【アズールレーン】ヤンデレ測定器   作:そうすけ

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プリンス・オブ・ウェールズ編

 「……では、ロイヤルの定例報告会を始める。メイド長は何かあるか?」

 

午前中は四陣営全体のミーティングをしたあと、ロイヤルだけ個別に報告会を聞くことになっている。理由は主に、ロイヤルのメイド隊の方がロイヤル寮だけでなく母港の見回りも兼ねているからだ。報告会はウェールズさんが司会を担当している。

 

「はい。昨日の14時頃、ロイヤル寮の入り口にてモナーク様の主砲が暴発を起こし、入り口の扉と壁が破壊致しました。幸いにも怪我人はおりませんでしたが原因究明の為、モナーク様の装備はメンテナンスを行なっております。私、ベルファストからは以上でございます」

 

ベルファストさんが単純明快に昨日の出来事を読み上げた。あのモナークさんのは暴発だったのか。それなら僕も後で装備を見直した方が良さそうだ。でも明石さんは何で砲撃が来るって分かったのだろうか? 職業柄、機械に詳しいからそういった事も分かるのかな。どちらにしろ助かったけども。

 

「そうか……被害者が出なくて良かったが、同じキングジョージ5世級として迷惑を掛けたな」

 

自分の事では無いけど、姉妹艦としてウェールズさんが申し訳なさそうに頭を下げた。頭を上げると報告会に出席していたモナークさんを一瞥した。僕を膝の上に乗せているモナークさんを。

 

「……ふん。お前が謝る事ではなかろう。なぁ、指揮官?」

 

名前を呼ばれると、ぬいぐるみみたいに両手でギュッと抱えられた。まぁ、その事故が起きる直前まで僕と明石さんは目の前にいたんだけどね。モナークさんの練度の高さ、竜骨編纂まで済ませたのが仇となったのか、ガッチリと身動きが何一つ取れない。

 

「……そうは言ってもキングジョージ5世級の示しがつかないからな。これはケジメのようなものだ……そうだろう? 指揮官」

 

またも別方向から呼ばれると、モナークさんは舌打ちをし、ウェールズさんは平静を保っているものの、握っている書類を僅かにクシャッとした。

 

「……轟音が聞こえましたが、ケガも無くて何よりだと思います。僕自身も報告会の後、モナークさんの装備を見直します」

 

「あぁ、そうしてもらおう。教育係は何かあるか?」

 

教育係のグロスターさんが立ち上がる。

 

「メイド隊の業務に指導する事はまだまだありますが、こちらも先日の事故以外は特にございません……が、」

 

「が? どうした?」

 

「ご主人様が様々な陣営のKAN-SENと遊び歩いていると、他のメイドから報告を受けましたが、これについてはどう弁明されますか? ご主人様?」

 

「「「……は?」」」

 

ウェールズさん、モナークさん、ベルファストさんがドスの効いた低い声で僕の方を向いた。

 

「ほう……それは実に興味深いな。それに秘書官では無い明石がロイヤルの報告会に一緒にいるのも疑問だな……包み隠さず教えて貰おうか、指揮官?」

 

「お前……この私に指輪すら渡していないのにそんな事をしているとは。返答次第ではお前もあの時のロイヤル寮のガレキのようになるぞ?」

 

「ご主人様……ベルファストはご主人様の遊びにとやかく言うつもりはございません。しかし、カッコカリを済ませたベルファストには一切、手を出さずに他の方々にツバを付けるのは如何なものかと?」

 

3/4のKAN-SENがケッコンカッコカリを済ませて、普通に見たら重婚、四股、愛人の修羅場というような昼ドラまがいのドロドロが披露されている。遊びは遊びでも、明石さんのヤンデレ測定器で実験をしているだけなのだ。隣で明石さんはわっふるわっふる!と興奮状態で、どうにもならない。

 

「誤解をされているようですが、昨日は明石さんの発明品の実験に協力していただけで、KAN-SENの方々とは一切遊んでおりません。それは本当です」

 

四人はしばし沈黙の後……ウェールズさんが最初に口を開く。

 

「ふむ……嘘では無いのだな。では明石の発明品とは何なんだ?」

 

「KAN-SENのヤンデレ度を測るヤンデレ測定器です」

 

「はぁ? 明石、何のつもりだ?」

 

「これは指揮官への愛の深さを測る機械にゃ〜。既にグロスターとモナークは測定済みだにゃ〜。二人とも相応の愛の深さだったにゃ。もっと高かったらいいのににゃ……」

 

「まぁ、ウェールズなどに私の愛が負ける訳が無いがな」

 

僕をギュッと抱きしめるモナークさんがバチバチと火花を飛ばす。今は主砲が無いから実際の火花は出ないけども。

モナークさんの数値は45だ。おおよそ真ん中くらいの数値であるが、それでも凄まじい結果であった。

 

「おい、それは聞き捨てならないぞ。指揮官、私を測れ。カッコカリの実力を見せてやろう」

 

「……ベルファストも測って頂きたいですが、メイドの業務がありますので私共はこれにて失礼致します。本日も宜しくお願いします」

 

ベルファストさんとグロスターさんが一礼をしてロイヤルの会議室を退席した。ウェールズさんがこちらに近づくと、モナークさんから僕を引っ剥がしてようやく僕は解放された。モナークさんは大きく舌打ちをし、ウェールズさんはキッと睨む。

 

「じゃあ測りますね……」

 

プリンス・オブ・ウェールズ→指揮官

ヤンデレ度:71

 

「おおー高いにゃ〜。まあグロスターに比べたら低いけどにゃ〜」

 

どうしてこうも明石さんは火に油を注ぐのか。オイルが漏れているのかな?

 

「何だと……!? この最良である私よりも高いだと!? 指揮官! 決して、こいつの変な悪習に染まるのでないぞ!?」

 

自分よりも高いことにえらい動揺しているモナークさんが、わなわなと震えて膝から崩れ落ちた。あの勝ち気なモナークさんが床に膝を突くなんて、初めて見たよ!?

 

「ふっ……まぁそういう事だ。ではロイヤルからの報告は以上だ。今日も頑張ろう。今日は私が秘書官だったからちょうど良いな……モナーク、落ち着いたら会議室を閉めるんだぞ」

 

自分よりも数値が高かった事に安心したウェールズさんは、落ち着きを取り戻し、モナークさんに会議室の鍵を渡して僕たちと一緒に外に出た。

 

 

 

明石さんは、モナークさんの主砲のメンテナンスの為に僕とウェールズさんと一旦分かれた。

 

「ふむ、ユニオンの空母演習は相変わらず気合が入っているな。この母港で一番練度の高いフッドですら、苦戦を強いられるとはな……」

 

午前中は特に書類も多く無かったので、ウェールズさんと母港の見回りをしている。まだ母港の規模が小さい頃からロイヤルの皆さんには戦力面で助けられていたので、改めて演習の難易度に驚かされる。

 

「なあ指揮官、私の勘違いならば良いのだが、何か隠していないか……?」

 

ふと、ウェールズさんに尋ねられる。隠し事? 

 

「本当に、KAN-SENの子たちには手を出していませんよ?」

 

「あぁ、質問を変えよう…………モナークと何があった?」

 

ウェールズさんの鋭い質問に図星をつかれて動揺してしまう。それを答えを受け取ったのか、そのまま話を続けた。

 

「あの子が指揮官に依存しているのは承知しているが、ハッキリ言って今日のは異常だ。普段であれば、私の前ではともかく、他の子の前であんなに見せつけるなんてしないからな」

 

そう。モナークさんはああ見えて恥ずかしがりな所もあり、人前で甘えたりは絶対と言える程しない。するなら、モナークさんの自室か、秘書官の時は執務室の鍵を閉め、カーテンも掛けて四方から見えない事が分かってから甘えるのだ。

 

「指揮官……話してくれるよね?」

 

僕は、昨日モナークさんに主砲を撃たれかけた事を話した。恐らくヤンデレ測定器が関与していそうな気はするけど、事故か故意かは未だに分からない。

ウェールズさんは何かを考えながら拳を握りしめると、僕の方を向いた。

 

「指揮官……今日は書類も数える程しかないから、午後は委託の子を迎えたり、ユニオンの空母演習の見回りにしないか……?」

 

ウェールズさんの提案はつまり、午後は自由時間にしようという事だ。委託に向かった子を迎えるにしても1〜2時間は戻ってこないし、演習の邪魔をするなんて持っての他だ。

 

 

 

 

 

 

「ちょっと、ケジメをつける用事を思い出してしまったわ……」

 

 

 

 

 

 

ウェールズさんと分かれ、一人になった僕は執務室でモナークさんの装備をKAN-SEN用のタブレットで見直していた。

 

「やはりいつもの装備だ……おかしい所なんて何もないや」

 

何回見ても変わらない画面に頭を悩ませていると、執務室の扉が慌ただしく開かれた。

 

「指揮官さま!? いらっしゃいますか!?」

 

普段の振る舞いからは想像出来ない、息を切らしていたイラストリアスさんが急かした口調になる。

 

「ど、どうしましたか?」

 

「ロイヤル寮で喧嘩が起きていまして……」

 

ロイヤルで喧嘩!? 何が起きたの!?

 

「えっと、誰がしていました?」

 

息を整えたイラストリアスさんはこう言った。

 

 

 

 

 

「モナークとウェールズですわ」

 

 

 

 

 

 

 

僕とイラストリアスさんはロンドンさんの運転する車に乗り込み、急ピッチでロイヤル寮に向かった。

人だかりが出来ているので場所はすぐに分かった。

 

お互い殴り合っているのか、髪や服装が乱れて口元から血が出ている。

周りが止めるように叫ぶもこちらの声は届いていないようだ。

 

 

 

「モナーク、あなたの行動は目に余るところがあったけど、今回のは流石に私も黙っていないぞ!」

 

「黙れ! 見捨てられる気持ちがお前如きに分かってたまるか!?」

 

「まさか……!? 本当にやったのか!?」

 

「ああ……!! お前には関係ないがな!」

 

「関係ないだと……!? 私の大切な人をよくも!!!」

 

お互いヒートアップしてきて最高潮に達した時、ウェールズさんが主砲を展開した。モナークさんも艤装を出そうとするが、不発に終わってしまう。運悪くメンテナンスに出してしまっているからだ。一瞬の隙を突かれたモナークさんを狙って、ウェールズさんが主砲を構える。いくら戦艦同士でも近距離で喰らえば軽傷では済まないだろう。そこで僕はタブレットで出撃編成画面を出してイラストリアスさんに提案をする。

 

「イラストリアスさん! 今すぐ艦載機を飛ばしてください!」

 

「え……!? まさか指揮官さま……あの中へ!?」

 

すぐに察してくれたイラストリアスさんは艦載機を飛ばす最終確認をした。やばい。ウェールズさんの主砲からもう発射される! 僕は無我夢中で二人の間に割り込んだ。間に合え!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「モナーク!!! そんな事をするならまた捨てられてしまえ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

主砲の轟音を二日連続で間近で聞くとは思わなかった。

結果から言えば、軽傷で済んだ。ウェールズさんの主砲が、イラストリアスさんのスキルによって僕に張られたバリアを掠めたお陰で威力が弱まり、ダメージがほぼ最小限に抑えられた。騒ぎを聞いて駆けつけてた母港の全陣営の戦艦や空母が全力で止めてくれたお陰で騒ぎは収束を迎えた。何故かローンさんだけは止めに入った時は、ウキウキしていたのに騒ぎが収まると非常に残念そうだった。

 

「……聞いたところによれば、貴方達二人は指揮官の許可無しに主砲を撃ったそうね?」

 

今回の騒動で、四陣営による緊急会議が開かれた。ティルピッツさんは落ち込んでいるモナークさんとウェールズさんに冷たい声で問い、素直に頷いた。

 

「特にレベルが認識覚醒した主力同士の喧嘩は轟沈級に危険ですよ? なのに主砲まで展開するなど言語道断です」

 

「待ってくれ! 私は主砲は……ぐっ!」

 

「ロイヤル寮の壁を主砲で撃ったのはモナークさんとお聞きしましたが?」

 

重桜の天城さんも発言する。それに反発したモナークさんだったが、天城さんのゲンコツに怯む。

 

「……あぁ、もう! アンタたち! こんなのロイヤルの恥さらしじゃない!? ねえ、下僕! この子達の処理は貴方が決めなさい!」

 

クイーンエリザベスさんがぷんすか怒る中、意外な提案がきた。

 

「僕が決めて良いのですか?」

 

「当たり前よ! ロイヤルの私が決めて誰が納得すると思ってるのよ!? 渦中の人が貴方みたいだし? それで何か異議は……!? 無いわね!? ハイおしまい!」

 

クイーンエリザベスさんが、スピード感ある処罰の決定によりあっさりと終わった。手をパンパン、と叩いて各々の解散を促すとエリザベスさんは、叱られた子犬のように小さく縮こまっているモナークさんとウェールズさんに鼻で命令した。

 

僕は二人の元に歩み寄り、ブルブルと震える二人の頭を撫でる。意外そうな反応をした二人だったが、先に帽子を深く被ったモナークさんが走って会議室を出た。

 

「指揮官……迷惑を掛けてしまったな。私に幻滅したか……?」

 

俯いたまま、自分の過ちを悔いるウェールズさん。幻滅する要素は一つも無い。

 

「いいえ、あそこまで僕を大切に思ってくれるなんて光栄です。ウェールズさんの心からの思いは本物です……が」

 

ウェールズさんははてなマークを浮かべる。

 

「最後に言ったモナークさんへの思いも、【心から】のですか?」

 

ウェールズさんはハッとして、自分の発言を思い出した。

 

「……私は大切な姉妹になんて事を」

 

「そこでウェールズさんには処罰を与えます」

 

再びウェールズさんの拳に力が入り、スカートをクシャッと握りしめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「モナークさんに謝りましょう」




ウェールズもモナークも大好きなので気合が入ってしまいました。ご了承ください。

もしよければ良かった話を聞かせてください。

  • グラーフ・ツェッペリン編
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