「マスク剥ぎデスマッチ?」
「そうみたい。Mr.顔隠しがプロにならないのがどうにも気に入らないらしいワ」
獰猛な笑みを隠そうともしなかったアメリアを思い返し、シルヴィア・ゴールドバーグは嘆息をひとつ。
魚見慧も、そしてシルヴィア自身も、顔隠しがプロゲーマーにならないことを残念に思ってはいる。
たった一度でトッププレイヤーに匹敵する知名度を得た、謎のゲーマー。
二度目の露出でトッププレイヤーを下すだけの実力を示し、その煌めきを以て確たる立場に踏み込んで。
「ゲームとの付き合い方は人それぞれ、ゲーマーなら基本的なマナーなんだけどなぁ」
「マナーで縛れるなら、アメリアは猛禽なんて呼ばれてないワ」
アレは、むしろ恋にも近い熱情だとシルヴィアは考える。
目の前に雪辱の相手が、求め続けた相手がいて。
心身が昂ぶって、周りの何もかもが見えなくなって、ただただ目の前の相手との時間が全てになるような高揚。
シルヴィアも知っている、あの感情。
「Mr.顔隠しを晒し物にするのはやり過ぎと思うわ?でも、全てをかけて因縁の相手と戦いたい気持ちを否定も出来ない……ケイも、それは分かるわよね?」
わからいでか。
その熱情こそがケイやシルヴィア、アメリアたちをトッププロ足らしめている原動だ。
そして、それこそ顔隠し──サンラクが様々なゲームで躍動している理由でもある。
だが、それは他者に押し付けて良いものではない。
「まぁ……アイツはそういうところあるからなぁ」
「そういうところ?」
「自己満足でやりたいことを全力でやって、それを見た相手のことなんて置いてきぼりにしていくところがさ。……まぁ、ゲームっていうのは突き詰めるとそういうものだし」
シルヴィアとて、サンラクの同類には違いない。
眩い煌めきを以て憧憬を一身に集める『一等星』。
アメリアとて一等星に届かずとも二等星には充分であり、その煌めきを穢した者への雪辱を願う情熱を理解出来ないプロゲーマーなどいるはずもない。
「Mr.顔隠しを大舞台に呼び出して、アメリアと一戦。リベンジ・マッチを挑む権利はあるわよね?」
「問題はどうやって釣り出すかなんだよ。中途半端なクソゲーならあっさり手に入れそうな人脈持ちだし、適当な理由をつけると疑われるし、アイツと関係が切れるようなことはしたくないしさ」
「それなら、正直に言えばいいんじゃない?」
「正直にって」
「下手にごまかさなくても、アメリアの現状を説明して、今後のことを考えてもらうのヨ。勝ち負けじゃなくて、ただ熱い戦いをしてやってほしいって」
顔隠しへの連絡は頼んだわヨ、アメリアは私が説得するワ。
また何かを企んでいるシルヴィアに一抹の不安を覚えながら、それでも慧はサンラクへと連絡することにした。
(戦闘シーンは書けない気がします)