「ユニオンは賑わっているにゃ〜。さすがエセックス先生にゃ〜。」
昨日から始まったユニオンのイベント、【特別演習 超空強襲波】によってユニオンは勿論、対空に自信のあるKAN-SENの子たちが積極的に参加している。そして、【底力】に挑んではバッタバタとなぎ倒されてしまっていた。
「うちの母港にはエセックスさんがいないので、外部から派遣してきて頂きましたが……改めて見ると凄まじいですね」
僕と明石さんは、特別演習の様子を見るためにユニオンのエリア内に足を運んできた。
「全くにゃ! 指揮官がイベントタイトルのロゴを10回もタッチするからにゃ! エセックスがヒートアップしてローンですら消し炭になってるにゃ!」
興味本位でやってしまった事実に苦笑いしていると、僕は全く関係ないあることに気づく。
「……ICカードが無い……明石さん持ってたりしませんか?」
「にゃ? いくら明石だからって指揮官の物は取ったりしないにゃ。搾取はするけどにゃ〜」
ICカードとは、ただの電子マネーなのだが指揮官を務める前に使っていた電車の定期券の印字がされていて、使うKAN-SENの子はいないので余程の事がなければ拾得物として執務室に届いている筈なのだけど……。重桜寮でジュース買った時に落としちゃったかな……。
「もしかしたら、さっき重桜寮で落としたのかにゃ? 赤城と加賀に聞いてみろにゃ」
内線電話で赤城さんと加賀さんに連絡してみるも、受話器が取られる事が無かった。まだ部屋に戻ってないのかな? 諦めて重桜寮に引き返そうとすると、
「ラッキーねっ! みーつけた、 指揮官くーん♪」
僕の視線にICカードを持ったKAN-SENの子が小さく僕に手を振っている。
「……あ! 僕のです! すいません。ありがとうございます、セントルイスさん」
綺麗な青い髪の余裕たっぷりのお姉さんKAN-SEN、セントルイスさんが拾ってくれていた。
「流石にゃ〜、指揮官の物を拾うなんて幸運は伊達じゃないにゃ〜」
明石さんからのからかいも、余裕たっぷりの微笑みで受け流していた。
「あの、どこに落ちていましたか? まさか重桜寮からわざわざ来てくれたんですか?」
けれどセントルイスさんはウェーブのかかった青い髪を横に揺らす。
「ううん。買い出しに行こうと私の部屋を出たら、扉の前に落ちてたの。それで、指揮官くんたちがまだ近くにいたからって事よ」
落としたのはついさっきだったのか。拾ってくれたのがセントルイスさんで良かったと思う。ホッと一息ついたところに明石さんが悪い顔で提案をしてきた。
「さぁ指揮官、ヤンデレ測定器を始めるにゃ! わっふるわっふるにゃ!」
目的を忘れかけていたところだった。セントルイスさんがヤンデレって全く想像できないんだけど……。
「セントルイスさん、ヤンデレ度を測っても良いですか?」
唐突すぎる僕らの提案に、セントルイスさんは小首を傾げて頭にはてなマークを浮かべている。
「えっと……ヤンデレってあれよね。重桜の空母や重巡の子みたいなことかしら? 私で良ければ良いわよ?」
充分すぎるほどの認識だった。まぁ艦隊組む時、前からや横でその姿を見てるもんね。
セントルイス→指揮官
ヤンデレ度:24
「まぁそんなもんにゃ〜。明石もそのくらいを想像してたにゃ〜」
セリフと態度が真逆の明石さんは、吐き捨てるように言った。むしろヤンデレ度高い方が稀な気がする。
何か閃いたように両手を打つセントルイスさんが、どこからかメモ帳と【少し太めのボールペン】を取り出した。
「うふふ、そんなおっちょこちょいな✖︎✖︎✖︎✖︎指揮官くんに、インタビューをしたいと思いまーす♪」
明石さんは「誰にゃ?」と首を傾げ、その対照的に僕は冷や汗をかいている。別にKAN-SENの子に僕の本名を教えても良いのだが、上司によると機密情報漏洩の防止で余程の事がない限りは教えてはいけないらしい。なので、大本営からの書類はIDと所属母港で区別されている。
「あ、あのセントルイスさん……決して僕の名前は……」
「あぁ、このメモ帳は雰囲気を出すだけだから、書いたりはしないわよ? 機密情報だものね。明石ちゃんもね? 形にして残しちゃうと、最悪指揮官くん、指揮官辞めさせられちゃうかもしれないもの」
明石さんは、僕の名前を初めて知った事の驚きの顔のまま、お口チャックのジェスチャーをした。
「てかセントルイスは、ペンとメモ帳を持ってるって事は青葉のように新聞部なのかにゃ?」
「ううん。ユニオンの会議で使うためよ。私、書記係なの」
なるほど。でも重桜とはまた別の、個性的なユニオンの子たちの意見をよく纏められるなと思った。
「じゃあインタビューを始めまーす。指揮官くんは学生時代はどんな子でしたか?」
どんな子か。今みたいに大人しい子だと思う。
「学生時代は本を読んだり、たまに外で遊んでたりと普通の子ですね」
ふむふむ、とボールペンをカチカチノックしているセントルイスさんは本当にメモをしている感じに空虚にボールペンで文字を書く。
「文武両道な子って感じが伝わるわね。バランスが良くて良いと思うわ♫」
それから、好きな食べ物、趣味、将来の夢などごく普通の事を聞かれた後、
「では、メインのインタビューをしちゃおうかしら。3ヶ月前に、この母港に指揮官くんのご家族が見学にいらしたわよね? その時にご家族様はケッコンカッコカリを済ませた、私含めたKAN-SENの子達の中で誰が好印象だった?」
僕の家族をこの母港に招いた時に、ここのKAN-SENの子たちとは別にケッコンを済ませた子たちを紹介した。実際はカッコカリなので法律的な重婚にはならないが、ひょっとすればいずれは本物の結婚にKAN-SENの子を選ぶ可能性がある。そうなる場合に顔合わせをしておきたいと両親が言っていた。
今のところケッコンカッコカリしたKAN-SENは、
グロスターさん、
プリンスオブウェールズさん、
愛宕さん、
ベルファストさん、
セントルイスさん、
上記の5人である。
家族は皆さん美人すぎてびっくり、と言っていたが本当に驚いていたのが、
胸 と 露 出 が 大 き す ぎ る
と笑っていた。
通常の洋服ならウェールズさんが一番少ないのだが、たまたま購入した水着の衣装のままなのを忘れていて、
胸の下と谷間がそれぞれ大きく開いたメイドさん二人、布面積が少ない水着のロイヤルの指揮、重桜のいろんな意味で凄い水着の人、不運か幸運かセントルイスさんが埋もれる結果になってしまった。
でも埋もれているとは言っても、セントルイスさんは充分すぎるくらい細かいところに気を使えて、それを自然に行えているため両親も気が楽だと好印象だった。僕自身も、普段の秘書官業務を助けられていてセントルイスさんが秘書の時は一層安心して仕事ができる。僕からも好印象だ。
両親からも、将来はセントルイスさんと結婚するのかと聞かれたが、すぐにノーとは言えないくらい照れてしまった。
「……あの後、両親からSNSが来たけどセントルイスさんが良かったと言っていました。本当は贔屓してはいけませんが、僕自身も、このような素敵な女性と結婚が出来たらなと思っております」
なんだか湿っぽい話になってしまったが、セントルイスさんは目尻から出た滴が頬を伝っていた。
「……そこまで言ってもらえるなんて、私は幸せね。これからも指揮官くんにすぐに結婚したいと言って貰えるくらいのKAN-SEN、一人の女性になれるようにするわね♪」
上品に泣くセントルイスさんを尻目に、明石さんはう”う”う”う“と泣きながら長い袖で鼻水をかんでいた。えぇ……ちょっと何してるんですか……。
「ねぇ、指揮官くん。せっかくだし私と写真を撮ってもらえない? 忘れない思い出としてね♪」
セントルイスさんは持っていたスマホで自撮り風に僕とツーショット写真を撮った。本当にセントルイスさんは写真に写っても美人だ。ツーショットの後、明石さんの猛プッシュで3人で写真を撮った。
目的も済んだし、セントルイスさんと分かれ際に呼び止められた。
「ねぇ指揮官くん? 今日は郵便って何時までに出せば良いの?」
「えっと基本的に16時までにポストに投函しておけば大丈夫ですよ」
「そう、ありがとうね♪」
☆数日後
「……もしもし、
写真 と ボイスレコーダー———ええ、近々ご挨拶へと。将来長い付き合いになると思いますので♪」
もしよければ良かった話を聞かせてください。
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グロスター編
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隼鷹編
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モナーク編
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赤城編
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セントルイス編