「いや〜久々に平和に終わったにゃ! 前の4人が曲者すぎるのにゃ!」
時刻は17時にさしかかり、晩ご飯の為にそれぞれ好きな陣営の食堂に足を運ぶKAN-SENの子たち。僕と明石さんもその中の一人である。
「今日はどの陣営にしようかな……明石さんはどこにします?」
「明石はなんでも良いにゃ〜。指揮官に任せるにゃ〜」
「じゃあロイヤルに「嫌にゃ!!」」
ええ……流石に鶏でも忘れないんじゃないかな……。明石さん、フライドポテトが好きだったな。昼間とかかなり食べてたし。ありそうなのは……。
「ユニオ「嫌にゃー!!!」」
「じゅう「怖いにゃー!!!」」
まさか3/4をハズすなんて。僕はセントルイスさんほどの運は無いらしい。
「……鉄血にしましょうか」
「さすが指揮官にゃ〜! 今日は明石の気分はウィンナーなのにゃ〜」
方針が固まったところで鉄血寮に向かった。鉄血寮の食堂は晩ご飯の時間でも比較的静かだった。全く人がいないのではなく、鉄血自体元々実装されているKAN-SENが少なくて、こじんまりとしている。
「あら? 指揮官じゃない。パンチラが大好きなっ♪」
「そ、そんな事ないですよ」
厨房のカウンターから身を乗り出しているオイゲンさんに、出会い頭にジャブを喰らう。根に持ってるな、これ。
「はぁ? オイゲン適当なこと言うなっての……!? あ、アンタ急にノコノコ出てきて何の用よ!?」
料理の皿などを出しているヒッパーさんに怒られてしまった。確かに四日ぶりだけども。
「はい、ツンデレ金髪まな板テンプレート入りましたー。指揮官、ここ一週間、ヒッパーは指揮官の好みを知る為に色んな陣営の子に聞いて回ってたのよ」
「ちょっと!? な訳ないじゃない!? 大体、コイツなんて───」
ヒッパー姉妹の二人の掛け合いを見ているとグラーフさんも厨房にいた。
「ヒッパー、ソーセージが焦げてるが」
「あああ!? もう! ホラ、アンタも明石もサッサと料理を選びなさい!」
「じゃあ明石はぐるぐるソーセージとフライドポテトにゃ!」
結局ポテトじゃないか!!
「じゃあ僕はぐるぐるソーセージとザワークラウトで」
「ザワークラウト!? アンタ、ケンカ売ってんの!?」
あれ? ドイツの料理の定番かと思ったんだけど。
「良かったじゃない。指揮官好みの味付けの練習の成果を出せるじゃない」
「はぁ!?」
「はい、ツンデレまな板一丁〜」
「まな板一丁〜」
「まな板〜」
ヒッパーさんが顔を真っ赤にして、ブンブン横に手を振るがオイゲンさんとグラーフさんは当たり前の様な態度でスルーした。テーブルに座っていた駆逐艦の子たちも便乗した。グラーフさんは意外とノリが良いんだなぁ。
「では、二人のぐるぐるソーセージは我が担当しよう」
グラーフさんは大きめのフライパンの上に長いソーセージを渦巻き状に巻いて、香ばしい香りを食堂全体に漂わせるようにフライパンを動かす。料理姿と匂いに釣られて僕と明石さんは厨房の受付に体重を乗せてより近くで嗅ごうとしたら、更に別のウィンナーを焼いて、益々空腹を煽り出した。
「はーい、ぐるぐるソーセージとポテト、ぐるぐるソーセージと愛情たっぷりのザワークラウト出来たわよ」
出来たての料理は香ばしく肉汁を出して、食欲が止まらないほどだ。
「ねぇ明石さん。次は誰を測定したら良いですか? ヒッパーさんですか?」
横に座るポテトとソーセージを交互に頬張る明石さんに聞いてみた。
「うーん、ヒッパーがヤンデレするのは見てみたいけどにゃ、まだ病んでは無いのにゃ〜」
「卿よ。同席するぞ」
料理の配膳が終わったグラーフさんは僕らと合流した。グラーフさんのメニューも僕と同じ、ぐるぐるソーセージとザワークラウトだ。
「二人は何を話していたのだ? この時間に一緒にいるのは珍しいではないか」
普段、凛々しく佇むグラーフさんはご飯の時は、寮舎にいる時みたいにうにうにしながらソーセージを食べている。なんというか、ギャップが凄い。
「実は明石さんの発明品に午前中から協力していたんです。色々な事がありましたね……」
「ホントにゃ〜。指揮官に抱きつかれた時は終わるかと思ったにゃ〜」
「何だと……?」
グラーフさんはナイフとフォークで切り分けながらソーセージを食べていたが、いかにも火花が散るかと思うくらい大きな金属音を響かせた。
「あれは赤城さんが居るとは思わなくて、ビックリしちゃっただけですよ……」
「それに赤城ともイチャイチャしやがってにゃ〜」
「赤城とも……だと?」
喋るたびにグラーフさんの声のトーンが重く落ちていく。しかもあれはイチャイチャじゃなくて、頭を撫でただけなんだけど……。
「……卿よ。明石とは今日、何時間いたのだ?」
グラーフさんの目つきは演習している時よりもキツく、鋭く、刃物のように僕らを突き刺す。
「えっと、おおよそ8時間はいましたね」
その瞬間グラーフさんの皿が床に落ちて割れた。食堂全体に静寂が広がる。どうしたんだろうグラーフさん。
「指揮官、ヤンデレ測定を始めろにゃ。大丈夫にゃ。グラーフなら、にゃ」
こんなにわなわなと震えているグラーフさんが大丈夫なのだろうか?
とりあえず測ろう。
グラーフ→指揮官
ヤンデレ度:56
「おおー! さすが赤城を参考に作られただけあるにゃ〜!」
56は大丈夫な数字なのだろうか。ついさっき数値が45のモナークさんに弾幕を撃たれた記憶があるんだけど。
「……ふぅ。落ち着かん。飲み物を取ってくる。二人はレモン水で良いな?」
自ら割ってしまった皿を処分して、仕切り直し用の飲み物を買ってきた……!? コーラオイルスペシャルじゃないか!? KAN-SENのブームなのか!?
「あぁー!? コーラオイルスペシャルが鉄血寮にもあったなんてにゃ〜!?」
大好物があると分かった明石さんは、ダッシュで自販機へと向かっていった。その飲み物、レインボー色に回っているんですけど。
「卿もこれが気になるのか? 良かろう、一口飲んでみるが良い」
グラーフさんはキュポッと蓋を開けると、まず自分が一口飲む。間接キスは気にならない訳では無いけど、それ以上に見た目の色と匂いがヤバい。ベースはガソリンなんだけど着色料等の添加物が科学反応を起こして頭がおかしくなりそうだ。
「何だ? 今更間接キスなど気にする質ではあるまい……まさか、卿は
我の事を───」
表情は怒っているのだが、若干唇を噛み、今にも泣きそうになっている。本当に飲みたく無いのとグラーフさんを泣かせたく無い葛藤に立たされた僕は、
「明石さん、もしもの時は定期メンテで叩き起こして下さい」
「急にどうしたにゃ!? 頭がおかしくなったのかにゃ!?」
これからおかしくなるんです。
グラーフさんから受け取ったペットボトルの飲み口を顔に近づけた所で──────。
僕の意識は途絶えた。
「───いは、たしか───、パン──ラ───すき───いってたな。
───みやげに、───のをさしあげよ───」
「───いが、んっ、めがさめるまで───、あっ、 ───もうすこしだけ───、んぁっ───」
目が覚めると腕を組んだ銀髪のお姉さんと緑髪の人と目が合った。
「指揮官、大丈夫かにゃー? いきなり倒れるからビックリしたにゃ。あと首に虫刺されすぎにゃ」
「失神するほど美味かったのか? ふん、変わり者め」
デカイブーメランが頭に刺さっているんですが。
鉄血寮のグラーフさんの部屋に運ばれていたらしく、時間を見るとまだ17時台だった。そんなに気絶してなかったみたいだ。何だか口と鼻に変な感覚が残ってる。虫に刺されていたのか。特にかゆくは無い。部屋を見渡すとシリコンタイプの手の模型があった。僕が先日、明石さんに頼まれてとった手のポーズと同じものが。まぁいいや。そろそろ執務室に戻ろう。
「グラーフさん、お邪魔しました。ではまた」
何故か顔が朱く少し呼吸が乱れているグラーフさんに挨拶し、ドアノブに手を掛けた所で、あることに気がつく。
何で指が湿っぽいんだろう。それに粘り気がある。
もしよければ良かった話を聞かせてください。
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