「さぁ! 次はロイヤル寮に行くにゃ〜意外と隠れヤンデレなKAN-SENがいるにゃ〜!」
ウキウキなスキップでロイヤル寮に続く長い廊下、格式高い赤い絨毯が敷かれ、ロイヤルメイド隊が常に綺麗にしている窓ガラスは海より透き通っている。
何人かのメイド隊の方々とすれ違った数秒後、ロイヤル寮に着いた。
「わぁ……ロイヤル寮はいつ見ても豪華ですね」
天井からはシャンデリアが吊り下げられ、中央には横10メートルはありそうな広い階段、まるでベルサイユ宮殿のように感じた。
「指揮官と明石じゃないか。どうしたんだ?」
ロイヤル寮の入り口で立ち止まっていた僕と明石さんを不思議に思ったのか、ウェールズさんが気を遣って声を掛けてくれた。
「ん? そのタブレットは?」
ヤンデレ度を測定しにきた事、僕たちがロイヤル寮に来た理由をウェールズさんに説明した。
「……指揮官、いや、明石。そんな下らない事に指揮官を巻き込むな。いくら指揮官が優しいからって何でも聞いてくれるのは大間違いだぞ。
そんなモノで測らなくても、私からの愛は何を持っても引き換えれる物ではないくらいだ」
深いため息をついて、自分のおでこを抑えるウェールズさんが明石さんに諭した。まぁ乗ってしまった僕にも責任は多少あるんだけどね。
「あれれ〜? ウェールズは指揮官の事を本当に愛してるのかにゃ〜?? 指揮官はウェールズに一目惚れしてたみたいなのににゃあ?」
段々、明石さん煽ってない? ドラマとかでよく見る街中で因縁付ける当たり屋みたいになってない? そして平然と嘘を投げ込まないで下さい。
まさかウェールズさんがそんな安い挑発に乗るわけ……
「は? まさか偽物だと言うのか? この愛を? 明石、一度話す必要があるみたいだな———」
「———ふん。疑われるようでは愛とは呼べんな」
またウェールズさんが明石の胸ぐらを掴もうとしたところで、朱色の髪のKAN-SEN、モナークさんがウェールズさんの肩をポンっと横に押した。モナークさんは僕の頭1個分くらい背が高く、見下ろされる形になる。これでこの前のアバークロンビーちゃん拷問組が揃った。
「やはり竜骨編纂を限界まで強化された私こそが、指揮官から一番愛され、この母港の戦果を貢献している事が私からの愛である」
どっしりと構えるモナークさんの言う事は何一つ間違っていなく、開発艦だから建造、ユニット強化に時間は掛かったものの、それに見合った以上の戦果をこの母港に届けてくれて、高難易度海域には欠かせない存在となっている。
「モナーク、あなたがここに来るまでに母港の戦果に貢献したのは、この私よ」
「フッド、とであろう?」
「「……」」
「ねぇ、明石さん。もうヤンデレ度の測定って始まってる?」
「あれは元々にゃ。キングジョージ5世級は明石の大好物なのにゃ」
そうなんだ。キングジョージ5世級の皆が良ければ、明石さんと部屋を一緒にしてみようかな?
とりあえず、二人まとめて測ろうとしたところに、
「ご主人様、モナーク様、明石様、ご機嫌麗しくございます。ウェールズ様、お取り込み中に失礼致します。陛下がお呼びです」
現、ロイヤルのメイド長ベルファストさんがウェールズさんに伝言を申した。聞き耳を立てると、クィーンエリザベスさんが「インターネットを買いたい」と言っているらしい。ウェールズさんは二つ返事で「すぐ行く」と言って僕らに背中を見せて去り際に、
「……私にはカッコカリというアドバンテージがあるのを忘れるなよ」
右手の薬指に銀色に輝く物を見せると、
モナークさんが苦虫を噛み潰したような表情でウェールズさんの背中を見刺した後、そのまま僕ら二人に視線を向ける。
「じ、じゃあモナークのヤンデレ度を測るにゃ〜指揮官」
謎の重圧に圧されつつもタブレットの画面をタッチする。
モナーク→指揮官
ヤンデレ度:45
45か。大体真ん中くらいの数字だ。ちょうどいい目安になりそうだ。
「なんだ45かにゃ……もっとありそうな気がしたんだけどにゃ」
明石さんがつまらなさそうに口を尖らせてブーブー言っている。そう言われても……。
「……指揮官。何故私には指輪が無い?」
肩を掴まれている訳でもないのに、モナークさんの背中から出る真っ黒なオーラのせいで、その場から動く事が出来ない。正確には動く事は出来るんだけど、非常に速度が遅くなっている。明石さんの頭に黒いマークが出ているので、モナークさんのスキルの効果だ。いつ弾幕を撃ったのだろうか。
「それは……「い、今明石のお店には指輪が売り切れなのにゃ〜アハハ……」」
僕の説明よりも先に明石さんが割って入ってきた。乾いた笑いがロイヤル寮に響く。明石さんのお店も売り切れなんてあるんだなぁ。
「……ならば早急に仕入れろ。今すぐに」
は、はいにゃ〜! っと言って明石さんの長い袖から発注する機械を取り出して、ダダダダダと勢いよく画面を連打している。そして、一通りタッチした後、
「い、いや〜どこの母校も指輪の注文が殺到していて、仕入れが追いついていないみたいだにゃ〜次の入荷は未定だにゃ〜……(これで誤魔化せるにゃ)」
グルグル目で冷や汗をかいているにも関わらず、口調は割と余裕を感じている。明石さん特有の話術かな?
「……チッ……指揮官、私は実際には設計止まりで廃案になってしまった。必要とされないはずだった。だがしかし、何かしらの縁でこの母港に生まれた。【また】捨てられる、そう覚悟はしていたがお前は違った。戦術教室で学ばせ、戦闘から帰れば笑顔で出迎えてくれて、どんなに難しい海域でも真っ先に私を登用してくれて、気づけば私の中で指揮官、お前の事ばかり考えるようになり、欠かせない存在になっていった。秘書官を外された時は不安で不安で不安で不安で不安で頭がおかしくなりそうだった。それでも、出撃はさせてくれたからまだ正気を保つ事ができた。それは束の間。ロイヤルメイド隊のイベントがあったよな? 私もまだ未熟ではあったが、メイドしばきには半分以上は貢献したぞ? それなのに……その時加入した教育係のメイドがいたよな? 私よりも遅くきたのに何故、そいつに指輪を渡す? 今度こそ見捨てられたと思った。飯が喉を通らずに、戻す日々だった。あの時はウェールズには迷惑を掛けたがまぁ今はどうでも良い。精神安定剤に頼る毎日だった。その薬ですら吐いてしまったが。心配して駆けつけた指揮官が抱きしめてくれた。怒りと同時に、安堵、悲しみ……感情が破壊される感覚に陥った。どんな海域の戦闘よりも辛かった。そして見捨てられない事が分かって嬉しかった。なぁ……指揮官……?」
モナークさんがポツポツと小雨のように僕に語りかけたと同時にモナークさんが艤装を展開する。
「ま、不味いにゃ……!? 指揮官! ここから逃げるにゃ!!」
何の事か分からずだけど、明石さんにまた手を引っ張られてロイヤル寮の扉を開けたと同時に、真後ろからとてつもない轟音が鳴り、ロイヤル寮の壁に大きな蜂の巣の穴を開けた。僕らがいた場所には、何倍も大きなガレキが重力に従って刺さっていた。
「モナーク様!? 一体何が起きたのですか!?」
「……私は、軽巡やウェールズよりも劣っているというのか……?」
ベルファストがモナークの顔を覗き込もうとするが、本能なのか、見ようとする事を拒絶してしまった。
もしよければ良かった話を聞かせてください。
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グロスター編
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隼鷹編
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モナーク編
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赤城編
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セントルイス編