何してるのにゃ? サウスダコタも」

 

緑色の猫さん工作艦、明石さんと出会った。

 

「あぁ、母港の見回りだよ。サウスダコタさんについて来て貰ってるんだ」

 

「はえ〜、珍しい組み合わせにゃ〜。あっ! そうにゃ!」

 

何だろう。唐突な筈なのに何が来るか大体予想ができる。

 

「サウスダコタのヤンデレ度を測るにゃ! サウスダコタは指揮官を好きかにゃ?」

 

「ヤンデレ……? よく分からないが、言うまでもない。身も心も、指揮官に全てを捧げているさ」

 

「おおー、これは楽しみにゃ〜。指揮官!」

 

「はいはい」

 

 

サウスダコタ→指揮官

ヤンデレ度:68

 

「高いにゃ! これはもう修羅場起こせるレベルにゃ!!」

 

「指揮官、明石は何故興奮しているんだ?」

 

「これは、明石さんの発作みたいなもんなんだ……」

 

「ふーん……まあ次行こう」

 

「次は『サロンの壁が最近、黄色くなっている。ちょっとタバコの臭いも感じる。』か」

 

サロンはいわゆる休憩室みたいなもので、陣営分け隔てなくKAN-SEN達がチェスをしていたり、ダーツをしているようだ。サロンは禁煙な筈だから普通ならば臭いは来ない筈……。

 

「タバコを吸いそうなKAN-SENには心当たりがある。今の時間ならいるかもしれない」

 

「え? そうなの? 誰かいたっけ?」

 

うちの母港では喫煙に関しては緩い方で、規定の場所で吸う分には何も問題無いし、あちこちに喫煙室を設けている。ただ、誰も吸っている姿を見た事がないんだけど。そんなに設置している理由は、上司の方のためだ。

 

「あぁ、あいつだ。行こう」

 

サウスダコタさんには心当たりがあるらしい。僕たちはサロンへ向かった。

 

お昼を過ぎたサロン内は、そこそこ賑わっていた。キングジョージ5世さんとリットリオさん、ロシアさんの三人は将棋をしていたり、ジョージアさんやモナークさんはダーツをしていた。待って。将棋って三人で差せるのか?

 

確かに端っこの壁には遠目でも分かるような黄ばみがあった。あれが問題の場所だな。

 

要望書を出した人は誰かな。ひと通り声を掛けてみよう。

 

「このリットリオにいの一番に声を掛けるとは、指揮官は見る目があるじゃないか! だがしかし、私が吸うものならば、公共施設を汚すなどという真似はしないがな!」

 

「ほぉ、指揮官! 見てくれよ! アンタと旅行に行ってみたい所にダーツの矢を刺してみたんだが、どうだ? 全部ブルだ……生憎、私はタバコは吸わないんだが、指揮官が吸うならば、それは構わないさ」

 

どうやらここにいる子達ではないみたいだ。サウスダコタさんも協力して声を掛けてくれているみたいだけど……何してるんだ。

 

サウスダコタさんとモナークさんは、お互いをじっと見つめながら、お互いのお尻を嗅ぐようにぐるぐる回り、しばらくすると……。

 

「ふむ……」

 

「そういうことか……」

 

一言だけ話すと、固い握手が交わされた。僕の分からない、英米和親条約が結ばれたようだ。

 

「指揮官、要望書を出したのはモナークを含め、ここのKAN-SENでは無いようだ」

 

「今の会話で分かったの!?」

 

そうなると誰だろうか。その前に、汚れの原因を見てみよう。あの黄ばみの近くには喫煙室がある。

 

「また吸っているのか。ワシントン」

 

サウスダコタさんは静かな喫煙室の扉を開けて、その人物の名前を呼ぶ。ワシントンさん!? これまた予想外な人物だ。

 

「チース! 指揮官……だけじゃねえな。お前まで何か用か?」

 

僕にはとびきりのぎこちないスマイルをかますけど、サウスダコタさんには面倒くさそうに話しかけた。

 

「サロンを汚してまで指揮官に迷惑をかけるのはやめろ。指揮官が可哀想だ」

 

ワシントンさんは、指に挟んだタバコをサウスダコタさんに向ける。そのタバコにはちょっと違和感があった。

 

「へっ! 指揮官、指揮官って、お前本当に指揮官好きなんだなぁ?」

 

「そうだ。指揮官は僕の道しるべ。どこまでも指揮官を守るのが使命だ」

 

「うわっ! お前重いなぁ……そんな奴より可愛いアタシの方が良いだろ? 指揮官!」

 

南北戦争勃発寸前の空気の中、ワシントンさんは僕にキラーパスをする。可愛いに優劣はあるのだろうか。

 

「ガラが悪いぞ、ワシントン。これ以上、指揮官を困らせるなら僕は黙っていないぞ」

 

「防御だけが取り柄の奴がアタシに勝てんのか? ああ?」

 

ワシントンさんは拳をバキバキ鳴らして、今にも殴りそうな雰囲気だ。

 

「ねぇ、ワシントンさん。いつから喫煙室にいた?」

 

「うるせえ、今いい所なんだ。邪魔するな」

 

「とうとう会話も出来なくなったのか。猿以下め」

 

「……30分前くらいだよ……バァカ!」

 

ワシントンさんの拳はサウスダコタさんの頬目掛けて振りかぶる。間近で聞く主砲の轟音のような音がしたが、サウスダコタさんは一切吹っ飛んでいなかった。サウスダコタさんは片手で拳を受け止めていた。ワシントンさんがそれに気を取られた隙に、サウスダコタさんの両手はワシントンさんの首を締めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「確かに君とは反りが合わないのは理解している。だが、指揮官の迷惑をかける奴はワシントンであろうと容赦はしない。このまま息の根を止めれば、迷惑をかけずに済むぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

ギリギリ、と音を立てて、少しずつワシントンさんの両足が重力に逆らう。ワシントンさんは必死に抵抗するが、宙に浮かされ、その上普段から重い盾を持っているサウスダコタさんの握力はそう簡単には解けなかった。

 

「───! ぐっ……! てめぇ……どこでそんな力を……!」

 

「まだ喋る余裕があるのか。指揮官を思う気持ちに勝るものは無い」

 

「……あ、アタシだって……ぐっ!!」

 

ワシントンさんの口から泡が出てしまった。これ以上はちょっとシャレにならない。二人の間に割って入る。

 

「サウスダコタさん。やめよう」

 

「指揮官、こいつはまた迷惑をかけるぞ」

 

「殺してしまったら、僕はこの母港をクビにさせられる。それに迷惑をかけても、僕にとっては大事な子だから。だからやめて?」

 

「………………………命令には従う」

 

「──────ッ! ゲホッ! ───ゲホッ! ───!!」

 

急に解放されたワシントンさんは、膝を折って倒れ込み、数秒間取り入れられなかった酸素を、むせぎながら取り込む。1分くらいで呼吸を取り戻し、ワシントンさんは少しずつ立ち上がった。

 

「てめぇ……やってくれたな」

 

「タバコを吸って体力でも落ちたか?」

 

まだ睨み合う二人。ワシントンさんの体力凄えな。

 

「もしかしてワシントンさん、タバコ吸ってないんじゃない?」

 

「───!?」

 

「指揮官……?」

 

灰皿から、さっきワシントンさんが捨てたタバコを拾いあげる。やはりそうだ。他に捨ててあるタバコを見ても一目瞭然だった。

 

「ほら。タバコの灰が全然落ちていないから、芯が長いままだよ。これら、タバコに火を点けただけだよね」

 

例え、タバコをふかしても息を吹き掛ければ、灰が出て芯が短くなる。やけに静かな喫煙室だなと思ったら、換気扇が起動していなかった。誰も吸わないから、誰かが節電で切っていたんだ。

 

「ワシントン……?」

 

「……お前が羨ましかったんだよ。クレーム対応で指揮官と一緒に楽しそうに仕事してさ。最近はクレーム対応を指揮官一人でやってるのを見かけてな。そのクレームのきっかけで会話するチャンスだと思ったんだよ」

 

「そしたら僕がいたから、話が変わったのか」

 

ワシントンさんは肯く。

 

「アタシは確かにガラが悪いし、つるむ仲間もメリーランドやヴィチタみたいに男勝りの奴らだ。だが、指揮官の秘書艦やってる奴は、愛宕や大鳳、ウェールズのような奥ゆかしかったり美人なお姉さんばかりだろ? ああいう奴らには力ではどうしようも無ぇ……」

 

今、そのお姉さん方の2/3は謹慎中なんです……って言っても信じて貰えなさそう。

 

「それで慣れないタバコを吸うフリをしていたのか。変な奴だ」

 

「お前にだけは言われたくねぇよ。ほら、指揮官。アタシの口の中、タバコのヤニ無いだろ?」

 

ワシントンさんはしゃがんで、んえー、と口の中を見せてきた。タバコのヤニは肺を見ないと分からないんじゃないかな……。

 

そういえば、明日の秘書艦はまだ決まっていなかったな。

 

「じゃあワシントンさん。明日秘書艦やって貰っていい?」

 

「まあ、少しはユニオンの寮に顔出せよ……え!? なんだって!?」

 

「え? 秘書艦をやって欲しいんだけどさ……ダメかな?」

 

「や、やってやるよ! 書類なんて力でねじ伏せてやる!」

 

「あははは……」

 

「おい、ワシントン。壁の黄ばみを拭くのは君の仕事だからな。指揮官に任せるんじゃないぞ」

 

「わーってるよ。でも、」

 

ワシントンさんは僕を抱き上げる。

 

「二人でやれば問題ねぇ、だろ。指揮官?」

 

「う、うん」

 

「…………」

 

サウスダコタさんの目からハイライトが無くなってしまった。

 

「指揮官は優しすぎる……」

 

 

 

 

「──────、──────」

 

 

「───! ………───。───!!!」

 

 

 

 

 

 

サウスダコタさんは僕の両耳を塞ぎ込む。目線だけ動かすとワシントンに何か言ってるようだ。ワシントンさんは一瞬、びっくりした顔をするが、すぐに不敵な笑みを浮かべる。

 

「さて、指揮官。残りのクレーム処理に行こう。まだ残っているだろう?」

 

「うん、そうだね。えっと、次は……」

 

「おし! じゃあアタシも行くぜ! 秘書艦の仕事を覚えるなら早え方が良いだろ? な?」

 

「……君ってやつは……」

 

こうして、三人で残りの仕事を片付ける事になった。僕の後ろでは、二人の背の高いユニオンのお姉さんが、火花をバチバチ鳴らしながら母港内を歩くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆サウスダコタside

 

「指揮官は優しすぎる……」

 

わざと仕事を増やしたワシントンに対しても、こんなに優しいのか。しかも明日の秘書艦に任命するなんて危険すぎる。釘を刺しておこう。指揮官には聞こえないように、耳を塞がせてもらう。

 

 

 

 

 

「今度、指揮官の迷惑を掛けるようならば、例え指揮官が止めても、息の根を止めてやる」

 

「───! ……面白ぇ。やってみやがれ!!!」

 

 

僕は本気だからな。

 

 

 

 




ワシントン、おりゃん……。

もしよければ良かった話を聞かせてください。

  • サウスダコタ編
  • プリンツ・オイゲン編
  • ティルピッツ編
  • ワシントン編
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