【アズールレーン】ヤンデレ測定器   作:そうすけ

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大鳳編

 「ただいま戻りました」

 

午前中からずっとKAN-SENの子たちにヤンデレ度を測定してきて、執務室に戻ってきたのは18時頃になった。勿論、明石さんも一緒に戻ってきた。

 

「ご主人様。委託、研究開発、三人の戦術訓練が完了しております。報告書を読みなさい」

 

机の上にはドッサリと目に見えるほどの厚い書類が重なっている。読むだけだから良いけど、色んな疲労でため息が出てしまう。

 

「バーチャーでは無く、デューティです。指揮官の務めを果たしなさい……何で明石と大鳳もいるのですか……?」

 

「明石は発明品の実験中だから離れちゃダメなのにゃ!……え? 大鳳?」

 

あぁ、だから明石さんが少し席を外した時に、試しにボタンを押してみたけど、【距離が遠すぎます】って出たのか……大鳳さん? どこにいるの?

 

「指揮官さまぁ〜♡ いつ見ても素敵ですぅ〜♡」

 

「「ひゃあっ!?」」

 

振り向くと、僕の真後ろにいた。大鳳さんの顔は殆どくっ付いていると言えそうなくらい接近していた。疲労もあって完全に油断していたせいで明石さんと情けない悲鳴を上げてしまう。僕に至っては腰が抜けてしまった。

 

「うふふ〜……指揮官様は可愛らしい声をお持ちですねぇ……どうして大鳳を見て怖がるのですかぁ……? ねぇ……?」

 

大鳳さんの特技の一つでもある、簡単に目のハイライトを消す。大鳳さんはただでさえ目力があり、秘書官中の5メートルくらい離れていても凄まじく力を感じる眼差しなのに、超接近なんてしてたら構えてないと怯んでしまう。そんな状態の目のままジリジリと僕に近づく、僕もそれに合わせて後ろに下がる。二人で適切な距離を取っている筈だったが、先に僕が机にかかとをぶつけるのでスピードがゼロになる。さっきまで積み重なっていた山積みの書類が床に散らばり、それに気を取られるとグワシっと襟を両手で掴まれた。割と頻繁に大鳳さんにされている事なのだが、今日はより一層怖かった。モナークさんやウェールズさんに掴まれてるアバークロンビーちゃんもこんな気持ちなのだろう。

 

「いい加減にしなさい、大鳳。ご主人様の務めを遮るのであれば、あなたには力でしっかり教育しなければなりません」

 

僕を掴んでいる大鳳さんの左腕をガッチリと掴むグロスターさん。二人の間には見えない火花が散っている。

 

「おおお〜! これが修羅場にゃー!! 指揮官といえばやっぱりこれにゃー!」

 

さっきまでヘタっていた明石さんは既に回復しており、ダイヤに目が眩むのと同じくらいの目でキラキラさせている。お金やドロドロしたものが好きなのだろうか。

 

「教育されるまでも無いですわ。あなたと違って一方的に指揮官様に突っかかってるのではありませんもの〜」

 

「あなたこそご主人様の望んでもいない仕事をしたり、胸を触らせようとしたりしません」

 

「…へぇ……教育と称しながら指揮官様の管理などと自由とプライベートを奪う行為がメイドの務めでしょうか? 教育係も堕ちたものですわぁ?」

 

「……勝手に部屋に入り、ご主人様の布団に潜り込む空母が重桜にいると聞きましたが?」

 

「ロイヤルの軽巡洋艦も、では無くて?」

 

「「………」」

 

火花は散っているのだけど、所々にブーメランを投げ合って自分自身に刺さっている気もするけど……え? 布団に? しかもどうやって部屋に来たんだろう……。睨み合う二人の陰で明石さんが、こっそり耳打ちをした。この時は……。

 

「指揮官、指揮官……」

 

「……今ヤンデレ測定をするんですよね?」

 

「お! 段々と分かってきたのにゃ〜? さぁ! わっふるわっふるにゃ!」

 

大鳳→指揮官

ヤンデレ度:24

 

「ひっく!? この機械大丈夫かにゃ!? メーカーにクレーム入れてやるにゃ!!」

 

永遠に繋がらなさそうな電話ですね……。

 

「指揮官様ぁ? 大鳳に何かしましたかぁ?」

 

かくかくしかじかとヤンデレ測定器の説明をした。

 

「……大鳳はヤンデレの事はよく分かりません。ですが指揮官様への愛は誰にも邪魔出来ませんわぁ……」

 

「大鳳はホントは分かってるんじゃないかにゃ……? それともギャグなのかにゃ?」

 

「明石ちゃん? 今何と───?」

 

艦載機の装填が済んだ大鳳さんが明石さんに爆撃を起こそうと構えた。

重桜空母の中でも一番練度が高いので喰らえば一溜りもないだろうなと。

 

「ななな何でも無いにゃ!!! 指揮官助けてにゃ!!!」

 

明石さんは泣きながら僕の体にしがみついた。ひょっとして、この状況でそれはマズイのでは……?

 

「「指揮官様(ご主人様)ぁ……?」」

 

二人がゆらりゆらりと近づいてくるのに、僕の後ろには壁と窓しかない。心臓がバクバク脈打って、まともに頭が回らない。こうなれば……!!

 

「明石さん、しっかり掴まってて下さい。1、2のっ───!!」

 

「ななな、指揮官ーー!! 早まるにゃーーー!?」

 

 

 

 

 

執務室の窓から明石さんを抱えて飛び降りた。

 

執務室は二階にあるため、それほど高さも無く、幸いにも着地した先は広場の芝生なので致命傷には至らなかった。けれど見切り発車で飛んだため着地はまともに出来ず、片足を捻挫してしまった。

 

「指揮官何してるにゃー!? あらま、足捻っちゃったみたいにゃ。そこの窓が空いてる空き部屋があるから、そこで修理してやるにゃ〜」

 

明石さんの肩を借りて、片足でぴょんぴょん跳ねながら窓から電気の付いていない薄暗い空き部屋にお邪魔した。うちの母港に空き部屋なんかあったっけ? 会議室とかかな?

 

空き部屋には、当たり前のように物は置いてないのだが、何故か壁に布面積の少ない真っ赤なドレス、孔雀の刺繍がしてある東煌のようなアレンジされた赤いチャイナドレス、色々な桜の模様の同じく赤の和服が掛かっている。何か見覚えがなくも無い。

 

「ねぇ明石さん。あの衣装に見覚えがあるんだけども……」

 

「え? どれにゃ……あっ───」

 

修理に集中していた明石が衣装を見た2〜3秒くらいに空き部屋のドアが開かれた。この部屋の持ち主が現れたのだが、先ほどまで僕らの後ろにいた人物と一緒である。

 

「見つけましたわぁ、指揮官様ぁ〜……どうして大鳳の部屋で明石ちゃんとイチャイチャしてるのですかぁ〜……? 納得いく説明の後、害虫を駆除して差し上げます〜うふふ……」

 

逃げた先に、ピンポイントで見つかるなんて怖すぎた。

 

「怖っ……」

 

冗談抜きで怖くて、ぽろっと口にしてしまったのが大鳳さんの耳に入ると、ピタッと固まった。

 

「指揮官……今のうちに逃げるにゃ!」

 

「───うん。大鳳さんお邪魔しましたー!」

 

大鳳さんの横をすり抜け、部屋を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───大鳳が、怖い? 大鳳は、指揮官様に迷惑をかけてしまった……? 指揮官に、嫌われてしまった……?」

 

暗い夜の空に問いかけるように、ポツリと震えた声で呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 大鳳さんからの難を逃れたように感じた僕らは、ユニオン寮の演習を観に来ていた。本日の演習が終わるので派遣されたエセックスさんに挨拶をした。訓練を終えたKAN-SENの子たちは満身創痍のボロボロとなっていた。あのエセックスさんの表情からはそうなるとは読み取れないんだけど……。潜水艦の子たちも終わったようで、ぞろぞろと海から上がった。

 

「終わったーーー!! あ! 指揮官ー! 疲れたからマッサージしてよー!! 今なら、【あの時の】秘密忘れちゃうかもなーー!!!」

 

こちらに走ってきた潜水艦、アルバコアちゃんが肩をコキコキ鳴らしながら僕にマッサージを求めてきた。【あの時の】秘密とは、特に何もなく、アルバコアちゃんの口癖のようなものだ。そんなに大声で言ったら秘密も何も無いと思う。

 

「指揮官はおねショタだと思ってたけど、まさかロリショタなのかにゃ……?」

 

確かに僕の周りには大人のような女性が多いけど、僕はショタでは無い、はず。アルバコアちゃんをロリと呼ぶのは少し難しいと思う。

 

アルバコアちゃんに肩のマッサージをすると、投げキッスのポーズをして、「大鳳ー!! あーそーぼー!」と言って疾走していった。大鳳さんとアルバコアちゃんは本当に仲が良い。大鳳さんはアルバコアちゃんに会うたびにビックリしたり、失神したりして毛嫌いしているけど、何だかんだで構ってあげてるので優しいんだよね。僕の前では愛に溺れそうになるけど。

 

「うーん、今日は夜も遅いし、ヤンデレ測定器は終わるかにゃ〜。指揮官明日も頼むにゃ〜」

 

明日もやるのかと思いつつ、明石さんと分かれて、執務室に戻ろうとした時、

 

「指揮官ー!? どこにいるー!? あ! いたいた!! 指揮官大鳳さんが大変なの!!!!」

 

さっき分かれたばかりのアルバコアちゃんに呼び止められた。大鳳さんが大変なこと?

 

「事情は行きながら説明するから早く来て!!!」

 

 

 

 

 

 

「大鳳さんが部屋から出てこないの! いつもなら部屋に鍵かけてないから自由に入れるのに、鍵かけて閉じこもってるの!」

 

大鳳さんに一体何が!? てかアルバコアちゃん、いくら鍵かけてないからってそれはどうなのとは思うよ?

 

「用事があった赤城さんや加賀さんと声を掛けたけど全然ダメみたい!

指揮官、何か心当たりないかな!?」

 

 

 

 

 

大鳳さんの部屋の前には一航戦の二人がドアに向かって声を飛ばしていた。

 

「あ! 指揮官様! 何故か大鳳が部屋から出てきませんの!」

「おい、大鳳! お前の大好きな指揮官が来たぞ!」

「加ぁ賀ぁ? 余計なことを言うとまたお仕置きを……」

「ね、姉様!?」

 

『うう……ぐすっ……』

 

ドア越しにすすり泣く声が聞こえる。

 

「さっきから私達も声を掛けているんだけど、手詰まりになっちゃって……お願い! 指揮官だけが頼りなんだ!!」

 

ここまで走ってくる間に原因を考えていた。大鳳さんの前で明石さんとイチャイチャしたこと? 大鳳さんから逃げたこと? いや……好きを表現しているだけなのに、大鳳さんに「怖い」と無神経な事を言ってしまった事だ。ドアの前にいる三人にジェスチャーをかける。

 

「指揮官様……?」「「指揮官……?」」

 

「皆さん、ありがとうございます。ここは僕に任せてくれませんか?」

 

三人は静かに去る。アルバコアちゃんは顔の前に両手を合わせた。

 

「……大鳳さん、今は僕しかいません。僕の話、聞いてくれますか?」

 

鼻をすする音が聞こえたあとに声が返ってくる。

 

「……大鳳は、指揮官様に嫌われてしまいました……」

 

「嫌ってなんかいませんよ。大鳳さんは大切な人です」

 

「……大鳳は、指揮官様を怖がらせてしまいました……」

 

「それでも嫌ってなんかいませんよ」

 

「……本当ですか?」

 

「本当ですよ。大鳳さんは大事な人です」

 

ドアの鍵がかちゃり、と外された音がして開くと、

 

 

 

 

「しきさんさまぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

 

 

勢いよく飛び出した大鳳さんに抱きつかれた。大人のような抜群のスタイルとは対照的な、幼い性格の大鳳さんが抱きつくと色々とビックリしてしまう。そこも可愛かったりするんだけど。

 

「……あら? 指揮官様の上着のポケットに何か入っていますわよ?」

 

大鳳さんに言われて僕も上着のポケットに視線を移し、大鳳さんがポケットを漁ると【一枚の白い布】が出てきた。それは絶対に僕が持つハズが無い、女性用の下着だった。何だこれ!? 

 

「何だこれ!?」

 

大鳳さんの特技、目のハイライトを無くすと、より一層抱きしめる力を強めて僕の体がギリギリと締め付けられていく。

 

「ねぇ……指揮官様ぁ? 他の子とどんな事をしていたのかこの大鳳に教えて頂けますかぁ? 教えて頂けますよねぇ…!!!」

 

そのまま大鳳さんの薄暗い部屋のベッドにぶん投げられて、大鳳さんに馬乗りになられた。ドアが空いてる事に不憫に思った先程の三人が部屋に入ってきて、明かりを点けると、

 

「「「!? なにこれ……!?」」」

 

アルバコアさんを除く三人は驚きを隠せなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【壁一面に貼られた、僕の写真】に。

もしよければ良かった話を聞かせてください。

  • グラーフ・ツェッペリン編
  • 大鳳編
  • プリンスオブウェールズ編
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