偽物吸血鬼のお嬢様   作:温いうどん

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久々の休みの日に投稿!
前回のあとがきに書いた過去編は次回になりそうです。


人形、気絶する

「一応私がこの永遠亭の主よ!ま、ほとんど永琳に取り仕切ってもらってるけどね…。」

「ふむ、私も似たようなものだ。輝夜が永琳の世話になっているのと同じく、私も咲夜には世話になりっぱなしだ。」

「永琳はすごいのよ~。今までも命懸けで…って言っても不死だけどね。兎も角、何百何千もの間、ずっと世話してくれるしね。たまーにうるさいのが欠点だけど…。」

「従者には世話になる代わりに気苦労するのはどこも同じであろう?」

言っておくが僕は同じ轍を踏まない、ここでPAD長をネタに弄ったらバレた時が大変…。

「今朝も着替えは一人でするなとか、勝手に一人で駆け出すなとか一々小姑のようなところがある。」

「そうなのよね。私もちょっと画面の向こう側のお友達と協力するためにお金を使ったらすごい勢いで怒られたし…。」

「従者は口うるさいっていうのはもはや決定事項みたいね。」

そんな談笑をしていると満面の笑み(と額に青筋)を浮かべた永琳が話を遮る。

「お喋りもいいけれど待ち人が来たようよ?」

「待ち人?」

「お嬢様!レミリア様はいらっしゃいますか?」

咲夜さんが凄まじい勢いで部屋に入ってくる。そして僕は選択を誤った――

「あ、そういえば咲夜とはぐれてたんだっけ?ダメじゃない咲夜、妹紅…迷子になったりしたら…。」

先程からの輝夜とのおしゃべりでつい調子に乗っていたんです。瞬間、僕は確かにピキッという音を聞いた気がする。恐らくは『流石はレミリア。』と苦笑している妹紅ではなく咲夜の方から…。

「あ、あのね…さく「お嬢様。」ハイッ。」

「んじゃ、私はこのへんで帰るとするかな…。」

待ってよもこたん。正直もう顔も見れないぐらいに咲夜が怖い、誰か、誰か助けてください!

「あらぁ~、何?もこたん巣に戻るの?」

…咲夜の時と同じ空気になりつつ、咲夜の時にはなかった殺気を振りまきながら妹紅がギギギと輝夜の方を見る。

「…なんだぁ!?居たのか。引き籠もり。いっつも布団にくるまってるからわからなかった…つか、私の脳がお前を認識したくないみたいでな。」

怖っ!ヤのつく人達かその関係者にしか見えないよ!?

「くすくす、随分と出来の悪い頭…鶏だからしょうがないといえばいいのかしら?この美しい私を認識できないなんて同情してあげるわ。」

「あ゛?」

妹紅が完全にメンチ切っているのに輝夜は涼しい顔で受け流している。正直もうガクガク震えて限界なんですが…。

「いい度胸だ…。表出ろ!」

「しょうがないわねぇ。弄んであげるわ。」

待って!頼むから!…っていうか言葉通り表に出てってよ!何で室内で構えているの二人共!

「だっらぁー!」

妹紅が右ストレートで輝夜を殴れば、

「くっ、やぁ!」

殴られながらもその腕を掴んで投げ飛ばす。

そのあとも壮絶な…、正しく殺し合い。よくある表現の「やるな…。」「お前もな…。」なんていう青春のような展開にはなりはしない。狭い、同じ部屋の中で本気の殴り合い…不意に血が飛び私の頬を濡らした。

「ひっ…うー。」

今までふたりの殴り合いをただ眺めていただけの咲夜は泣き出した僕の盾になってくれた…だって、すごく怖いんだよ!?それを見た永琳は不思議そうな顔をしていたけど…。

「おらぁ!」

「ハッ!」

殴り合うたびに拳が裂け、歯が折れ、血が飛び交う、そのスプラッタな光景にガクガク震えて咲夜の腰にしがみつく。

「へっ、殴り合いじゃあ決着はつかないよな?」

「ま、仕方ないわね。私は高貴なお姫様だから、鶏一羽絞められやしない…。」

おわった?そう思ってホッとしていると、

「それじゃあ行かせていただくわよ?神宝「ブリリアントドラゴンバレッタ」」

ここから本番ですか!?

「くらえ!不死「火の鳥 -鳳翼天翔-」」

妹紅から火の手が上がる。

あれ?…火…?

あれ、あれ?体が動かない。

 

―――室内で…火の…手…―――

永琳の声が遠くで聞こえる。

  ―――お嬢様!!―――

息が苦しい…涙がボロボロ出てくる。

     ―――! ゐ、袋   ―――

         ―――    ―――

           ―――   ―――

              ―――  ―――

 

何かを口に当てられる。…少しだけ楽になった。

けれども意識は保てない…ああ、だめだ。 

 

 

sode永琳

 

レミリア・スカーレット…一体何が…。何故、人を襲い生き血を啜り夜の王と呼ばれる種族のレミリアが血を見て震えているのだ…?

断酒ならぬ断血をしているとか?

…二人共スペカを使い始めたはね…?

あらかじめ用意していた弓矢で二人の服をその場に縫い付ける。

「あら?二人共どうしたのかしら?室内でそんなに暴れて…よろしければ私も混ぜてくれませんかね。」

「「い、いやちょうど止める所だった(のよ)!」」

「そうだとしても姫様、室内で相手に喧嘩売ればどうなるかはお分かりですわよね?妹紅も室内で火の手を上げるなんてそんなに永遠亭を火事にしたかったのかしら?」

「「ごめんなさい!!」」

どうしようかしら…私もストレス溜まっているし本当に外で弾幕ごっこもいいかもしれないわね

「お嬢様!!」

十六夜咲夜?どうしたのかしら大声を出して…。

「!」

レミリアが胸を押さえて倒れていた。

「はぁ…はぁ…はぁ…。」

咲夜が抱えているレミリアを半ば奪い取るようにして診察、悪いとは思うが一刻を争う場合がある。

「てゐ袋を持ってきて。」

過換気症候群だと判断、本人の意識が混濁していたためペーパーバック法を選択、隠れ見ていたてゐに袋を持ってこさせる。

「おまたせしました師匠!」

「お嬢様は、お嬢様は大丈夫なの?」

「大丈夫よ、落ち着いて…。」

口に袋を当てて下がっていた血中の二酸化炭素濃度を通常まで上げる。

「ほら、もう大丈夫よ。」

先程までの顔色の悪さはもうない。今はスゥスゥと寝息を立てて眠っている。

「ありがとうございます。このお礼は必ず…!」

「残念だけどお礼はいいの。」

「えっ?」

「とりあずこの子を運びましょう。」

そう言ってベットのある診察室まで連れて行く。

確かにこの子を運ぶのも理由としてはあるがもう一つ…。

 

「この子は…いえ、これは何?」

これは上手く作ってあるけど生き物じゃない。

「魔術に呪術、現代技術、魔界技術…今看ただけで少なくともそれだけの技術が使われた人形か人造擬似吸血鬼でしょ?」

「…詳しくは私からは…。」

まあ、そうだろうこれほどまでに人間に近いボディ(何故吸血鬼寄りでないのだろう)は一個人が作れるとは思えない。

作ったのはおそらく八雲とこれを作るのに適したものたち。なれば、作ったのにも理由があり、またレミリアにとって大切な咲夜が人形の専属の如く従っているからには

それほどまでも人形がレミリアだと他のものに思わせたいのだろう。その計画が破綻する可能性のあることを己の主に忠実なこのメイドが話すとは思わない。

「…すみません…。」

「いいわ、人形だろうと何であろうと輝夜の友達には変わりないわ。困ったことがあったら頼ってきなさい。」

自分でも驚くぐらいに素直な気持ちから出た言葉、幻想郷にはいないタイプの者に知らずに惹かれてしまったのかもしれない。

 

一時間もすると人形は起き、礼を述べて帰っていった。

「きな臭いわね。」

「?…どうしたんですか師匠?」

八雲紫…私と同じ思考能力を持つからこそわかる。

「うどんげ、近いうちに異変が起きるわよ。」

「い、異変ですか!?」

「ええ、もしかしたら今までで一番でかい規模になるかもね…。」

その時は、

「その時は助けましょうか…あの小さな輝夜のお友達を…。」




最近、ランキング入りしたためか急激にお気に入り数が増えました。
沢山の方に見ていただけると思うとやる気が違いますね。
評価も頂き大変嬉しく思っています。

補足:選択を誤った=この受け答え、春日部に住む五歳時と同じ受け答えです
   もこたん=最初は(一応)知らない人だったので妹紅と呼び、気心が知れてからはもこたんと心の中で呼び、輝夜に切れてからはまた妹紅に…、ま、作中では一回しか主人公はもこたん呼びをしてませんが
   誰か、誰か助けてください!=セカチューは映画版が好きです
   スペカ=この作品ではもしかしたらあと一回ぐらいしかスペカが出ないかも
   過換気症候群=分かりやすく言えば、過呼吸ver精神
ペーパーバック法=素人は絶対にやらない様にしましょう。ちなみに意識がある場合は呼吸法を吸うと吐くを1:2の割合にさせるといいらしいです
   (何故吸血鬼寄りでないのだろう)=人工臓器などの現代技術が人間用のもののため
   
次回更新は未定です。少しお時間をいただくかもしれません。
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